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「英国の夢 ラファエル前派展」 渋谷 Bunkamuraザ・ミュージアム
渋谷
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渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは「英国の夢 ラファエル前派展」が
開かれています。
会期は2016年3月6日(日)までで、1月1日(金・祝)と1月25日(月)は休館日です。

ラファエル001


イギリスのリバプールにある3つの国立美術館の所蔵する、ラファエル前派と
その後継者たちの作品、65点が展示されています。
リバプールは貿易都市として栄えた街で、富裕な市民の購入した絵画が
美術館のコレクションの基礎となったそうです。

ラファエル前派は、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828-1882)、
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)、ウィリアム・ホルマン・ハント
(1827-1910)が1848年に結成した絵画結社です。
アカデミズムの基準と見做されていたラファエロより以前に戻るという意味で、
聖書や中世の文学を題材としながら、伝統的な図像にはこだわらない、
独自の写実的な表現を目指しています。
アカデミズムへの反発という点では、同時代の印象派と似ていますが、
印象派が視ることにこだわったのに対し、ラファエル前派は文学性・象徴性を
重視しています。
後の象徴主義絵画の先駆けとなっていますが、ラファエル前派自身は
考え方の違いや女性関係などから短期間で解散しています。

ジョン・エヴァレット・ミレイ 「いにしえの夢─浅瀬を渡るイサンブラス卿」 
 1856-57年 油彩・カンヴァス

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大きな作品で、会場の最初に展示されています。
子どもを乗せて川を渡る甲冑姿の老騎士を描いていて、夕暮れの雰囲気も
表れています。
ただ、3人を乗せていることもあって、馬体が大きくなったのが大変不評だったそうです。
作品を見ると、馬を小さく描き直した跡も残っています。

ジョン・エヴァレット・ミレイ 「春(林檎の花咲く頃)」 1859年 油彩・カンヴァス
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大きな作品で、ミレイの妻、エフィー・グレイの妹たちがモデルで、ミレイが
スコットランドのエフィーの実家で暮らしていた頃の作品です。
林檎園での優雅なくつろぎの情景ですが、右端には死を象徴する大鎌が
描かれていて、寓意画のようなところもあります。

ジョン・エヴァレット・ミレイ 「ブラック・ブランズウィッカーの兵士」 
 1860年 油彩・カンヴァス

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ミレイの代表作で、1815年にワーテルローの戦いの前哨戦であるカトル・ブラの戦いに
赴こうとするプロイセンの騎兵と恋人を押し留めようとする女性です。
ブラック・ブランズウィッカーはナポレオン軍と戦うため、プロイセンで編成された
義勇軍で、黑い制服が特徴です。
壁にはダヴィッドの「アルプスを越えるナポレオン」が飾ってあって、状況を暗示し、
忠実な犬もすがり付いています。
ブラック・ブランズウィッカーはイギリス軍に参加していたので、イギリスでも
馴染みのある画題だったのでしょう。
感傷的なテーマを扱い、黑と白の対称が印象的で、衣服の表現も見事なことから、
大きな評判を得た作品だそうです。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「シビラ・パルミフェラ」 
 1865-70年 油彩・カンヴァス

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ヤシの巫女という意味で、ヤシは美の勝利を表すそうです。
左に描かれているのは愛を象徴する目隠しされたクピド(キューピッド)と薔薇、
右は死の象徴のドクロとポピーです。

アーサー・ヒューズ 「聖杯を探すガラハッド卿」 
 1870年に最初の出 品油彩・カンヴァス

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ガラハッドはアーサー王に仕えた円卓の騎士の一人で、聖杯を探し当てています。
白馬にまたがり、槍を立て、石橋を渡ろうとしているところで、空から天使たちが
激励しています。
アーサー・ヒューズ(1831-1915)はジョン・エヴァレット・ミレイなど、ラファエル前派の
影響を強く受けた画家です。

エドワード・ジョン・ポインター 「テラスにて」 1889年に最初の出品 油彩・パネル
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古代の情景で、女性が団扇に乗った虫で遊んでいます。
団扇も虫もイギリスからは遠い南を想像させます。
階段の柱頭にはパルメット文様が彫ってあり、遠くの島はナポリ湾のカプリ島を
暗示しているそうです。

