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エスプレッサメンテ・イリー 日本橋中央通り店
日本橋
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espressamente illy(エスプレッサメンテ・イリー)日本橋中央通り店は
日本橋高島屋の隣にあります。

イリー1


イリー2


元は銀行だった場所なので、中はとても広く、天井は高いです。
照明はやや暗めにしてあり、全体にメタリックな印象で、壁には大きな
スクリーンが並んでいます。

イリー3


イリーのカラーの赤いシートがアクセントです。

イリー4

これだけ空間が大きいと開放感があって、良い気持です。
BGMはおだやかなポップスでした。
奥にはPCの並んだ席もあります。
分煙になっていて、喫煙室は透明な壁で仕切られています。

モーニングセット510円です。

イリー5

コーヒーと、バターののったトースト、スクランブルエッグ、サラダです。
エスプレッサメンテ・イリーはエスプレッソが売りですが、モーニングセットは
ドリップコーヒーです。
コーヒーはあっさりした味です。

場所柄、席で書類を広げて仕事をしているお客さんが何人かいました。
心地よい広さとスタイルで、刺激を感じるお店です。


【2009/02/28 09:30】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
小川美術館 有元利夫展
半蔵門・九段下
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三番町の小川美術館で3月7日(土)まで開かれている「有元利夫展」に行ってきました。
入場は無料で、会期中は無休です。

夕方の美術館周辺です。
各国の大使館や学校の集まった、静かな街並です。

あ1


奥の方の森はイギリス大使館です。

あ2


小川美術館です。

あ3


あ4


有元利夫(1946~1985)は、フレスコ画のような特異な画風で女性像を描いた画家で、
将来を期待されながら38歳の若さで亡くなっています。
私の行った2月24日は命日にあたり、毎年この時期に小川美術館で回顧展が
開かれています。

案内状の写真です。
題は「遊戯の原理」です。

あ5


同じく「春」です。

あ6


落着いた雰囲気の会場には油絵31点と若干のデッサンや彫刻が展示されています。
どの絵も、薄く、ややかすれた色合いで、女性を描いています。

単純化された画面の中の女性は、梯子を登ったり、階段を下りたり、らせんの塔を
登ったり、紙風船の上に立ったり、トランプを操ったりしています。
大きな四角い鏡を持って立ち、その鏡には雲の浮かんだ空が映っている絵もあります。
その女性たちは極めて腕が太く、操り人形の腕のようで、人形が舞台で何かの
ポーズをとっているようにも見えます。

ボッティチェルリの描いたようなバラが散っていたり、女性の顔はイタリアルネサンスの
人物画のようだったり、エトルリア彫刻に似ていたりして、全体にイタリアを感じます。
様式的で、どこか不思議な空間ですが、静謐で充足しています。

有元利夫は音楽にも関心を持っていたとのことで、会場には自身の作曲したハープ曲
「RONDO」が、ほの暗い会場に静かに流れています。

規模は小さいですが、有元利夫の世界に溶け込める、心地の良い展覧会です。

「RONDO」のCDジャケットです。

展覧会のHPです。


【2009/02/26 08:14】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
古今集 紀貫之 霞たち
春の雪
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霞たちこのめもはるの雪ふれば花なきさとも花ぞちりける

