東京・京橋
「アロマ珈琲」は東京駅八重洲地下街のローズロードの京橋寄りにあります。
レモンロード側からも入れます。
地下街のシンボル、「銀の鈴」です。



木調でまとめた店内は半地下になっていて、窓際の席に座ると、
通路を通る人たちの足元がよく見えて、面白い感じです。
場所柄、お店はすぐにサラリーマンで一杯になります。

朝7時からのモーニングセット500円です。
厚さ3センチほどもあるジャンボトーストに、殻付きゆで卵です。

サイフォンで淹れたコーヒーは美味しく、お替りができます。
店員さんの目も行き届いています。
BGMはロックやフォークです。
ボブ・ディランの「風に吹かれて」が聞こえてきました。
The answer is blowin' in the wind.
今度は聴いたことのある曲だな、と思っていると、「We Are The World」の合唱が
始まりました。
We are the world.
We are the children.
マイケル・ジャクソンたちが中心になって作った、アフリカ飢餓救済キャンペーン
の曲ですが、発売は1985年とのことです。
ボブ・ディランも参加して、ソロを歌っています。
マイケルの高音はきれいだな、と改めて思いながら聴いていました。
数日経って、そのマイケル・ジャクソンが亡くなったというニュースを聞きました。
時とはそういうものでしょうか。
自分が、時という風に吹き晒される思いがします。
chariot
「アロマ珈琲」は東京駅八重洲地下街のローズロードの京橋寄りにあります。
レモンロード側からも入れます。
地下街のシンボル、「銀の鈴」です。



木調でまとめた店内は半地下になっていて、窓際の席に座ると、
通路を通る人たちの足元がよく見えて、面白い感じです。
場所柄、お店はすぐにサラリーマンで一杯になります。

朝7時からのモーニングセット500円です。
厚さ3センチほどもあるジャンボトーストに、殻付きゆで卵です。

サイフォンで淹れたコーヒーは美味しく、お替りができます。
店員さんの目も行き届いています。
BGMはロックやフォークです。
ボブ・ディランの「風に吹かれて」が聞こえてきました。
The answer is blowin' in the wind.
今度は聴いたことのある曲だな、と思っていると、「We Are The World」の合唱が
始まりました。
We are the world.
We are the children.
マイケル・ジャクソンたちが中心になって作った、アフリカ飢餓救済キャンペーン
の曲ですが、発売は1985年とのことです。
ボブ・ディランも参加して、ソロを歌っています。
マイケルの高音はきれいだな、と改めて思いながら聴いていました。
数日経って、そのマイケル・ジャクソンが亡くなったというニュースを聞きました。
時とはそういうものでしょうか。
自分が、時という風に吹き晒される思いがします。
護国寺・江戸川橋
文京区関口にある講談社野間記念館で開かれている「近代日本の花鳥画~
花と鳥の肖像」展に行ってきました。
期間は7月20日までです。
2000年設立の新しい記念館で、講談社の創業者の野間清治による大正から
昭和初期にかけてのコレクションを中心にしています。
ポスターに、向かいの東京カテドラルの鐘楼が映っています。


広い庭の中にあります。


休憩室もあって、庭を見渡せます。


今度の展覧会では、荒木十畝(1872~1944)の作品が多く展示されています。
荒木十畝「梅に烏」1909年
墨絵の屏風絵で,白梅の枝にからすが一羽止まっています。
梅に鴬ではなく、白梅に黒いからすという面白い取り合わせです。
からすというのは孤独を感じさせる鳥で、墨絵に良く合う画材です。
荒木十畝「黄昏」1919年
大きな掛軸で、庭の紫苑の一群れです。
紫苑は、手前は群青色、奥の方は薄緑色で、画面に奥行きがあります。
空には半月がぼんやりと浮かび、紫苑の陰の暗がりの中であたりを覗う
白猫と静かに響き合っています。
荒木十畝「残照」1920年
同じ大きさで、柘榴と山茶花です。
柘榴の実は赤、山茶花は薄赤、おしべは金色で、華やかな中に、
はかなさを感じます。
山茶花の葉は青緑で、暮れかけの薄暗さを表しています。
画面の裏側に金箔を貼り付ける、裏箔という技法で、夕暮れの
あわあわとした光の中の情景を写し出しています。
速水御舟「朱華琉璃鳥」1933年
椿の枝に琉璃が一羽止まっています。
椿の葉は黒く、ほっそりと青い琉璃と、ぼってりと赤い椿を際立たせています。
速水御舟らしい、粘っこい画面作りです。
徳岡神泉「鶉図」1935年
縦長の掛軸で、余白を大きく取り、数本の木賊の中の一羽のうずらを
描いています。
うずらの表情はするどく、画面に緊張感があります。
西村五雲「夏木立」1936年
小品で、枝に止まる一羽のみみずくです。
背景を省略した画面の中で、振り向いてにらんでいます。
西村五雲は、緊張感のある、するどい筆使いが特徴です。
色紙の十二ヶ月図も多く展示されています。
十二ヶ月図というのは、それぞれの月に因んだ植物や鳥の絵を十二枚
描いたものです。
小さな画面を使っての画家の個性や工夫を観ることが出来ます。
堂本印象 1927年
絵具の濃淡で立体感を出しています。
後には抽象画にまで進んだ堂本印象の初期の伝統的な手法による作品です。
福田平八郎 1930年
対象は単純化され、モダンですっきりしています。
上村松篁 1931年
福田平八郎と同じく単純化されています。
木村武山 1932年
琳派のたらし込みの技法がよく使われています。
宇田荻邨 1933年
京都系統の画家らしい、穏やかで、愛らしい画風です。
徳岡神泉 1934年
対象を追求し、細かく描き込んでいます。
展覧会のHPです。
帰りは目白坂を下り、坂の途中にある「関口フランスパン目白坂本店」で
パンを買って帰りました。

chariot
文京区関口にある講談社野間記念館で開かれている「近代日本の花鳥画~
花と鳥の肖像」展に行ってきました。
期間は7月20日までです。
2000年設立の新しい記念館で、講談社の創業者の野間清治による大正から
昭和初期にかけてのコレクションを中心にしています。
ポスターに、向かいの東京カテドラルの鐘楼が映っています。


