水天宮
人形町三日月座は東京メトロ水天宮駅から人形町駅に向って歩いて
左側のビルの2階にあるカフェです。
場所は中央区日本橋人形町1-15-5 柏原ビルです。
水天宮の社殿が見えます。
手前の建物は水天宮前交番です。

通りにお店のプレートが置いてあります。


狭い階段を上がり、ドアを開けてお店に入ります。

ちょっと昔風につくった店内は映画関係の品物が置いてあります。
映画のポスターが並んでいて、今は深作欣二監督の作品を掛けてあるそうです。
棚にはゴジラも飾ってあります。

お店の方によれば、オーナーは映画の脚本家が本業で、お店の名前は三日月が
好きなので付けたとのことです。
地下は試写室になっていて上映会も開かれるそうです。
BGMはのんびりしたジャズの歌でした。
「ルート66」も聴こえてきました。
ランチプレート900円です。

いろいろ盛り付けてあって、家庭的な味で美味しいです。
冷たい、ジャガイモのスープもあります。
サイフォンで淹れるコーヒーはすっきりとして美味しいです。
角砂糖は可愛いお椀に入っています。

個性的ですが居心地も良く、映画好きでなくても楽しめるお店です。
お店のHPです。
chariot
人形町三日月座は東京メトロ水天宮駅から人形町駅に向って歩いて
左側のビルの2階にあるカフェです。
場所は中央区日本橋人形町1-15-5 柏原ビルです。
水天宮の社殿が見えます。
手前の建物は水天宮前交番です。

通りにお店のプレートが置いてあります。


狭い階段を上がり、ドアを開けてお店に入ります。

ちょっと昔風につくった店内は映画関係の品物が置いてあります。
映画のポスターが並んでいて、今は深作欣二監督の作品を掛けてあるそうです。
棚にはゴジラも飾ってあります。

お店の方によれば、オーナーは映画の脚本家が本業で、お店の名前は三日月が
好きなので付けたとのことです。
地下は試写室になっていて上映会も開かれるそうです。
BGMはのんびりしたジャズの歌でした。
「ルート66」も聴こえてきました。
ランチプレート900円です。

いろいろ盛り付けてあって、家庭的な味で美味しいです。
冷たい、ジャガイモのスープもあります。
サイフォンで淹れるコーヒーはすっきりとして美味しいです。
角砂糖は可愛いお椀に入っています。

個性的ですが居心地も良く、映画好きでなくても楽しめるお店です。
お店のHPです。
両国
両国の江戸東京博物館では特別展として、「隅田川 江戸が愛した風景」展が
開かれています。
期間は11月14日までです。
JR総武線は西から東へ浅草橋駅と両国駅の間で隅田川を渡ります。
上流に見えるのは蔵前橋です。


隅田川は名所として江戸の初めから昭和まで、四季の移ろい、行事の賑わい
などを通して、さまざまに描き継がれています。
その隅田川を描いた屏風絵や版画など約160点が展示されています。
10月17日までの前期と19日からの後期で、一部展示替えがあります。
「隅田川風物図屏風」 鳥文斎栄之 六曲一双 文政9年(1826)
墨絵に淡く彩色された、西から東を眺める広々とした鳥瞰図です。
左隻

上流の景色で、向こう岸の東岸には筑波山、木母寺、隅田堤、手前の西岸には
浅草観音、駒形堂などが見えます。
左の橋は大川橋(吾妻橋)、右は両国橋です。
右隻

下流の景色で、西岸には門跡(東本願寺別院)、青松寺、愛宕山、増上寺、
高輪、御殿山、品川宿などが並び、河口には佃島が見えます。
左の橋は大橋(新大橋)、右は永代橋です。
上流には渡し舟、漁師の舟、川遊びの舟、下流や品川沖には帆掛舟が浮かんでいます。
季節は春で、左隻の隅田堤、右隻の愛宕山、御殿山には桜が見えます。
お寺の屋根には白鷺が止まっています。
「冨嶽三十六景 深川万年橋下」
葛飾北斎 天保2~4年(1831~3)頃 前期展示

小名木川から隅田川へ合流する所で、小名木川にかかっているのは万年橋です。
プルシャンブルーが鮮やかで、橋の向こうに富士山が見えます。
小名木川は徳川家康の命で開削された、隅田川と中川を結ぶ運河です。
「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」 安政4年(1857)

新大橋(大橋)を西側から見た図です。
川向こうに幕府の御船蔵があり、安宅船(戦艦)を収容していたので、「あたけ」の
地名が付いています。
「天明八戊申歳江戸大相撲生写之図屏風」 六曲一双
凌雲斎豊麿 天明8年(1788)

江戸の花形、相撲取りの団体が橋を渡っています。
右隻
両国橋を渡る一行で、小野川などの名が見えます。
脇差の者が多いですが、両刀を差している者もいます。
両国は回向院の近くのためか、僧侶の姿が多いです。
左隻の画像はありませんが、日本橋を渡る一行で、谷風、柏戸、出羽海、武蔵川
などの名が見えます。
日本橋は魚市場が近いので、魚を入れた盥を頭にした人がいます。
「両国夕涼ノ図」 歌川豊広 江戸後期・18世紀末頃

母親と娘さんらしい二人が荷物を担いだ小僧さんをお供に川辺で夕涼みです。
着物の袖や裾が川風に揺れています。
両国橋の下手の西側で、川向こうに竪川にかかる一ツ目の橋、その右手の幕府の
御船蔵が見えます。
竪川も江戸初期に開削された、隅田川と中川を結ぶ運河です。
この辺りは納涼の場所として人気があったそうです。
賛は山東京伝です。
両国に虹のきへたる暑哉
夕立の後の虹が消えた後もまだ暑い様を読んでいます。
「東都両国ばし夏景色」 橋本秀貞 安政6年(1859)