エドワード・ジョン・ポインター(1836-1919)は歴史画を得意にした画家で、
ジョン・エヴァレット・ミレイの後任として、ロイヤル・アカデミーの
会長も勤めています。

アルバート・ジョゼフ・ムーア 「夏の夜」 1890年に最初の出品 油彩・カンヴァス
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部分
ラファエル010

大きな作品で、夜の海には月の光が映り、漁り火のような灯も見えます。
花綱の吊られた室内には古代ギリシャ彫刻のような女性が4人、思い思いの姿で
並んでいます。
ともかく美しい画面を創ろうという、唯美主義の極みのような作品です。

アルバート・ジョゼフ・ムーア(1841-1893)はギリシャ彫刻に学んで、
古代風の衣装の女性を装飾的に描いています。
作品から物語性を除き、絵としての形式美を追求しています。

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ 「フラジオレットを吹く天使」
 1878年 水彩、グワッシュ、金彩・紙

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フラジオレットはフルートの一種の古楽器で、現在はほとんど使われていません。
天使の羽根は頭の回りに装飾的な渦を巻くように描かれています。

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ(1833-1898)はウィリアム・モリスの
友人で、ロセッティに絵を学んでいます。
職人の子としては珍しくオクスフォード大学に入学し、始めは聖職者になる
つもりでしたが、そこで、後に詩人・デザイナーになるウィリアム・モリス(1834-96)と
友人になり、ロセッティや美術評論家のジョン・ラスキン(1819-1900)の影響を受け、
芸術家への道を選んでいます。

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ 「スポンサ・デ・リバノ(レバノンの花嫁)」 
 1891年 水彩、グワッシュ・紙

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部分
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大きな作品で、旧約聖書の雅歌の一節を主題にしています。
白百合は純潔を表し、二人の女性が象徴する北風と南風が風を起こす中を、
レバノンの花嫁が歩んでいます。
バーン=ジョーンズらしい落着いた色彩による、すらりとした姿の女性像です。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 「エコーとナルキッソス」 
 1903年 油彩・カンヴァス

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ギリシャ神話の中の不毛な愛を象徴するお話で、美少年ナルキッソスは水に映る
自分の姿に恋をして、やがて死んでしまい、水仙に姿を変えます。
エコーはナルキッソスに恋しますが、木霊のように相手の言葉を繰り返すだけで、
自分から話しかけることは出来ません。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(1849-1917)はイギリスの古典主義の
画家ですが、ラファエル前派にも近い雰囲気を持っています。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 「デカメロン」 1916年 油彩・カンヴァス
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中世風の装束の女性たちが庭で男性の語る物語を聴いています。
ボッカチョの「デカメロン」を題にしていますが、「デカメロン」の特定の場面を
想定している訳では無いそうです。


他にローレンス・アルマ=タデマ、フレデリック・レイトンなどの作品も展示されていて、
分かりやすく、見応えのある展覧会です。
会場の中のベンチのカバーもラファエル前派と関係の深いウィリアム・モリスの
デザインを使っていました。


2014年に三菱一号館美術館で開かれた、「ザ・ビューティフル―
英国の唯美主義1860-1900」展の記事
です。


2014年に森アーツセンターギャラリーで開かれた「ラファエル前派展 
英国ヴィクトリア朝の夢」の記事
です。


2012年に三菱一号館美術館で開かれた「バーン=ジョーンズ展―
装飾と象徴」の記事
です。


2011年に目黒区美術館で開かれた「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展の記事です。


展覧会のHPです。


次回の展覧会は、「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」展です。
会期は2016年3月19日(土)から6月5日(日)までです。

国芳001


blogを始めて9年経ちました。
今年もまた多くの方に見ていただき、コメント、拍手なども
沢山いただき有難うございました。
非公開コメントの方には直接お礼申し上げられませんでしたが、
うれしく読ませていただきました。
2016年も多くの展覧会に出かけ、カフェなどにも立ち寄って、
記事を書きたいと思っていますので、よろしくお願い申し上げます。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。


【2015/12/31 19:34】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「CATART美術館」展 西武池袋本店
池袋
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西武池袋本店7階催事場では「CATART美術館」展が開かれています。
会期は2016年1月5日(火)まで、料金は一般・大学生500円です。

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シュー・ヤマモトさん(1948~)は横浜出身のイラストレーターで、現在アメリカ在住です。
2007年から描き始めた、古今東西の名画の猫バージョンが評判になっています。
会場には古代から現代まで、約70点が展示されています。