広い庭の中にあります。


休憩室もあって、庭を見渡せます。


今度の展覧会では、荒木十畝(1872~1944)の作品が多く展示されています。
荒木十畝「梅に烏」1909年
墨絵の屏風絵で,白梅の枝にからすが一羽止まっています。
梅に鴬ではなく、白梅に黒いからすという面白い取り合わせです。
からすというのは孤独を感じさせる鳥で、墨絵に良く合う画材です。
荒木十畝「黄昏」1919年
大きな掛軸で、庭の紫苑の一群れです。
紫苑は、手前は群青色、奥の方は薄緑色で、画面に奥行きがあります。
空には半月がぼんやりと浮かび、紫苑の陰の暗がりの中であたりを覗う
白猫と静かに響き合っています。
荒木十畝「残照」1920年
同じ大きさで、柘榴と山茶花です。
柘榴の実は赤、山茶花は薄赤、おしべは金色で、華やかな中に、
はかなさを感じます。
山茶花の葉は青緑で、暮れかけの薄暗さを表しています。
画面の裏側に金箔を貼り付ける、裏箔という技法で、夕暮れの
あわあわとした光の中の情景を写し出しています。
速水御舟「朱華琉璃鳥」1933年
椿の枝に琉璃が一羽止まっています。
椿の葉は黒く、ほっそりと青い琉璃と、ぼってりと赤い椿を際立たせています。
速水御舟らしい、粘っこい画面作りです。
徳岡神泉「鶉図」1935年
縦長の掛軸で、余白を大きく取り、数本の木賊の中の一羽のうずらを
描いています。
うずらの表情はするどく、画面に緊張感があります。
西村五雲「夏木立」1936年
小品で、枝に止まる一羽のみみずくです。
背景を省略した画面の中で、振り向いてにらんでいます。
西村五雲は、緊張感のある、するどい筆使いが特徴です。
色紙の十二ヶ月図も多く展示されています。
十二ヶ月図というのは、それぞれの月に因んだ植物や鳥の絵を十二枚
描いたものです。
小さな画面を使っての画家の個性や工夫を観ることが出来ます。
堂本印象 1927年
絵具の濃淡で立体感を出しています。
後には抽象画にまで進んだ堂本印象の初期の伝統的な手法による作品です。
福田平八郎 1930年
対象は単純化され、モダンですっきりしています。
上村松篁 1931年
福田平八郎と同じく単純化されています。
木村武山 1932年
琳派のたらし込みの技法がよく使われています。
宇田荻邨 1933年
京都系統の画家らしい、穏やかで、愛らしい画風です。
徳岡神泉 1934年
対象を追求し、細かく描き込んでいます。
展覧会のHPです。
帰りは目白坂を下り、坂の途中にある「関口フランスパン目白坂本店」で
パンを買って帰りました。

日比谷・有楽町
前回の「やまと絵の譜展 1」の続きです。
日比谷の出光美術館は「日本の美・発見Ⅱ やまと絵の譜」展が
開かれています。
期間は6月6日から7月20日までです。
丸の内仲通りです。

第二章 「物語」をうつす―「やまと絵」絵巻の諸相
15番 「絵因果経」奈良時代 重要文化財
巻物の下の部分にお経、上にそれに合わせた絵を添えています。
簡単な絵ですが、風景の描き方がやまと絵の始まりを思わせます。
19番 「福富草子絵巻」 室町時代
ある男が、自在に放屁する芸で財を得た男をうらやんで、貴人の前で真似を
したところ、粗相をしてしまい、散々に打たれて追い出されるという話です。
血が噴き出し、着物は破れて逃げ帰る男を、道行く人も容赦なく笑っています。
愚か者に対する痛烈な嘲りを観て取れます。
個人の才覚に目覚め始めた、室町という時代を表しているのでしょうか。
24番 冷泉為恭「大江千里観月図」 江戸時代
縦長の画面で、高殿に王朝装束の男と女が座り、山の端からは月が
覗いています。
全体は墨絵で描き、人物には明るい彩色を施して、静かさと華やかさを
見せるという、優美な画風です。
新古今集に載っている、大江千里の歌に依っています。
てりもせす曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしく物そなき
この歌は源氏物語でも、朧月夜の君との場面で使われています。
この絵でも分かるように、冷泉為恭は幕末の優れた絵師でしたが、
尊皇攘夷の騒動に巻き込まれ、殺害されています。
第三章 「自然」をうつす―「やまと絵」屏風とその展開
29番 伝土佐光信「四季花木図屏風」 室町時代 重要文化財
2枚の屏風で、右には松、紅梅、紫陽花、甘草が、左には竹、楓、薄、女郎花、
萩が描かれています。
淡い金銀の地色で、穏やかな雰囲気です。
30番 「日月四季花鳥図屏風」 室町時代
同じく2枚の屏風で、右に満開の桜と柳の下に石竹、笹、雉の番いと雛を配し、
金の板の太陽を嵌めています。
左は、松、楓、菊、鹿で、銀の板の三日月を嵌めています。
いろいろ描き込んで、盛り沢山な画面です。
江戸時代初期に現われる琳派の先祖筋に当たるのでしょうが、まだ整理されて
おらず、デザイン化も進んでいない印象がします。
32番 土佐光起「須磨・明石図屏風」 江戸時代
土佐光起は江戸初期の人で、大和絵の土佐派を代表する絵師です。
須磨・明石は源氏物語の舞台として有名ですが、この屏風では、あっさりとした
色彩で、広々とした空間の中に、松林や村人や製塩の様子などが小さく
描かれています。
自然の大きさと、人の営みの小ささを印象付けています。
33番 狩野探幽「源氏物語 賢木・澪標図屏風」 江戸時代
狩野探幽も江戸初期の絵師で、大和絵の土佐派に対し、漢画系統の狩野派の
中心です。
これも源氏物語を主題にしていますが、題材が大和絵の得意分野なだけに、
狩野派でなく、大和絵の手法で、優美な情景を描き出しています。
他の流派の技法も良く学んでいたことが分かります。
法印探幽行年六十八歳筆との署名が入っています。
展覧会のHPです。
chariot
前回の「やまと絵の譜展 1」の続きです。
日比谷の出光美術館は「日本の美・発見Ⅱ やまと絵の譜」展が
開かれています。
期間は6月6日から7月20日までです。
丸の内仲通りです。