霞が立ち、木の芽もふくらむ春になって雪が降ったので、まだ花の無い里にも
花のような雪が散っているではないか。

古今集の春歌上9番の歌で、作者は紀貫之です。

紀貫之は「袖ひぢて」の歌のような大技を使う歌人ですが、この歌でも巧みな技を
見せています。

「霞たち」の詠い出しで、聴く人はまず春の初めの情景を想像します。

「このめもはるの」で、いよいよ春と思い定めます。
「はる」は木の芽の「張る」と、「春」を掛けています。

そこへ、「雪ふれば」と来たので、あわてて冬を想像します。

次の、「花なきさとも」で意識は冬に定着します。

ところが、「花ぞちりける」で、また春に引き戻されます。
しかも、「ちりける」ですから、春も過ぎたころです。

聴く人は歌に乗せられて、初春、冬、晩春と、季節を行ったり来たりする、
という趣向です。

さらに、この歌には時間の仕掛けの他に、空間の仕掛けもあります。

「霞たち」で視線は上を向き、「雪ふれば」で、その視線は下ります。
今度は「花なきさとも」で、周りを見渡し、最後に「花ぞちりける」で、
地面に行き着きます。

上から下へと、なめらかに視線を動かすように仕組まれているのです。
また、「霞たち」のア音で始まり、「ちりける」のウ音で終わる音の流れも、
視線の動きと照応しています。

紀貫之らしい、技の効いた歌です。


去年の冬の湯島天神です。
梅の木にも雪の花が咲きました。


湯島天神 雪1


今年の湯島天神の枝垂れ梅です。
雪のような花を着けています。

紀


【2009/02/24 06:18】 文学 | トラックバック(0) | コメント(0) |
湯島 フレンチボーグ
湯島
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喫茶店「フレンチボーグ」は地下鉄湯島駅の上にあります。

フ1


店内は広く、やや暗めで、床はカーペット、籐の椅子、古びたしっくい壁で
仕切りがされた奥の方は隠れ部屋のようで、面白い空間になっています。

フ2

壁の使い方は、原宿の「アンセーニュダングル」に似ています。
籐椅子やシートには薔薇模様の薄い座布団が乗っています。

壁に何枚か掛かっているのはマリー・ローランサンです。

フ3


ボーグブレンドマイルド480円と、モーニングメニューのトースト100円です。

フ4

厚切りトーストはバターがたっぷり塗ってあり、ジャムが付きます。
フレンチローストですが、マイルドの方は苦味も強くなく、すっきり美味しいです。
苦味の強いブレンドもあります。

小振りで薄手のカップも砂糖壷も、いかにもフレンチです。
メニューにはクロックムッシュもあります。

BGMはムードミュージックのメドレーでした。
エルガーの「愛の挨拶」も入っていました。

30年ほど前からのお店ということで、ヒゲのマスターとお母さん(多分)の
家庭的な雰囲気のお店です。
晴れた日の朝に、窓から射し込む光の中で、のんびりとアンニュイな気分で
くつろぐのも良いものです。


【2009/02/21 13:11】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
南千住 カフェバッハ
南千住
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JR南千住の駅から吉野通りを南に10分ほど歩き、泪橋交差点を過ぎた右側に
大変有名な自家焙煎の店「カフェ・バッハ」はあります。

だだっ広くて人通りも無い、いささか殺風景な景色の中を歩いていると、
本当にこんな所にお店はあるのだろうかと思ってしまいます。

バッハ


看板を見つけて店に入ると、外とは打って変わって中はお客で大賑わいしています。
豆を買うために待っている人もいます。

バッハの名の通り、店内はドイツ風に木の茶色を基調にしており、
店員のユニフォームはそれに合わせて、濃い緑です。
カウンターに座ると、ペーパードリップでコーヒーを淹れるのを見ることが出来ます。

バッハブレンドを注文しました。
すっきりとした、綺麗な美味しさと言っていいのでしょうか。

で、5人いる店員さんがとても元気なのです。
女性3人は全員同じ髪型、同じ形のメガネで、まるで3姉妹のようですが、
客の注文を元気な声で次々とカウンターに取り次ぎます。
カフェというより、昼時の蕎麦屋さんのような活気で、こちらも何だか
力が湧いてきます。

BGMはクラシック、多分バッハなのですが、バッハというより、スーザの
マーチの気分です。

いろいろな意味で予想を超えた店でした。


【2009/02/18 22:10】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
神田 Pelle's Espresso
神保町・小川町・新御茶ノ水
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地下鉄神保町と小川町の間の靖国通りに「Pelle's Espresso(ペレのエスプレッソ)」
はあります。