おなじみの名作揃いです。

猫の手を揃えています。
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若妻は肉球を見せています。
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題は「またたび拾い」です。
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白い毛に光が映えています。
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ダヴィッドの「アルプスを越えるナポレオン」では猫がプードルにまたがっています。
アングルの「グランド・オダリスク」は魅惑的な目でこちらを見ています。
印象派のモネ、ルノワールやピカソの「ゲルニカ」、「黒田清輝」の湖畔もあります。

面白くて見飽きない、絵画と猫の好きな人にはたまらない展覧会です。


【2015/12/29 19:18】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
喫茶店「ノニーノ(NONINO)」 麹町
麹町
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喫茶店「ノニーノ(NONINO)」は麹町四丁目交差点の少し南にあります。
場所は千代田区麹町3-5-5で、地下1階にあります。

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30席ほどの店内はモダンな雰囲気で、床はコンクリート、
椅子の種類も幾つかあって変化を付けています。
BGMはギター曲でした。

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フローラブレンド520円です。

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ドリップでゆっくり淹れるコーヒーは、ふっくらとして美味しいです。
やや低温なので、味がよくなじみます。
カップは有田焼です。
おだやかなマスターによれば、他にもヨーロッパのカップが
いろいろあるそうです。

地下にあることもあって、落着いた雰囲気で、ゆっくりコーヒーを
楽しむことが出来るお店です。

お店のFacebookです。


【2015/12/27 19:20】 お店 | トラックバック(0) | コメント(4) |
「西洋古典絵画精選展」 上野 国立西洋美術館
上野
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上野の国立西洋美術館の版画素描展示室では、「西洋古典絵画精選展」が開かれています。
会期は2016年1月11日(月・祝)までです。

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ヨハネス・フェルメールに帰属 「聖プラクセディス」 1655年
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2015年に国立西洋美術館に寄託された作品です。
イタリアの画家、フェリーチェ・フィケレッリの作品の模写ですが、空の色には
高価なラピスラズリが使われ、原作には無い十字架が描かれています。
フェルメールの真作かどうかは議論があるそうですが、真作であれば、
フェルメールの最初期の作品になります。

アンドレア・デル・サルト 「聖母子」 1516年頃
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新収蔵作品です。
アンドレア・デル・サルト(1486-1531)はミケランジェロやラファエロがローマに移った後に、
フィレンツェで活動した画家です。
幼子イエスの足が筋肉質に描かれているのが目を惹きます。
聖母マリアのモデルはおそらく、後にデル・サルトの妻になった女性とのことです。
ヴァザーリの「芸術家列伝」によれば、デル・サルトの描く女性は誰も妻の顔になるそうです。

ドメニコ・プリーゴ 「アレクサンドリアの聖カタリナを装う婦人の肖像」 1520年代
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新収蔵作品です。
16世紀初頭にフィレンツェのアンドレア・デル・サルトの工房で描いていた画家とのことです。
ラファエロの作品に従った構図で、落着いた色調でまとめています。
刃の付いた車輪と棕櫚の葉を持っていることから、女性は聖カタリナにちなんだ、
カタリナ(イタリア語でカテリーナ)という名であったと思われます。


国立西洋美術館では、「黄金伝説展 古代地中海の秘宝」が開かれているところです。
会期は2016年1月11日(月・祝)までです。

「黄金伝説展」の記事です。


【2015/12/26 19:42】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「シアトルズベストコーヒー 丸の内マイプラザ店」
東京・二重橋
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「シアトルズベストコーヒー 丸の内マイプラザ店」は丸の内仲通り沿いの
丸の内マイプラザの地下2階にあります。
場所は千代田区丸の内2-1-1です。

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2015年1月のオープンで、暖かい色調の店内は40席ほど、全席禁煙、
音を消したTVが付いていて、コーヒーの樽を脇テーブルに使っています。
開店時間は7時で、8時頃にはほぼ満席になります。

