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弥生美術館・竹久夢二美術館
根津・東大前
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弥生美術館と竹久夢二美術館は地下鉄根津駅に近く、東京大学の弥生門の
向かい側にあります。

弥生門です。

弥生門


正面が弥生美術館、右が竹久夢二美術館です。

弥生夢二


白い建物が竹久夢二美術館です。

夢二美術館


小さな個人美術館ですが、二つの美術館はつながっていて、
入館券800円も共通です。
弥生美術館・竹久夢二美術館のHPからプリントアウトしたクーポン券で
100円割引になります。

弥生美術館は、大正期を中心に活躍した挿絵画家の高畠華宵(たかばたけ かしょう)
を記念した美術館です。

高畠華宵は美麗でロマンチックな美少年美少女を描いた人気挿絵画家で、
「華宵好み」という言葉も生まれたとのことです。
少年時代に「さらば故郷!」という絵を観て感銘を受けた弁護士の鹿野琢見氏が、
後に晩年の華宵を自宅に招き、記念のため自宅敷地に美術館を建てたとのことです。

「さらば故郷!」は、荷物を背にして故郷を出で立とうとする着物姿の少年と、
裾をくわえてそれを止めようとする犬が描かれています。
学業あるいは労働のため、少年たちが田舎から都会に出て行くのは、
明治以来各地で見られた光景です。
!マークが少年の意気込みを表しています。
館の設立者も自分の身に思い合わせ、後々まで覚えていたのでしょうか。

前の記事でも書きましたが、弥生美術館では12月23日(火・祝)まで、
「生誕120年記念 ペン画の神様 樺島勝一展」を開いています。

竹久夢二美術館も鹿野琢見氏の竹久夢二コレクションを展示している美術館です。

鹿野邸の塀には夢二の絵の石碑が嵌め込んであります。

夢二石碑


12月23日(火・祝)までは「竹久夢二 舞台芸術の世界展Ⅱ」が開かれています。
世話物歌舞伎の場面の絵もセンチメンタルな情緒にあふれ、いかにも夢二です。

他にも夢二の絵が多く展示されている中に一つ、目に留まった掛け軸がありました。
砧を打つ女の人の絵で、短歌が書かれています。

ふる里の
 背戸の栗の実
  おつる音を
街にしてきく
 秋は来にけり
     夢二

岡山県生まれの夢二の感慨でしょう。
華宵の「さらば故郷!」と通じるものがあります。


美術館手前に「カフェ港や」があり、美術館に入らなくても利用できます。
夢二が開いていた「港屋絵草紙店」に由来する名前でしょう。

左側が「港や」です。

弥生港や

10時開店で、1階は数席あり、2階は11時30分から開いています。

コーヒー夢二ブレンド450円はソフトな味です。

港やコーヒー


大きなガラス窓の2階は秋の日が射しておだやかです。

港や2階


美術館の屋根で猫が日向ぼっこをしていました。

弥生猫


【2008/11/30 20:38】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
弥生美術館 「樺島勝一展」
根津・東大前
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文京区弥生の弥生美術館では12月23日(火・祝)まで、「生誕120年記念 
ペン画の神様 樺島勝一展」を開いています。

弥生美術館は地下鉄根津駅に近く、東京大学の弥生門の向かい側にあります。

弥生美術館

小さな個人美術館ですが、隣の竹久夢二美術館ともつながっていて、
入館券800円も共通です。
弥生美術館・竹久夢二美術館のHPからプリントアウトしたクーポン券で
100円割引になります。

樺島勝一(1888~1965)は大正から昭和初期を中心に活躍した挿絵画家で、
漫画「正チャンの冒険」や船のペン画で有名です。

「正チャンの冒険」は小学生の正チャンが相棒のリスと一緒にさまざまの冒険を
するというお話で、原作は織田小星、初めて吹き出しを使ったマンガとのことです。
また、被っている、天辺に玉の付いた毛糸の帽子は「正チャン帽」の名で日本最初の
キャラクター商品として大ヒットしたそうで、この型の帽子は今も見かけます。