ぺ1


ミズノスポーツの隣にあり、昨年の3月開店とのことで、新しいお店です。
オーストラリアのメルボルン経由のイタリアンエスプレッソカフェという、
変わった由来のお店です。

ぺ2


奥に細長く、幅の狭いカウンター席が背中合わせに並んでいて、
赤いシートが印象的です。

ぺ4

吹き抜けになっていて、1階は禁煙席、2階は喫煙席です。
壁はコンクリート打ちっ放しの、凝った造りの店内です。
場所柄、スポーツ選手の写真が飾ってあります。
BGMはロックやラテンバンドでした。

壁に飾ってある陶板がなかなか面白く、お店の人に訊いたところ、
知り合いの芸術家に作ってもらったとのことでした。

ぺ3


コーヒーとシフォンケーキのセット500円です。

ぺ5

コーヒーは厚手のグラスに入っていて、カウンター前の鏡に映る、
グラスを手にした自分はちょっとワイルドに見えます。
千石駅の八百コーヒー店では和風の茶碗だったので、お茶をいただくような
気分でしたが、食器一つで気分は変わるものです。

お店の人がボウルを掻き立て始めたので何かと思ったら、ケーキにかける
クリームでした。
シフォンケーキはシナモンの香りがします。
コーヒーは濃い目に淹れてあるということですが、すっきりした苦味です。

色々なイベントも行なっているようで、スポーツ用品店の並ぶ街の雰囲気に
良く合ったお店です。

お店のHPです。


2009年11月1日、更新。
残念ながら、このお店は閉店しました。

ペレ0090


【2009/02/16 07:46】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
千石 八百コーヒー店
千石
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都営地下鉄千石駅A1出口の横の角に「八百(はっぴゃく)コーヒー店」はあります。

千石駅あたりの白山通りです。

は1


近くに夏蜜柑の木がありました。

は6


古びた建物の中の、ガラス戸で囲われた、ただの小さな空間といった感じで、
テーブルも一並べあるだけ、外から見ても、とてもコーヒー店には見えません。
3年半前に開いたお店で、以前は薬局だった所をそのまま使っているとのことでした。

は2


は3


スケートボードやバイクのシートを転用したスツールが置いてあります。

は4


外出から帰ってきたマスターは、破れジーンズに赤いポンチョ姿で、長髪、
ヒゲの中の顔がニコニコ笑っています。

こちらでは、コーヒー通の間では知られている中川ワニさんのコーヒーが
出されていました。

コーヒーはサイフォンで淹れます。

コーヒー450円とロールケーキです。

は5


立方体のメニューには、とびきりの深煎で苦いです、とあるので覚悟していましたが、
とてもさわやかな苦さでした。

ロールケーキは、粉を最小限にして卵の味を楽しむようにしたとのことで、
ふわふわとして、あまり甘くありません。

取っ手付きのカップではなくお茶碗なので、お茶とお茶請のようです。
白山通りを眺めながらお茶碗を両手に持っていただいていると、野点の
お茶席気分です。

BGMはギター弾き語りで、「Imagine」が聞こえてきて、ジョン・レノンと分かりました。
夕陽が射して街が紅くなる頃に、またここでコーヒーを味わいながら聴きたいものです。

お店のHPです。


【2009/02/14 08:10】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
東京国立博物館 未来をひらく福澤諭吉展
上野
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上野の東京国立博物館表慶館で開かれている「未来をひらく福澤諭吉展」
に行ってきました。

