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「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」展 東京国立博物館
上野
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上野の東京国立博物館平成館では、特別展、「アラビアの道-サウジアラビア王国
の至宝」が開かれています。
会期は3月18日(日)までです。

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交易路として人と文明が行き交ったアラビア半島について、前期旧石器時代の石器から
サウジアラビア王国初代国王の遺品まで、約400点が展示されています。
総合文化展観覧料で観覧出来ます。

入口のホールです。

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下の真中 「礫器」 シュワイヒティーヤ 前期旧石器時代オルドワン文化・100万年以上前 
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旧石器時代、200万年の期間のアラビア半島は湿潤な気候の時期が数回あったそうです。
人類はこのアラビア半島を通って出アフリカを果たしています。

「石皿」「馬」 マカル 新石器時代・前6500年頃 
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マカルはアラビア半島南西部の内陸にある遺跡です。
石皿は穀物をすりつぶすための道具です。
農業を行ない、馬を家畜として飼育していたことが分かります。

「人形石柱」 カルヤト・アルカァファ 前3500~前2500年頃 砂岩
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「祈る男」 タールート島 前2900~前2600年頃
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タールート島はペルシャ湾にある島です。
顔立ちとポーズはシュメールの影響を、大きさと服装は湾岸地域の独自性を
示しているそうです。
メソポタミア文明が興るとアラビア半島の湾岸地域はディルムンと呼ばれ、
交易活動が盛んになります。

「柱の台座または祭壇」 タイマー 前5~4世紀 砂岩
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タイマーはアラビア半島北西部の内陸にあるオアシス都市で、エジプトと
メソポタミアの間にあります。
エジプトのイシス神や聖なる牛のアピスと、メソポタミアの神官が彫られていて、
二つの文明が入り交じった、とても興味深い造形です。

「アラム文字による奉献碑文」 タイマー 前4世紀頃 砂岩
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アラム語はアラビア半島から現れたアラム人の言語で、メソポタミアから
ペルシャまで広まっています。
イエスもアラム語を話していたとされています。

「ラテン語碑文」 マダーイン・サーリフ 157~177年頃 砂岩
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マダーイン・サーリフはアラビア半島北部の紅海近くにある、ナバテア人の都市です。
ナバテア人は陸上交易で栄え、王国を築きますが、106年にローマ帝国の属州に
なっています。
ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス時代の城壁改修を記念した石碑です。

「ナバテア文字による墓碑」 タイマー 203年 砂岩
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「まぐさ」 カルヤト・アルファーウ 前3~後3世紀 石灰岩
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まぐさは出入口や窓の上部に架けられる横材です。
カルヤト・アルファーウはアラビア半島南部にあったオアシス都市です。

「葬送用ベッドの飾金具と脚」 カルヤト・アルファーウ 1世紀前半 金銅と青銅
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「男性頭部」 カルヤト・アルファーウ 前1~後2世紀頃 青銅
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等身大の人物像の一部で、鼻は高く、ギリシャ・ローマ風です。

「葬送用マスクと装身具」 テル・アッザーイル 1世紀頃
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石棺に埋葬されていた6歳前後の少女の副葬品です。
テル・アッザーイルはペルシャ湾近くにあります。

「クーファからマッカへの里程標」 ダルブ・ズバイダ 8世紀後半 花崗岩または玄武岩
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7世紀にマッカ(メッカ)で始まったイスラム教はアラビア半島に広がり、
その興隆と共に巡礼路が整備されていきます。
クーファはイラクの都市です。

「まぐさ」 ハウラー 12世紀 漆喰
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クルアーン(コーラン)第2章255節の一部が彫られています。

「クルアーン(コーラン)」 オスマン朝時代・16~17世紀
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アラビア語で書かれたものだけがクルアーンであって、他の言語に訳されたものは
クルアーンとはされません。
聖書が日本語で書かれていても聖書であるのと違うところです。

「カァバ神殿の扉」 オスマン朝時代・1635または1636年  木芯、打出銀張、鍍金
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マッカ(メッカ)のカァバ神殿はイスラム教の最高の聖所です。
オスマン朝のスルタン、ムラト4世が寄進した扉で、1930年代まで使われていました。
オスマン朝は1517年からメッカの支配者となりました。

「アブドゥルアジーズ王の上衣」 20世紀 木綿
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サウード家によるアラビア半島の征服は18世紀に始まり、2度の建国と崩壊を
繰り返しています。
現在の王国はアブドゥルアジーズ(1876年~1953)が1932年に建国しています。
サウジアラビアとはサウード家のアラビアという意味です。
身長は2mもあったということで、かなり丈の長い上衣です。
現在の第7代、サルマーン国王は初代アブドゥルアジーズの25番目の男子です。

サウジアラビアは砂漠と石油とイスラム教の国というイメージが強いですが、
数多く展示されているイスラム教以前の遺物を見ると、古代から交易路として
栄えていたことがよく分かります。

