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「浜口陽三銅版画展 ジャーナリスト・阿部徹雄が撮った浜口陽三 1958年 パリ」 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
水天宮
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地下鉄水天宮駅近くのミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションでは、
「浜口陽三銅版画展 ジャーナリスト・阿部徹雄が撮った浜口陽三
1958年 パリ」が開かれています。
会期は7月31日(日)までです。
場所は中央区日本橋蛎殻町1-35-7です。

浜口003


浜口陽三(1909-2000)はメゾチント(マニエール・ノワール)という
技法による作品で国際的に高い評価を得ている銅版画家です。
特にカラーメゾチントの開拓者として有名です。

浜口陽三はヤマサ醤油の創業家の出身で、1930年にフランスに渡り、
第二次世界大戦で一時帰国した後、1953年に再び渡仏し、パリで活動
しています。
1981年にサンフランシスコに移った後、1996年に帰国しています。

この展覧会ではパリで制作中の浜口陽三をジャーナリストの阿部徹雄が
1958年に撮影した写真約20点とともに、作品約60点が展示されています。

「猫」 ドライポイント 1937年頃
白地に1匹の猫を描いています。
初期の作品は1939年の一時帰国のためあまり残っていないので、貴重な作品
とのことです。

「ぶどうの房」 メゾチント 1957年
浜口005

メゾチントは地の部分にきめ細かい凹凸を付け、形を出したい部分の凹凸を
つぶしていく技法です。
写真の発達で廃れていたのを浜口陽三や長谷川潔が復活しています。
1954年頃には浜口陽三のスタイルが出来上がっています。

「ざくろ」 メゾチント 1958年
浜口004

大きな空間に小さく果物や蝶、貝などを描くのが特徴です。
対象は半ば抽象化され、濃密な空間の中で独特の存在感を持ちます。
浜口が対象を小さく描くというのは子供の頃からのようで、会場で上映
されているビデオで、小学校時代の図画の先生が言っていました。

「魚とレモン」 メゾチント 1958年
浜口007

3匹の魚はシルエットになって抽象化され、置かれたレモンは画面に緊張感を
生んでいます。

「2つのさくらんぼ」 カラーメゾチント 1958
浜口006

浜口陽三の開拓したカラーメゾチントは赤、黄、青、黒の4枚の原版を使って
重ね刷りを行なう技法です。
じっくりとした色合いが出ます。

「パリの屋根」 カラーメゾチント 1957年
煙突の付いたパリの住宅の屋根が波のように並んでいます。
風景というより抽象画に近くなっています。


緻密で深みのある画面をこつこつと彫り上げていく作品からは
禁欲的な情熱を感じます。


会場には夫人で同じく銅版画家の南桂子の作品、約10点も展示されています。
同じ会場で今年3月まで開かれていた、 「南桂子生誕100年記念展 きのう小鳥に
きいたこと」の記事はこちら
です。

また、横浜美術館では6月26日(日)まで、「生誕120年記念 長谷川潔展」が
開かれていました。
「生誕120年記念 長谷川潔展」の記事はこちらです。


【2011/06/30 05:15】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「名曲喫茶 カデンツァ」 本郷
本郷三丁目
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「名曲喫茶 カデンツァ」は本郷三丁目交差点から春日通りを上野方向に少し行った
左にあります。
ゴシック風の本郷中央会堂の向かいです。
場所は文京区本郷7-2-2です。

カ0105


地下1階にあるお店で、店内は20席ほど、すっきりした内装で全席禁煙です。
奥に大きなスピーカーが2つ並んでいて、前の席は渋谷の「ライオン」と
同じようにスピーカーの方を向いています。

カ0129

カ0136

カ0126


ライブ演奏用のグランドピアノもあります。

カ0124


10:00から15:00はカフェタイムで、クラシックや映画音楽のBGMを流します。
この時間帯のドリンクは400円からです。

16:00から21:00はミュージックタイムで、クラシックを鑑賞する時間です。

カ0134

リクエストも出来ます。
この時間帯のドリンクは600円からです。

基本的に隔週日曜日お休みで、営業している日曜日も開店はミュージックタイム
からです。

カップはチェコのカールスバードのブルーオニオン柄です。

カ0142

自家焙煎のコーヒーはずっしりしてコクのある味です。
注文の都度豆を挽いて淹れますが、マスターは音に気を使って曲の合間に
挽いていました。
ピラフやピザの軽食、チーズケーキもあります。