三枚続きの錦絵版画で、両国川開きの花火を両国橋の西側から見た景色です。
魚眼レンズで撮ったような極端に歪んだ構図で、江戸の繁華を見せて迫力が
あります。
橋の上は人で溢れかえっていて、槍を立てた武家の行列も交じっています。
川も納涼舟で一杯で、右側に仕掛け花火を据えた舟も見えます。
今の同じ場所を写した合成写真です。

「両国花火之図」 歌川豊国 文化(1804~17)前半頃


三枚続きの錦絵を更に上下につないでいます。
橋の上は花火の見物人で一杯、橋の下も舟で一杯です。
橋の上の扇を持った色男と、舟の上の粋な女の視線が合っています。
右側の舟は、女性のかんざしから見て武家の御女中でしょうか。
「昭和大東京百図絵版画完制判 第六十六景 両国の川開き」

小泉癸巳男(こいずみきしお) 昭和10年(1935)
昭和の両国川開きを描いた版画です。
架かっている橋は昭和7年竣工の、現在の両国橋です。
橋の向こうには旧国技館も見えます。
見物人は和服の人、モダンな洋装の人が交じっています。
「昭和東京風景版画百図絵頒布画 第一景 永代と清洲橋」
小泉癸巳男 昭和3年(1928) 後期展示

大正15年竣工の永代橋から昭和3年竣工の清洲橋を眺めた景色です。
共に関東大震災の震災復興事業として架けられています。
近代都市の夜の風景の中に静かな叙情性を感じます。
他にも、江戸名所図会の挿絵を描いた長谷川雪旦と雪堤父子による
「春秋隅田川図屏風」、暗闇で観ると花火や提灯の明かりが浮かび上がる
「影からくり絵」、司馬江漢や亜欧堂田善の洋風画など、興味深い作品が
多く展示されています。
江戸の人たちにとって隅田川がいかに愛され、親しまれていたか、よく分かる
展覧会でした。
浮世絵の展示が多かったからでしょうか、外国人の入館者もかなり見かけました。
ミュージアムショップのオリジナルグッズなどについては「弐代目・青い日記帳」に
詳しく書かれています。
展覧会のHPです。
江戸東京博物館の前から見た東京スカイツリーです。
また背が伸びました。


chariot
両国の江戸東京博物館では特別展として、「隅田川 江戸が愛した風景」展が
開かれています。
期間は11月14日までです。
JR総武線は西から東へ浅草橋駅と両国駅の間で隅田川を渡ります。
上流に見えるのは蔵前橋です。


隅田川は名所として江戸の初めから昭和まで、四季の移ろい、行事の賑わい
などを通して、さまざまに描き継がれています。
その隅田川を描いた屏風絵や版画など約160点が展示されています。
10月17日までの前期と19日からの後期で、一部展示替えがあります。
「隅田川風物図屏風」 鳥文斎栄之 六曲一双 文政9年(1826)
墨絵に淡く彩色された、西から東を眺める広々とした鳥瞰図です。
左隻

上流の景色で、向こう岸の東岸には筑波山、木母寺、隅田堤、手前の西岸には
浅草観音、駒形堂などが見えます。
左の橋は大川橋(吾妻橋)、右は両国橋です。
右隻

下流の景色で、西岸には門跡(東本願寺別院)、青松寺、愛宕山、増上寺、
高輪、御殿山、品川宿などが並び、河口には佃島が見えます。
左の橋は大橋(新大橋)、右は永代橋です。
上流には渡し舟、漁師の舟、川遊びの舟、下流や品川沖には帆掛舟が浮かんでいます。
季節は春で、左隻の隅田堤、右隻の愛宕山、御殿山には桜が見えます。
お寺の屋根には白鷺が止まっています。
「冨嶽三十六景 深川万年橋下」
葛飾北斎 天保2~4年(1831~3)頃 前期展示

小名木川から隅田川へ合流する所で、小名木川にかかっているのは万年橋です。
プルシャンブルーが鮮やかで、橋の向こうに富士山が見えます。
小名木川は徳川家康の命で開削された、隅田川と中川を結ぶ運河です。
「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」 安政4年(1857)

新大橋(大橋)を西側から見た図です。
川向こうに幕府の御船蔵があり、安宅船(戦艦)を収容していたので、「あたけ」の
地名が付いています。
「天明八戊申歳江戸大相撲生写之図屏風」 六曲一双
凌雲斎豊麿 天明8年(1788)

江戸の花形、相撲取りの団体が橋を渡っています。
右隻
両国橋を渡る一行で、小野川などの名が見えます。
脇差の者が多いですが、両刀を差している者もいます。
両国は回向院の近くのためか、僧侶の姿が多いです。
左隻の画像はありませんが、日本橋を渡る一行で、谷風、柏戸、出羽海、武蔵川
などの名が見えます。
日本橋は魚市場が近いので、魚を入れた盥を頭にした人がいます。
「両国夕涼ノ図」 歌川豊広 江戸後期・18世紀末頃