2月4日までは前庭に張られたテントで、毎日先着1000名に無料でアラビアコーヒーと
ナツメヤシがふるまわれます。
砂漠ならぬ残雪の中のおもてなしです。

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展覧会のHPです。


同じ東京国立博物館の平成館では特別展、「仁和寺と御室派のみほとけ
― 天平と真言密教の名宝 ―」が開かれています。
会期は3月11日(日)までです。

「仁和寺と御室派のみほとけ」展の記事です。


【2018/01/30 20:56】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
カフェ「Woodwork Welcome Coffee」 御徒町
仲御徒町
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「Woodwork Welcome Coffee」は御徒町公園の隣にあります。
場所は台東区台東4-14-8です。

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家具店の中のお店で、地下は家具工房になっているそうです。

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ガラス張りの壁の店内は明るくすっきりとして、10席ほど、全席禁煙です。
定休日は火曜、水曜です。

カフェラテ400円。
そして、季節限定の自家製栗の渋皮煮250円です。
お店に行ったのは少し前で、先日また行った時はこのメニューはもうありませんでした。

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注文の都度、挽いて淹れるコーヒーはたっぷりあって、
ラテアートもきれいで美味しいです。

お店の方の応対も親切で、気持ちの良いお店です。


【2018/01/28 18:21】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ―」展 東京国立博物館
上野
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上野の東京国立博物館平成館では、特別展「仁和寺と御室派のみほとけ
― 天平と真言密教の名宝 ―」が開かれています。
会期は3月11日(日)までで、会期中かなりの展示替えがありますので、
展覧会のHPでご確認下さい。

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真言宗御室派総本山、仁和寺と御室派寺院の寺宝を展示する展覧会です。

仁和寺は光孝天皇(830-887)の勅願で建立が始まり、子の宇多天皇(867-931)によって
落成しています。
以来、皇族が寺に入るなど、皇室と関係の深い寺院となっています。

「三十帖冊子」 空海ほか筆 平安時代・9世紀 仁和寺 国宝 
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遣唐使の一員として唐で学んだ空海が書写した経典類の小さなノートで、
三十帖あることからこの名が付いています。
空海の字の他に唐の写経生の字もあります。

「高倉天皇宸翰消息」 高倉天皇筆 平安時代・治承2年(1178) 仁和寺 国宝 
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2月12日(月・休)までの展示です。
高倉天皇(1161-81)が兄の仁和寺第六世、守覚法親王(1150-1202)に宛てた手紙で、
中宮の平徳子(後の建礼門院)のお産に際し、守覚法親王が孔雀経法による安産の
祈祷を行なったことへのお礼です。
生まれた子が後の安徳天皇ですが、寿永4年(1185)の壇ノ浦の戦いで、
平家一門とともに海に沈んでいます。

「孔雀明王像」 中国・北宋時代・10~11世紀 仁和寺 国宝
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2月12日(月・休)までの展示です。
密教修法の孔雀経法を修する際の本尊で、大きく羽根を広げた孔雀に乗った
蓮華座に坐しています。
通常は一面四臂ですが、この像は三面六臂の珍しい姿です。

他に後醍醐天皇や後陽成天皇などの手紙も展示されています。

「阿弥陀如来坐像」 平安時代・仁和4年(888) 仁和寺 国宝
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仁和寺創建時の本尊で、宇多天皇が父の光孝天皇の菩提を弔うために
造られています。
両脇侍立像とともに展示されていて、お顔はやや角張り、首は短く、
体躯は分厚く堂々としています。

仁和寺は応仁の乱により応仁2年(1468)にすべての伽藍が焼失しています。

江戸時代初期に建てられ、通常は非公開の観音堂の内部が再現されています。
観音堂内部の展示は撮影可能です。

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本尊の千手観音立像
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風神
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雷神
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内陣の壁画の再現
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全国の御室派寺院の仏像も展示されています。

「十一面観音菩薩立像」 平安時代・8~9世紀 大阪・道明寺 国宝
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榧の木の一木造で、きわめて精緻に彫り出されています。
道明寺は藤井寺市にある尼寺で、古代豪族の土師氏の氏寺でした。
菅原道真も土師氏の出です。

「如意輪観音菩薩坐像」 平安時代・10世紀 兵庫・神呪寺 重要文化財 
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神呪寺(かんのうじ)は西宮市の甲山の中腹にあります。
一木造で、河内の観心寺の如意輪観音菩薩坐像と同じような姿ですが、
頭を大きく傾け、右脚を左脚の上にしているところが違います。
毎年5月18日だけ開帳される秘仏です。

「五智如来坐像」 平安時代・12世紀 大阪・金剛寺 重要文化財 
金色に輝く木像で、像高は約20㎝、大日如来を中心にして、四方に4体の如来が
配されています。
お顔は丸く、おだやかな面差しの優美な姿です。

「千手観音菩薩坐像」 平安時代・12世紀 経尋作 徳島・雲辺寺 重要文化財
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ほとんど開帳されない秘仏で、像内墨書に施主は「女大施主中原氏」とあります。
作者は経尋という仏師で、経尋は眼病だったらしく、墨で両目の絵が描かれ、
「目アへ(キ)ラカニナシタマエ」とも書かれています。
白内障か何かだったのでしょうか。
雲辺寺は四国八十八箇所霊場の第六十六番札所で、標高約900mと
八十八箇所の中で最も高い所にある札所です。
 