樺島勝一は特に船の絵が優れていると言われています。

ペンで細かく描いた細密画は、「船のカバシマ」と呼ばれる通り、いきいきとして、
写真よりも迫力があります。
ポスターにも使われている「英戦列艦センチュリオン」では、画面左側で風をいっぱいに
受けて波立つ海を航走する帆船は、波を受けて右に傾き、躍動感のある画面にです。
また、船を描いた水彩画の原画を観ると、吸い込まれるような青色の海の描写は
素晴らしいものがあります。

樺島勝一は正式に絵画を学んだことは無く、すべて独学のため、そのことに
コンプレックスを持っていたといいますが、そんなことを感じさせない高い技量です。
また、デザイン感覚の優れた人で、龍をあしらった作品などはセンスよく、
実に上手くまとまっています。

大変な凝り性で、若い頃造船所に勤めていて、昼休みにあちこちで船のことを
訊いて回って、時間になっても帰ってこないので、クビになったそうです。
また勉強家で、あらゆることについて膨大な知識を持っており、書庫には山のように
本があって、床が抜けたこともあるほどで、しかもどこに何の絵があるかもすべて
覚えていたといいます。
確かに、対象について深い知識や愛情が無ければ、人を惹き付ける挿絵は描けません。

絶筆は1965年に「少年サンデー」に載った、二隻の帆船を描いた「大帆船」で、すでに
病床にあっても描き忘れたロープを気に掛けていたといいます。

その「少年サンデー」の「大帆船」の載ったページの下には、何と赤塚不二夫の
「おそ松くん」チョコレートの宣伝が載っていて、おそ松くんやイヤミやデカパンが
元気に走っているのです。
いかに樺島勝一の画業が長かったのかが分かります。
私自身も子供のころは図鑑や雑誌で樺島勝一の絵を見ていたのかもしれません。

挿絵というと、文章の添え物と捉えられがちですが、こうして多くの作品を観ていると、
それ独自の深い世界があるものだと思います。

弥生門の側にある東京大学の建物の蔦が紅く色付いていました。

弥生門蔦2


【2008/11/29 22:50】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
江戸川橋 関口フランスパン目白坂本店
江戸川橋
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地下鉄江戸川橋駅を出て、目白坂下から目白通りを上っていく坂の途中の左側に
「関口フランスパン目白坂本店」はあります。

銀杏並木の目白通りを更に進むと、右側に東京カテドラル、左側に椿山荘があります。
間の横断歩道橋から撮った写真で、東京カテドラルの塔が右側に見えます。

関口パン目白通り


通りに面して丸いショウ・ウインドウがあります。
奥にある庭の緑も見えます。

関口パン外


庭にはテラス席があります。

関口パンテラス


全席禁煙の広いイートインは庭に面しています。

関口パン中


クルミパン140円、クロワッサン140円、コーヒー350円に消費税で661円です。

関口パン・コーヒー

パンは温めてもらうことができます。
クルミパンはもちもちとして、クロワッサンはバターがたっぷりとして美味しいです。
庭の窓から朝日の射し込むテーブルで、温かいコーヒーとパンをいただくのは、
なかなか気分の良いものです。

朝のパン屋さんというのは、見ていて楽しくなります。
水天宮の「サンドウィッチパーラーまつむら」や、浅草の「べーカリーGeeva」
そうでしたが、棚にはどんどん新しいパンが並び、次々お客さんがやって来て、
買っていきます。

関口パン棚


BGMはムード音楽です。
「小さな喫茶店(In einer kleinen Konditorei)」が聞こえてきました。
アルフレッド・ハウゼ楽団でしょうか、この曲は私が以前に書いた浅草の喫茶店
「アンヂェラス」
でも流れていました。

お店のHPによれば、こちらのお店は坂を上がった所にある今の関口教会
(東京カテドラル聖マリア大聖堂)の製パン部として1888年に創業し、
今年で120周年とのことです。