お店に入った時の曲はN饗のオーボエ奏者の演奏、次はモーツァルトの
ピアノ協奏曲、お客さんのリクエストでベートーヴェンのテンペスト、
そしてバッハの曲のギター演奏と続きました。

若いマスターによれば4月11日に開店したばかりで、以前は埼玉県にお店が
あったそうです。
こちらは地下になっていて表通りの音が入りにくく、ライブが開けるほどの
スペースがあるので越してきたとのことです。

リクエストの時間にはCDの持込も出来るそうなので、好きな曲を持ち込んで
ボトルキープならぬCDキープが出来るかもしれません。

こちらも猿楽町の「ピアノ フォルテ」と同じように、聴いていると気持ち
良くなって長居してしまいそうです。


お店のHPです。


【2011/06/29 04:12】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「魅惑のモダニスト 蕗谷虹児展」 そごう美術館
横浜
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そごう横浜店のそごう美術館では「魅惑のモダニスト 蕗谷虹児展」が
開かれています。
会期は7月18日(月)までです。

蕗谷001


蕗谷虹児(1898-1979)は大正時代の末から戦後にかけて、少女雑誌の挿絵や絵本、
童話を描いた人気画家です。
展覧会では挿絵や表紙絵の原画、載せられた雑誌など約600点が展示されています。

毎週土曜日の午後2時からは学芸員による作品解説も行なわれます。

蕗谷虹児は新潟県新発田市出身で、日本画家を志して上京し、尾竹竹坡に入門します。
一時樺太で放浪生活を送ったりした後、竹久夢二の知遇を得て、その縁で1920年
(大正9年)に少女雑誌の挿絵画家としてデビューし、またたく間に人気作家となります。

「テラスの秋」(『令女界』原画) 1924年
蕗谷003

『令女界』は蕗谷虹児が多くの表紙絵や挿絵を載せた少女雑誌です。
一時デザインの修行をしていたこともあって、先輩の竹久夢二に比べ、
くっきりとした線を使った明確な描きぶりです。

「睡蓮の夢」(『睡蓮の夢』原画) 1924年
蕗谷002

アール・ヌーヴォーの世界を取り入れています。
蕗谷虹児は詩人として何冊もの詩画集を出していて、『睡蓮の夢』はその一つです。
1924年に発表した詩の「花嫁人形」は詩人としての代表作です。
蕗谷虹児の詩は叙情的で、幾分感傷味も加わっています。

しかし、挿絵画家では飽き足らず、本格的な画家になろうとの思いから1925年
(大正14年)にフランスに渡って修行し、サロンへの入選も果たし、藤田嗣治らとも
親交を深めます。

「旅の絵だより 出帆」(『小令女』原画)部分 1926年
蕗谷005

パリ時代にも日本の雑誌に作品を送り続けています。

「柘榴を持つ女(原題:女)」 1927年
パンフレットに載っている作品です。
アール・デコ調の女性をすっきりした線で描き出し、洗練された作品になっています。
この頃に蕗谷虹児独特のモダンで都会的な作風が固まったとのことです。
蕗谷虹児の魅力の一つはファッションセンスの良さにあり、若い女性に人気のあった
理由でもあります。

「潮風」(『令女界』)原画 1928年
蕗谷004

こちらもアール・デコ調の女性です。
タツノオトシゴ、カニ、ヒトデの模様も海を表しています。
打ち寄せる波、翻る布地の表現にとてもはデザイン的な感覚があります。

フランスで修行中に描いた風景画が、2010年にブリヂストン美術館で開かれていた、
「セーヌの流れに沿って-印象派と日本人画家たちの旅」展に展示されていました。
1927年の「ヴェトイユの風景」で、感傷性の強い作品です。 
読者向けの挿絵とは違って、画家の内面性が表れています。

「セーヌの流れに沿って-印象派と日本人画家たちの旅」展の記事はこちらです。

エコール・ド・パリの画家としての地位を固めようとした1929年(昭和4年)に
世界大恐慌が起こります。
その影響による留守宅の経済的破綻のために急いで帰国し、借金返済のため
再び挿絵を描くことになります。

