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サントリー美術館 「まぼろしの薩摩切子展」
六本木・乃木坂
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六本木のサントリー美術館で開かれている「まぼろしの薩摩切子展」に行ってきました。
期間は5月17日(日)までです。

サントリー美術館は東京ミッドタウンの中にあり、木をあしらった、柔らかな和風の
趣のある美術館です。

東京ミッドタウンの入口です。

サン1 ANY0229


サン5 SANY0250


中は吹抜けになっています。

サン2 SANY0236


サン3 SANY0248


美術館は3階と4階にあります。

サン4 SANY0243


切子(きりこ)とはカットグラスのことで、江戸切子と薩摩切子が有名です。

西洋のカットグラスを手本にして、日本で作られたものですが、江戸切子が
無色透明なのに対し、薩摩切子は無色のガラスに被せた色ガラスをカット
しているのが特徴ということです。

なお、現在の江戸切子は色グラスも使っています。

幕末の一時期に島津藩によって興され、明治には廃れた技術とのことで、
輸出や大名への贈答用に製作されたとのことです。
展覧会では約160点が展示されています。

色は藍色と紅色が中心ですが、無色も少しあります。
61番「紫色被椀」の濃い紫や、71番「緑青色被蓋物」の薄い青緑といった
珍しい色もあります。

97番「紅色被皿」
ポスターにも使われています。
「ぼかし」といわれる、グラデーションの技法により、無色の地と被せた紅色との
境が波型になっています。
薩摩切子特有の技法とのことです。

99番「藍色被船形鉢」
翼を広げたこうもりをあしらった、とてもモダンな形をしていて、現代のデザインと
言っても通りそうです。

103番「藍色被栓付瓶」
背の高い、円錐形の1対の瓶です。
篤姫のお嫁入りの時に島津家から徳川宗家に送られた品で、雛祭りの折には
白酒を入れて飾ったそうです。
さぞや豪華な雛飾りになったことでしょう。

その他、越前松平家、彦根井伊家に伝来した品もあります。
藩の外交の道具として重宝されたのでしょう。
幕末の大老、井伊直弼は島津斉彬の政敵ですが、島津家は大名同士の儀礼は
欠かさなかったようです。

大名道具として愛された薩摩切子には、異国への憧れが込められています。
すっきりした形、澄んだ深い色合い、さまざまの形の精巧なカットの品々を
観ていると、資料も乏しい中でこれだけの物を作り出した、江戸時代の職人の
技量の素晴らしさがよく分かります。

カットグラス、薩摩切子というものの美しさを十分味わうことの出来る展覧会でした。

展覧会のHPです。


【2009/04/29 16:50】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
マーメイドカフェ本郷三丁目メトロピア店
本郷三丁目
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「マーメイドカフェ本郷三丁目メトロピア店」は地下鉄丸の内線本郷三丁目駅の
上にあります。

マ1


マ2


マ3

雨に濡れずにお店に入れるので、とても便利です。

アンデルセングループのセルフ式のベーカリーカフェで、
北欧風のすっきりと明るく、清潔なデザインの店内は全席禁煙です。
1階に売り場と席が少しあり、2階は広いカフェになっていて、とても静かです。
壁面は全面ガラスで、隣は本郷中学校のグラウンドなので、開放感があり、
日射しもよく入ります。

マ4


マ5


ベーカリーカフェは全席禁煙のお店が多いこともあって、子供連れのお客を
よく見かけます。
こちらもそうで、親子で楽しそうにパンをほおばったり、ジュースを飲んだりしています。

BGMは穏やかなボーカルで、ボサノバの曲だったり、ムーン・リバーだったりでした。

モーニングセットのハムチーズトーストとコーヒー480円です。
コーヒーの味はソフトです。

マ6


晴れた日に、このカラリと明るいお店にいると、なんだか気分も晴れやかになってきます。


2013年3月11日追記

残念なことに「マーメイドカフェ本郷三丁目メトロピア店」は3月7日に閉店しました。


【2009/04/28 23:41】 お店 | トラックバック(0) | コメント(1) |
本郷 ボンナ
本郷三丁目・東大前
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喫茶店「ボンナ」は本郷通りの東京大学正門の斜め向かいにあります。

ボ1


この並びには、「喫茶ルオー」や「こころ」があります。

ボ2


ボ3

店内は30席ほどで、ダークブラウンでまとめてあり、床は板張り、
奥に鏡があるので、広く見えます。

年配のマスターによれば、50年ほど前から営業しているそうです。
昔は学生さんなどが沢山来て、夜11時ころまで開いていたのが、
チェーン店に押されたりで、今は7時に閉めているとのことです。
BGMはラジオでした。