福6


慶應義塾創立創立150周年を記念しています。
1858は慶應義塾の創立された年、150は創立150周年を表します。

福2


福澤諭吉の人物と業績についての多くの資料が展示されています。
会期は3月8日(日)までで、その後、福岡、大阪でも展示されます。

第1部 あゆみだす身体

『居合刀および拵』
開明主義者の福澤諭吉は刀にはまったく執着が無かったとのことですが、
心身の鍛錬のため居合抜きは晩年まで続けていたそうです。
それも1日1000回というのですから、大変な数です。
展示されている刀の刀身は長く、福澤は身長170cmで、当時としては長身だった
ということなので、これを使えたのでしょう。

第2部 かたりあう人間(じんかん)

『潮田伝五郎・光結婚披露宴招待状案文』
福澤は4男5女に恵まれていますが、これは五女の光の結婚披露宴招待状です。
親の名前でなく、本人たちの名前で書かれています。
これも福澤の開明的な思想をよく表しています。

第3部 ふかめゆく智徳

『「学問のすゝめ」初編(初版)および続編』
冒頭の、「天は人の上に人を造らず」の一節は有名です。

『「ヅーフ・ハルマ」写本』
この展覧会で私が一番見たかった物です。
全10冊の分厚い電話帳の大きさのオランダ語辞典で、アルファベット毎に
分冊されています。
中はすべて手書きで、びっしりとオランダ語が筆記体で書かれ、その横に
短い和訳が添えられています。
横書きのオランダ語に対して和訳は縦書きなので、読む時は不便だったでしょう。
福澤諭吉の自伝、「福翁自伝」によれば、緒方洪庵の適塾ではこれと同じ写本の
置いてある部屋はヅーフ部屋と呼ばれ、福澤をはじめ塾生は、これを頼りに必死に
なって学んだそうです。

勝海舟も若い時に、自分でペンやインクを考案して、ヅーフ・ハルマを写しています。

福澤諭吉、大村益次郎、橋本左内、佐野常民、手塚良庵たちが羽ばたいて行った
元はこの「ヅーフ・ハルマ」かと思うと、感慨深いものがあります。

『福澤諭吉ウエーランド経済書講述図 安田鞍彦筆』
慶應4年5月15日の上野彰義隊の戦いの砲声が聞こえる中で、福澤諭吉が
塾生にウエーランドの経済書を講義している図です。
慶應義塾は一日も休むことは無い、という福澤の信念を表しています。
福澤の塾はこの年の4月に芝新銭座に移り、慶應義塾と命名されています。
この上野戦争での新政府軍の指揮官が、緒方洪庵の適塾での同窓の
大村益次郎でした。

第4部 きりひらく実業

『「帳合之法」初編、二編』
福澤諭吉による簿記会計学の翻訳です。
「福翁自伝」で福澤自身は簿記会計には疎いと述べていますが、会計用語の
借方・貸方は福澤の訳によるものだそうです。

第5部 わかちあう公

『「痩我慢之説」写本(栗本鋤雲書入)』
旧幕臣の勝海舟と榎本武揚が明治維新後に新政府で栄達していることを
非難しています。
幕府が無くなった以上、以前の立場や思想がどうであっても、能力を生かせる場で
活躍することにそれほど問題があるのだろうかとも思います。
しかし、同じ旧幕臣で新政府に誘われても仕えなかった栗本鋤雲が感激して
朱筆で書入れしているということは、勝海舟たちが批判的に見られていた面も
あったのでしょう。
勝海舟が艦長だった咸臨丸に福澤も乗船しているので、その時以来の
個人的感情があるのかもしれません。

第6部 ひろげゆく世界

『「福翁自伝」原稿(人間の慾に際限なし)』
福澤諭吉の生涯や考え方、幕末明治維新の状況を語る資料として、
「福翁自伝」ほど面白いものはありません。
是非、読むことをお奨めします。