「降三世明王立像」 平安時代・11世紀 福井・明通寺 重要文化財
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像高252.4㎝という巨大な像は一木造で、同じ大きさの深沙大将立像とともに
展示されています。
明通寺は若狭の小浜市の山中にある寺院です。

「馬頭観音菩薩坐像」 鎌倉時代・13世紀 福井・中山寺 重要文化財
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三面八臂の像で、頭に馬の頭を戴いています。
慶派の作と思われ、光背も台座が当初のものです。
33年に一度しか開帳されない秘仏なので、彩色も良く残っています。
中山寺は若狭湾を臨む山麓にある寺院です。
若狭国は織田信長の越前攻略の経路から外れていたため、多くの寺院建築や
仏像が焼失せずに残っています。
 
大阪・葛井寺の千手観音菩薩坐像(奈良時代・8世紀)は2月14日(水)からの展示です。
1041本の手を持つ、国宝の天平彫刻です。

真言宗の御室派ということで、各寺院のいろいろの種類の仏像が揃い、
とても見応えのある展覧会です。

仁和寺は桜で有名で、私もむかし、境内の茶店の縁台に座って、五重塔と満開の桜を
眺めながら、うどんをいただいたことを思い出します。

展覧会のHPです。


【2018/01/27 19:49】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「コーヒー ミキ(COFFEE MIKI)玉川店」
二子玉川
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「コーヒー ミキ(COFFEE MIKI)玉川店」は玉川髙島屋本館2階にあります。
場所は世田谷区玉川3-17-1です。

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1階からの吹き抜けに面していて、石張りの壁の店内は完全分煙式、
禁煙席は約30席です。
髙島屋の中のお店で、年齢層はやや高めでした。

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こちらはミルフィーユが評判で、注文しているお客さんが多いようでしたが、
私はランチにトーストサンドイッチ980円とブレンドコーヒー670円にしました。

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サイフォンで淹れるコーヒーは美味しく、サンドイッチはボリュームたっぷりです。

価格は高めですが、クラシックな雰囲気を残したお店です。


【2018/01/26 20:43】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「横山大観-東京画壇の精鋭-」展 山種美術館
恵比寿
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山種美術館では特別展、生誕150年記念、「横山大観-東京画壇の精鋭-」展が
開かれています。
会期は2月25日(日)までです。

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横山大観(1868-1958)の生誕150年と没後60年を記念して、山種美術館の所蔵する
大観の作品、全40点を展示する展覧会です。


横山大観 「作右衛門の家」 1916年

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桐の木が大きな葉を付け、栗の木には青い実が成る中を、男が馬に食べさせる
草を担いで帰って来るところです。
厩では待つ馬が嬉しそうに足掻いています。

横山大観 「喜撰山」 1919年
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百人一首の喜撰法師の歌に拠った絵で、喜撰法師は宇治に住んでいたとされます。

 わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり

金箋紙(裏に金箔を押した鳥の子紙の表面を薄く剥いだもの)に描いた
最初の作品で、明るく温かい地色が映えています。
京都の土の赤さを表現するために使ったと考えられるそうです。

横山大観 「木兎」 1926年 
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森の中のミミズクです。
深々とした木立は墨の濃淡で表され、目にだけ色が入っています。
大観は動物好きだったそうで、この絵にも温かい眼差しが感じられます。


横山大観 「心神」 1952年
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「心神」には「富士山」の意味もあるということです。
大観は富士山の絵を数多く描いています。
晩年の作品で、雲海に屹立する富士の孤高の姿に、
敗戦後の日本の復興への思いを込めているのでしょう。

展覧会では小林古径、前田青邨など、大観の再興した日本美術院の画家や、
同じ東京画壇で活躍した山口蓬春、東山魁夷などの作品も展示されています。

山口蓬春 「卓上」 1952年
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日本画とは思えないようなキュビズム風のモダンな作品ですが、装飾的なところは
やはり日本画です。
山口蓬春は洋画出身ということもあってか、近代西欧画を積極的に取り入れています。

前田青邨 「蓮台寺の松陰」 1967年
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嘉永7年(1854)、前年に続き来航したペリーの艦隊が下田沖に停泊していた時に、
吉田松陰は外国への密航を企て、下田の蓮台寺に潜伏しています。
その時の松陰の姿を描いたもので、研ぎ澄まされた線描によって、行灯の光に
照らされた若々しい松陰の顔を描き出しています。


東山魁夷 「年暮る」 1968年
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親交の深かった川端康成に、京都の風景の残っている今のうちに描くように
奨められ、取り組んだ作品の一つです。
河原町にあるホテルの屋上からの景色で、町家の屋根にも、遠くのお寺にも
雪が積もっています。
手前の家の窓に一つ、明かりが点いていて、いかにも京都の暮れの情景です。