ドライカレーとコーヒーのセット850円です。

ボ4


ボ5

両面焼きの半熟玉子とスライスチーズがのっています。
玉子がカレーに溶けて、まったりとした味になります。

窓越しに見える本郷通りと東京大学のクスノキの並木を眺めていると、
今という時を忘れそうになります。

実はこちらのお店は、無線LANが無料で使えるのです。
そのため、最近店内も一部改装して、パソコンを置けるように、入口側に
カウンター席を作ったのだそうです。
文京区には無線LANの使える所がまだ少ないので、これは便利でしょう。
古くからのお店も、時代に合わせるため、色々と努力をしています。

お店のHPです。
息子さんに作ってもらったそうです。

こちらは東京大学赤門横の八重桜です。

ボンナ SANY0145


【2009/04/27 21:30】 お店 | トラックバック(1) | コメント(0) |
神保町 きっさこ
神保町
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喫茶店「きっさこ」は、神保町駅から白山通りを水道橋駅に向かって左の
裏にあります。
場所は千代田区神田神保町2-24 です。

き1


「きっさこ」は「喫茶去」と書いて、「お茶でも飲んでいきなさいよ」という意味です。

古い木造家屋を改造したお店で、こちらには以前、「モーツァルト」、のちに
名前を「茶房李白」とした、有名な喫茶店がありましたが、数年前に経堂に
越していきました。

「きっさこ」は「モーツァルト」や「李白」の頃の雰囲気を残しています。

年季の入った、焦げ茶色の暗い店内は、お香が炊いてあり、板張りの床の一部は
歩くと凹みます。

き2


コーヒーはペーパードリップで淹れます。
ブレンドには深煎、中煎、浅煎があります。
深煎600円も、それ程苦味は強くなく、すっきりした味です。

き3

カップはリチャード・ジノリです。
「李白」では、手作りの赤絵の陶器を使っていたのを思い出しました。

「きっさこ」はジャズを聴かせる店です。
ジャズ喫茶といっても、堅苦しさはなく、気楽に聴いていられます。
この日はビリー・ホリデイでした。
聴いていると、気持がほぐれてきて、いかにも休日の気分になります。

若いマスターに訊いたところ、モダンジャズでも何でも掛けているとのことです。
私はジャズのことはよく知りませんが、このお店の雰囲気の中で聴くジャズは、
とりわけ味わい深いことでしょう。


【2009/04/25 00:06】 お店 | トラックバック(1) | コメント(2) |
古今集 惟喬親王 さくら花
さくら花
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さくら花ちらばちらなむちらずとてふるさと人のきても見なくに

桜の花が散るなら散ってくれ。散らないでいても、
故郷の人は誰も見に来たりはしないのだから。

古今集春歌下74番の歌で、作者は惟喬(これたか)親王です。

惟喬親王は文徳天皇の第一皇子でしたが、藤原氏に圧迫されて皇太子になれず、
やがて出家し、隠棲しています。
また、在原業平との親交でも知られています。
藤原氏の栄えの陰にいる者同士、気が合ったのでしょう。

この歌は親王が隠棲しているときの歌でしょうか。
皇太子でもなくなり、引篭もっている自分のところには誰も訊ねて来やしないと、
イジケています。
さすがに親王だけあって、桜に言寄せるなど、イジケ方も雅びです。

この歌では、「ちらばちらなむちらずとて」の繰り返しが、心の中のわだかまりを
吐き出すようで、印象的です。
このような、感情をそのままぶつける歌は、若い人が詠って初めて映えます。
さびしく散ろうとする花に、若くして未来を絶たれた我が身を重ねた歌は、
惟喬親王の運命を知っている者の共感を誘います。

在原業平は、都を離れた山里に隠棲している親王を訪ねて、歌を詠んでいます。

忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪踏みわけて君を見むとは

「雪踏みわけて」に、業平の驚きと嘆きがよく表れています。
この歌は、古今集に雑歌下970番として載っています。


これたか


【2009/04/23 06:12】 文学 | トラックバック(0) | コメント(0) |
Bunkamura 「国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア 2」
渋谷
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前回の「国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア 1」の続きです。

と1


39番 イワン・クラムスコイ「忘れえぬ女」1883年
展覧会のポスターにもなっている作品です。
毛皮のコートを着た若い女性が馬車の上からこちらを見ています。
その表情は謎めいていますが、何か意思的なものがあります。
背景は薄く描かれ、女性の姿を際立たせています。
レーピンの「秋の花束」でもそうですが、人物の瞼のやや厚いところに、ロシアを感じます。