第7部 たしかめる共感 - 福澤門下生による美術コレクション

福澤諭吉自身は、美術にはあまり興味が無い、と「福翁自伝」で述べていますが、
実業界で活躍した門下生の集めた美術品を展示しています。

『佐竹本三十六歌仙絵巻断簡 「源順」(2月17日~3月8日)  
                   「住吉明神」(1月27日~2月10日)』
大名の佐竹家に伝わった鎌倉時代の三十六歌仙絵巻で、重要文化財に
指定されています。
元は2巻の絵巻だったのを、巻頭部分の「住吉明神」を含め37枚に切断したのは、
三井物産の設立者で茶人としても有名な益田孝(鈍翁)です。
第3部に展示されている慶應義塾入社帳(姓名録)の益田英作のページの
保証人欄に、兄の益田孝の名が見えます。
慶應義塾では今でも、塾生を含め、塾の関係者全体を社中と呼んでいて、
入社とは社中に入ることです。


展覧会の中で一番記憶に残ったのは、「ヅーフ・ハルマ」写本の他では、第3部に
展示されている、「独立自尊迎新世紀」と書かれた掛軸です。
1901年(明治34年)1月1日にこれを書いた福澤は、翌月に亡くなっています。
「福翁自伝」では、ろくに書道を学ばなかったと述べていますが、堂々とした
書き振りです。
若い時から「異端」であることを恐れず、時には暗殺される危険もあった福澤諭吉
としては、20世紀を迎えることができたことには無上の感慨があったでしょう。
明治の「明」を体現した、幸福な人だったと思います。

他にも興味深い資料が数多く展示されていて、幕末明治以降の歴史に興味の
ある人には特にお奨めできる展覧会です。

展覧会のHPです。

表慶館の裏には紅白梅が咲いていました。
展覧会の帰りに見てこられると良いでしょう。

福5


福7


不忍池はまだ少し寒そうです。

福3


【2009/02/11 21:00】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(2) |
日本橋 上島珈琲店COREDO日本橋店
日本橋
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上島珈琲店COREDO日本橋店は、COREDO日本橋の地下1階にあります。

日本橋東急の跡地に建ったCOREDOビルは高さが際立ちます。

コ1


コ2


お店は地下鉄日本橋駅に直結していて、何かと便利です。

コ3


コ7


お店は40席ほどで、入り口側が禁煙席、奥が喫煙席です。
天井は高く、配管をそのまま見せています。

BGMはジャズで、壁にはジャズのレコードジャケットが飾ってあります。

コ6


コーヒーSサイズ340円です。

コ5


和風味の店内の、柳宗理デザインのソファー席に座って、カウンターでコーヒーを
グラインドする音を聞いていると、なごんだ気分になります。

季節限定で、完熟金柑ミルクコーヒーという、変わったメニューがありました。
どんな味がするのでしょうか。


【2009/02/11 06:32】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
国立新美術館 加山又造展 2
乃木坂
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「加山又造展 1」の続きです。

加2


第4章 花鳥画の世界―「いのち」のかたち

装飾的な画風は第2章と同じです。

「音」1972年
加山又造のよく描く、小品の猫シリーズです。
親子のシャム猫が白萩を見つめています。
萩を揺らせる風の音を聞いたのでしょうか。
白くふわふわとした体に黒い足と尻尾、青い瞳、白い髭、金色の爪の
宝石のような姿です。
真横から見た猫の姿は、古代エジプト絵画のような様式美があります。

「牡丹」屏風1979年
背の高い、大きな金地の屏風の画面左に数輪の黒牡丹、右に彩色の
牡丹を配しています。
水墨の黒牡丹は村上華岳の描く牡丹を思わせ、覆いかぶさってくるような
迫力があります。

「夜桜」屏風1982年
左側に満開の夜桜、右側にかがり火が高く炎を上げて燃えています。
籠で吊るしたかがり火からこぼれ、地面を照らしている火の粉が幻想的です。
加山又造の魅力の一つの、妖しさが好く表れています。