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BLTサンドのモーニングセット500円です。

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サンドは温めてもらいました。

セットのドリンクはコーヒー、紅茶、アップルジュースがあります。
コーヒーは飲みやすい味です。

お店の前の通路は時間が経つとともに人通りが多くなり、テイクアウトの
お客さんも増えて、オフィスビルの一日が始まります。


【2015/12/25 19:52】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「水 神秘のかたち」展 六本木 サントリー美術館
六本木・乃木坂
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六本木のサントリー美術館では、「水 神秘のかたち」展が開かれています。
会期は2016年2月7日(日)まで、休館日は火曜日と12月30日(水)~2016年1月1日(金・祝)です。
会期中、展示替えがありますので、展覧会のHPの作品リストをご確認ください。


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日本の水と水にまつわる信仰についての展示です。


「流水文銅鐸」 跡部遺跡出土 
 弥生時代 紀元前1 ~ 1 世紀 大阪・八尾市立歴史民俗資料館

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稲作と水は関係が深く、この銅鐸には一面に流水が鋳出されています。

「日月山水図屛風」 室町時代 15~16 世紀 大阪・金剛寺 重要文化財
右隻
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左隻
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1月11日までの展示です。
河内長野市の金剛寺で、灌頂(かんじょう)の儀式の場に立てられていました。
灌頂はおもに密教の儀式で、受戒の時などに水を修行者や僧の頭に注ぎます。
山や水流が力強く、うねるように描かれ、後の琳派につながる装飾性豊かな屏風です。

「十一面観音立像」長快作 鎌倉時代 13世紀 三重・パラミタミュージアム
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奈良の長谷寺の十一面観音立像の縮小摸刻で、長快は快慶の弟子の仏師です。
高さ1.2mほどで、快慶の弟子らしく、優美な姿です。
長谷寺の十一面観音は、洪水で流れ着いた巨大な神木が祟りを為すので、
これを彫って観音像にしたという伝承があります。

「善女龍王像」 定智筆 平安時代 久安元年(1145) 和歌山・金剛峯寺 国宝
水006

部分
水007

八大龍王は水中に住み、雨乞いの対象となっています。
善女龍王はその中の一尊で、弘法大師空海が京都の神泉苑で雨乞いの祈祷を
行なったときに現れ、国中に雨を降らせたということです。
冠を被り、宝珠を載せた盤を持ち、裾から尻尾が覗いています。

善女龍王は男性像としても女性像としても描かれ、2015年に東京国立博物館で開かれた
「没後400年特別展 長谷川等伯」では女性の姿の善女龍王が展示されていました。

「没後400年特別展 長谷川等伯」の記事です。

鎌倉三代将軍源実朝は、長雨で民衆が苦しんでいる時、次のような歌を詠んでいます。

  時により過ぐれば民の嘆きなり八大龍王雨やめ給へ

「天稚彦物語絵巻」 江戸時代 17 世紀 サントリー美術館
水005

御伽草子の天稚彦物語(あめのわかひこものがたり)で、蛇の姿をした天稚彦が
水中から娘の前に現れています。
天稚彦物語は日本版の七夕説話です。

蛇や龍は水と係わりの深い生き物として表現されています。
また、元はインドで河の神だった弁才天の像も、水とつながりのある神として
展示されています。


日本美術を「水」という視点で捉えた、興味深い展覧会です。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は、「没後100年 宮川香山」展です。
会期は2016年2月24日(水)から4月17日(日)までです。

宮川001


【2015/12/24 19:46】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「三井家伝世の至宝」展 日本橋 三井記念美術館
三越前
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日本橋の三井記念美術館では三井文庫開設50周年、三井記念美術館開館10周年記念特別展II、
「三井家伝世の至宝」展が開かれています。
会期は2016年1月23日(土)までです。
12月28日(月)~1月4日(月)は年末年始の休館日です。

「玳皮盞」 江西省吉州窯 
 南宋時代 12~13世紀 重要文化財

室町三井010

玳皮盞(たいひさん)とは天目茶碗の一種で、タイマイの甲羅(べっ甲)のような
模様の出ている物を言います。
見込に二羽の尾長鳥と蝶、底に梅花が描かれ、鸞天目(らんてんもく)とも呼ばれ、
見込の細かい地模様の華やかな茶碗で、小堀遠州が所持していました。

「粉引茶碗 銘 三好粉引」 朝鮮時代 16世紀
三004

12月12日までの展示です。
粉引茶碗は高麗茶碗の一種で、生地に白化粧をした上に釉を掛けていて、
粉を吹いたような肌をしています。
釉の掛け残しの火間(ひま)がくっきりと付いています。
戦国時代の武将、三好長慶(1522-1564)が所持していたので、この名があります。