46番 ワシーリー・ポレーノフ「モスクワの中庭」1877年
窓から眺めた、明るい日の光の中の裏庭とモスクワの町並みが描かれています。
他にも、暗い所から急に日なたに出た時のような、まぶしいほど明るい絵が
何点もありました。
日光の明るさを強調するのはロシア絵画の特徴の一つのようです。

47番 イリヤ・レーピン「レーピン夫人と子供たち「あぜ道にて」」1879年
夫人と小さな子供たちが田舎の道を歩いているという、モネやルノワールにも
同じ題材の絵のある、印象派風の作品です。
モネやルノワールの場合は、手馴れた感じの早描きですが、こちらは正面から
しっかり描いています。
レーピンといえば、「ヴォルガの舟曳き」のような社会派リアリズムだと
思っていましたが、このような柔らかい作品もあるとは知りませんでした。

56番 レーピン「秋の花束」1892年
花束を持って秋の野に立つ娘さんを愛情を込めて描いています。 
1879年の作品に比べると、娘さんも大きくなっています。

54番 イワン・シーシキン「ペテルホフのモルドヴィノワ伯爵夫人の庭で」1891年
木々の真っ直ぐに伸びた森の中に老人が一人、立っています。
観る人は、老人を通じて、森の深い静けさを感じ取ります。

66番 コンスタンチン・コローヴィン「ヤルタのカフェ」1905年
屋外のカフェをあっさりした色調で描いた、印象派風の作品で、しゃれた雰囲気があります。

75番 コローヴィン「ジナイーダ・ペルツェワの肖像」1921年
会場の最後に展示されていて、一番新しい作品です。
粗いタッチと強い色彩による若い女性像で、長い首と白い服が印象的です。
コローヴィンには都会的なセンスがあり、デフォルメされた大胆な描き方は
キース・ヴァン・ドンゲンのようです。
ロシア絵画という枠の要らない画家に思えます。


ロシア絵画というと、社会派リアリズムと思っていましたが、それに留まらない
広がりのあることが分かる、とても興味深い展覧会でした。


【2009/04/20 00:05】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
Bunkamura 「国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア 1」
渋谷
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渋谷のBunkamura、ザ・ミュージアムで6月7日まで開かれている
「国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア」 に行ってきました。

と2


と3


トレチャコフ美術館の所蔵している、19世紀後半から20世紀初めに掛けての
作品75点が展示されています。
ロシアの画家の作品はほとんど観たことが無かったので、楽しみにしていました。

と4


12番 アレクセイ・コズルーヒン「修道院の宿舎にて」1882年
修道院の大きな部屋の中の情景です。
お祈りを捧げる老女、婦人と会話する僧、食事をする子供、修道女に声を掛ける
行商人など、雑多な人々が集まっています。
僧の顔付きが何となく生臭く、ロシアの状況の一面を風刺的に表しています。
この絵にも、他の作品にもサモワールがよく描かれています。

21番 フョードル・ワシーリエフ「雨が降る前」1870-71年
小品で、アヒルを追いながら女の人が二人、田舎の橋を渡っています。
橋のあたりには日が差していますが、空は雲に覆われて暗く、周りの木々は風に
大きく揺れ、今にも雨になりそうです。
写実的ですが、劇的な瞬間を捉えた、ロマンチックな作品です。
ロシアの絵画は、写実的でありながらロマンを求める作品が多いようですが、
ワシーリエフの作品にそれがよく表れています。

29番 イサーク・レヴィタン「静かな修道院」1890年
手前を横にきれいな川が流れ、向こう岸には緑の森が広がって、その中に
ロシア正教の建物の塔が二つ見えます。
川の両岸には白い花が咲き、建物あたりには日が差し、夕方に近いのでしょうか、
点々と浮かぶ雲は薄紅く染まっています。
その雲と塔の映った川には古びた木の橋が掛かって、観る人に渡るよう誘っています。

いかにものどかで澄み切ったロシアの風景ですが、解説板によると、レヴィタンは、
人は何か神的な存在と一体化すれば不安や動揺から免れると考え、そのような世界を
表現しようとしたとのことです。
すると、川を渡った向こうの森や修道院の情景は、彼岸、浄土ではないでしょうか。