「月と秋草」屏風1996年
月と薄、女郎花、竜胆などの秋草を装飾的に描いています。
琳派の酒井抱一と同じ、洗練された作品です。

第5章 水墨画―色彩を超えた「色」

「水墨山水図」屏風1978年
松の描き方は長谷川等伯の「松林図」に倣っています。
加山又造の水墨画は描き込みが緻密なため、全体に画面が濃い印象があります。

「月光波濤」屏風1979年
海岸の岩にぶつかり、吹き上がる波頭は写真のようにリアルな一方で、
大きな満月に掛かる雲は琳派のたらし込みの技法が使われています。
写実と装飾を一つの画面に納め、墨一色による圧倒的な迫力を見せています。

第6章 生活の中の「美」

着物の手描き模様、陶磁器の絵付け、洋食器の柄のデザイン、雑誌の表紙絵、
宝飾品のデザインと、加山又造の多彩な活動を観ることができます。

工芸は俵屋宗達や尾形光琳・乾山以来の琳派の伝統ですが、加山又造の
装飾性も工芸と好くなじむことが分かります。


一見すると他の作者かと思うような4つの異なる画風、他の画家の作品や画風を
積極的に摂り入れる貪欲さ、その中で一貫した装飾性・様式性、加山又造の
スケールの大きさが実感できる展覧会です。


【2009/02/10 06:01】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
日本橋三越 平山郁夫と大いなるシルクロード展
三越前
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日本橋三越新館7階ギャラリーで2月22日(日)まで開かれている「平山郁夫と
大いなるシルクロード展」に行ってきました。

三越新館


シルクロードや古都を題材にした最近の作品を展示しています。
会場に入ると、大きな画面のキャラバンの絵が何枚も奥に向かって左右に
並んでいます。
右側に昼、左側に同じ絵柄で夜の情景です。

正面はシルクロードの終点、「古代ローマの遺跡 フォロ・ロマーノ」2008年です。
群青色の空の下にローマの遺跡が広がっています。
背景の中世の建築から、ふと、ジョットブルーを思い出します。

「古城(ジャイサルメール・インド)」2005年赤茶色に広がる砂漠の丘に建つ城です。
ジャイサルメールはパキスタンに近い砂漠の中の城塞都市とのことです。

「平成の洛中洛外 右隻」2003年
京都御所を中心にして、現代と昔の京都を同じ画面に入れ込んでいます。
洛中洛外図の技法に依っていますが、画面の境は緑の森と金箔の雲を使っています。
画面左下に祇園祭の山鉾巡行、左上に金閣が見えます。

「平成の洛中洛外 左隻」2004年
右隻の公家文化の象徴、京都御所に対して、武家文化の二条城を中心にしています。
堀のすぐ左に五重塔、画面右下に清水寺が見えます。

私が初めて展覧会場で観た平山郁夫の作品は「高耀る藤原京の大殿」1969年でした。
深い緑の大和三山に囲まれ、金色に輝く藤原京の情景は躍るような高揚感に
あふれていました。
都市を鳥瞰する図柄はこの「平成の洛中洛外」にもつながっています。

そういえば、三越のリニューアルのポスターは山口晃の洛中洛外図でした。
平山郁夫は建築物が中心ですが、山口晃は賑やかに行きかう人たちを
描き出しています。

「浄土幻想 宇治平等院」2004年
「浄土幻想 日野法界寺」2005年
共に、寺院、阿弥陀仏、天人、蓮華を紺地に金泥で描いています。

紺地に金泥は平安貴族の好んだ意匠のようです。
この写真は国立博物館の平常展に展示されていた、平基親が願主となった
紺紙金字のお経の見返し部分です。

経文


「流水無間断 奥入瀬渓流」1994年
平山郁夫には珍しい、歴史性や人の気配のない自然です。
青みがかった濃い緑の森の中を渓流がほとばしるように流れています。

「八雲立つ 出雲路古代幻想」1998年
国見の情景でしょうか、雲海の出雲平野を丘から眺めています。
宮殿の屋根が雲の間からかすかに臨めます。

いつもながらの平山郁夫の歴史のロマンへの情熱を感じる展覧会でした。


【2009/02/08 19:38】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
国立新美術館 加山又造展 1
乃木坂
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3月2日(月)まで開かれている「加山又造展」を観に、六本木の国立新美術館に
行ってきました。