教会の経営する孤児院の子供たちに技術を身に付けさせようと、パン製造を始め、
そのうちの一人を仏領インドシナ(今のベトナム・ラオス・カンボジア)に派遣して、
フランスパンの製造を学ばせたとのことです。

仏領インドシナ(仏印)はフランスの植民地だったので、今でもベトナムでは
フランスパンが食生活に根付いているというのを聞いたことがあります。
私がお店でいただいたクロワッサンの味も仏印経由だったのです。

パン作りの技術はローマ帝国からキリスト教会に受け継がれたといいますが、
日本に伝わるのにも教会が一役買っていたという、フランスパンのように長い
歴史があり、私はその端っこをかじっている訳です。

関口教会(東京カテドラル聖マリア大聖堂)です。
丹下健三の設計で有名です。

関口パンカテドラル


日仏交流150周年を記念して、東京カテドラル聖マリア大聖堂では
[パリ木の十字架少年合唱団(LES PETITS CHANTEUR A LA CRIX DE BOIS)」の
日本公演の東京公演が12月1日(月)に催されます。

11月29日(土)には宇都宮市、30日(日)には伊勢原市での公演もあります。
前回の日本公演は2001年なので、久しぶりの来日です。
24人のボーイソプラノによるアカペラはソロとコーラスで構成され、聖歌や有名な
歌曲が歌われます。

合唱団の日本語HPです。
何曲か歌声を聴くことが出来ます。

東京公演のHPです。


【2008/11/28 10:05】 お店 | トラックバック(0) | コメント(2) |
エクセルシオールカフェ神田小川町店
小川町 新御茶ノ水
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エクセルシオールカフェ神田小川町店は地下鉄千代田線新御茶ノ水駅と
都営新宿線小川町駅のB6出口にあります。

御茶ノ水の神田川に沿って紅葉しています。
神田小川町店は向こうに見える聖橋を右に渡り、本郷通りを下りきった所です。

御茶ノ水橋


靖国通りと本郷通りの交差点の角の分かりやすい場所です。

エクセル外2


席数は約70で、駿河台の新お茶の水店の約100より少し狭いです。
外にはテラス席もあります。

喫煙席が写真の右の奥の壁際に並んでいますが、仕切りはありません。

エクセル中


クロックムッシュとコーヒーSサイズのモーニングセット380円です。

クロックムッシュ

クロックムッシュは秋になって登場したメニューです。
温めた物を席に持って来てくれます。
エクセルシオールはモーニングセットに力を入れているのが特徴です。
平日は朝7時、土日祝は7時30分から開いています。

オフィス街にある店なので平日は混みそうですが、私が行った時は
日曜日の朝早い時間で、お客さんはまだ多くありませでした。
いつもは混む店で休日の朝にのんびりするのも、気分が変わっていいものです。


【2008/11/27 20:38】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
新古今集 式子内親王
桐の葉
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桐の葉もふみわけがたくなりにけり必ず人を待つとなけれど 
 
新古今集534番秋の歌で、作者は式子内親王です。

式子内親王は後白河法皇の皇女で、平家打倒に立ち上がって討たれた
以仁王の同母姉にあたります。
目の前で平家が栄え、滅びていくのを見届けた人です。
新古今集を代表する歌人で、少女時代に賀茂神社の斎院に奉仕した後、
生涯を独身で過ごしています。

桐の葉はとても大きく、落葉は地面を埋め尽くします。
その落葉を踏めば、かさかさと音がしますが、訪ねてくる人も無ければ、
それもありません。
誰か自分を訪ねてくれることは半ば諦めながらも、かすかな望みを詠っています。
「必ず人を待つとなけれど」のひと言が胸に響きます。 
この歌は秋の部の歌ですが、恋歌として読むこともできます。

桐の葉が厚く降り積もるまでの時の移ろい、その時の流れを見続ける自分がいます。
深まる秋の中で、自分自身が桐の落葉に埋もれていくような寂しさが伝わります。

桐の葉の落ちるかすかな音と、その後の静寂を聞かせる、式子内親王らしい、
きわめて繊細な歌です。

紅葉



【2008/11/25 22:47】 文学 | トラックバック(0) | コメント(0) |
上野散策 1  上野公園不忍池
上野・根津
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先日、紅葉した上野公園の不忍池あたりを歩きました。