2013年に横浜美術館で開かれた「横山大観展 良き師、良き友」の記事です。

東京国立近代美術館では4月13日(金)から5月27日(日)まで、京都国立近代美術館では
6月8日(金)から7月22日(日)まで、「生誕150年 横山大観展」が開かれます。

山種美術館のHPです。


次回の展覧会は企画展、「桜 さくら SAKURA 2018 ―美術館でお花見!―」です。
会期は3月10日(土)から5月6日(日)までです。


【2018/01/25 21:28】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「ヘレンド展 ― 皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯 ―」 パナソニック 汐留ミュージアム
新橋・汐留
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汐留のパナソニック 汐留ミュージアムでは、「ヘレンド展 ― 皇妃エリザベートが愛した
ハンガリーの名窯 ―」が開かれています。
会期は3月21日(水・祝)まで、休館日は水曜日です

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ヘレンドは首都ブタペストの南西にあり、1826年に製陶所が開かれています。
1839年に磁器製作所となり、ハプスブルク家の保護を受けて発展を遂げ、
ハンガリーを代表する磁器窯となっています。
展覧会では、初期から現代の作品まで、約150件、230点が展示されています。
2月13日までの前期と15日からの後期で、一部展示替えがあります。

「色絵朝顔文皿」 1841年 ブダペスト国立工芸美術館
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初期の製品で、クリームウェアと呼ばれる陶器です。
中央ヨーロッパに自生する朝顔が描かれています。

ヘレンドの磁器は、1851年の第1回ロンドン万博に出品され、イギリスのヴィクトリア女王
からディナーセットを受注するなど、上流階級のための食器として人気を得ていきます。

「色絵金彩ヴィクトリア文ティーセット」 1850年頃 ヘレンド磁器美術館
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「色絵金彩皇帝文コーヒーセット」 1860年頃 ブダペスト国立工芸美術館
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シノワズリ(中国趣味)の入ったセットです。
ヨーロッパの磁器は中国や日本の磁器を手本として発展を遂げています。

「色絵金彩伊万里様式人物飾蓋容器」 1860年頃 ブダペスト国立工芸美術館
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「色絵金彩浮彫人物図ホットチョコレートセット」 1871年 ハンガリー国立博物館
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描かれているのはギリシャ神話の勝利の女神、ニケでしょうか。

「色絵金彩ウエールズ文蜥蜴飾りティーセット」よりクリーム入れ 
1874年 ブダペスト国立工芸美術館

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精巧な透かし彫りが施されています。

「色絵金彩ゲデレー文ティーセット」 1875年頃 ブダペスト国立工芸美術館
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ゲデレーはハンガリーにある、ハプスブルク家の宮殿で、オーストリア皇后
兼ハンガリー王妃エリザベート(1837-98)に好まれていました。
柿右衛門様式を取り入れたセットで、エリザベートがゲデレー宮殿に
滞在する時のために作られています。
エリザベートはハプスブルク家の帝国の一部だったハンガリーに好意的で、
現在もハンガリーで大変人気のある王妃です。

2013年に日本橋三越本店で開かれた、「輝ける皇妃 エリザベート展」の記事です。

「藍地金彩唐草文コーヒーセット」 1890年頃 ブダペスト国立工芸美術館
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濃いコバルトブルーと金彩の組合わせで、セーヴル窯のブリュ・ド・ロワ
(王の青)に倣っています。
化学者の開発した釉薬により、この色が出ています。

「色絵金彩ハンガリアンナショナル文皿」 1896年 個人蔵
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19世紀末にはハンガリーの民族意識が高まり、チューリップ、ザクロ、
カーネーションをあしらった、民族的な様式が盛んになります。
チューリップはハンガリーの国花で、 現在のヘレンドでも人気のある絵柄です。
ハプスブルク家の帝国は第一次世界大戦によって崩壊し、ハンガリーは1918年に
独立しています。

1920年代からはアーティストを採用して、新作に取組み、磁器人形の制作も始めます。

カタ・ガーチェル 「トポルツの聖女」 成形:1944年 ブダペスト国立工芸美術館
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第二次世界大戦後、ハンガリーはソビエト連邦の影響の元、共産主義国となり、
ヘレンドも国有化されます。

マーチャーシュ・ラーコシ夫人 「第二次世界大戦終結10周年記念ティーセット」
 1955年 ブダペスト国立工芸美術館

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赤旗をあしらった、勇ましい絵柄です。
マーチャーシュ・ラーコシ夫人は共産党書記長の妻で、ヘレンドのデザイナーを
務めています。

1991年のソビエト連邦の崩壊に伴い、ヘレンドも1992年に民営化され、
現在へと続きます。

アーコシュ・タマーシュ 「花弁形鉢」 1990年 ブダペスト国立工芸美術館
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釉薬を使わず、磁土に彩色して成形した、古典的なヘレンドとは違った、
モダンな作品です。