加山又造の幅の広い製作活動の全体を見渡すことの出来る、とても見応えのある
展覧会でした。

加1


加山又造の画風は、動物、装飾、裸婦、水墨のおよそ4つに分けられます。
出展されている作品の年代では、以下のようになります。

動物 1950~60年代
装飾 1960~90年代
裸婦 1970~80年代
水墨 1970~90年代

展覧会もこの分類を基本に、工芸品の世界を加え、エントランスと第1章から
6章で構成され、約100点が展示されています。

エントランス

大画面の「雪」「月」「花」1978年の3点が迎えます。

「花」は夜桜で、桜の花びらはかがり火の炎を照り返しています。
暗い背景と高く燃え上がる炎の表現は速水御舟を思わせます。

第1章 動物たち、あるいは生きる悲しみ―様式化の試み

加山又造に一貫しているのは、様式性、装飾性ですが、動物を題材にした
初期の作品にも様式性が現れています。
キュビズムを取り入れているということですが、写実を元にして、一旦抽象化して
型を作り、様式化しています。
この頃は作者自身が模索を続けていた時代とのことですが、十分見応えのある
作品群になっています。

「月と犀」1953年
青と緑の画面の中で、月に照らされた一頭の犀が池の水を飲んでいます。
体の描き方はキュビズムの影響でしょうか、モダンで知的な感じです。
犀の持つ荒々しさは消え、静けさに満ちていますが、これを「生きる悲しみ」
というのでしょうか。

「月と駱駝」1957年
一頭の茶色い駱駝が夜の砂漠に丸くなって座っています。
その丸い形を小さくしたような、ゴツゴツした茶色い月が空に浮かんでいます。
地上と宇宙が響き合っているようです。

「冬」1957年
有名な作品ですが、2月11日から展示されます。
冬枯れの木々の下を狼がうろつき、谷間の上の空にカラスが輪を描いて
飛んでいます。
枝にはうなだれた首の一羽のカラスが留まっています。
ブリューゲルの「雪の狩人」を元にしていますが、冬の厳しさをよく表しています。
枝に留まったカラスの姿は極めて異様で、羽の抜けたむき出しの首はがっくりと
うなだれ、目を閉じています。
このカラスは単独でも描かれ、第6章でも展示されています。

第2章 時間と空間を超えて―無限の宇宙を求めて

屏風絵を集めています。
琳派に倣った、装飾性にあふれる作風の始まりです。
京都西陣の図案家の家の生まれということもあってか、装飾性の強い画風を
打ち出しています。

「春秋波濤」1966年
展覧会のポスターになっている作品です。
加山又造特有の銀の線描による海の中に、春の桜、秋の紅葉を描いています。
異なる季節を同じ画面に描くのは日本画でよく見られる手法ですが、それに
倣っています。
様式的な形の山は桜の花で埋め尽くされ、花びらを盛り上げた山のようです。
秋の山も同じように真紅の紅葉に埋まっています。

第3章 線描の裸婦たち―永遠のエロティシズム 

今までの画風とはまったく違って見えますが、装飾性、様式性は共通しています。

「黒い薔薇の裸婦」屏風1976年
4人の裸婦像ですが、きわめてリアルに描かれていながら装飾的な美しさがあります。
それは、ポーズを変えて並んだ同じ人物のリズム感、モノクロに近い画面での
マニキュアや口紅、アイシャドーの赤によるアクセント、そして黒い薔薇模様の
レースの精緻な表現によるのでしょう。
それにしても、繊細な線描の技があってこそ出来る作品です。

続きは次の回に書きます。


【2009/02/08 10:29】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
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Author:chariot
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