母親と娘さんらしい二人が荷物を担いだ小僧さんをお供に川辺で夕涼みです。
着物の袖や裾が川風に揺れています。
両国橋の下手の西側で、川向こうに竪川にかかる一ツ目の橋、その右手の幕府の
御船蔵が見えます。
竪川も江戸初期に開削された、隅田川と中川を結ぶ運河です。
この辺りは納涼の場所として人気があったそうです。
賛は山東京伝です。
両国に虹のきへたる暑哉
夕立の後の虹が消えた後もまだ暑い様を読んでいます。
「東都両国ばし夏景色」 橋本秀貞 安政6年(1859)

三枚続きの錦絵版画で、両国川開きの花火を両国橋の西側から見た景色です。
魚眼レンズで撮ったような極端に歪んだ構図で、江戸の繁華を見せて迫力が
あります。
橋の上は人で溢れかえっていて、槍を立てた武家の行列も交じっています。
川も納涼舟で一杯で、右側に仕掛け花火を据えた舟も見えます。
今の同じ場所を写した合成写真です。

「両国花火之図」 歌川豊国 文化(1804~17)前半頃


三枚続きの錦絵を更に上下につないでいます。
橋の上は花火の見物人で一杯、橋の下も舟で一杯です。
橋の上の扇を持った色男と、舟の上の粋な女の視線が合っています。
右側の舟は、女性のかんざしから見て武家の御女中でしょうか。
「昭和大東京百図絵版画完制判 第六十六景 両国の川開き」

小泉癸巳男(こいずみきしお) 昭和10年(1935)
昭和の両国川開きを描いた版画です。
架かっている橋は昭和7年竣工の、現在の両国橋です。
橋の向こうには旧国技館も見えます。
見物人は和服の人、モダンな洋装の人が交じっています。
「昭和東京風景版画百図絵頒布画 第一景 永代と清洲橋」
小泉癸巳男 昭和3年(1928) 後期展示

大正15年竣工の永代橋から昭和3年竣工の清洲橋を眺めた景色です。
共に関東大震災の震災復興事業として架けられています。
近代都市の夜の風景の中に静かな叙情性を感じます。
他にも、江戸名所図会の挿絵を描いた長谷川雪旦と雪堤父子による
「春秋隅田川図屏風」、暗闇で観ると花火や提灯の明かりが浮かび上がる
「影からくり絵」、司馬江漢や亜欧堂田善の洋風画など、興味深い作品が
多く展示されています。
江戸の人たちにとって隅田川がいかに愛され、親しまれていたか、よく分かる
展覧会でした。
浮世絵の展示が多かったからでしょうか、外国人の入館者もかなり見かけました。
ミュージアムショップのオリジナルグッズなどについては「弐代目・青い日記帳」に
詳しく書かれています。
展覧会のHPです。
江戸東京博物館の前から見た東京スカイツリーです。
また背が伸びました。


御茶ノ水
「トラットリア レモン」は駿河台のとちの木通りにあります。
場所は千代田区神田駿河台1-5-5です。
大きなブランコが目印です。

御茶ノ水駅横の画材店、「レモン画翠」と同じグループで、イタリア料理のお店です。
以前は「レモン画翠」のビルの中に喫茶店の「レモン」がありました。
その「レモン」がこちらに引っ越してきて、イタリアンのお店になった訳です。
「レモン画翠」の店頭です。


「トラットリア レモン」の店頭の飾りには、とちの実をあしらっています。

木調の店内は全席禁煙で、細長く、面白いデザインです。
よく観るとお店のフロアはイタリアの地図の形をしていて、案内されて座ったのは
長靴の土踏まずの部分でした。

小さな坪庭が見えます。

BGMは静かなピアノ曲でした。
ランチタイムはコース料理の他、スパゲッティ類も揃っています。
なすとバジリコのスパゲッティ トマトソース1030円です。

あつあつのスパゲッティは量も多く、美味しいです。
セットのドリンクにコーヒー、紅茶、生ジュースのどれかを選びます。
こちらは、「レモン」時代からの生ジュースが評判ですが、今回はコーヒーにしました。

テーブルの角も凝った形です。
カップはillyのロゴ入りです。
コーヒーはやや薄味で、軽い苦味があって美味しいです。
とちの木通りはお茶の水らしい気持ちの良い並木が続いています。
そのかたわらにあって、お洒落な雰囲気のお店です。
お店のカードです。

お店のHPです。
chariot
「トラットリア レモン」は駿河台のとちの木通りにあります。
場所は千代田区神田駿河台1-5-5です。
大きなブランコが目印です。

御茶ノ水駅横の画材店、「レモン画翠」と同じグループで、イタリア料理のお店です。
以前は「レモン画翠」のビルの中に喫茶店の「レモン」がありました。
その「レモン」がこちらに引っ越してきて、イタリアンのお店になった訳です。
「レモン画翠」の店頭です。


「トラットリア レモン」の店頭の飾りには、とちの実をあしらっています。

木調の店内は全席禁煙で、細長く、面白いデザインです。
よく観るとお店のフロアはイタリアの地図の形をしていて、案内されて座ったのは
長靴の土踏まずの部分でした。

小さな坪庭が見えます。

BGMは静かなピアノ曲でした。
ランチタイムはコース料理の他、スパゲッティ類も揃っています。
なすとバジリコのスパゲッティ トマトソース1030円です。

あつあつのスパゲッティは量も多く、美味しいです。
セットのドリンクにコーヒー、紅茶、生ジュースのどれかを選びます。
こちらは、「レモン」時代からの生ジュースが評判ですが、今回はコーヒーにしました。

テーブルの角も凝った形です。
カップはillyのロゴ入りです。
コーヒーはやや薄味で、軽い苦味があって美味しいです。
とちの木通りはお茶の水らしい気持ちの良い並木が続いています。
そのかたわらにあって、お洒落な雰囲気のお店です。
お店のカードです。