第二章 「物語」をうつす―「やまと絵」絵巻の諸相
15番 「絵因果経」奈良時代 重要文化財
巻物の下の部分にお経、上にそれに合わせた絵を添えています。
簡単な絵ですが、風景の描き方がやまと絵の始まりを思わせます。
19番 「福富草子絵巻」 室町時代
ある男が、自在に放屁する芸で財を得た男をうらやんで、貴人の前で真似を
したところ、粗相をしてしまい、散々に打たれて追い出されるという話です。
血が噴き出し、着物は破れて逃げ帰る男を、道行く人も容赦なく笑っています。
愚か者に対する痛烈な嘲りを観て取れます。
個人の才覚に目覚め始めた、室町という時代を表しているのでしょうか。
24番 冷泉為恭「大江千里観月図」 江戸時代
縦長の画面で、高殿に王朝装束の男と女が座り、山の端からは月が
覗いています。
全体は墨絵で描き、人物には明るい彩色を施して、静かさと華やかさを
見せるという、優美な画風です。
新古今集に載っている、大江千里の歌に依っています。
てりもせす曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしく物そなき
この歌は源氏物語でも、朧月夜の君との場面で使われています。
この絵でも分かるように、冷泉為恭は幕末の優れた絵師でしたが、
尊皇攘夷の騒動に巻き込まれ、殺害されています。
第三章 「自然」をうつす―「やまと絵」屏風とその展開
29番 伝土佐光信「四季花木図屏風」 室町時代 重要文化財
2枚の屏風で、右には松、紅梅、紫陽花、甘草が、左には竹、楓、薄、女郎花、
萩が描かれています。
淡い金銀の地色で、穏やかな雰囲気です。
30番 「日月四季花鳥図屏風」 室町時代
同じく2枚の屏風で、右に満開の桜と柳の下に石竹、笹、雉の番いと雛を配し、
金の板の太陽を嵌めています。
左は、松、楓、菊、鹿で、銀の板の三日月を嵌めています。
いろいろ描き込んで、盛り沢山な画面です。
江戸時代初期に現われる琳派の先祖筋に当たるのでしょうが、まだ整理されて
おらず、デザイン化も進んでいない印象がします。
32番 土佐光起「須磨・明石図屏風」 江戸時代
土佐光起は江戸初期の人で、大和絵の土佐派を代表する絵師です。
須磨・明石は源氏物語の舞台として有名ですが、この屏風では、あっさりとした
色彩で、広々とした空間の中に、松林や村人や製塩の様子などが小さく
描かれています。
自然の大きさと、人の営みの小ささを印象付けています。
33番 狩野探幽「源氏物語 賢木・澪標図屏風」 江戸時代
狩野探幽も江戸初期の絵師で、大和絵の土佐派に対し、漢画系統の狩野派の
中心です。
これも源氏物語を主題にしていますが、題材が大和絵の得意分野なだけに、
狩野派でなく、大和絵の手法で、優美な情景を描き出しています。
他の流派の技法も良く学んでいたことが分かります。
法印探幽行年六十八歳筆との署名が入っています。
展覧会のHPです。
日比谷・有楽町
日比谷の出光美術館では「日本の美・発見Ⅱ やまと絵の譜」展が
開かれています。
期間は6月6日から7月20日までです。


「やまと絵(大和絵)」は元々、中国の「唐絵」に対する言葉で、日本の風俗、
自然、物語などを繊細な感覚で、穏やかに描いてきました。
第一章 「うつつ」をうつす―「やまと絵」と浮世絵
2番 菱川師宣「立姿美人図」 江戸時代
紅の着物を着た女性の立姿です。
括り染めの模様で、扇や鞠をあしらっています。
帯には墨で御所車が描かれ、足元の秋草と合わせると、源氏物語賢木の巻で、
光源氏が六条御息所に会いに秋の野宮を訪ねる場面を想像させる趣向に
なっています。
菱川師宣は浮世絵の祖といわれていますが、伝統的やまと絵の世界を
踏まえています。
6番 英一蝶「四季日待図巻」 元禄11年~宝永6年 重要文化財
今度の展覧会で一番観たかった絵です。
「日待」は、日の出を拝むため、集まって夜を明かす行事とのことです。
酒を飲んだり、碁を打ったり、瓢箪を的に弓を射たりと、人々が賑やかに
楽しんでいます。
修験者がお勤めをしている後ろで団扇であおいでいる小僧さんは居眠りを
しています。
お座敷で琴や三味線に合わせ、笠を掲げて踊る女性の姿はいかにも軽やかで、
その場の盛上がりが伝わります。
英一蝶は幇間、いわゆる太鼓持ちとしても抜き出た芸の持ち主だったという
ことですが、徳川綱吉の禁令に触れて、三宅島に長い間島流しにされています。
この絵は三宅島時代の物ということですが、着物の柄まで細かく描かれ、
目の前の光景を写したように活き活きとしています。
英一蝶の画力と、歓楽の巷への思いを見せてくれる絵です。
7番 英一蝶「凧揚げ図」
縦に細長い画面を使って松を描き、途中に、糸の切れた奴凧を配しています。
舞い上がった奴凧は下をにらみつけているようで、可笑しみがあります。
元禄の頃には今と同じ奴凧のあったことが分かります。
8番 英一蝶「桜花紅葉図」
二幅あり、左は短冊を結んだ紅葉にせきれい、右は短冊を結んだ桜に燕です。
燕は短冊にぶつかって驚いているところです。
英一蝶の絵は都会的で軽妙洒脱、観る者を楽しませてくれます。
無粋な徳川綱吉とはまるで合わないでしょう。
10番 岩佐又兵衛「野々宮図」 江戸時代
2番と同じく、光源氏が六条御息所を訪ねる場面で、鳥居の下で光源氏と
童子が佇んでいます。
墨絵で描かれた二人は、岩佐又兵衛の特徴の下膨れの顔で、ずんと
突っ立っていて、いわゆる大和絵の穏やかさとは異なる印象です。
岩佐又兵衛は戦国時代の武将、荒木村重の遺児で、村重が信長に
謀反を起こし、一族が亡ぼされた中でただ独り生き残ったということです。
戦国の荒波をくぐり抜けた経歴のせいか、岩佐又兵衛の絵にはどこか
居直ったような、ふてぶてしさがあります。
11番 岩佐又兵衛「在原業平図」
若い在原業平の立ち姿です。
弓矢を携えているので、武官であった在原業平と分かります。
和歌が添えられています。
大方は月をもめてしこれそこのつもれは人の老となるもの
若者の姿に老いを詠った歌を合わせて、時の移ろいを示しています。
12番 「江戸名所図屏風」 江戸時代
画面右端に上野寛永寺と不忍池、左端に芝増上寺を配し、間に江戸の町の
繁盛を描いています。
祭礼、能、曲芸、くぐつ、喧嘩、風呂、職人、商人など、登場人物は2000人
あまりとのことで、端から端まで観ていて飽きません。
火災で失われた江戸城の天守閣も見えるので、初期の江戸の風景です。
隅田川などを使った水運が盛んなことも分かります。
14番 「扇面法華経冊子断簡」平安時代 重要文化財
扇面に書かれた法華経の下に、女性と童子が見えます。
絵と字が重なって、優美な形になっています。
続きは次の回に書きます。
chariot
日比谷の出光美術館では「日本の美・発見Ⅱ やまと絵の譜」展が
開かれています。
期間は6月6日から7月20日までです。