「奥高麗茶碗 銘 深山路」 桃山時代 17世紀
三井003

松平不昧の所持していた唐津茶碗です。
高麗茶碗に近い風格を備えている品を奥高麗と呼ぶとのことです。

「志野茶碗 銘 卯花墻(うのはながき)」 桃山時代・16~17世紀 国宝
室町三井002

茶室に置かれています。
白い釉を垣根に咲く卯の花に見立てています。
切り立った形で、歪みを持たせ、へらの跡も付け、桃山風の豪快な姿を
しています。
ぷつぷつと気泡の浮いた肌も鮮やかで力強さがあります。

名は箱の裏蓋に貼られた色紙に書かれた古歌に拠っています。

 山里の卯の花墻のなかつ道 雪踏み分けし心地こそすれ

「古今和歌集(元永本)」 藤原定実筆 平安時代 12世紀 東京国立博物館 国宝
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12月12日までの展示です。
室町三井家から東京国立博物館に寄贈されています。
古今和歌集が完全に残る冊子本として現存最古の写本で、
雲母摺の料紙に藤原定実が仮名書きしています。
藤原定実は藤原行成の曾孫です。

 よのなかにさらぬわかれのなくもがなちよもといのる人のこのため

                                    在原業平
 
 白雪の八重ふるしけるかへる山かへるがえるも老いにけるかな

                                   在原棟梁

「聚楽第図屏風」 六曲一隻 桃山時代 16世紀
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聚楽第は豊臣秀吉が京都に建てた御殿で、甥の豊臣秀次に譲られましたが、
秀次の切腹後に取り壊され、詳しいことは分かっていません。

この屏風では四層以上の高さの天守閣がそびえています。
安土桃山時代の城壁は安土城も大坂城も黒漆を塗った黒壁ですが、
この屏風では白壁です。
天守閣の左下には現在数少ない聚楽第の遺構として残る梅雨の井と思われる
井戸も描かれています。
秀次は喘息持ちで、咳をする声が聚楽第の外まで聞こえたそうです。

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「東福門院入内図屏風」(左隻) 四曲一双 江戸時代 17世紀 重要文化財
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東福門院和子(1607-1678)は2代将軍徳川秀忠と江の娘で、後水尾天皇の許に
元和6年(1620年)に入内しています。
その時の華やかな行列の模様を描いたもので、元は絵巻の形だったらしく、
目録も付いています。
井伊、酒井、松平などの幕臣の名前も見えます。
東福門院の乗った牛車は二頭立てで、葵の紋が付いています。

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「熊野御幸記」 藤原定家 鎌倉時代 建仁元年(1201) 国宝
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後鳥羽上皇の熊野御幸に随行した藤原定家の23日間の旅の記録で、
書き損じの跡もあります。
あちこちで歌会を催したり、暑い日でハエが多かったり、耐え難い寒さだったりと、
臨場感にあふれた記録です。
満願寺の僧に供物について不満を言われたりしているのも面白いところです。

「駿河町越後屋正月風景図」 江戸時代 19世紀
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右が呉服を扱う江戸本店、その奥が両替店、左が木綿を扱う店です。
通りの延長に富士山が見えるように一帯の町割りがされていたことが分かります。
三井の紋所入りの大風呂敷を担いだ男や、正月らしく萬歳も見えます。
振舞い酒に酔ったのか、挟み箱を担いだ中間(ちゅうげん)に手を引かれている侍もいて、
のどかな光景です。

「舟月蒔絵二重手箱」 室町時代 16世紀
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蒔絵で萩・菊・桔梗・薄を描き、蓋の表に、夜・雲・遅、裏に秋・水・来の字が
葦手絵(字を絵の中に溶け込むように描く技法)で描かれています。
「和漢朗詠集」の「秋水漲来船去速 夜雲収尽月行遅」の詩に拠っています。

「月宮殿蒔絵水晶台」
象彦(西村彦兵衛) 製 明治~昭和初期 

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三井家の保有する大きな水晶球を置くための台です。
水晶を月に見立て、上の板には雲がたなびき、下の板には月にある宮殿といわれる
月宮殿と海中の岩が描かれています。
三井鉱山で採れた水晶、孔雀石、方解石、黄銅鉱などが岩として貼り付けられ、
さまざまな色に光っています。