お店のHPです。
乃木坂
六本木の国立新美術館で9月27日まで開かれている、「第74回 新制作展」に
行って来ました。
新制作協会は1936年設立の美術団体で、現在は絵画部、彫刻部、
スペースデザイン部があります。
20日には絵画部のギャラリートークがあるので、その日に行って来ました。
何人かの会員の画家の方によるギャラリートークや、入選作品へのコメントもあり、
とても参考になりました。
新制作展は撮影自由です。
会員の作品の一部です。
荻太郎 「ゆりと祈りの子供たち」

新制作展では過去1年間の物故会員のコーナーを設けています。
昨年、94歳で亡くなられた荻太郎さんの遺作です。
作品は正攻法の真っ直ぐな画風です。
ギャラリートークによれば、萩さんは東京美術学校在学中に第2回の新制作展に
出品していて、ほぼ創立メンバーのような方だったとのことです。
終戦直後の食糧難の時代に後輩の若い画家たちの面倒をよくみてあげており、
その姿勢は簡単にヒューマニズムといった言葉では済まないものとのことです。
銀座日動画廊でも9月26日まで「荻太郎遺作展」が開かれています。
日動画廊の展覧会のHPです。
一居孝明 「LEGEND(時)」

廃墟のような不思議な光景で、水と光を象徴するものが描かれています。
細部がリアルなほど、全体の幻想性が増します。
一居弘美 「Seeds」

タンポポの種が風に吹かれて飛んでいく瞬間です。
はかなさと生命力をともに感じます。
太田國廣 「悠久の黄金平野・大崎」

千手観音座像を中心にして、全面、黄金色に彩られた、日本画のような世界です。
滋賀県の大崎観音の情景でしょうか。
金山宰司 『ライフ「タピストリーのある部屋で」』

金山さんの作品はとても頭の小さい人物が特徴ですが、ふわりとした安定感が
あります。
壁もピンク、服もピンクですが、マティスのように平面的でさらりとしています。
タピストリーもマティスのコラージュ作品のように見えます。
樺山祐和 「森にうつるもうひとつの森へ 2010-I」

びっしりと隙間無く立ち並んだ木々の中に、鮮やかにさまざまな色が
散りばめられています。
ご本人のトークがありました。
近くの森がテーマで、中に入ると自分を包みこんで遠近感も無くなる感覚を
描きたかったとのことです。
小島隆三 「命の鼓動 ”朽ちていく物たちへ”」

那智の滝のような水、太陽、月の三幅対の前に三尊像のような立体作品が
置いてあります。
ご本人のトークがありました。
工芸的なものに親近感があったとのことで、奈良に行った時に観た仏像の
朽ちた様は人が作れるものではなく、その感じを作品に表したそうです。
佐藤泰生 「サーカス」

丸く区切ったサーカスの舞台の朱色が際立ちます。
佐藤さんの作品は画面に動きがあり、色彩も洒落ています。
田澤茂 「雷風と地蔵」

真赤な空で風神雷神が暴れ周り、下にはお地蔵さんや、参拝する人がいます。
お地蔵さんと一緒に埴輪も混じっています。
童話の中のような元気にあふれた世界です。
田村研一 「WONDER STORIES」

新会員です。
町の公園が秘密基地に変身しています。
子供の心がそのまま現実に表れたような勢いがあります。
鶴山好一 「風屋-ポロンジの詩」

穀物のサイロでしょうか、煉瓦を積み上げた重量感のある構築物です。
鶴山さんは古い工場などを重厚な表現で描いています。
中井英夫 「遠い日」

中井さんは細密画で夢幻的な世界を描いています。
この作品ではオレンジ色が画面を支配して、スペインの雰囲気があります。
鍋島正一 「Una Camera bagnata」

鍋島さん独特の幻想世界です。
ご本人のトークがありました。
題の意味はイタリア語で「濡れた部屋」ということで、ソ連の映画監督、
タルコフスキーの映像に水を使ったものが多く、それをイメージしたとのことです。
光と水の反射の具合の面白い作品です。
今年、日本橋三越で開かれた、「鍋島正一展」の記事はこちらです。
「コロッセオ」 山口都

ローマのパンテオンやコロッセオのような建物のある景色です。
ぽつんぽつんと置かれ、誰も人のいないところに趣きがあります。
入選作品の一部です。
石川由子 「ここから・・・」

思い出の風景に見えますが、中の子供たちは元気一杯です。
左側の橋の向こう側に手押しポンプが大きく描かれているのは、特別の思い入れに
よるものでしょう。
右側の校舎はカトリック系の女子高のようで、窓から美術部の様子も見えます。
題名からすると、石川さんの原点の情景でしょうか。
河村雅文 「理科室・2」

理科室は幻想の宝庫です。
ツヤツヤとした巨大なクワガタの存在感は圧倒的です。
面白いもので、昨年の展覧会で印象に残った画家の作品は今年もすぐ目に留まります。
これが団体展の楽しさで、会場を観て回っていると、一年経ったのだなと思います。
昨年の新制作展に行った時の記事はこちらです。
展覧会のHPです。
chariot
六本木の国立新美術館で9月27日まで開かれている、「第74回 新制作展」に
行って来ました。
新制作協会は1936年設立の美術団体で、現在は絵画部、彫刻部、
スペースデザイン部があります。
20日には絵画部のギャラリートークがあるので、その日に行って来ました。
何人かの会員の画家の方によるギャラリートークや、入選作品へのコメントもあり、
とても参考になりました。
新制作展は撮影自由です。
会員の作品の一部です。
荻太郎 「ゆりと祈りの子供たち」