「やまと絵(大和絵)」は元々、中国の「唐絵」に対する言葉で、日本の風俗、
自然、物語などを繊細な感覚で、穏やかに描いてきました。
第一章 「うつつ」をうつす―「やまと絵」と浮世絵
2番 菱川師宣「立姿美人図」 江戸時代
紅の着物を着た女性の立姿です。
括り染めの模様で、扇や鞠をあしらっています。
帯には墨で御所車が描かれ、足元の秋草と合わせると、源氏物語賢木の巻で、
光源氏が六条御息所に会いに秋の野宮を訪ねる場面を想像させる趣向に
なっています。
菱川師宣は浮世絵の祖といわれていますが、伝統的やまと絵の世界を
踏まえています。
6番 英一蝶「四季日待図巻」 元禄11年~宝永6年 重要文化財
今度の展覧会で一番観たかった絵です。
「日待」は、日の出を拝むため、集まって夜を明かす行事とのことです。
酒を飲んだり、碁を打ったり、瓢箪を的に弓を射たりと、人々が賑やかに
楽しんでいます。
修験者がお勤めをしている後ろで団扇であおいでいる小僧さんは居眠りを
しています。
お座敷で琴や三味線に合わせ、笠を掲げて踊る女性の姿はいかにも軽やかで、
その場の盛上がりが伝わります。
英一蝶は幇間、いわゆる太鼓持ちとしても抜き出た芸の持ち主だったという
ことですが、徳川綱吉の禁令に触れて、三宅島に長い間島流しにされています。
この絵は三宅島時代の物ということですが、着物の柄まで細かく描かれ、
目の前の光景を写したように活き活きとしています。
英一蝶の画力と、歓楽の巷への思いを見せてくれる絵です。
7番 英一蝶「凧揚げ図」
縦に細長い画面を使って松を描き、途中に、糸の切れた奴凧を配しています。
舞い上がった奴凧は下をにらみつけているようで、可笑しみがあります。
元禄の頃には今と同じ奴凧のあったことが分かります。
8番 英一蝶「桜花紅葉図」
二幅あり、左は短冊を結んだ紅葉にせきれい、右は短冊を結んだ桜に燕です。
燕は短冊にぶつかって驚いているところです。
英一蝶の絵は都会的で軽妙洒脱、観る者を楽しませてくれます。
無粋な徳川綱吉とはまるで合わないでしょう。
10番 岩佐又兵衛「野々宮図」 江戸時代
2番と同じく、光源氏が六条御息所を訪ねる場面で、鳥居の下で光源氏と
童子が佇んでいます。
墨絵で描かれた二人は、岩佐又兵衛の特徴の下膨れの顔で、ずんと
突っ立っていて、いわゆる大和絵の穏やかさとは異なる印象です。
岩佐又兵衛は戦国時代の武将、荒木村重の遺児で、村重が信長に
謀反を起こし、一族が亡ぼされた中でただ独り生き残ったということです。
戦国の荒波をくぐり抜けた経歴のせいか、岩佐又兵衛の絵にはどこか
居直ったような、ふてぶてしさがあります。
11番 岩佐又兵衛「在原業平図」
若い在原業平の立ち姿です。
弓矢を携えているので、武官であった在原業平と分かります。
和歌が添えられています。
大方は月をもめてしこれそこのつもれは人の老となるもの
若者の姿に老いを詠った歌を合わせて、時の移ろいを示しています。
12番 「江戸名所図屏風」 江戸時代
画面右端に上野寛永寺と不忍池、左端に芝増上寺を配し、間に江戸の町の
繁盛を描いています。
祭礼、能、曲芸、くぐつ、喧嘩、風呂、職人、商人など、登場人物は2000人
あまりとのことで、端から端まで観ていて飽きません。
火災で失われた江戸城の天守閣も見えるので、初期の江戸の風景です。
隅田川などを使った水運が盛んなことも分かります。
14番 「扇面法華経冊子断簡」平安時代 重要文化財
扇面に書かれた法華経の下に、女性と童子が見えます。
絵と字が重なって、優美な形になっています。
続きは次の回に書きます。
京橋
ペンステーションカフェは京橋のパイロットコーポレーションビルの1階にあります。
場所は中央区京橋2-6-21で、明治屋の斜め向いです。

天井の高い、広い店内は全席禁煙で、2方向がガラス張りなので明るく、
すっきりしています。
外側にはテラス席もあります。

内装、家具は茶色系統でまとめてあり、椅子も座りやすく、落着きます。

BGMは静かなピアノのポップスでした。
注文する時はセルフ方式です。
モーニングのコーヒーとホットドッグのセット450円です。

コーヒーも美味しく、量もあるので、アツアツのホットドッグを頬張りながら、
たっぷり飲めます。
他にクロワッサンのセットもあります。
オフィス街の店らしく、ビジネスマンが次々と入ってきて、席に着いたり、
テイクアウトして行き、朝の快い緊張感があります。
2階は筆記具のミュージアムになっています。
私も最近は万年筆を使わなくなりました。
このお店のことをメモするのもボールペンです。
また何時か、万年筆のかすかなインクの匂いを楽しみながら、さらさらと何か
書いたりして、ちょっと豊かな気分になってみたいものです。
ミュージアムとカフェのHPです。
HPでは朝8時からとなっていますが、7時30分から開いています。
chariot
ペンステーションカフェは京橋のパイロットコーポレーションビルの1階にあります。
場所は中央区京橋2-6-21で、明治屋の斜め向いです。

天井の高い、広い店内は全席禁煙で、2方向がガラス張りなので明るく、
すっきりしています。
外側にはテラス席もあります。

内装、家具は茶色系統でまとめてあり、椅子も座りやすく、落着きます。

BGMは静かなピアノのポップスでした。
注文する時はセルフ方式です。
モーニングのコーヒーとホットドッグのセット450円です。

コーヒーも美味しく、量もあるので、アツアツのホットドッグを頬張りながら、
たっぷり飲めます。
他にクロワッサンのセットもあります。
オフィス街の店らしく、ビジネスマンが次々と入ってきて、席に着いたり、
テイクアウトして行き、朝の快い緊張感があります。
2階は筆記具のミュージアムになっています。
私も最近は万年筆を使わなくなりました。
このお店のことをメモするのもボールペンです。
また何時か、万年筆のかすかなインクの匂いを楽しみながら、さらさらと何か
書いたりして、ちょっと豊かな気分になってみたいものです。
ミュージアムとカフェのHPです。
HPでは朝8時からとなっていますが、7時30分から開いています。
三鷹
三鷹駅南口の三鷹市美術ギャラリーでは6月28日(日)まで「ラウル・デュフィ展」
が開かれています。
期間は6月28日(日)までです。
三鷹駅南口です。