「銅製船氏王後墓誌」 戊辰年(668) 国宝
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現存する日本最古の墓誌で、渡来系氏族である船氏の王後が推古・舒明の両朝に仕え、
641年に没し、668年に夫人とともに河内国松岡山に改葬された、とあります。

「短刀 無銘正宗 名物日向正宗」 鎌倉時代 14世紀 国宝
三井002

豊臣秀吉から石田三成に下され、三成から妹婿の福原直高に与えられ、
関ヶ原の戦いで大垣城の守将だった直高から水野日向守勝成が分捕っています。
その後、紀州徳川家に渡り、昭和の始めに三井家の所有となっています。
細身で、反りの無い姿です。

「雪松図屏風」 六曲一双 円山応挙 江戸時代 18世紀 国宝
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左隻
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右隻
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雪の晴れ間の澄み切った空気の中に立つ松の木です。
穏やかな金地に雪の鮮やかな白が映えています。
輪郭線を使わずに描かれた、立体感のある作品で、特に右隻の松の枝は
こちらに向って張り出しているように見えます。
お正月によく展示される屏風です。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は「三井家のおひなさま」展です。
会期は2016年2月6日(土)から4月3日(日)までです。

もう、おひなさまの話が始まりました。


【2015/12/22 19:57】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
『-水墨最前線2015-山口英紀 「追憶」』展 日本橋髙島屋
日本橋
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日本橋髙島屋美術画廊Xでは『-水墨最前線2015-山口英紀 「追憶」』展が
開かれています。
会期は12月28日(月)までです。

山口英紀さん(1976~)は千葉県出身で、写真を元にした細密な写実画を描いています。
写真を上からなぞるのではなく、横に置いて、水墨を使って和紙に模写しています。

「昭和の記憶」 紙本水墨 2015年
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髙島屋を描いていますが、並んでいる自動車の様子から見て、
かなり昔の情景のようです。
日本橋髙島屋の開店は1933年のことです。

「歳月はまぶしかりけり」 紙本水墨 2015年
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3枚はそれぞれ時代が違い、左は現在建設中の隣のビルが完成した姿も
描かれています。

「九里香」 紙本水墨 2015年
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広大な東京のパノラマです。

部分
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今は解体された国立競技場も見えます。

「追憶 1952(日本橋)」 2015年
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未使用の官製年賀はがきに描いています。
1964年の東京オリンピックに合わせて建設された首都高速道路が
日本橋を跨いでしまう前の情景です。

「追憶 1955(都電都バス)」 2015年
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ボンネットバスが走っています。

「追憶 1961(数寄屋橋公園」 2015年
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細いウエストに裾の広がったスカートの女性も、今は喜寿の頃でしょうか。


山口さんの作品は、モノクロの色調と墨のかすかな滲み具合が時代を感じさせ、
観ていると懐かしい思いがしてきます。


【2015/12/20 19:11】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「陽はまた昇る 小林敬生展 -版画 1972~2015-」 日本橋髙島屋
日本橋
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日本橋髙島屋美術画廊では「陽はまた昇る 小林敬生展 -版画 1972~2015-」が
開かれています。
会期は12月22日(火)までです。

小林敬生さん(1944-)は松江市出身で、木口木版による細密な版画を制作し、
現在は多摩美術大学名誉教授です。

木口木版とは木材を輪切りにした硬い面に彫る版画で、細密な表現が可能です。
木口木版は材料の制約から本来は小さい画面ですが、小林さんは版木を組合わせて
大きな画面の作品に仕上げています。

展覧会では初期の作品から最新作まで、約40点が展示されています。

「漂白No.8」 1981年
小林002

シュルレアリスム風の作風で、魚や植物などが描かれています。
木版画とは思えないような細密な表現です。

版画集「静止した刻」より「早暁・a」 1984年
小林003

シーラカンスのような魚が空中に浮かんでいて、時間というものを感じさせます。

世田谷美術館では12月20日(日)から2016年3月27日(日)まで、
「〈それぞれのふたり〉シリーズ 小泉淳作と小林敬生」展が開かれています。

小林001


【2015/12/19 18:30】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「うさぎや Cafe」 上野
上野広小路
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「うさぎや Cafe」は上野の黒門小学校の横にあります。
場所は台東区上野1-17-5です。