新制作展では過去1年間の物故会員のコーナーを設けています。
昨年、94歳で亡くなられた荻太郎さんの遺作です。
作品は正攻法の真っ直ぐな画風です。
ギャラリートークによれば、萩さんは東京美術学校在学中に第2回の新制作展に
出品していて、ほぼ創立メンバーのような方だったとのことです。
終戦直後の食糧難の時代に後輩の若い画家たちの面倒をよくみてあげており、
その姿勢は簡単にヒューマニズムといった言葉では済まないものとのことです。
銀座日動画廊でも9月26日まで「荻太郎遺作展」が開かれています。
日動画廊の展覧会のHPです。
一居孝明 「LEGEND(時)」

廃墟のような不思議な光景で、水と光を象徴するものが描かれています。
細部がリアルなほど、全体の幻想性が増します。
一居弘美 「Seeds」

タンポポの種が風に吹かれて飛んでいく瞬間です。
はかなさと生命力をともに感じます。
太田國廣 「悠久の黄金平野・大崎」

千手観音座像を中心にして、全面、黄金色に彩られた、日本画のような世界です。
滋賀県の大崎観音の情景でしょうか。
金山宰司 『ライフ「タピストリーのある部屋で」』

金山さんの作品はとても頭の小さい人物が特徴ですが、ふわりとした安定感が
あります。
壁もピンク、服もピンクですが、マティスのように平面的でさらりとしています。
タピストリーもマティスのコラージュ作品のように見えます。
樺山祐和 「森にうつるもうひとつの森へ 2010-I」

びっしりと隙間無く立ち並んだ木々の中に、鮮やかにさまざまな色が
散りばめられています。
ご本人のトークがありました。
近くの森がテーマで、中に入ると自分を包みこんで遠近感も無くなる感覚を
描きたかったとのことです。
小島隆三 「命の鼓動 ”朽ちていく物たちへ”」

那智の滝のような水、太陽、月の三幅対の前に三尊像のような立体作品が
置いてあります。
ご本人のトークがありました。
工芸的なものに親近感があったとのことで、奈良に行った時に観た仏像の
朽ちた様は人が作れるものではなく、その感じを作品に表したそうです。
佐藤泰生 「サーカス」

丸く区切ったサーカスの舞台の朱色が際立ちます。
佐藤さんの作品は画面に動きがあり、色彩も洒落ています。
田澤茂 「雷風と地蔵」

真赤な空で風神雷神が暴れ周り、下にはお地蔵さんや、参拝する人がいます。
お地蔵さんと一緒に埴輪も混じっています。
童話の中のような元気にあふれた世界です。
田村研一 「WONDER STORIES」

新会員です。
町の公園が秘密基地に変身しています。
子供の心がそのまま現実に表れたような勢いがあります。
鶴山好一 「風屋-ポロンジの詩」

穀物のサイロでしょうか、煉瓦を積み上げた重量感のある構築物です。
鶴山さんは古い工場などを重厚な表現で描いています。
中井英夫 「遠い日」

中井さんは細密画で夢幻的な世界を描いています。
この作品ではオレンジ色が画面を支配して、スペインの雰囲気があります。
鍋島正一 「Una Camera bagnata」

鍋島さん独特の幻想世界です。
ご本人のトークがありました。
題の意味はイタリア語で「濡れた部屋」ということで、ソ連の映画監督、
タルコフスキーの映像に水を使ったものが多く、それをイメージしたとのことです。
光と水の反射の具合の面白い作品です。
今年、日本橋三越で開かれた、「鍋島正一展」の記事はこちらです。
「コロッセオ」 山口都

ローマのパンテオンやコロッセオのような建物のある景色です。
ぽつんぽつんと置かれ、誰も人のいないところに趣きがあります。
入選作品の一部です。
石川由子 「ここから・・・」

思い出の風景に見えますが、中の子供たちは元気一杯です。
左側の橋の向こう側に手押しポンプが大きく描かれているのは、特別の思い入れに
よるものでしょう。
右側の校舎はカトリック系の女子高のようで、窓から美術部の様子も見えます。
題名からすると、石川さんの原点の情景でしょうか。
河村雅文 「理科室・2」

理科室は幻想の宝庫です。
ツヤツヤとした巨大なクワガタの存在感は圧倒的です。
面白いもので、昨年の展覧会で印象に残った画家の作品は今年もすぐ目に留まります。
これが団体展の楽しさで、会場を観て回っていると、一年経ったのだなと思います。
昨年の新制作展に行った時の記事はこちらです。
展覧会のHPです。
日本橋
日本橋の西村画廊では、「SEPTEMBER 2010」展が10月16日まで開かれています。
場所は中央区日本橋2-10-8です。
日曜、月曜は休廊しています。

いつもこちらに出展している作家に指田菜穂子さんを加えた、以下の8人の
作品の展示です。
押江千衣子、指田菜穂子、小林孝亘、曽谷朝絵、
樋口佳絵、舟越桂、町田久美、三沢厚彦
指田菜穂子 「あの花だけは(ノヴァーリス「青い花」より)

アールヌーヴォー調の構図で、青い服、青い目の女の子や、朝顔、クレマチス、
富士山、青信号、ピカソの青の時代の絵など青い物びっしりと描きこんだ、
夢幻的な世界です。
小林孝亘 「でんきのでばん 11」