南口のターミナルです。
左側に中央線が見えます。

美術館はコラルビルの5階にあります。


明るく透明な色彩と、伸び伸びとした線描が特徴のラウル・デュフィ(1877-
1953)の、初期から晩年に掛けての作品、約70点が展示されています。
5番 「自画像」油彩 1904年
印象派風の描き方による若い自画像で、真面目ですが、まだ自信の
なさそうな顔をしています。
デュフィも最初から「デュフィ」ではなかったようです。
6番 「白い帆」油彩 1906年
デュフィの好きな船がテーマですが、フォーヴィズムの影響で、色遣いに
荒々しさがあります。
10番 「フィレンツェの眺め」水彩 1920年
ついにデュフィらしく、自由な線描による絵になってきます。
水彩で伸び伸びと、川沿いの町と森の木々を描いています。
14番 「マルセイユ港のアンフィトリテ(海の女神)」水彩 1925-1930年頃
完全にデュフィの世界になっています。
青い入り江、上る朝日、帆船、蒸気船、地引網、浜辺を散歩する人、建物、
そして中心に海の女神が座っています。
南仏の風景を描いていたデュフィは、地中海世界に親しみを感じるのか、
ギリシャ神話の神々をよく描いています。
線は物の輪郭線としてではなく、自分の命を持って、自由に走っています。
19番 「腰掛の裸婦」油彩 1933年
しっかりしたデッサンで描かれた大きな絵で、裸婦がこちらを向いて軽く
腰掛けています。
右利きのデュフィはわざと左手で描くことで、いわゆる上手い絵を描くことを
避けたということですが、それだけ高い技量があったのでしょう。
22番 「エプソム競馬場の芝生」水彩 1933年頃
26番の「競馬場」まで、競馬や馬のシリーズです。
明るい、浮き浮きするような緑色の中で、馬が自由に駆け回っています。
馬という、動きのある物を巧みに活き活きと捉えています。
27番、28番 「ドーヴィルのレガッタ」油彩 1934年
同じ題名で2枚、ヨットレースを描いています。
青い海に三角の白い帆が並び、リズムのある絵になっています。
岸壁の建築も活き活きとして見えます。
42番 「大オーケストラ」油彩 1946年頃
劇場でオーケストラが演奏しているところです。
客席の手摺、ランプ、バイオリン、チェロは赤色で、華やかな雰囲気を
盛り上げています。
湧き上がる音楽が見えるような気がします。
48番 「五重奏」油彩 1948年頃
今度は五重奏ですが、左側の4人は室内で演奏しているようなのに、
右端の1人だけは舞台で聴衆の前でバイオリンを演奏しているように見える、
不思議な作品です。
デュフィ自身は上流階級の出身ではありませんが、上流階級の好む競馬、
ヨットレース、音楽をよく描いています。
65-74番 「電気の精(10枚組)」リトグラフ 1953年
縦1m、横6mになる大きな作品です。
1937年のパリ万国博の電気館に描いた巨大な壁画の縮小版です。
真中に巨大な発電機、左右に農業や工業、上にはギリシャの神々、
下には古代のアルキメデスから近代のベルまでの科学者たちがびっしりと
描かれています。
それでも、あっさりとした線描と色彩なので、しつこさは無く、何が描いて
あるのだろうと画面を探す楽しさがあります。
デュフィの自由な線描と、特に水彩画のさらりとした色彩には、日本画に
近いものがあり、親しみやすさを感じます。
少年時代は貧しかったり、晩年は関節炎に苦しんだり、第二次大戦中は
フランスがドイツに占領されたりと、決してデュフィの人生は平坦では
なかった筈ですが、それを表に出すことは無く、世界を明るく、肯定的に
描き続けています。
展覧会のHPと出品リストです。

chariot
三鷹駅南口の三鷹市美術ギャラリーでは6月28日(日)まで「ラウル・デュフィ展」
が開かれています。
期間は6月28日(日)までです。
三鷹駅南口です。

南口のターミナルです。
左側に中央線が見えます。

美術館はコラルビルの5階にあります。


明るく透明な色彩と、伸び伸びとした線描が特徴のラウル・デュフィ(1877-
1953)の、初期から晩年に掛けての作品、約70点が展示されています。
5番 「自画像」油彩 1904年
印象派風の描き方による若い自画像で、真面目ですが、まだ自信の
なさそうな顔をしています。
デュフィも最初から「デュフィ」ではなかったようです。
6番 「白い帆」油彩 1906年
デュフィの好きな船がテーマですが、フォーヴィズムの影響で、色遣いに
荒々しさがあります。
10番 「フィレンツェの眺め」水彩 1920年
ついにデュフィらしく、自由な線描による絵になってきます。
水彩で伸び伸びと、川沿いの町と森の木々を描いています。
14番 「マルセイユ港のアンフィトリテ(海の女神)」水彩 1925-1930年頃
完全にデュフィの世界になっています。
青い入り江、上る朝日、帆船、蒸気船、地引網、浜辺を散歩する人、建物、
そして中心に海の女神が座っています。
南仏の風景を描いていたデュフィは、地中海世界に親しみを感じるのか、
ギリシャ神話の神々をよく描いています。
線は物の輪郭線としてではなく、自分の命を持って、自由に走っています。
19番 「腰掛の裸婦」油彩 1933年
しっかりしたデッサンで描かれた大きな絵で、裸婦がこちらを向いて軽く
腰掛けています。
右利きのデュフィはわざと左手で描くことで、いわゆる上手い絵を描くことを
避けたということですが、それだけ高い技量があったのでしょう。
22番 「エプソム競馬場の芝生」水彩 1933年頃
26番の「競馬場」まで、競馬や馬のシリーズです。
明るい、浮き浮きするような緑色の中で、馬が自由に駆け回っています。
馬という、動きのある物を巧みに活き活きと捉えています。
27番、28番 「ドーヴィルのレガッタ」油彩 1934年
同じ題名で2枚、ヨットレースを描いています。
青い海に三角の白い帆が並び、リズムのある絵になっています。
岸壁の建築も活き活きとして見えます。
42番 「大オーケストラ」油彩 1946年頃
劇場でオーケストラが演奏しているところです。
客席の手摺、ランプ、バイオリン、チェロは赤色で、華やかな雰囲気を
盛り上げています。
湧き上がる音楽が見えるような気がします。
48番 「五重奏」油彩 1948年頃
今度は五重奏ですが、左側の4人は室内で演奏しているようなのに、
右端の1人だけは舞台で聴衆の前でバイオリンを演奏しているように見える、
不思議な作品です。
デュフィ自身は上流階級の出身ではありませんが、上流階級の好む競馬、
ヨットレース、音楽をよく描いています。
65-74番 「電気の精(10枚組)」リトグラフ 1953年
縦1m、横6mになる大きな作品です。
1937年のパリ万国博の電気館に描いた巨大な壁画の縮小版です。
真中に巨大な発電機、左右に農業や工業、上にはギリシャの神々、
下には古代のアルキメデスから近代のベルまでの科学者たちがびっしりと
描かれています。
それでも、あっさりとした線描と色彩なので、しつこさは無く、何が描いて
あるのだろうと画面を探す楽しさがあります。
デュフィの自由な線描と、特に水彩画のさらりとした色彩には、日本画に
近いものがあり、親しみやすさを感じます。
少年時代は貧しかったり、晩年は関節炎に苦しんだり、第二次大戦中は
フランスがドイツに占領されたりと、決してデュフィの人生は平坦では
なかった筈ですが、それを表に出すことは無く、世界を明るく、肯定的に
描き続けています。
展覧会のHPと出品リストです。