展覧会では、広々としたロシアの大地の四季、特に雪景色を描いた作品が多く、
ロシア絵画を観たという満足感があります。

続きは次の回に書きます。


【2009/04/20 00:03】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
宮越屋珈琲 新橋店
新橋
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新橋駅近く、中央通りと昭和通りの交差点に「宮越屋珈琲 新橋店」はあります。

み1


み2


宮越屋珈琲は、札幌を中心にした、北海道では有名な喫茶店チェーンのようです。
東京には3店あり、新橋店は3年前に開店したとのことです。

1階は売店、2階が喫茶店です。

み6


店内は濃い焦げ茶の色調で、床は板張り、席の間に仕切りもあったりで、
空間に変化を持たせています。
平日の午後でしたが、お客は多く、若い店員さんたちも明るく、元気良く働いています。
BGMはジャズです。

マイルドブレンド550円です。

み5

コーヒーはドリップで淹れます。
マイルドといいますが、味は濃く、しっかりとして、美味しいです。
フレンチブレンドもあります。

カップはウエッジウッドでした。

カウンター後ろの棚に色々なカップが並んでいるので、店員さんに訊いてみたら、
メモ帳を出して調べてくれました。
他に、ロイヤル・コペンハーゲン、リチャード・ジノリ、ヘレンド、リンドナーなどが
あるようです。

み3


広いカウンターに座れば、店員さんがコーヒーを入れている様子や、
窓越しに中央通りの交差点を眺めていられます。
雰囲気の良いお店なので、まだお客の少ない朝の時間に来て、
のんびりするのもよさそうです。


【2009/04/18 11:24】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
神保町 茶房きゃんどる
神保町
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「茶房きゃんどる」は神保町三井ビルディングの1階にあります。
住所は千代田区神田神保町1-105です。

大きな新しいビルの中の小さなお店です。

き3


小さな木のテーブルと椅子の20席ほどの店内は、床は板張り、白い壁に黒い腰板の
落着いた雰囲気です。
南に面しているので、晴れた日は明るい日差しが入るでしょう。
小さい店内なので、マスターの目配りが効いています。
BGMはクラシックです。

き4


ブレンドコーヒー600円です。

き6

ペーパードリップで淹れたコーヒーはすっきりとして美味しいです。

椅子の背には1947と彫ってあります。
この椅子が作られた年なのでしょう。
2002と彫られた椅子もあります。

き5


「茶房きゃんどる」は元々、神保町に古くからあった小さな喫茶店でした。
開店は昭和の初めとのことで、蔦の生えた小さな古い建物にある、
かなり高齢のご夫婦のお店でした。
コーヒーを注文すると、染付のカップがキッチンとの間の小窓の奥から出されていました。
とても個性的で、神保町では有名なお店でしたが、やがて閉店してしまいました。

今のお店はその時の調度を引き継いで開店したということで、暖炉や椅子など、
むかしの「きゃんどる」の雰囲気をよく再現しています。
ろうそくの灯火が引き継がれているようで、嬉しいことです。

お店に行く途中に桜が咲いていました。

き1


ユキヤナギです。

き2


【2009/04/16 08:32】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
古今集 春霞
春霞
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春霞たなびく山のさくら花うつろはむとや色かはりゆく

春霞がたなびいている山の桜の花は散ろうとしているのだろうか、色が変わっていく。

古今集春歌下69番の歌で、よみ人しらず(作者不明)の歌です。
春歌下の部はこの歌から始まります。

山の桜を観て、感じたことがふと口から出たといった風で、あっさりとした詠いぶりです。

上の句では淡々と目の前の情景を詠います。
起承転結でいうと、「春霞たなびく山の」が起、「さくら花」が承にあたります。

下の句で作者の思いが入ってきます。
「うつろはむとや」が転で、聴く人に何かな?と思わせます。
最後に「色かはりゆく」で、納得させて、結となります。

歌の姿が優雅で、理知的な詠いぶりが古今調ですが、思いは伝わります。
目には見えない、時というものが流れていく瞬間を風景の中に捉え、「うつろはむとや」に、
その過ぎていく時を惜しむ気持が込められています。


春霞


【2009/04/13 19:32】 文学 | トラックバック(0) | コメント(0) |
東京国立博物館 国宝阿修羅展
上野
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上野の東京国立博物館で6月7日まで開かれている、興福寺創建1300年記念
「国宝 阿修羅展」 に行ってきました。