福音館書店の月刊絵本、「ちいさなかがくのとも 2010年10月号」の
小野寺悦子 文、「でんきのでばん」の原画15点の展示です。
ヘッドライト、街灯、門灯、室内の明かりなどを、小林孝亘さんらしい
優しく柔らかな色と形で描いています。
暗い部屋にでんきを点けたら猫が起きてきたという、微笑ましい絵もあります。
舟越桂 「もうひとりのスフィンクス」
スフィンクスシリーズの木彫で、今回の作品では皮で出来た耳のような部分が
象のように大きく丸く広がっています。
顔に付けられた色彩も多めです。
樋口佳絵 「雨音よりも早く」
白い雨合羽を着た子供たちがワラワラと走っています。
同じ顔付き、姿の子供たちのつくる、ちょっと変わった世界です。
展覧会のHPです。
それぞれの作家の展覧会の予定も載っています。
chariot
日本橋の西村画廊では、「SEPTEMBER 2010」展が10月16日まで開かれています。
場所は中央区日本橋2-10-8です。
日曜、月曜は休廊しています。

いつもこちらに出展している作家に指田菜穂子さんを加えた、以下の8人の
作品の展示です。
押江千衣子、指田菜穂子、小林孝亘、曽谷朝絵、
樋口佳絵、舟越桂、町田久美、三沢厚彦
指田菜穂子 「あの花だけは(ノヴァーリス「青い花」より)

アールヌーヴォー調の構図で、青い服、青い目の女の子や、朝顔、クレマチス、
富士山、青信号、ピカソの青の時代の絵など青い物びっしりと描きこんだ、
夢幻的な世界です。
小林孝亘 「でんきのでばん 11」

福音館書店の月刊絵本、「ちいさなかがくのとも 2010年10月号」の
小野寺悦子 文、「でんきのでばん」の原画15点の展示です。
ヘッドライト、街灯、門灯、室内の明かりなどを、小林孝亘さんらしい
優しく柔らかな色と形で描いています。
暗い部屋にでんきを点けたら猫が起きてきたという、微笑ましい絵もあります。
舟越桂 「もうひとりのスフィンクス」
スフィンクスシリーズの木彫で、今回の作品では皮で出来た耳のような部分が
象のように大きく丸く広がっています。
顔に付けられた色彩も多めです。
樋口佳絵 「雨音よりも早く」
白い雨合羽を着た子供たちがワラワラと走っています。
同じ顔付き、姿の子供たちのつくる、ちょっと変わった世界です。
展覧会のHPです。
それぞれの作家の展覧会の予定も載っています。
新宿
喫茶店「新宿スカラ座」は新宿駅西口地下ロータリーの横にあります。
場所は新宿区西新宿1-1-1 小田急エース北館です。


元は歌舞伎町にあった昔からの名物喫茶店だったのが2002年に閉店し、
6年前にここで再開したお店です。
店内は木調の古典的なつくりで、重厚な雰囲気です。


入口側に楕円形のカウンター席、奥に白いカバーの赤いシート席があります。
昔の「スカラ座」の写真も飾ってあります。

制服姿のお店の方に写真を撮ってよいか訊いたところ、どんどん撮ってください
とのことでした。
BGMはバロックでした。
コーヒー600円です。

とても分厚いカップに入ったコーヒーは昔風の濃い味です。
レシートには可愛い絵が描いてあります。
モーニングセットはありませんが、朝8時から開いているので便利です。
新宿駅の雑踏は激しくて、うっかりすると流されてしまいそうですが、
そんな中にあってオアシスというか、中洲のような有難いお店です。
chariot
喫茶店「新宿スカラ座」は新宿駅西口地下ロータリーの横にあります。
場所は新宿区西新宿1-1-1 小田急エース北館です。


元は歌舞伎町にあった昔からの名物喫茶店だったのが2002年に閉店し、
6年前にここで再開したお店です。
店内は木調の古典的なつくりで、重厚な雰囲気です。


入口側に楕円形のカウンター席、奥に白いカバーの赤いシート席があります。
昔の「スカラ座」の写真も飾ってあります。

制服姿のお店の方に写真を撮ってよいか訊いたところ、どんどん撮ってください
とのことでした。
BGMはバロックでした。
コーヒー600円です。

とても分厚いカップに入ったコーヒーは昔風の濃い味です。
レシートには可愛い絵が描いてあります。
モーニングセットはありませんが、朝8時から開いているので便利です。
新宿駅の雑踏は激しくて、うっかりすると流されてしまいそうですが、
そんな中にあってオアシスというか、中洲のような有難いお店です。
みなとみらい
横浜美術館で開かれている、「ドガ展」に行ってきました。
期間は12月31日までです。

エドガー・ドガ(1834~1917)の油彩画、パステル画、デッサン、彫刻など、
約120点が展示された、大規模な回顧展です。
初日の朝一番に行ってきましたが、もうかなりの来館者でした。
「画家の肖像」 1855年 油彩、カンヴァスに貼った紙

若い自画像で、自尊心の強そうな顔をしています。
尊敬するアングルの若い時の自画像と同じポーズとのことです。
アングルは仕事着姿ですが、こちらはブルジョワらしく、正装しています。
ドガは、アングルから言われた、「線を描きなさい。実際に見た物でも、
想像したものでも良いから」の言葉を忠実に守って、常にデッサンを心がけ、
対象の形態を捉えようとしています。
「田舎の競馬場で」 1869年 油彩、カンヴァス