ボート池はにぎやかです。
不忍池は昔は海だったといいますから、カモメはそのころからいたのでしょう。

ボート池


カモメやカモやハトがわらわらとヒトに寄ってきます。

カモメ・カモ


蓮池は枯野になっています。

蓮池


蓮池の向こうの弁天堂です。
不忍池は琵琶湖に、弁天堂のある弁天島は竹生島に見立てられています。

弁天堂


ボート池と蓮池を仕切る遊歩道の桜並木の紅葉です。

不忍池2


遊歩道の柳と桜です。
春の桜のころは柳の緑と映りあっていますが、秋も違った趣きがあります。

見渡せば柳紅葉をこきまぜて上野ぞ秋の錦なりける   chariot

不忍池3


見上げると空には飛行機雲がありました。

飛行機雲


【2008/11/24 09:17】 街歩き | トラックバック(0) | コメント(2) |
淡路町 喫茶店「ショパン」
淡路町・小川町
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淡路町の「神田藪蕎麦」の向かい側に喫茶店「ショパン」はあります。

朝早いので、「藪蕎麦」はまだ開いていません。

ショパン藪


「ショパン」の入口です。

ショパン入口


ほの暗い店内は古風で落ち着いた雰囲気で、紅いビロードの低いシートが並び、
奥のマントルピースの上にはステンドグラスと鏡の付いた大きな飾り棚が
据えられていて、シートに腰を下ろすと、ゆったりとした気持ちになります。

ショパン中


ショパン中2


BGMはもちろん、ショパンです。

開店したのは戦前の1933年とのことで、以前は少し離れた場所にあり、
23年前に今の場所に引越してきましたが、内装は以前と同じです。

トーストとコーヒーのモーニングセット550円です。

ショパンモーニング

トーストは厚切りで、ストロベリージャムとオレンジマーマレードが付いています。
カップも白地に金縁のクラシックなデザインです。
他にハムトースト、チーズトーストもあります。

こちらのコーヒーは大変濃いのですが、苦味と酸味がほど良く感じられて美味しく、
そして私にとって懐かしい味です。

マスターに訊いたところ、コーヒー豆を普通の3倍使っているのだと、
少し自慢げに教えてくれました。
むかしの喫茶店はそういう淹れ方をしていたそうです。
確かに、以前私が行っていた喫茶店で、こちらと同じ味のコーヒーを出す
店がありました。
しかし、その店はビルの改築で閉店してしまい、他にこういう味のコーヒーを
飲めるところは無くなりました。

このあたりは「藪蕎麦」や「竹むら」、「伊勢源」など老舗の並んだ一角ですが、
すぐ近くでは高層ビルが建設中で、常連らしいお客さんがマスターと、あそこの
ビルが建て替えられるの、どこそこが再開発されるのといった話をしていました。

時の流れは止めようもありませんが、戦前から続いている店というのは貴重な存在です。
こういう店はこれからも懐かしい味を残してほしいものです。


【2008/11/23 11:30】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
上野の森美術館 「レオナール・フジタ展」 その2
上野
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前回書いた、『「レオナール・フジタ展」 その1』の続きです。

上野の森美術館では藤田嗣治の没後40年を記念して、「レオナール・フジタ展」>が
2009年1月18日まで開かれています。
会期中は無休です。

トレードマークのおかっぱ頭で猫と一緒に写っている藤田のポスターです。

藤田ポスター


第4章「シャペル・フジタ」では、カトリックに改宗した藤田が
描いた宗教画と、制作に携わったランスの「平和の聖母礼拝堂」を紹介しています。

「花の洗礼」は、天使が花を降らせる中に三人の女性が立つ華やかな画面で、
ボッティチェルリの「ヴィーナスの誕生」そのものです。
「十字架降下」の、腕を長く垂らして横たわるキリストの姿はどこかで見たことが
あると思って探したら、15世紀の「ヴィルヌーヴ・レ・ザヴィニョンのピエタ」でした。
礼拝堂壁画の習作の「最後の晩餐」は当然、レオナルド・ダ・ヴィンチと同じ構図です。