ヘレンドはGoogle Mapで見ると田舎の小さな村ですが、工場の従業員1700人で、
美術館も備え、30人の絵付師によって手描きされた磁器を生産しています。

会場の最後にあるシノワズリ風のティータイムセットは撮影可能です。

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展覧会のHPです。


次回の展覧会は、パナソニック創業100周年特別記念展、「日本の四季
― 近代絵画の巨匠たち ―」です。
会期は2018年4月2日(月)から4月15日(日)までです。


【2018/01/24 20:23】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「20th DOMANI・明日展 」 国立新美術館
乃木坂
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六本木の国立新美術館では「20th DOMANI・明日展 未来を担う美術家たち
文化庁芸術家在外研修の成果」が開かれています。
会期は3月4日(日)までで、火曜日は休館日です。

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「DOMANI・明日展」は文化庁が1967年度から実施している、若手芸術家を
研修のため海外に派遣する、「新進芸術家海外留学制度(芸術家在外研修)」の
成果を発表する展覧会で、毎年この時期に開かれています。

今回は「寄留者(パサジェ)の記憶 (memories of “passagers”)」をサブタイトルに
していて、研修後時間の浅い作家たちを集めています。

会場は撮影可能です。


雨宮庸介(1975~) オランダ派遣 現在、ベルリンを拠点に活動

展示室全体で一つの作品にしています。

「スワンソングA(人生最終作のための習作)」 2018年 ライブインスタレーション
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猪瀬直哉(1988~) イギリス派遣 現在、ロンドンを拠点に活動

バレル「バベルの塔シリーズ」より10番 2009年 アクリル、アルキド、油彩、カンヴァス
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荒涼として、ロマン主義的な雰囲気のある景色です。

「文化的景観―国立新宿自然公園」 2012年 アクリル、アルキド、油彩、カンヴァス
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国立新宿自然公園という施設は実際には存在しません。

「文化的景観―希望の漂流」 2013年 アクリル、アルキド、油彩、カンヴァス
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猪瀬さんの作品は空想の写実化と言えますが、大震災を経験した我々には
リアリティーのある光景に見えます。


田中麻記子(1975~) フランス派遣 現在、カシャン(フランス)を拠点に活動

「ロックンローラーの娘」 2007年 鉛筆、水彩、紙
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「Zodiac」 2009年 油彩、カンヴァス
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水彩と油彩で調子は違いますが、共に混沌としています。


中谷ミチコ(1981~) ドイツ派遣

「boat」 2015年
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「空が動く」 2017年
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石膏ボードを彫り込んで彩色した彫刻作品で、斜めから見ると画面が
くぼんでいるのが分かります。


中村裕太(1983~) オーストラリア派遣

中村さんは文化としての陶磁器やタイルの研究を行なっています。

「日本陶片地図 神奈川」 2018年
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日本各地で集めた陶片と絵葉書に、エドワード・S・モースの「日本その日その日」の
文章が添えられています。
モースはアメリカの動物学者で、大森貝塚の発見者として有名ですが、日本の陶器の
研究もしています。


西尾美也(1982~) ケニア派遣

「Self Select : Nirobian in Tokyo」 2017年
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街角でケニア人がいろいろな人に呼び掛けて、衣服を取り換えるプロジェクトです。

場所は台東区谷中の言問通りのようです。
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こちらは秋葉原の万世橋です。
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増田佳江(1978~) アメリカ派遣

「遠い歌 近い声」 2012年 油彩、カンヴァス
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見たものがイメージに昇華されていきます。

「Belle Aisle Aquarium」 2017年 油彩、カンヴァス
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デトロイトにあるアメリカ最古の水族館の展示室です。
自動車産業の町デトロイトは財政が厳しく、水族館の魚も少ないそうです。


mamoru(1977~) オランダ派遣

4本の映像作品で、「あり得た(る)かもしれないその歴史を聴き取ろうとし続ける
ある種の長い旅路、特に日本人やオランダ人その他もろもろに関して」という
長い題のシリーズです。

「第四章 伸ばした手」 2016年 シングルチャンネルフィルム
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「第六章 セブア・テンパ」 2017年 シングルチャンネルフィルム
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「セブア・テンパ」はインドネシア語で「一つの場所」という意味です。
インドネシアはオランダの植民地でした。


三宅砂織(1975~) フランス派遣

ベルリンオリンピック(1936年)に体操選手として参加し、尺八奏者でもあった人物の
アルバムからつくられています。

「The missing shade 29-1」 2017年 ゼラチンシルバープリント
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「The missing shade 31-1」 2017年 ゼラチンシルバープリント
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盛圭太(1981~) ベルギー派遣 現在、パリを拠点に活動

板に糸を張った作品です。

「Bug report(Corpus)」 2018年 木綿、絹糸、壁
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やんツー(1984~) スペイン派遣

「Exanples : モチーフ」 2016年
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シュルレアリスムの絵を立体化したような作品です。

「Exanples : Cut-off(hang/hoisting)」 2016年
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時々、電動ウィンチが音を立てて、材木とスーツケースを吊り上げます。