ちょうど、上野の桜が満開になった週末だったので、展覧会も大変な人出でした。

柳と桜の不忍池です。

あ1


あ2


桜の花越しの弁天堂です。

あ3


上野の山は花見客でいっぱいでした。

あ4


表慶館の前です。

あ7


あ5


展示品について思ったことを書いてみます。

阿弥陀三尊像(伝橘夫人念持仏)
飛鳥時代の小さな銅製の仏像で、三尊は茎を伸ばした蓮の上に乗っているという、
面白い形をしています。

法隆寺が所蔵していますが、なぜ興福寺の展覧会に出品されているかというと、
今回展示されている阿修羅像を始めとした八部衆や十大弟子などは、光明皇后が
母である橘夫人の供養のために造らせたという縁によるもののようです。

華原磐
奈良時代の銅の鋳造品で、四匹の龍に囲まれた銅鼓が獅子の上に乗っている置物です。
その造型は素晴らしく、龍も獅子も力にあふれています。


今回の展示は阿修羅像を始めとした八部衆や十大弟子など、ほとんどの像がガラス
越しでなく、直接観ることができます。
大きな展示室の左右にずらりと立ち並んだ姿は壮観です。

八部衆像
阿修羅像の他の八部衆が展示されています。
仏教の守護神たちですが、鎧を着たり、鳥の顔をしていたりと、姿はさまざまです。

この中でも顔が三つ、腕が六本の阿修羅像はきわめて特異な造型であることが
分かります。

十大弟子像
八部衆と同じく奈良時代に製作された十大弟子像は、等身大よりひと回り小さく、
どれも端正な姿ですが、老人、若者、それぞれの表情が豊かで個性があります。
身を反らせて一声叫んでいる像もあります。

薬王菩薩立像・薬上菩薩立像・四天王像
平家に焼かれた興福寺は鎌倉時代に再建されますが、展示されている菩薩立像と
四天王像はこの時に製作されたものです。
二体の菩薩立像は金箔を施した木像ですが、見上げるばかりの大きさです。

四天王像も等身大よりひと回り大きく、いかにも鎌倉彫刻らしく、力がみなぎっています。
興福寺を氏寺とする藤原氏が、鎌倉時代でもこれほどの像を造る財力があったことを
示しています。
四天王に踏みつけられている邪鬼たちがきちんと下帯を着けていて、
微笑ましく思いました。

阿修羅像
お目当ての阿修羅像は、同じ東京国立博物館で開かれていた薬師寺展の時と同じく、
一体だけで一室に展示され、展示室に入った所は高いテラスになっていて、
そこからは像と同じ高さで観ることができます。

ゆるいスロープを上がっていくと、やがて黒い背景の中で明るいライトを受けて
浮かび上がった姿が目に入ります。
むかし、興福寺の展示室で観て以来、何年ぶりでしょう。

六本の腕は棒のように細く、象徴的で、上や横に伸びていることで、
広い空間を感じさせます。
明るい光の中で観ると、かなり彩色が残っているのが分かります。

何と言っても、阿修羅像の魅力は眉にしわを寄せた、苦悶の表情の仄見える顔です。
少年とも少女とも言える顔は、当時の顔の一つの理想の形だったのでしょう。
仏教の起こったインドの雰囲気とは遠く、仏師はどのような人たちからこの顔を
思い浮かべたのでしょうか。

平成館の前の枝垂桜です。
阿修羅展は平成館で開かれています。

あ6


【2009/04/11 10:36】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
古今集 元良親王 花のごと
花のごと
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花のごとよのつねならばすぐしてし昔は又もかへりきなまし

花が毎年咲くように、世の中が常に変わらないものだったなら、
過ごしてきた昔もまた帰ってくるのに。

古今集春歌下98番の歌で、よみ人しらず(作者不明)の歌です。

花は年ごとに当たり前のように繰り返し咲くのに、自分は年ごとに老いるばかりで、
昔に戻ることはできない、と嘆いています。

花、おそらく桜を見ての想いで、漢詩の「年々歳々花相似 歳々年々人不同」を
踏まえているのでしょう。
漢詩の方は断定的に言い切って、諦めが感じられますが、この歌の詠いぶりは抒情的で、
未練を残しています。
「かへりきなまし」に、言いしれぬ余情があります。

過ぎた昔を懐かしく惜しむ想いがするのは、年齢を重ねないと起きない心の動きでしょう。
この歌を詠んだ人の「昔」とは、どんなだったのだろうと思わせます。

作者は元良親王とも云われているとのことです。
元良親王は陽成天皇の第一皇子で、色好みの評判が高かったそうです。
そうであれば、「昔」もさぞ華やかな日々だったことでしょう。


元良


【2009/04/10 22:22】 文学 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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Author:chariot
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