藤田は西洋絵画の名作を積極的に学んで取り入れています。
そして、自分のものにしているのが凄いところだと思いました。


藤田は藤田嗣治として画業を始め、Le'onald Foujitaとして終わっています。
第二次大戦までは「嗣治」と、漢字で誇らしげに書かれていたサインも、
戦後の絵にはありません。

第2章と第3章の間には欠けた章があります。
藤田が日本に戻り、戦争画を描いていた時代です。
藤田の戦争画を観たことがありますが、それまでとも戦後ともまったく異なる
画風の、ドラクロアを思わせる迫力で、群像画としては「構図」や「争闘」より
はるかに進歩しています。

しかし、戦争画家としての業績がかえって災いして、戦後は代表して責任を
負わされる形になり、そのため追われるように日本を離れたということです。

テレビの番組である人が、藤田は器用すぎるところがあって、それが仇になった
のではないか、と解説していました。
大作や小物も含め、展示されている作品がどれも実に上手く出来ているのを観ていると、
私もそんな気がします。

藤田は晩年、フランスでカトリックに改宗し、「平和の聖母礼拝堂」を建てています。
ナザレのイエスは受難の後、復活してイエス・キリストとなりました。
藤田嗣治も受難を経て、Le'onald Foujitaになりました。
藤田はイエスの復活と自分を重ね合わせたこともあったでしょうか。

上野の森は紅葉が始まっています。

藤田 上野


【2008/11/20 00:03】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(4) |
上野の森美術館 「レオナール・フジタ展」 その1
上野
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上野の森美術館では藤田嗣治の没後40年を記念して、「レオナール・フジタ展」が
2009年1月18日まで開かれています。
会期中は無休です。

上野の森美術館はJR上野駅公園口を出てすぐ左側にあります。

藤田入口2


美術館の入口です。

藤田入口


展示は4章に分かれています。

第1章「スタイルの確立」は、初期の作品から「素晴らしき乳白色」と呼ばれる
藤田独特の画風を確立するまでです。

初期の地味な画風がどんどん「フジタ」の画風に変わっていく様子が分かります。
ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」の構図を左右逆にした作品もあります。
日本画風の線描と、つやのある乳白色の画面は藤田の人気を高めた大きな
特徴ですが、ヨーロッパから見れば東洋の雰囲気に魅力を感じ、日本から見れば
日本画に近い、親しみやすい西洋画ということになるのでしょうか。

第2章「群像表現への挑戦」は、1928年に発表された後、所在が分からなく
なっていたシリーズの大作4点を展示するものです。

今回日本初公開とのことで、たて横3mの大画面の「構図」連作2点、「争闘」
連作2点で、発見時にはかなり傷んでいたものを修復したものだそうです。
「構図」では檻に閉じ込められたライオンや鎖につながれた犬の周りに裸の
男女がさまざまの動作をしています。
ライオンに象徴される闘争心を押さえ込んだ平和な世界ということでしょうか、
画面の隅では藤田得意の猫が眠りこけているのもご愛嬌です。

「争闘」では大勢の男女が互いに争い、組打ちをしています。
犬も吠え、レスリングの技を掛けている男もいます。

まさに、群像表現への挑戦で、ミケランジェロを意識しての習作でしょうか。
猫の群像を描いた作品も展示されていますが、こちらは飛び跳ねたり、
タコをくわえたり、俄然、生き生きとしています。