東京・京橋・日本橋
「Tearoom Georgette (ジョルジェット)」は京橋のブリヂストン美術館の
1階にあります。
場所は東京都中央区京橋1-10-1です。

美術館に入館しなくても、お店に入ることが出来ます。
「ジョルジェット」の名前の由来は、この美術館所蔵のルノワール作、
「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」によるものだそうです。

白が基調の、すっきりと上品な店内です。

壁にはポンペイの壁画のフレスコ画による模写が飾ってあります。
祭儀の場面でしょうか、右側の女性は竪琴を奏でています。

模写をした長谷川路可(るか)はフレスコ画を学んだ画家で、美術館の創設者、
石橋正二郎の依頼で、ヴァチカン美術館にあったポンペイの壁画の模写を
行なったということです。
お店の方がていねいに解説してくれました。
BGMは静かなジャズです。
コーヒーは600円です。
ケーキセットは900円で、洋梨のタルト、チョコレートミルフィーユ、
紅茶のババロア、ホットケーキがあります。

ホットケーキは小ぶりな1枚ですが、しっかりと弾力があり、とても美味しいです。
コーヒーも美味しく、たっぷり2杯以上あるので、これで900円というのはお得です。
他にスコーンセットやサンドイッチもあります。
会計は席で済ませます。
お店の人たちの気配りも行き届いていて、美術館にふさわしい、優雅なお店です。
chariot
「Tearoom Georgette (ジョルジェット)」は京橋のブリヂストン美術館の
1階にあります。
場所は東京都中央区京橋1-10-1です。

美術館に入館しなくても、お店に入ることが出来ます。
「ジョルジェット」の名前の由来は、この美術館所蔵のルノワール作、
「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」によるものだそうです。

白が基調の、すっきりと上品な店内です。

壁にはポンペイの壁画のフレスコ画による模写が飾ってあります。
祭儀の場面でしょうか、右側の女性は竪琴を奏でています。

模写をした長谷川路可(るか)はフレスコ画を学んだ画家で、美術館の創設者、
石橋正二郎の依頼で、ヴァチカン美術館にあったポンペイの壁画の模写を
行なったということです。
お店の方がていねいに解説してくれました。
BGMは静かなジャズです。
コーヒーは600円です。
ケーキセットは900円で、洋梨のタルト、チョコレートミルフィーユ、
紅茶のババロア、ホットケーキがあります。

ホットケーキは小ぶりな1枚ですが、しっかりと弾力があり、とても美味しいです。
コーヒーも美味しく、たっぷり2杯以上あるので、これで900円というのはお得です。
他にスコーンセットやサンドイッチもあります。
会計は席で済ませます。
お店の人たちの気配りも行き届いていて、美術館にふさわしい、優雅なお店です。
東京・京橋・日本橋
京橋のブリヂストン美術館で開かれている、「マティスの時代-フランスの
野性と洗練」展に行ってきました。
期間は7月5日(日)までです。


小規模な企画展ですが、ていねいなパンフレットが用意されています。
また、展示室の壁のあちこちに、マティスの言葉が書いてあります。
10番 ギュスターヴ・モロー 「化粧」1885-90年頃
オリエント風の女性の立ち姿を描いた、水彩の小品です。
青や赤を散りばめた、妖艶で幻想的な作品です。
モローは美術学校でのマティスやルオー、マルケの先生ですが、生徒の個性を
尊重したそうです。
自分とはまるで作風の違うマティスを育てたのですから、師としても優れて
いたのでしょう。
7番 アンリ・マティス 「画室の裸婦」1899年
初期の作品で、新印象主義の点描のような描き方ですが、赤や緑の色彩が強烈で、
後に始めたフォーヴィズムを予感させます。
12番 ポール・シニャック 「コンカルノー港」1925年
赤、白、青の点描による、朝日に輝く海とヨットの情景です。
船のマストには三色旗も翻っています。
理知的、分析的な描き方で、初めはマティスは新印象派の点描を学んだものの、
あまりに理知的な手法に飽き足らず、やがて、感情を重視したフォーヴィズムを
興したとのことです。
しかし、マティス自身も理知的な画家に思えますから、不思議なものです。
9番 アンリ・マティス 「コリウール」 1905年
コリウールは南仏の港町で、マティスはドランとともにこの町に滞在しています。
ここの明るい風景に刺激されたことが、フォーヴィズムを生むきっかけになったと
いうことです。
確かに、絵の中の塔と建物はコリウールにあるようです。
新印象主義と違って、大胆というか、奔放な描き方で、フォーヴ(野獣)という
呼ばれ方もするだろうなと思います。
22番 アルベール・マルケ 「道行く人、ラ・フレット」1946年
マルケはモロー門下のマティスやルオーの同窓ということで、フォーヴィズムに
加わるものの、作風は生涯穏やかだったということです。
この作品も淡々とした色彩の川辺の風景で、ヒョイと足を上げて歩いている人物が
ユーモラスです。
34番 ラウル・デュフィ 「開かれた窓の静物」
デュフィもフォーヴィズムに分類される画家とのことですが、軽やかで洗練された
作風はデュフィ特有のものです。
大きく開いた窓から見える海には筆を走らせて波を描き、花瓶を置いた室内と
風景は一体となっています。
36番 アンリ・マティス 「縞ジャケット」 1914年
赤い花飾りをつけた青い帽子を被り、青い縞模様のジャケットを着た女性で、
モデルはマティスのお嬢さんとのことです。
さらさらとした、巧みな描き方で、フォービズムを離れ、マティスらしい、洗練された
味わいが出てきています。
39番 アンリ・マティス 「横たわる裸婦」 1919年
マティスのよく描いた、華やかさのある室内です。
面白いのは、外に開いた窓を床の上に描いてあることです。
実際にはあり得ないことで、情景の自然さより、画面構成のあり方を追求した結果
でしょうか。
38番 アンリ・マティス 「両腕をあげたオダリスク」 1921年
42番 アンリ・マティス 「オダリスク」 1926年
オダリスクといえば、アングルの作品が有名ですが、こちらは画面構成の要素として
東洋趣味をどう取り入れるかを工夫しているようです。
マティスの理知的な面を表しています。
43番 アンリ・マティス 「石膏のある静物」 1927年
赤と緑をふんだんに使った室内画です。
マティスは華やかな織物を描くことで、室内の雰囲気を厚みのあるものにしています。
51番 アンリ・マティス 「青い胴着の女」 1935年
ポスターになっている作品です。
色遣いも形も単純にまとめてあります。
驚くのは、蜂のように細い女性のウエストです。
実際にはあり得ない形ですが、肩や胸の量感を強調する効果があります。
単純なように見えますが、色々考えて描いていることが分かります。
展覧会のサブタイトルの「フランスの野性と洗練」というのは、フォーヴィズムと
その後のマティスたちのことでした。
確かに、シニャックもマルケもデュフィも、そしてマティス自身も洗練されています。
それは「フランスの洗練」と言える訳です。
chariot
京橋のブリヂストン美術館で開かれている、「マティスの時代-フランスの
野性と洗練」展に行ってきました。
期間は7月5日(日)までです。