「七人兄弟」 挿絵原画 1941-1942年
「七人兄弟」はフィンランドの作家アレクシス・キヴィが1870年に書いた小説です。
当時スウェーデンに支配され、公用語にスウェーデン語を強制されていた時代に
フィンランド語で書かれ、フィンランド語文学の草分けとされています。
両親に先立たれた農民の七人兄弟が団結して困難に立ち向かい、農場を再建する
という物語です。
私も昔読んだことがあり、その土の匂いのする力強さには深い印象を受けました。

蕗谷虹児もそれまでの作品とはまったく異なる、男性的で躍動的な画面を黒一色で
描いています。
取り囲む牛たちを銃で撃退する場面などはよく覚えています。

戦後は少年少女雑誌が文章に挿絵という形からマンガ中心に変わってきたため、
挿絵の仕事は減り、替わって絵本や童話が増えます。

講談社の絵本「人魚姫」(魔法使いと人魚) 原画 1956年
蕗谷007

光の差さない海の底の情景で、深海魚たちが泳いでいます。
水の渦が不気味さを表しています。

絵本はどれも活き活きとして、アラビアンナイトや西遊記の世界は躍動感があります。
日本の昔話の絵本では琳派の技法も取り入れています。

1954年(昭和29年)にはアニメーション、「夢見童子」の原画制作も
行なっていて、会場でも放映されています。
15分の短編ですが、奈良朝風の人物たちが物語を繰り広げていきます。

70歳の1968年(昭和43年)に個展の開催や画集の刊行を機に、
注文制作でない自由な絵画を描くことを決意します。
自分は現代の浮世絵美人画の作家なので、これからは肉筆浮世絵の世界を
描いて行きたいと述べています。

「花嫁」 部分 1968年
蕗谷006

代表作の詩、「花嫁人形」にちなんでいます。
見事に洗練されたデザインの現代的な作品です。

会場で長い画歴を物語る作品を観ていくと、蕗谷虹児がさまざまなスタイルを取り入れ、
研究を怠らなかったことがよく分かります。

蕗谷虹児は自伝的な画集も2回作っています。
自分たち兄弟3人を残して若くして亡くなった母への追慕の情が強く表れています。
その追慕の想いが叙情的な女性像を創り上げていったのでしょう。
自伝を観たり、感傷性のある詩を読むと、蕗谷虹児は情の厚い人だったのだろうと
思います。

展覧会のHPです。


【2011/06/28 04:31】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
喫茶店「ショパン」 淡路町 2011/6
淡路町
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喫茶店「ショパン」でモーニングです。
場所は千代田区神田須田町1-19-9です。

シ0003

シ0013

この前、「ショパン」に行った時の記事はこちらです。

開店時間は朝8時ということになっていますが、お客さんが早く来るので
実際には7時頃には開いているそうです。

この日はチーズトーストセット600円にしました。

シ0011

いつもながらの濃いコーヒーはチーズトーストによく合います。

近所の老舗のご主人らしい方が同じ常連のお客さんと世間話をしていました。

アメリカンコーヒーとアイスコーヒーのテイクアウトもあって、
300円と350円です。
ビジネススーツ姿の女性が1つ買っていきました。


【2011/06/27 02:22】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
丸の内散策  2011/6
東京
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photo by taro

梅雨の合間の丸の内です。

皇居の周りでは皇居ランナーが走っています。
丸0130

皇居ランの詳細は千代田区観光協会のHPに載っています。

行幸道路から東京駅を眺めます。
丸0124

丸0107

自転車の曲乗りをしている人がいました。
丸0115

丸0156

丸0157

丸の内シャトルバスが通ります。
丸0029

丸の内シャトルバスのHPです。

和田倉噴水公園です。
節電のため、噴水は止まっていました。
丸0089

丸0094

紫陽花もあちこちに咲いています。
丸0043

丸0054

丸0066

紫陽花の向こうにみえるのは・・・
丸0070

白鳥です。
お堀には鯉やスッポンも泳いでいます。
丸0073


【2011/06/27 02:18】 街歩き | トラックバック(0) | コメント(0) |
「今日の人物表現」展 佐藤美術館
千駄ヶ谷
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千駄ヶ谷の佐藤美術館では、「今日の人物表現」展が開かれています。
会期は6月30日(木)までです。

人物001


所蔵作品、寄託作品の中から人物を表現した作品、約20点が展示されています。

呉亜沙 「芝浦-私のアトリエ」 2007年
チラシの上側の作品です。
呉亜沙さんの作品は国立新美術館の「DOMANI・明日展2009」で観たのが最初です。
「DOMANI・明日展2009」の記事はこちらです。