ドガはブルジョワの趣味だった競馬をよく描いています。
広々としてのどかな田舎競馬の情景です。
ドガは1870年の普仏戦争に従軍した影響からか、目を悪くしているので、
このような明るい外光を描いた作品は珍しいものです。
「綿花取引所の人々(ニューオリンズ)」 1873年 油彩、カンヴァス

弟の居るアメリカに行った時の作品です。
綿花栽培の中心地、ニューオリンズでの取引所の光景です。
綿花の白、男たちの黒、壁の薄緑が上手く調和しています。
活き活きとした、写真のような状景ですが、何となく人が多すぎ、ポーズも
決まりすぎているような気がします。
ドガはデッサンによる人物の姿を集めて、一つの画面に仕上げる手法をよく
使っています。
「バレエの授業」 1873-76年 油彩、カンヴァス

ドガと言えばバレエ風景です。
踊り子の白を中心に、赤、緑、水色、黒のリボンをあしらって華やかです。
誰かの連れてきた犬も紛れ込んでいます。
ドアの向こうの窓から少し外の風景も見えます。
活き活きとした画面で臨場感があり、観ていて飽きません。
実際の光景のように見えますが、ピアノの上に座って背中を掻いている子などは
出来すぎていて、やや不自然です。
やはりデッサンを集めて巧みに再構成した場面であることが分かります。
同じ題材の1872年制作、「ル・ペルテイエ街のオペラ座の稽古場」が、
今年三菱一号館美術館で開かれた「マネとモダン・パリ展」に展示されていました。
「マネとモダン・パリ展」の記事はこちらです。
「エトワール」 1876-77年 パステル、モノタイプ、紙

この展覧会の一番の呼び物です。
会場でも一番お客さんが集まっていました。
実際の作品はそれ程大きくありません。
「エトワール」とは、バレエの主役を踊る踊り子のことです。
パステルを使っての、画面左下からのスポットライトの光の描写は素晴らしい
ものがあります。
床は均一に滑らかに塗られて、両手を伸ばして踊る踊り子の姿をふわっと
浮き上がらせています。
床の左下部分はうっすらと明るく、会場にもその場所にライトが点いている
のではないかと錯覚してしまいます。
画面の奥には、他の踊り子や劇場関係者かパトロンのような男性のいる、
舞台の袖の様子を粗く塊りのように描いています。
舞台の表と裏を同時に描くことで、華やかな場面にも別の意味が見えて来ます。
「出走前」 1878-80年頃 油彩、カンヴァス

思い思いの様子で、レースの出走を待っている騎手たちと馬です。
遠くの方で駆けている馬も見えます。
ドガは馬のデッサンもよく手がけているので、馬も色々の姿をしています。
目を悪くしたためか、この作品も他の風景画も印象派のような明るい外光を
感じません。
「浴盤(湯浴みする女)」 1886年 パステル、カルトン

たらいを使って入浴する女性の姿です。
バレエの舞台裏や稽古風景どころか、他の人には見せないような日常の場面を
描いています。
変わった構図で、テーブルのような物の線が画面を縦に分け、女性も普通は
描かれない姿勢で描かれています。
パステルの線をていねいに使って、屋内の光や女性の体の量感を柔らかく
表しています。
「浴後の朝食」 1894年頃 パステル、紙

「浴盤」と同じような題材ですが、描き方はより簡略化され、大掴みになっています。
「14歳の小さな踊り子」 1880-81年
ブロンズ、着彩、木綿のスカート、サテンのリボン

ドガの生前に発表された唯一の彫刻作品です。
ブロンズ像の服の部分に淡く色を塗り、木綿のスカートを着け、髪にはピンク色の
リボンを結んでいます。
最初に印象派展に出品された時はブロンズではなく蝋製で、髪は人毛のかつら
だったそうです。
こうなると、彫刻というより、人形か標本です。
少女の上向きの顔もかなりリアルで、可愛いバレリーナを表そうとしたものでない
ことは分かります。
他にも踊り子や馬の小さなブロンズ像が何点も展示されています。
それらは元は蝋製でアトリエに置かれていた物で、視力の衰えたドガがデッサンの
代わりに作ったものとのことです。
どれもすぐれた造形で、ドガの対象を捉える技量の高さには感心しました。
「マネとマネ夫人像」 1868-69年頃 油彩、カンヴァス
マネ夫人がピアノを弾き、マネがソファに座って聴いている場面です。
ブルジョア家庭の一コマですが、マネはソファに片足を上げ、半分寝そべっています。
面白いのは、画面の右側が切り取られ、夫人の顔が分からなくなっていることです。
ドガから作品を贈られたマネは、夫人の顔の出来が気に食わないということで
切り取ってしまったそうです。
ドガという人は、辛らつで容赦の無いところがあったようで、この絵もそれが影響した
のかもしれません。
それにしてもどんな風に描いてあったのか気になります。
他にも肖像画が何点か展示されていますが、どれも個性的で興味深い作品です。
アングルを尊敬して古典主義から出発したドガが、やがて競馬やバレエなど
身近な題材に興味を移し、視力の悪化とともにパステルによる室内描写へと
進んでいく様子がよく分かりました。
展覧会のHPです。
chariot
横浜美術館で開かれている、「ドガ展」に行ってきました。
期間は12月31日までです。

エドガー・ドガ(1834~1917)の油彩画、パステル画、デッサン、彫刻など、
約120点が展示された、大規模な回顧展です。
初日の朝一番に行ってきましたが、もうかなりの来館者でした。
「画家の肖像」 1855年 油彩、カンヴァスに貼った紙