藤田といえば猫を思い出しますが、藤田の線描は猫の顔やヒゲをくっきり
描くのに適しているので、魅力的な絵になったのでしょう。

第3章「ラ・メゾン=アトリエ・フジタ」では、晩年を過ごしたフランスの田舎家の
アトリエが忠実に再現されています。

民家の屋根裏を改造したアトリエの壁にはフレスコ画でキリスト磔図が
描かれています。
藤田はフレスコ画まで手掛けていたのかと感心しました。

その他、皿、木箱、家の模型などさまざまな物が展示されています。
皿に描かれた魚の絵など、上手いものだと感心してしまいます。

48枚の小さな板に小さい子供たちが化学者、猟師、コックなどさまざまな
職業人に扮しているのを描いた「フランスの富」は楽しい作品です。
横縞のシャツを着てイーゼルの前に座っている画家は藤田自身の姿に似ています。
子供らしく両足を前に突っ張っているのは、いかにも子供らしい雰囲気が出ています。

続きは『「レオナール・フジタ展」 その2』で書きます。


関連blog

弐代目・青い日記帳
いろいろな展覧会などについて、興味深い話が豊富に書かれたblogです。


【2008/11/19 23:53】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(2) |
山種美術館 「琳派から日本画へ」 その2
半蔵門・九段下
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前回書いた『「琳派から日本画へ」その1』の続きです。

近代日本画の名品を数多く集めている、三番町の山種美術館では
「琳派から日本画へ」という題の展覧会が開かれています。

山種美術館の並びの石垣には萩の花が咲いていました。

萩


琳派は大胆な画面構成と装飾性、たらし込みのような水墨の技法に特徴がありますが、
近代日本画にも伝えられています。

近代日本画の部の最初には加山又造の「裸婦習作」が展示されています。
小品ですが、輝く銀色の地の豪華な織物を背景に裸婦を描いた、きわめて
装飾性の高い作品です。

加山又造は華麗な装飾性の際立つ人で、琳派といえばこの人は欠かせません。
なお、国立新美術館では2009年1月21日から3月2日まで加山又造展が
開かれるとのことです。

速水御舟の「名樹散椿」は京都の地蔵院の五色八重散り椿という、花びらが一枚づつ
散る珍しい椿を描いたものです。
速水御舟は、するどい、すご味を感じさせる絵を描く人です。
この作品も、琳派の装飾的な手法によりながら、幹はうねりながら伸び広がり、
花を付けた枝葉はかたまりになってなだれ落ちて、有無を言わさぬ迫力があります。

東山魁夷の「満ち来る潮」は皇居新宮殿を飾った作品と同じ題材ですが、
横長の大画面いっぱいに春の潮が寄せています。
暖かい緑色の潮に金とプラチナのしぶきが散り、装飾性の高い作品です。
山種美術館が茅場町にあった時によく展示されていたので、私にも懐かしい絵です。

前田青邨の「大物浦」は源頼朝に追われた源義経一行が摂津の大物浦から
船出したところ、嵐に遭って散り散りになってしまったという史実を描いています。
大画面の絵で、鎧武者達を乗せた舟が一艘、波に揉まれる様が描かれています。

一面に、たらし込みの技法で塗られた深い藍色の波は観る人を引き込む力があり、
緊張感にあふれた作品となっています。
私はこの絵が院展に出品された時に観ており、その迫力に圧倒されました。

この絵は、今回は出品されていませんが、「知盛幻生」という、千切れた鎧を着け、
長刀を手にした平知盛達の亡霊が暗い波間から浮かび上がる様を描いた作品と
対になっています。
この2作品は能の「船弁慶」を題材にしていると思われますが、歴史画の大家である
前田青邨の傑作です。

このように、琳派の技法、思想は近代日本画に受け継がれ、それを豊かなものにしています。


帰りに通った千鳥ケ淵の桜並木です。

千鳥ケ淵

幹の曲がり具合も屏風絵に見えてきます。


【2008/11/18 20:02】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
山種美術館 「琳派から日本画へ」 その1
半蔵門・九段下
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近代日本画の名品を数多く集めている、三番町の山種美術館では「琳派から日本画へ」
という題の展覧会が開かれています。