展覧会のHPです。



【2018/01/23 19:25】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
カフェ「FABRIC(ファブリック)」 東池袋
東池袋
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カフェ「FABRIC(ファブリック)」は東京メトロ有楽町線東池袋駅を出てすぐの
首都高高架下にあります。
場所は豊島区南池袋2-43-16です。

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すっきりした店内は15席、シート席が並び、全席禁煙です。

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ハーフサイズのパニーニとドリンクのセット500円を2つ注文しました。
ツナとチキンです。

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ちょっと時間はかかりますが、ていねいに作られ、温め具合も良く、美味しいです。

池袋駅からも歩いて10分くらいの所にあり、広くはありませんが、くつろげるお店です。


【2018/01/21 21:15】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
『装飾は流転する 「今」と向きあう7つの方法』展 東京都庭園美術館
目黒・白金台
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白金台の東京都庭園美術館では、『装飾は流転する 「今」と向きあう7つの方法』展が
開かれています。
会期は2018年2月25日(日)までです。

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会場は撮影可能です。

7組のアーティストによる「装飾」にまつわる作品が各室に展示されています。

ヴィム・デルヴォワ 「リモワのスーツケースとアタッシェケース」 
 2015年 エンボス加工のアルミニウム

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単調だった平面が華麗に装飾されています。

ヴィム・デルヴォワ 「低床トレーラー」 2014年 「ダンプカー」 
 2012年 レーザーカット加工のステンレス鋼

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壮麗なゴシック建築のようです。

(参考)
2014年に横浜美術館で開かれた「ヨコハマ トリエンナーレ 2014」に出展された、
ヴィム・デルヴォワ(デルボア)の実物大の「低床トレーラー」(2007年)です。

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ニンケ・コスター 「オランダのかけはし」 2017年 シリコーンゴム
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手前には東京滞在中に出会った日本の模様が彫られています。

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江戸時代にオランダとの接点だった長崎の出島の形で、オランダの国章が
スタンプをイメージしてか、左右反転して彫られています。

ニンケ・コスター 「時のエレメント」シリーズ 2017年 シリコーンゴム
オランダの歴史的建造物の一部を型取りしていて、腰掛けることが出来ます。

高田安規子・政子 「Four Seasons Plates」 
 2015年 陶磁器皿、トールペイント用アクリル絵具

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高田安規子・政子 「葉」 2015年 刺繍したテーブルクロス、刺繍絹糸
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テーブルクロスの刺繍からこぼれ落ちた葉が床に散っています。
 
高田安規子・政子 「Jewelry Room」 2017年 装身具、宝石箱、テッコーの壁紙
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室内のくぼみを部屋に見立て、宝石箱を家具にしています。

山縣良和 「神々のファッションショー」 
 2010年春夏コレクションより新しく制作 ミクストメディア
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掃除機のゴミから出てきたような神々です。

山縣良和 インバネスコート 「After Wars」 2018年春夏コレクションより 
 2017年 ポリエステル、ナイロン、レーヨン

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窓から差し込む光で赤が燃え上がっています。

山縣良和 七服神 「THE SEVEN GODS-clothes from chaos-」 
 2013年春夏コレクションより 2012年 ミクストメディア

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盛りに盛った神々です。


コア・ポア 「絨毯」シリーズ
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コア・ポア 「生命の木」 パネルの上のキャンバスにアクリル 2014年
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ペルシャ絨毯のような絵柄を描き出しています。

コア・ポア 「アルゴ船座」 パネルの上のキャンバスにアクリル 2015-16年
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古今東西の文明が散りばめられています。

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大筒を構える侍もいます。

展示作品は庭園美術館の各室の空間と響き合って、とても面白い展覧会です。

展覧会のHPです。


【2018/01/20 19:35】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「上野風月堂本店」
上野広小路
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「上野風月堂本店」は上野広小路の交差点にあります。
場所は台東区上野1-20-10です。

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風月堂は1747年(延享4年)の創業で、風月堂の名は松平定信の命名
という老舗です。
水野忠邦の生母の実家に当たることから、その縁で諸大名の知遇も得たそうです。

2017年11月にリニューアルオープンして、1階にイートインが出来ました。
2階のレストランもリニューアルして、「KANAME」という名前になりました。

イートインは広く、大テーブルを中心に20席、全席禁煙、和の趣きです。

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新登場のゴーフレーシュはイートインの横で焼いていて、パリパリではなく、
柔らかい食感のゴーフルです。
和菓子の八ツ橋に対する生八ツ橋に似た感じです。
間に挟んであるクリームはシュガーバター、キャラメル、季節限定フレーバーの
3種類があります。

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カフェラテ550円とゴーフレーシュキャラメル280円にしました。

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老舗らしい、落着きのあるお店です。


【2018/01/19 20:52】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「第7回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉」展 虎ノ門 菊池寛実記念智美術館
神谷町
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虎ノ門の菊池寛実記念智美術館では「第7回菊池ビエンナーレ展 現代陶芸の〈今〉」が
開かれています。
会期は3月18日(日)までです。