呉亜沙さんは自分をウサギの姿にして、自分の住んできた町の景色の中に
描きこんでいて、絵の中に物語があります。
人物002


呉亜沙 「岩手-大槌川とおばあちゃんの菊畑-」 2007年
呉亜沙さんが家族と一緒に住んでいた岩手県の大槌町の風景です。
おばあちゃんの菊畑の菊の花が町中に咲いていて、その中でウサギは虫捕りをしたり、
スズメを捕まえたり、サケを獲ったり、ヘビに驚いたりしています。
ランドセルをかついで学校にも通っています。
この大槌町の風景は東日本大震災の津波ですべて失われたとのことで、呉さんの
哀惜を込めたコメントも掲げられています。

安彦文平 「家庭菜園」 2001年
チラシの下側の作品です。
縦240cm、横369cmの大きな作品で、枝から垂れたものに人の顔が付いています。
イチョウの老木から垂れ下がる突起物や、露に景色が映ることからの発想でしょうか。
安彦文平さんは細密な写実画を描く人ですが、こんなシュールな作品もあるとは
知りませんでした。

小木曽誠 「柔脆な共存」 2003年
人物006

女性の体を透かして背後の木や花の影が映っています。
小木曽誠さんは細密描写に凝る人で、木肌や木目の質感まで描き出しています。

清水豊 「風をあつめる」 1994年
人物005

日本画で、仏画の古色のような枯れて重みのある色彩です。

長谷川雅也 「illuminate」 2005年
人物004

日本画で、コートを着込んだ老女と服を着た犬は一対の景色となっています。


全体の印象として、人物を描くことで若さと老いを表現している作品が多いようです。

展覧会のHPです。


【2011/06/26 11:22】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「もてなす悦び展 ジャポニズムのうつわで愉しむお茶会」 三菱一号館美術館
東京
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丸の内の三菱一号館美術館では「もてなす悦び展 ジャポニズムのうつわで
愉しむお茶会」が開かれています。
会期は8月21日(日)までです。

ジャポ001


19世紀後半の欧米では、万国博覧会などをきっかけにしてジャポニズム(日本趣味)
が大きな流行を見せます。
これを反映してジャポニズムの工芸品も数多く作られています。

この展覧会では、三菱一号館美術館コレクション<I>として、アメリカ在住の
ジョン&ミヨコ・ウンノ=デイヴィー夫妻から譲り受けたコレクションを
中心にして、陶磁器、銀器、ガラス器など、ジャポニズムの工芸品、
約230点が展示されています。


ウースター窯 「色絵菊文鉢」 18世紀 磁器 出光美術館蔵 イギリス
ジャポ003

ウースター窯は1751年に創業し、1866年にジャポニズム様式の陶磁器の制作を
始めています。
江戸時代から大量にヨーロッパに輸出された伊万里焼の模倣から始まり、
デザインもやがて初期の形から徐々に自由に変化していきます。
この鉢もかなり崩したデザインです。

ロイヤル・ウースター社 「吉祥文カップ&ソーサー」 1880年代 磁器
ジャポ008
 
青海波に似せた青い地模様の上に厚く金彩を塗って、亀甲文などの吉祥文を
描いています。
アメリカのティファニー商会の注文による製品です。

ウースター窯は1789年に「ロイヤル」の称号を得て、1958年にロイヤル・
ウースターと改称しています。
1872年には岩倉具視の使節団の視察も受けています。

ロイヤル・ウースター社 「伊万里写ティーセット」 1881年 磁器
ジャポ004

お盆も揃った金襴手の豪華なティーセットです。
取っ手やつまみは竹をイメージしていて、菊の紋も入っています。

ミントン社/伝クリストファー・ドレッサー 「日本文物文カップ&ソーサー」 
 1878-80年頃 磁器 イギリス
ジャポ002

金彩で縁取ったターコイズブルーの地に草花や置物などをあしらっています。

ミントン社のジャポニズム製品は1860年代のクリストファー・ドレッサーによる
七宝を模したデザインから始まります。

ミントン社は1793年に創業し、ボーンチャイナを開発しています。
1872年には岩倉具視の使節団の視察も受けています。

ミントン社 「桜椿文カップ&ソーサー」 1882年頃 磁器
ジャポ009

コバルトブルーの地に桜と椿をあしらっていて、空に延びる花枝を観るようです。

ロイヤル・コペンハーゲン磁器製作所 「魚駕籠形皿(蟹と魚藻)」 
 1890年頃 磁器 デンマーク
立体的な蟹を貼り付けた、眞葛焼を模したような製品です。
真葛焼も明治以降、盛んに輸出されています。