地下鉄半蔵門駅の側には英国大使館があるので、前を通ってきました。

大使館

皇居の横の広い敷地に堂々とした建物が建っていて、さすが大英帝国です。
この日は曇りで、シャーロック・ホームズに出会いそうな雰囲気がします。

塀には英国国章が据えられています。

国章


山種美術館前の並木道は紅葉が始まったところです。

山種前


この展覧会は琳派を代表する本阿弥光悦・俵屋宗達・酒井抱一・鈴木其一らの
作品とともに、近代日本画を代表する画家の作品を展示して、いかに琳派が
受け継がれてきたかを示しています。

俵屋宗達の下絵に本阿弥光悦が新古今集の和歌を書いた短冊帖は、
よく見ると桜など春の絵の下絵に秋の歌を書いてあったりします。
あまり下絵の絵柄は気にしていないのが面白いところです。

伝俵屋宗達の「槙楓図」は大きく曲がった槙の幹が右端にあり、槙や楓の枝は
左側に向いていて、左端の空間が少し空いています。

絵巻物のように、右から左へ向かう画面というものは人の視線の動きに
合っていることを知っている画面構成です。

並んで展示されている屏風絵の、速水御舟の「名樹散椿」も右から左に向かう
画面構成で、下村観山の「老松白藤」も画面左端を空けています。

酒井抱一の「菊小禽」は小品で、黄や赤の菊に小鳥が一羽とまっているのを
描いています。
小鳥の重さで菊の枝が大きくしなり、小鳥が今にも飛び立ちそうで、飛び立った後の
赤い菊花の揺れまで予感させ、抱一の感覚の繊細さを見せています。

鈴木其一の「四季花鳥図」は、2枚の屏風の片方に春夏の、もう片方に秋冬の
草花を描いています。
金地の画面に、華やかな色彩で細密に描かれた、きわめて装飾的な作品で、
まっすぐに伸びた向日葵の花の強い黄色は印象的です。

この前、私が書いた、「大琳派展」でも観た酒井抱一や鈴木其一など江戸琳派の
作品の色彩が美しいのは、時代が新しいので保存が良いためだろうかと思っていました。
ところが、解説によると江戸琳派は良質の岩絵具を使っているので発色が良いそうです。
さすがは姫路酒井家の次男とそのお弟子なので、良い材料を買えたのでしょう。

琳派に倣って私の撮った秋草図です。

山種琳派


近代日本画については、『山種美術館「琳派から日本画へ」その2』で書きます。


【2008/11/16 11:22】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
秋葉原 フルーフ・デゥ・セゾン
秋葉原・末広町
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秋葉原駅の北側、タイムズタワーの向かいの小路を入った右側に、
「フルーツパーラー フルーフ・デゥ・セゾン」はあります。

タイムズタワーです。

フルーフ秋葉


お店の前には植木が並んでいます。

フルーフ外


フルーフテーブル

席はカウンターも入れて30席ほどのこじんまりしたお店です。
手描きのポスターが何枚も壁に貼ってあり、店内もお店の人の応対も
家庭的な雰囲気です。

BGMはオルゴールの曲です。

大きな窓の外側は裏通りで、人通りもすくないので、外を眺めていると、
のんびりとした気分になります。

フルーフ窓


ブランチセット800円です。

フルーフブランチ

温めたパン2種、ローストビーフ、サラダ、フルーツ、ヨーグルトに飲物です。
パンもフルーツも美味しく、あれこれ楽しめるセットです。
卵とソーセージのセットもあります。
コーヒーはソフトな味です。

日替わり料理と、パンはお替り自由のランチセット900円もあります。
他のお客さんの注文したフルーツパフェを見ると、フルーツがどっさり入って、
美味しそうです。

このお店は本来、秋葉原駅の北側に神田青果市場があった時からの
青果卸業とのことです。

お店のHPです。

HPでは木曜日休日となっていますが、聞いてみたら、人手不足で日曜日も
休日としているとのことです。

地図では駅前駐車場となっている場所が、神田青果市場のあった所で、
今は秋葉原UDXやタイムズタワーのビルがそびえています。
確かに人手不足のようで、HPがまだ書き替わっていません。

秋葉原の賑やかな表通りの少し裏にありながら、とても穏やかで、ゆったり
くつろげるお店です。


【2008/11/15 10:32】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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Author:chariot
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