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菊池寛実記念智美術館は、菊池智(1923~2016)が1950年代から収集してきた
現代陶芸の作品を展示するため、2003年に開館した美術館です。
2004年からは隔年で、全国から作品を公募し、「菊池ビエンナーレ展」を開いています。

展覧会では322点の応募作品のうち、入賞5点を含む入選作52点が展示されています。

1月13日にアートブロガーイベントが開かれたので、参加してきました。
写真は許可を得て、撮影しています。

展示の様子です。
落着いた雰囲気の中で、ゆっくり鑑賞できる展示室です。

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大賞 和田的(千葉県) 「表裏」
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蓋物で、ろくろ成形した磁土から削り出すという、他には無い技法に拠っています。
天草の磁土でないと、このようなシャープな形にならないそうです。

優秀賞 津守愛香(滋賀県) 「人魚仏」
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仏様と人魚が合体したような姿で、体をやや傾けていて、額にも目のある三眼に
なっています。
色も面白く、陶磁器と人形の境にあるような作品です。

奨励賞 田島正仁(石川県) 「彩釉鉢」
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人間国宝の三代徳田八十吉に師事していて、鮮やかな釉薬の色と
グラデーションが特徴です。
この色を出すために5回も釉薬を掛けては焼いたそうです。

奨励賞 中田雅巳(石川県) 「SEN」
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紙を丸めたようなような形で、細い線がびっしりと彫り込まれています。
ユリの花が並んでいるようにも見えます。
2つの器の位置関係も作家の指定があるそうです。

奨励賞 釣光穂(石川県) 「Ivy」
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三つ編みにした粘土の紐を積み上げ、籠のような物にしていて、縄文土器も
イメージしているそうです。
実際にはもっと明るい色で、青や紅の紐も入っていて、陶磁器とは思えない、
とても繊細な作品です。

奨励賞は3人とも石川県の方です。

以下は入選者の作品の一部です。

田中陽子(石川県) 「落華―黑―」
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巨大な花を表しているということで、黒光りがして、圧倒的な迫力があります。
最近は、細かい作業を積み重ねて制作した作品を高く評価する傾向があるそうです。

高橋朋子(千葉県) 「蒼掌塞器、Regulus」
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古代東方の神殿のような趣きがあります。
Regulusとは、獅子座にある星の名です。

手前:張蕙敏(シンガポール) 「帰巣」
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植物で型を取り、組み合わせています。
陶磁器を器としてはあまり意識しない、日本人とは違った感性によるものだそうです。
鳥の巣のようにも見え、面白い影も出来ています。

右:伊勢﨑晃一朗(岡山県) 「備前畝壺」
左:渡仁(福岡県) 「上野ヤケ釉鉢」
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伊勢﨑さんの作品は備前焼で、胴に焼けムラである牡丹餅が出て、アクセントに
なっています。
渡仁さんの作品は上野焼(あがのやき)で、釉薬が均質に掛かり、平滑な表面に
仕上がっています。

右:神谷紀雄(千葉県) 「鉄絵銅彩葡萄文陶匣」
左:安永頼山(佐賀県) 「唐津茶盌」

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神谷さんは益子焼窯元の生まれで、鉄と銅で彩色する鉄絵銅彩が特徴です。
1940年生まれで、入賞者の中で最年長とのことす。
安永さんは島根県出身で、唐津焼に魅せられ、茶陶を制作しています。
この展覧会で茶碗が入賞したのは今回が初めてとのことです。

国兼聡美(神奈川県) 「憤怒の猫」
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何に怒っているのでしょうか、着ぐるみを着た猫が不機嫌な顔で立っています。
国兼さんは1996年生まれで、入賞者の中で最年少とのことです。
 
都県別の出品者数を見ると、伝統的な陶芸の産地の茨城、石川、岐阜、愛知、
滋賀、京都、岡山、佐賀などが目立ちますが、伝統とは関係なく、個人の興味で
陶芸を手掛けている作家も多いそうです。

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伝統と新しい感性が交じり合って、伝統工芸展には無い面白さのある展覧会です。

展覧会のHPです。


【2018/01/18 20:00】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「クインテットIV 五つ星の作家たち」展 損保ジャパン日本興亜美術館
新宿
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新宿の東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館では
「クインテットIV 五つ星の作家たち」展が開かれています。
会期は2月18日(日)までです。

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この展覧会は「クインテット」(五重奏)と題して、継続的な作品発表の実績があり、
招来有望な5人の作家を紹介する企画です。
今回は4回目で、最終回とのことで、「具象と抽象の狭間」をテーマに、青木恵美子、
竹中美幸、田中みぎわ、船井美佐、室井公美子の作品、約80点が展示されています。
1月12日に開かれた内覧会に行き、各作家のアーティストトークも聴いてきました。

作品は撮影可能です。

青木恵美子さん(1976~、埼玉県出身)