小規模な企画展ですが、ていねいなパンフレットが用意されています。
また、展示室の壁のあちこちに、マティスの言葉が書いてあります。
10番 ギュスターヴ・モロー 「化粧」1885-90年頃
オリエント風の女性の立ち姿を描いた、水彩の小品です。
青や赤を散りばめた、妖艶で幻想的な作品です。
モローは美術学校でのマティスやルオー、マルケの先生ですが、生徒の個性を
尊重したそうです。
自分とはまるで作風の違うマティスを育てたのですから、師としても優れて
いたのでしょう。
7番 アンリ・マティス 「画室の裸婦」1899年
初期の作品で、新印象主義の点描のような描き方ですが、赤や緑の色彩が強烈で、
後に始めたフォーヴィズムを予感させます。
12番 ポール・シニャック 「コンカルノー港」1925年
赤、白、青の点描による、朝日に輝く海とヨットの情景です。
船のマストには三色旗も翻っています。
理知的、分析的な描き方で、初めはマティスは新印象派の点描を学んだものの、
あまりに理知的な手法に飽き足らず、やがて、感情を重視したフォーヴィズムを
興したとのことです。
しかし、マティス自身も理知的な画家に思えますから、不思議なものです。
9番 アンリ・マティス 「コリウール」 1905年
コリウールは南仏の港町で、マティスはドランとともにこの町に滞在しています。
ここの明るい風景に刺激されたことが、フォーヴィズムを生むきっかけになったと
いうことです。
確かに、絵の中の塔と建物はコリウールにあるようです。
新印象主義と違って、大胆というか、奔放な描き方で、フォーヴ(野獣)という
呼ばれ方もするだろうなと思います。
22番 アルベール・マルケ 「道行く人、ラ・フレット」1946年
マルケはモロー門下のマティスやルオーの同窓ということで、フォーヴィズムに
加わるものの、作風は生涯穏やかだったということです。
この作品も淡々とした色彩の川辺の風景で、ヒョイと足を上げて歩いている人物が
ユーモラスです。
34番 ラウル・デュフィ 「開かれた窓の静物」
デュフィもフォーヴィズムに分類される画家とのことですが、軽やかで洗練された
作風はデュフィ特有のものです。
大きく開いた窓から見える海には筆を走らせて波を描き、花瓶を置いた室内と
風景は一体となっています。
36番 アンリ・マティス 「縞ジャケット」 1914年
赤い花飾りをつけた青い帽子を被り、青い縞模様のジャケットを着た女性で、
モデルはマティスのお嬢さんとのことです。
さらさらとした、巧みな描き方で、フォービズムを離れ、マティスらしい、洗練された
味わいが出てきています。
39番 アンリ・マティス 「横たわる裸婦」 1919年
マティスのよく描いた、華やかさのある室内です。
面白いのは、外に開いた窓を床の上に描いてあることです。
実際にはあり得ないことで、情景の自然さより、画面構成のあり方を追求した結果
でしょうか。
38番 アンリ・マティス 「両腕をあげたオダリスク」 1921年
42番 アンリ・マティス 「オダリスク」 1926年
オダリスクといえば、アングルの作品が有名ですが、こちらは画面構成の要素として
東洋趣味をどう取り入れるかを工夫しているようです。
マティスの理知的な面を表しています。
43番 アンリ・マティス 「石膏のある静物」 1927年
赤と緑をふんだんに使った室内画です。
マティスは華やかな織物を描くことで、室内の雰囲気を厚みのあるものにしています。
51番 アンリ・マティス 「青い胴着の女」 1935年
ポスターになっている作品です。
色遣いも形も単純にまとめてあります。
驚くのは、蜂のように細い女性のウエストです。
実際にはあり得ない形ですが、肩や胸の量感を強調する効果があります。
単純なように見えますが、色々考えて描いていることが分かります。
展覧会のサブタイトルの「フランスの野性と洗練」というのは、フォーヴィズムと
その後のマティスたちのことでした。
確かに、シニャックもマルケもデュフィも、そしてマティス自身も洗練されています。
それは「フランスの洗練」と言える訳です。
日本橋
日本橋高島屋では、細見美術館開館10周年記念展「日本の美と出会う
-琳派・若冲・数寄の心-」を開催しています。
期間は6月15日(月)までと、短いのでご注意ください。