エミール・ガレ 「草花色紙文蓋付瓶」 1870年代 ガラス・鍍金 フランス
ジャポ005

緑色のガラスに白木蓮や金色の短冊が描かれています。
蓋のつまみは獅子の形をしています。
エミール・ガレと言えばアール・ヌーボーを思い出しますが、ジャポニズムと
アール・ヌーボーの近さを感じさせます。

ティファニー商会/エドワード・C・ムーア 「瓢箪文酒ポット」 
 1880年 銀・銅・金 アメリカ
ジャポ006

銀地に瓢箪の葉を打ち出し、瓢箪の実の部分やつまみは銅です。

ティファニー商会は1868年からエドワード・C・ムーアが中心となって
ジャポニズム意匠の銀器を盛んに制作しています。
ティファニーの銀製品は魚や虫、草花をあしらっていて、どれも繊細な細工です。

ゴーハム社 「日本趣味ナイフセット」 1880年代 銀、銅、金 アメリカ
柄の部分は形もデザインも日本刀の小柄(こづか)とそっくりです。

「ティー・ガウン」 1895年頃 京都服飾文化研究財団蔵 日本
ジャポ007

私邸の社交の場で既婚の女主人の着用した室内着です。
菊の刺繍の施された絹製で日本から輸出されています。
茶会ではこのような服装でお客をもてなしていたということです。

17世紀後半にオランダで流行した茶会では東洋との貿易で得た貴重な東洋の
陶磁器を使ったりしていました。
茶会は1840年代にイギリスの上流階級で復活し、19世紀末にはヨーロッパ各国の
中産階級にも普及していきます。
イギリスでは1830年代の末にインドのアッサムで茶の製品化に成功し、1880年代の
末には茶を自給化しています。
ヨーロッパのアジアへの進出と共に盛んになった茶会では、その頃流行した
ジャポニズムを取り入れた食器や工芸品がもてはやされます。

茶会の主催者は家庭の女性なので、彼女たちの好みを反映してか、展示されている
茶器類はどれも華やかで可愛いデザインと色彩です。
日本の茶器の渋い趣味とはかなり異なります。

会場にずらりと並んだ陶磁器や銀器を観ていると、当時どれだけジャポニズムが
もてはやされていたかを実感出来ます。
装飾性に優れた日本美術はジャポニズムという形によって上手く取り入れられた
と思います。

19世紀後半のイギリスの代表的なお茶菓子であるストロベリータルト、
マーブルケーキ、ティーケーキのレシピも紹介されていました。

展覧会のHPです。


また、1階の歴史資料室では9月11日(日)まで、「関東大震災から学ぶ 
震災と復興 ~丸の内・防災都市のあゆみ」展が開かれています。

ジャポ010


【2011/06/26 02:30】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「喫茶 ひよ子」 築地
築地
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「喫茶 ひよ子」は日比谷線築地駅を出て、新大橋通りを八丁堀方向へ
少し歩いて左側の小路にあります。
場所は中央区築地2-10-2です。

ひ0178


可愛らしく、よく目立つ看板です。
卵の黄身に似ています。

ひ0179


赤いシートの30席ほどとカウンター4席の昔ながらのお店で、
高齢のご夫婦が開いています。
もうすぐ開店して50年になるとのことで、とても長寿なひよこです。
カウンターの中ではマスターがてきぱきとコーヒーを淹れたり、
サンドイッチを作っています。

朝7時から開いていて、入れ替わりお客さんが入ってきます。
TVでは震災復興関係のニュースを流していました。

コーヒー150円とトースト100円です。

ひ0187

サイフォンで淹れるコーヒーはやや薄めで穏やかな味です。
きれいに並んだパンは6枚切の2枚分はあって、マーマレードが付いています。

お勘定の時に思わず訊き返したほどの安さで、採算は度外視されているのでしょう。
価格も含めて、昔ながらの懐かしいお店です。

お店の近くの紫陽花です。

ひ0173

追記
たいへん残念なことに、「喫茶 ひよ子」 は2013年8月30日を以て閉店しました。


【2011/06/25 04:51】 お店 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「室伸一 ガラス展」 日本橋高島屋
日本橋
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日本橋高島屋美術画廊で開かれている「室伸一 ガラス展」に行ってきました。
会期は6月28日(火)までです。