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「つつまれて」 2010年 アクリル・油彩・パステル・キャンバス 昭和シェル石油蔵
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「INFINITY Blue No7」 2017年 アクリル・キャンバス
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トーク
具体的なものでない、抽象的なものを描こうとしている。
色彩は光であり、神聖なもので、思考の純度が色彩に反映される。
赤は生命の象徴、青は生命の生まれるおだやかな世界。
厚塗りの絵も花弁をつくっているというより、筆跡が花弁のような生命となったもの。
遠近法とは違ったイル―ジョンが表れると良い。

青木恵美子さんは2017年に上野の森美術館で開かれた、「VOCA展2017 
現代美術の展望―新しい平面の作家たち」で、佳作賞・大原美術館賞を
受賞しています。

「VOCA展2017」の記事です。


竹中美幸さん(1976~、岐阜県出身)

右:「新たな物語(電灯)」 2017年 35mmフィルム
左:「新たな物語(カーテン)」 2017年 35mmフィルム
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「緑の隙間」 2017年 水彩・パステル・墨・水彩紙
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トーク
透明な素材を貼った作品で、見る者の気付きを促している。
35㎜フィルムを貼った作品は、着彩ではなく、すべて感光させてつくっている。
実家を壊して無くなっていく物をフィルムに焼き付けたりして、作品にしている。
デジタル化によって消えていくフィルムそのものにも興味がある。
水彩の作品は、物事の起こる予兆、気配といったものを形にしている。


田中みぎわさん(1974~、東京都出身)

「神様の手のひら」 2008年 墨・胡粉・雲肌麻紙・パネル
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「夜長の雨」 2009年 墨・胡粉・雲肌麻紙・パネル
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「波間の子守唄(4枚組)」 2017年 墨・胡粉・石州半紙稀・パネル
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トーク
夏休みに熊本の祖父母の家で遊んだ体験が作品の基になっている。
自分の知らない大きな存在が急な雨や雷を起こしているようで、恐怖と美しさを感じた。
日本画を描いているが、八重山諸島にいた時、残照が雲を照らしていて、
それを赤で表すことに限界を感じた。
白黒の方が五感で感じる風や香り、音などを表現できると思った。
どうさを引かない、生紙(きがみ)を使ったりする。
どうさを引くと、漉きたての生紙の良さが失われてしまう。
今は屋外で描いている。
天草の海で月景色を描いたとき、月の音を聞いた。
月の音を聞いていたのに気付いたと言ってよい。
スケッチをしているうちに、自分の意識が身体の限界を超え、向こうの山々や雲、
空にまで広がっていく。


船井美佐さん(1974~、京都府出身)

「womb-世界の内側と外側はどちらが 内側で外側なのか」
 2009年 アクリル・顔料・麻紙・パネル
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「Hole/桃源郷/境界/絵画/眼底」 2010年 アクリルミラー・木
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右:「まる・さんかく・しかく」 2014年 顔料・木・ステンレスミラー
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トーク
初期には日本画の線描で自分の内面から湧くものを描いて、そこには身体や動物の
イメージも入っている。
「womb」という作品は生命の躍動感を表している。
この絵を見た人から、楽園を描いているようだと言われて、鏡を使った楽園を
イメージした作品をつくった。
楽園とは生命の原風景であり、究極のイメージである。
見ている人が鏡に映ることで、現実が理想の世界に入り込み、ギャラリー空間が
作品の世界と一体となる。
黄色いインスタレーションの題は「まる・さんかく・しかく」で、「しかく」はこの
ギャラリー空間のこと。
うさぎの木馬は神話のモチーフで、人の思いを託す存在。
紫の木馬は脳の中でイメージをつかさどる海馬を表している。
木馬は子供が乗れ、2・3歳の子供は、この世とあの世の間にいる存在でもある。


室井公美子さん(1975~、栃木県出身)

「Santa Cecilia (聖チェチェリア)」 2012年 油彩・キャンバス
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「Psyche (プシュケー)」 2016年 油彩・キャンバス
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トーク
子供の頃の薄暗い実家の経験が作品の基になっていて、この世とあの世の
境に関心がある。
見る人がイル―ジョンを感じ、めまいを覚えるような画面をつくっている。
想像力を働かせてもらいたいので、あまり具象にはしない。
哲学やギリシャ神話を題名にすることが多い。
「ゲートキーパー」はこの世とあの世の間の門番。
「Doxa」は「考え」という意味で、描く時に体を動かしながら考えている過程が表れている。
「Anima」はギュスターヴ・モローの「出現」に想を得ていて、宗教的なものの持つ
死のイメージを画面に入れ込んでいる。

どの方のトークも大変面白く、また作品を観る参考にもなりました。
共通して、自己の内面、過去、異世界に関心があることを特に興味深く思いました。
特に抽象的な作品の場合、見たままを感じても良いのですが、作者の意図を聴くと、
作品の面白さがさらに増します。

展覧会のHPです。

2017年の「クインテットIV 五つ星の作家たち」展の記事です。


次回の展覧会は「FACE展2018」です。
会期は2月24(土)から3月30日(金)までです。

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内覧会が終わった後の42階の美術館のロビーからは新宿の夜景が
輝いているのが見えます。

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【2018/01/16 19:48】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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Author:chariot
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