細見美術館は大阪の実業家のコレクションをもとにした、京都の美術館です。
今回は琳派と伊藤若冲を中心に展示されています。
残念なことに作品リストが備えられていないので、「弐代目 青い日記帳」さんが
代わりに作られたリストを使わせていただきます。
4番 尾形光琳「柳図香包」
小さな金地に、さらりと緑の柳を描いています。
紙包みの裏側なのか、折り目が見えます。
弁当を包んだ竹皮の裏にきれいな絵を描いておいて、食べ終わったら
竹皮を惜しげもなく川に流してしまった、という光琳の逸話を思い出します。
10番 中村芳中「白梅小禽図屏風」
琳派のたらし込みで描いた白梅の古木に、鳥が止まって鳴いています。
梅の花は丸く大まかで、鳥の顔もユーモラスです。
11番 中村芳中「月に萩鹿図」
絵柄は俵屋宗達風の鹿のシルエットですが、やはり顔がユーモラスです。
中村芳中の絵には、俳画風のおっとりとした味わいがあります。
中村芳中は大阪を中心に活躍した絵師で、1819年(文政2年)没とのことです。
15番 神坂雪佳「色紙貼付屏風」
梅に小家、かきつばたに小家などは、のどかな琳派風の絵柄です。
神坂雪佳(1866-1942)は琳派を学び、京都で活躍した画家とのことです。
23番 酒井抱一「桜に小禽図」
縦長の画面を上手く使い、桜の幹から下がる枝、枝に咲く桜、枝の先に止まる
青い小鳥を配しています。
この小鳥は細見美術館のHPの中を飛び回っています。
24番 鈴木其一「糸瓜に朝顔」
画面真中に大きな糸瓜が一本ぶら下がる、大胆で、とぼけた構図です。
左下の二輪の朝顔の青色がさわやかです。
25番 鈴木其一「雪中竹梅小禽図」
竹に積もった雪がなだれ落ち、雀が慌てて飛び立つ瞬間を捉えています。
滝のように落ちる雪の描写が面白いです。
38番 伊藤若冲「糸瓜群虫図」
青い糸瓜が何本も成っている周りに、蝶、トンボ、カマキリ、バッタ、カタツムリ
などが群れています。
いかにも夏らしい生命力を感じます。
40番 伊藤若冲「海老図」
墨絵による二匹の海老です。
若冲といえば鶏の絵で有名ですが、海老も生き生きとしています。
45番 伊藤若冲「花鳥図押絵貼屏風」
墨絵で、花と、鶏、オシドリ、カワセミ、鴉、雀などが描かれています。
濃淡を使い分けた描写には勢いがあり、力にあふれています。
琳派の穏やかな絵を観てきた後で、若冲のコーナーに入ると、その迫力に、
頬を打たれたような気がします。
墨絵だと、若冲特有の、くどいほどの色彩が無い分だけすっきりとして、
筆の描写力を楽しめます。
48番 森狙仙「猿図」
子猿が親猿にノミを取ってもらっているところです。
写実的でありながら、ほのぼのとした情感があります。
森狙仙(1747-1821)は、動物、特に猿の絵を得意とし、大阪を中心に活動した
絵師とのことです。
55番 「四条河原図巻」
江戸時代の京都四条河原の風俗です。
猿回し、熊や鷲や珍鳥の見世物と並んで、能舞台をしつらえて、「道成寺」を
演じています。
ちょうど、蛇となった白拍子が僧たちに祈り伏せられているところです。
能が河原から出てきたという昔を偲ばせます。
他にも、俵屋宗達と本阿弥光悦の色紙、千利休の手紙、葛飾北斎の
肉筆美人画など、とても見所の多い展覧会なので、会期が2週間というのは
勿体無いことです。
お向かいの丸善では創業140年記念「檸檬」万年筆の限定販売をしていました。
梶井基次郎の「檸檬」は京都丸善を舞台にしています。

近所のガクアジサイは雨で濡れていました。


chariot
日本橋高島屋では、細見美術館開館10周年記念展「日本の美と出会う
-琳派・若冲・数寄の心-」を開催しています。
期間は6月15日(月)までと、短いのでご注意ください。


細見美術館は大阪の実業家のコレクションをもとにした、京都の美術館です。
今回は琳派と伊藤若冲を中心に展示されています。
残念なことに作品リストが備えられていないので、「弐代目 青い日記帳」さんが
代わりに作られたリストを使わせていただきます。
4番 尾形光琳「柳図香包」
小さな金地に、さらりと緑の柳を描いています。
紙包みの裏側なのか、折り目が見えます。
弁当を包んだ竹皮の裏にきれいな絵を描いておいて、食べ終わったら
竹皮を惜しげもなく川に流してしまった、という光琳の逸話を思い出します。
10番 中村芳中「白梅小禽図屏風」
琳派のたらし込みで描いた白梅の古木に、鳥が止まって鳴いています。
梅の花は丸く大まかで、鳥の顔もユーモラスです。
11番 中村芳中「月に萩鹿図」
絵柄は俵屋宗達風の鹿のシルエットですが、やはり顔がユーモラスです。
中村芳中の絵には、俳画風のおっとりとした味わいがあります。
中村芳中は大阪を中心に活躍した絵師で、1819年(文政2年)没とのことです。
15番 神坂雪佳「色紙貼付屏風」
梅に小家、かきつばたに小家などは、のどかな琳派風の絵柄です。
神坂雪佳(1866-1942)は琳派を学び、京都で活躍した画家とのことです。
23番 酒井抱一「桜に小禽図」
縦長の画面を上手く使い、桜の幹から下がる枝、枝に咲く桜、枝の先に止まる
青い小鳥を配しています。
この小鳥は細見美術館のHPの中を飛び回っています。
24番 鈴木其一「糸瓜に朝顔」
画面真中に大きな糸瓜が一本ぶら下がる、大胆で、とぼけた構図です。
左下の二輪の朝顔の青色がさわやかです。
25番 鈴木其一「雪中竹梅小禽図」
竹に積もった雪がなだれ落ち、雀が慌てて飛び立つ瞬間を捉えています。
滝のように落ちる雪の描写が面白いです。
38番 伊藤若冲「糸瓜群虫図」
青い糸瓜が何本も成っている周りに、蝶、トンボ、カマキリ、バッタ、カタツムリ
などが群れています。
いかにも夏らしい生命力を感じます。
40番 伊藤若冲「海老図」
墨絵による二匹の海老です。
若冲といえば鶏の絵で有名ですが、海老も生き生きとしています。
45番 伊藤若冲「花鳥図押絵貼屏風」
墨絵で、花と、鶏、オシドリ、カワセミ、鴉、雀などが描かれています。
濃淡を使い分けた描写には勢いがあり、力にあふれています。
琳派の穏やかな絵を観てきた後で、若冲のコーナーに入ると、その迫力に、
頬を打たれたような気がします。
墨絵だと、若冲特有の、くどいほどの色彩が無い分だけすっきりとして、
筆の描写力を楽しめます。
48番 森狙仙「猿図」
子猿が親猿にノミを取ってもらっているところです。
写実的でありながら、ほのぼのとした情感があります。
森狙仙(1747-1821)は、動物、特に猿の絵を得意とし、大阪を中心に活動した
絵師とのことです。
55番 「四条河原図巻」
江戸時代の京都四条河原の風俗です。
猿回し、熊や鷲や珍鳥の見世物と並んで、能舞台をしつらえて、「道成寺」を
演じています。
ちょうど、蛇となった白拍子が僧たちに祈り伏せられているところです。
能が河原から出てきたという昔を偲ばせます。
他にも、俵屋宗達と本阿弥光悦の色紙、千利休の手紙、葛飾北斎の
肉筆美人画など、とても見所の多い展覧会なので、会期が2週間というのは
勿体無いことです。
お向かいの丸善では創業140年記念「檸檬」万年筆の限定販売をしていました。
梶井基次郎の「檸檬」は京都丸善を舞台にしています。

近所のガクアジサイは雨で濡れていました。