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どら焼きで有名な、上野広小路の「うさぎや」の4代目の出しているお店で、
今年の7月にオープンしたばかりです。
営業時間が変わり、9時から18時、水曜日定休になりました。

簡素なつくりのとても小さなお店で、全席禁煙、大きな白熱灯が下がっています。

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メニューはお店の方がていねいに説明してくれました。
「うさぎや」のどら焼きはメニューにありません。
パンケーキを出すことを検討中だそうです。

水はハワイの超軟水を使っているとのことで、お店でも販売しています。
とてもなめらかな味わいで、お茶や料理に合いそうです。

注文の都度挽いて淹れるコーヒーは760円です。

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グレーの地にターコイズブルーの重なった、温か味のあるカップに入っています。
このカップはなかなか素敵でした。
酸味系で、すっきりとして飲みやすく、美味しいです。

こちらは、「うさぎや」の創業者の名前にちなんだ、喜作羊羹とお茶のセット760円です。

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お茶は煎茶、ほうじ茶、玄米茶、冷煎茶から選べるので、ほうじ茶にしました。
ティーバッグにもお店の可愛いロゴマークが付いています。

羊羹は練り羊羹と抹茶羊羹の盛り合わせで、上品な味わいです。

個性的で、落着きのある、居心地の良いお店です。

お店のHPです。


【2015/12/18 19:24】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「三浦啓子グラスアート展 光の軌跡」 ノエビア銀座ギャラリー
銀座
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株式会社ノエビア銀座本社ビル1階ギャラリーでは2016年1月8日(金)まで、
「三浦啓子グラスアート展 光の軌跡」が開かれています。
場所は中央区銀座7-6-15です。

三浦啓子さんは厚い板ガラスをハンマーで割って成形し、エポキシ樹脂でつなぎ合わせる
、「ロクレール」という、独自の技法に拠って作品を制作しています。

ステンドグラスの一種ですが、堅固な力強さと手作りの自由さ、親しみやすさを感じます。

バラを表した、大きな電気スタンドです。

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松をイメージした衝立で、縦の直線が印象的です。

三浦002


ブロックを積み上げて光の壁をつくっています。

三浦003


三浦啓子さんの作品は国立博物館平成館の大階段を上がったところの窓にもあります。

三浦IMG_0363


【2015/12/17 19:38】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「パリ・リトグラフ工房idemから-現代アーティスト20人の叫びと囁き」展  東京ステーションギャラリー
東京
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東京駅の東京ステーションギャラリーでは、「君が叫んだその場所こそがほんとの世界の
真ん中なのだ。パリ・リトグラフ工房idemから-現代アーティスト20人の叫びと囁き」展が
開かれています。
会期は2016年2月7日(日)まで、入館料は一般1000円です。

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パリのモンパルナスにあるリトグラフの工房、「idem(イデム)」で制作された20人の
アーティストの作品、約130点が展示されています。

この展覧会は、原田マハさんの最新の小説「ロマンシエ」と連動する企画でもあります。
「ロマンシエ」では、パリに渡った主人公がidemを通じてさまざまな人たちに出会い、
ここで制作された作品による展覧会が日本で開かれるまでが描かれているそうです。

出展作家は以下の通りです。

ジャン=ミシェル・アルベロラ、キャロル・ベンザケン、フィリップ・コニェ、ダミアン・ドゥルベ、JR、
ウィリアム・ケントリッジ、ピエール・ラ・ポリス、李禹煥、デヴィッド・リンチ、ポール・マッカーシー、
南川史門、森山大道、プリュンヌ・ヌーリー、岡部昌生、フランソワーズ・ペトロヴィッチ、
レイモンド・ペティボン、辰野登恵子、バルテレミー・トグォ、グザヴィエ・ヴェイヤン、やなぎみわ

ピエール・ラ・ポリス 「夜に光る君の巨大なステッカーVI」 2007年
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マンガ風の作風です。

デヴィッド・リンチ 「頭の修理」 2010年
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映画監督でもあるデヴィッド・リンチの作品、15点が展示されています。
荒廃した、不穏な空気の作品群です。

やなぎみわ 「無題II」 2015年
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荒々しさがあり、リトグラフらしいタッチです。


さまざまな作風の作品が揃った、刺激のある展覧会です。

展覧会のHPです。


【2015/12/15 19:55】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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