室伸一さん(1949~)は色ガラスを使った工芸品を制作しています。

この展覧会では、花器、皿、ランプ、アクセサリーなど約100点が展示されています。

室001

どれも丸みのある柔らかな形をしていて、そこに澄んだ明るい色彩をくわえて、
童話のような世界をつくりだしています。

観ていてあれこれと想像をふくらますことの出来る楽しい作品たちです。



【2011/06/24 07:16】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「Origin 松生歩展」 日本橋高島屋
日本橋
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日本橋高島屋美術画廊で開かれている「Origin 松生歩展」に行ってきました。
会期は6月28日(火)までです。

松生歩(まついけあゆみ)さん(1959~)は生命、時間をテーマにした日本画を
制作しています。

この展覧会では自作の詩も添えて、約20点が展示されています。

どの作品もややかすれた沈んだ色調で、象徴的な情景です。
フレスコ画のような雰囲気があり、深い青色はジョットを思わせます。
生命を象徴しているのでしょうか、ほとんどの作品には樹木が描かれています。

「天地(あめつち)をつなぐものたち II」 80号
松生001

樹木、女性、タンポポ、卵、フラミンゴ、バク、蛇を象徴的に描いています。
遠くには空に向かう階段も見えます。


【2011/06/24 00:52】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「ミカド珈琲店日本橋本店」 2011/6
三越前
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日本橋三越向かいにある、「ミカド珈琲店日本橋本店」でモーニングです。
場所は中央区日本橋室町1-6-7です。

ミ0019

ミ0002


朝の時間は3階を閉じているので、2階の30席ほどを使いますが、やや狭いです。
9時頃入った時は誰も居ませんでしたが、出る頃にはほとんど満席でした。

パンケーキセット480円です。

ミ0013

パンケーキは作り置きですが、バターを塗ったりシロップをかけたりして
楽しめます。
ヨーグルト、ポテトサラダ、グレープフルーツも付いて賑やかです。

他にソーセージドッグセット500円、厚切りトーストセット550円もあります。

ミ0005


こちらのBGMはいつもビートルズです。
ロック・アンド・ロール・ミュージックが流れていました。
ビートルズのはチャック・ベリーのより上品です。

なじみのお店でビートルズを聴きながらのモーニング、というのも良いものです。

以前、「ミカド珈琲店」に行った時の記事はこちらです。



【2011/06/23 01:20】 お店 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」展 サントリー美術館
六本木・乃木坂
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六本木のサントリー美術館では、「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」展が
開かれています。
開館50周年記念「美を結ぶ。美をひらく。」4回シリーズの第2回にあたります。
会期は7月24日(日)までで、休館日は火曜日です。

鳳凰001


日本人に長く親しまれてきた瑞鳥の鳳凰と霊獣の獅子にまつわる絵画や工芸品、
約130点の展示です。
展示期間は細かく分かれ、かなりの展示替があるので、あらかじめ展覧会のHPで
確認されると良いでしょう。

第1章 暮らしの中の鳳凰と獅子―御輿・獅子舞・狛犬

「日吉山王・祇園祭礼図屏風」 六曲一双のうち右隻 
 室町時代~桃山時代/16世紀 サントリー美術館

船を連ねて近江坂本の日吉神社に繰り込む祭礼の一団です。
2艘の船を並べた上に乗る神輿の屋根には鳳凰が据えられています。
警護の者たちは長大な刀をかついでいます。

7月4日までの展示です。

第2章 古代における鳳凰と獅子―銅鏡や磚をめぐって

「鳳凰文磚(せん)」 飛鳥時代/7世紀 奈良・南法華寺 重要文化財
大きな一種のタイルで、須弥壇の側面に貼られていたらしいとのことです。
旧官製はがきに使われていた、懐かしい図柄です。