若い自画像で、自尊心の強そうな顔をしています。
尊敬するアングルの若い時の自画像と同じポーズとのことです。
アングルは仕事着姿ですが、こちらはブルジョワらしく、正装しています。
ドガは、アングルから言われた、「線を描きなさい。実際に見た物でも、
想像したものでも良いから」の言葉を忠実に守って、常にデッサンを心がけ、
対象の形態を捉えようとしています。
「田舎の競馬場で」 1869年 油彩、カンヴァス

ドガはブルジョワの趣味だった競馬をよく描いています。
広々としてのどかな田舎競馬の情景です。
ドガは1870年の普仏戦争に従軍した影響からか、目を悪くしているので、
このような明るい外光を描いた作品は珍しいものです。
「綿花取引所の人々(ニューオリンズ)」 1873年 油彩、カンヴァス

弟の居るアメリカに行った時の作品です。
綿花栽培の中心地、ニューオリンズでの取引所の光景です。
綿花の白、男たちの黒、壁の薄緑が上手く調和しています。
活き活きとした、写真のような状景ですが、何となく人が多すぎ、ポーズも
決まりすぎているような気がします。
ドガはデッサンによる人物の姿を集めて、一つの画面に仕上げる手法をよく
使っています。
「バレエの授業」 1873-76年 油彩、カンヴァス

ドガと言えばバレエ風景です。
踊り子の白を中心に、赤、緑、水色、黒のリボンをあしらって華やかです。
誰かの連れてきた犬も紛れ込んでいます。
ドアの向こうの窓から少し外の風景も見えます。
活き活きとした画面で臨場感があり、観ていて飽きません。
実際の光景のように見えますが、ピアノの上に座って背中を掻いている子などは
出来すぎていて、やや不自然です。
やはりデッサンを集めて巧みに再構成した場面であることが分かります。
同じ題材の1872年制作、「ル・ペルテイエ街のオペラ座の稽古場」が、
今年三菱一号館美術館で開かれた「マネとモダン・パリ展」に展示されていました。
「マネとモダン・パリ展」の記事はこちらです。
「エトワール」 1876-77年 パステル、モノタイプ、紙

この展覧会の一番の呼び物です。
会場でも一番お客さんが集まっていました。
実際の作品はそれ程大きくありません。
「エトワール」とは、バレエの主役を踊る踊り子のことです。
パステルを使っての、画面左下からのスポットライトの光の描写は素晴らしい
ものがあります。
床は均一に滑らかに塗られて、両手を伸ばして踊る踊り子の姿をふわっと
浮き上がらせています。
床の左下部分はうっすらと明るく、会場にもその場所にライトが点いている
のではないかと錯覚してしまいます。
画面の奥には、他の踊り子や劇場関係者かパトロンのような男性のいる、
舞台の袖の様子を粗く塊りのように描いています。
舞台の表と裏を同時に描くことで、華やかな場面にも別の意味が見えて来ます。
「出走前」 1878-80年頃 油彩、カンヴァス

思い思いの様子で、レースの出走を待っている騎手たちと馬です。
遠くの方で駆けている馬も見えます。
ドガは馬のデッサンもよく手がけているので、馬も色々の姿をしています。
目を悪くしたためか、この作品も他の風景画も印象派のような明るい外光を
感じません。
「浴盤(湯浴みする女)」 1886年 パステル、カルトン

たらいを使って入浴する女性の姿です。
バレエの舞台裏や稽古風景どころか、他の人には見せないような日常の場面を
描いています。
変わった構図で、テーブルのような物の線が画面を縦に分け、女性も普通は
描かれない姿勢で描かれています。
パステルの線をていねいに使って、屋内の光や女性の体の量感を柔らかく
表しています。
「浴後の朝食」 1894年頃 パステル、紙

「浴盤」と同じような題材ですが、描き方はより簡略化され、大掴みになっています。
「14歳の小さな踊り子」 1880-81年
ブロンズ、着彩、木綿のスカート、サテンのリボン

ドガの生前に発表された唯一の彫刻作品です。
ブロンズ像の服の部分に淡く色を塗り、木綿のスカートを着け、髪にはピンク色の
リボンを結んでいます。
最初に印象派展に出品された時はブロンズではなく蝋製で、髪は人毛のかつら
だったそうです。
こうなると、彫刻というより、人形か標本です。
少女の上向きの顔もかなりリアルで、可愛いバレリーナを表そうとしたものでない
ことは分かります。
他にも踊り子や馬の小さなブロンズ像が何点も展示されています。
それらは元は蝋製でアトリエに置かれていた物で、視力の衰えたドガがデッサンの
代わりに作ったものとのことです。
どれもすぐれた造形で、ドガの対象を捉える技量の高さには感心しました。
「マネとマネ夫人像」 1868-69年頃 油彩、カンヴァス
マネ夫人がピアノを弾き、マネがソファに座って聴いている場面です。
ブルジョア家庭の一コマですが、マネはソファに片足を上げ、半分寝そべっています。
面白いのは、画面の右側が切り取られ、夫人の顔が分からなくなっていることです。
ドガから作品を贈られたマネは、夫人の顔の出来が気に食わないということで
切り取ってしまったそうです。
ドガという人は、辛らつで容赦の無いところがあったようで、この絵もそれが影響した
のかもしれません。
それにしてもどんな風に描いてあったのか気になります。
他にも肖像画が何点か展示されていますが、どれも個性的で興味深い作品です。
アングルを尊敬して古典主義から出発したドガが、やがて競馬やバレエなど
身近な題材に興味を移し、視力の悪化とともにパステルによる室内描写へと
進んでいく様子がよく分かりました。
展覧会のHPです。