第3章 獅子舞と狛犬―正倉院の頃から始まる守護獣の歴史

「金銅獅子唐草文鉢」 奈良時代/8世紀 岐阜・護国之寺 国宝
鳳凰009

かなり見えにくいのですが、表面に獅子唐草模様が線彫りされています。

第4章 仏教における獅子―文殊菩薩像を中心に

「文殊渡海図」 鎌倉時代/13世紀 京都・醍醐寺 国宝
鳳凰002

獅子の背に乗って善財童子を先頭に海を渡る文殊菩薩とその一行です。
獅子は文殊菩薩の乗り物とされています。
文殊菩薩のお顔は凛々しく、獅子は堂々とした姿をしています。
衣装には截金が入っているようで、とても華やかな図像です。
文殊菩薩の渡海というのは典拠未詳とのことです。

6月27日までの展示です。

「後醍醐天皇御像」 南北朝時代 神奈川・清浄光寺(遊行寺) 重要文化財
後醍醐天皇の有名な肖像画です。
天皇としての礼冠を着けながら袈裟をまとい、密教の法具を持つ、
まさに異形の姿です。
獅子座といわれる台座の側面に獅子が描かれています。

6月20日までの展示でした。

第5章 鳳凰降臨―彫像や神宝にみる高貴なシンボル

「鳳凰」 模造 京都・平等院
宇治の平等院の屋根に置かれている鳳凰で、鳳凰堂の名前の由来の一つと
いわれています。
1万円札の裏面のデザインにも使われています。

鳳凰(旧金閣所在) 室町時代 京都・鹿苑寺
鳳凰006

金閣の屋根に据えられていた鳳凰で、補修のため屋根から取り外してあったため、
火災での焼失を免れたとのことです。

第6章 よみがえる鳳凰―東アジアにおける鳳凰図の展開

「鳳凰石竹図」 林良 中国・明時代/15-16世紀 
 京都・相国寺 重要文化財

鳳凰003

岩の上に立ち、朝日を眺める、厳しい姿の鳳凰です。
水墨ですが体の一部に朱色が入っているとのことで、かすかに色の名残が見えます。
林良は明時代中期の画院画家(宮廷画家)です。

「旭日鳳凰図」  伊藤若冲 宝暦5年(1755) 宮内庁三の丸尚蔵館 
きわめて細密な描き込みと、目を見張る華麗な彩色の鳳凰です。
いつもながら伊藤若冲の迫力には気圧されます。

7月4日までの展示です。

「白鳳図」 神坂雪佳 大正時代末/20世紀 細見美術館
白い鳳凰で、縦長の画面に気品のある姿を描いています。
伊藤若冲の鳳凰とは対照的で、極彩色とは異なる優美さがあります。

7月4日までの展示です。

「桐鳳凰図屏風」(右隻) 六曲一双 狩野探幽 
 江戸時代/17世紀 サントリー美術館

鳳凰012

桐は鳳凰の留まる木といわれ、よく鳳凰と組にして描かれます。
屏風の飾り金具には葵の紋が入っています。
広い金地につがいと雛の鳳凰を置いた絵柄から見て、公式の場の調度として
使われたのでしょう。

6月27日までの展示です。

第7章 工芸にみる鳳凰と獅子―唐物や茶道具を中心に

「青磁鳳凰耳花生(砧青磁)」 南宋時代/12-13世紀 
 五島美術館 重要文化財

鳳凰005

代表的な青磁の形で、耳に簡略化された鳳凰が付いています。
鳳凰や獅子は工芸品の取っ手やつまみによく使われています。

「玳皮盞(鸞天目)」 南宋時代/12-13世紀 中興名物 
 三井記念美術館 重要文化財

室町三井010

この茶碗を三井記念美術館の「室町三井家の名品 卯花墻と箱根松の茶屋」展で
観た時の記事には以下のように書きました。

「玳皮盞(たいひさん)とは天目茶碗の一種で、外側にタイマイの甲羅(べっ甲)の
ような模様の出ている物を言います。
この茶碗は見込に二羽の尾長鳥と蝶、底に梅花が描かれ、鸞天目(らんてんもく)
とも呼ばれています。
見込の細かい地模様の華やかな茶碗です。
小堀遠州の所持していた品です。
中興名物とは「雲州名物帳」によって、小堀遠州好みの茶道具として
選ばれた品です。」

第8章 屏風に描かれた鳳凰と獅子―「唐獅子図屏風」から若冲まで

「唐獅子図屏風」 六曲一双 (右隻)狩野永徳 (左隻)狩野常信 
 (右隻)安土桃山時代/16世紀 (左隻)江戸時代/17世紀 宮内庁三の丸尚蔵館

皇10-8-2009_002

この屏風を東京国立博物館での「皇室の名宝―日本美の華」展で観た時の記事には
以下のように書きました。

「右隻は狩野永徳作で、安土桃山時代の代表作です。
教科書などでお馴染みですが、元は毛利家の所蔵で、豊臣秀吉から
贈られた品との説もあります。
かなり大きな屏風で 、見上げるばかりです。
二頭の獅子は、雌雄でしょう、力強く地面を踏みしめ、顔も恐ろしげで、
威圧感に満ちています。
この屏風を背にして、家来に向えば、主の威厳も数等上がりそうです。

左隻は孫の狩野常信作で、江戸時代の作品です。
右隻に合わせて描かれたとのことですが、時はすでに泰平の世、雰囲気も
かなり変わってきます。
一頭の獅子が踊るように後ろ足を跳ね上げています。
右隻の獅子の子供ということでしょうか、軽やかで、顔もユーモラスな表情です。」

7月6日からの展示です。

「樹花鳥獣図屏風」(左隻) 六曲一双 伊藤若冲 
 江戸時代/18世紀後半 静岡県立美術館

鳳凰010

不思議な、変わった雰囲気の屏風です。
画面を方眼紙のような細かい桝目で埋め、一桝ずつ色を塗る「桝目描」という
技法を使っています。
一種の点描法で、伊藤若冲の独創ということです。
よく観ると桝目も残っていて、一つ一つ丁寧に色を塗っていったことが分かります。
とても賑やかな画面はタイル画のように見えて、お風呂屋さんの壁を思い出します。
それにしても伊藤若冲という人はいろいろなことを考えるものです。

第9章 獅子の乱舞―芸能と獅子をめぐって

「石橋図」 礒田湖龍斎 江戸時代/18世紀 出光美術館
ヴィ8-4-2010_004

この絵を出光美術館での「日本美術のヴィーナス-浮世絵と近代美術」展で
観た時の記事には以下のように書きました。

「石橋(しゃっきょう)は、寂照法師が中国の清涼山の麓にかかる石橋のたもとで、
文殊菩薩の乗り物である獅子が牡丹と戯れるのを見たという故事を演劇化した
ものです。
目出度い演目で、能や歌舞伎でよく演じられています。
着物の両袖を脱ぎ、牡丹の花をかざして華やかに踊る様を、躍動的な構図で
描いています。
紅白の色の対比も効果的です。」

7月6日からの展示です。

第10章 江戸文化にみる鳳凰と獅子―色絵陶磁器から水墨画まで

「色絵獅子鈕鞠形香炉」 野々村仁清 江戸時代/17世紀後半 サントリー美術館
鳳凰013

鞠の形をした小さな香炉で、獅子を蓋のつまみにして、煙出しは牡丹の形を
しています。
赤い線と青い獅子の対比が華やかです。
獅子が戯れると毛が絡まりあって毛玉の球になり、その中から勇ましい
獅子の子ができるという言い伝えによっています。

第11章 蘭学興隆から幕末へ―洋風画と浮世絵をめぐって

「獅子図」 小田野直武 江戸時代/18世紀
鳳凰007

秋田蘭画の作品です。
写実を目指して影も付け、ライオンに近い姿になっていますが、たてがみの具合は
ベートーヴェンのようです。

6月29日からの展示です。

第12章 不滅のシンボル―人間と共に生きる鳳凰と獅子

「大獅子図」 四曲一隻 竹内栖鳳 明治35年(1902) 藤田美術館
鳳凰008

1900年に渡欧した時にアントワープの動物園で観たライオンの姿で、
帰国を遅らせてまで重ねた写生を元にしています。
金地に等身大より大きめのライオンだけを置き、たてがみや顔の毛も細かく
描き分け、瞳の光まで描き出しています。
獅子からライオンに変わるための、竹内栖鳳の写実への執念が偲ばれます。

6月27日までの展示です。

鳳凰と獅子がどれだけ我々の文化の中に溶け込み活躍しているか、
改めて納得した展覧会でした。

展覧会のHPです。


【2011/06/22 01:24】 美術館・博物館 | トラックバック(4) | コメント(0) |
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