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「藝大コレクション展 2020―藝大年代記(クロニクル)」 東京藝術大学大学美術館 その1
上野
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東京藝術大学大学美術館では「藝大コレクション展 2020―藝大年代記(クロニクル)」展が
開かれています。
会期は10月25日(日)まで、事前時予約制ではありません。

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先ず、東京藝術大学の前身、東京美術学校が初期に収集した作品の展示です。

「絵因果経」 天平時代 8世紀後半 国宝
芸004

5世紀に漢訳された、釈迦の前世の善行から現世で悟りを開くまでの伝記である、
過去現在因果経を絵入りの経巻にしています。
上段に釈迦の物語が素朴な表現で描かれていて、後の絵巻物につながる形と
考えられます。

伝 狩野永徳 「松鷹図屏風」 桃山時代(16-17世紀)
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部分
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いかにも桃山風の雄渾な屏風絵で、右隻の松には雪が積もり、富士山のような
山も見え、左隻には白鷹が身構えています。

下村観山 「天心岡倉先生(草稿)」 大正11年(1922)
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岡倉天心(1863-1913)は東京美術学校の設立に尽力し、校長として活躍し、
後進の指導に当たりますが、学内の争いから辞職しています。
その後、日本美術院を発足させ、横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山などの
育成に努めています。

西洋画科を指導した黒田清輝は、自分たちの広めた外光派(紫派)
とは異なり、脂派と呼ばれ旧派とされる明治美術界系の高橋由一の
「鮭」や原田直次郎の「靴屋の親爺」なども収集しています。

黒田清輝 「婦人像(厨房)」 明治25年(1892)
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フランス留学時に定宿だった家の女性を描いています。
色彩は明るいのですが、冬の情景なので、冷たい空気も感じます。
黒田清輝は元々、法律を学ぶためにフランスに留学したのですが、絵画に転向し、
師のラファエル・コランに学んだ外光派の技法を日本にもたらします。

高橋由一 「鮭」 明治10年(1877)頃 重要文化財
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高橋由一の代表作です。
長さ120㎝という大きな鮭で、洋画では珍しい極端に縦長の画面に描かれています。
皮のたるみ、塩の粒、縄のほつれまで克明に描かれ、身の赤がとても印象的です。

原田直次郎 「靴屋の親爺」 明治19年(1886) 重要文化財
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ミュンヘン留学時代の作品で、いかにも頑固そうな靴職人の肖像です。
まだ20代前半の絵ですが、顔には逆光気味の陰陰を付けて、表情に
深みを出しています。

黒田清輝は留学先で西洋古典絵画の模写を行ない、美術学校の教官や卒業生も
模写を行なって、日本に持帰っています。

レンブラント作、黒田清輝模写 「トゥルプ博士の解剖講義」 大正2年(1913)納入
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クールベ作、田辺至模写 「セーヌ河畔の娘達」 大正14年(1925)納入
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田辺至(1886-1968)は東京美術学校に学び、後に西洋画科の教授を勤めています。
フランス留学時代の模写です。

これらの模写を観ると黒田をはじめ、東京美術学校の人たちが長い歴史を持つ
西洋絵画を短期間で習得しようとした奮闘努力が偲ばれます。


政府買上げとなり、東京美術学校に管理が移管された作品も展示されています。

狩野芳崖 「悲母観音」 明治21年(1888) 重要文化財
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観音菩薩は中空で水瓶を傾け、その下で童子が観音を見上げています。
仏画を基本にしていますが、西洋風の空間表現も取り入れ、近代日本画の
先駆となった作品です。
狩野芳崖の絶筆で、未完のままで芳崖が亡くなったので、盟友の橋本雅邦が
仕上げています。
狩野芳崖は幕末に狩野派を学び、明治には東京美術学校の設立にも関わった
フェノロサに見出されていますが、東京美術学校の教官就任を前に亡くなっています。

美人画の巨匠並ぶとして、西の松園、東の清方と称された二人の代表作が並んでいます。

上村松園 「序の舞」 昭和11年(1936) 重要文化財
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作品は等身大の大きさで、振り袖姿の若い女性が舞っているところです。
前に伸ばした右手は扇を逆手に持ち、袖を腕に巻いた、華やかな瞬間です。
松園特有の、柔らかな朱色の振袖の裾模様は、彩雲です。
雲母を使っているのか、雲は輝いて見え、フットライトのようです。
帯は格調の高い立矢帯と思われ、帯地は金、模様は鳳凰に桐で、
雲とその上を飛ぶ鳳凰という組合せになります。
髪型はこれも格調高い文金高島田で、かんざしは牡丹の形です。
牡丹も鳳凰と一緒に描かれる花です。
衣装は豪華でありながら、立ち姿は清楚で、緊張感があります。
上村松園は、当時の現代風俗として描くつもりで、息子の上村松篁の奥さんを
モデルにして、髪は京都で一番上手な髪結いさんに結ってもらい、振袖を着せて
構図を取ったそうです。

鏑木清方 「一葉」 昭和15年(1940) 東京藝術大学
美人画img247

樋口一葉を、地味な着物に前掛けをして、針仕事の手を休めている、
市井の女性の姿として描いています。
その顔は意思的で、写真のほとんど残っていない一葉のイメージは、
この絵によるところが大きいです。
手許に置かれた端切れは、一葉の作品、「たけくらべ」を表しています。
吊ったランプが夜なべ仕事と、明治という時代を思わせます。

小林古径 「不動」昭和15年(1940)
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簡潔な線描で、衣と火焔の赤が際立っています。
小林古径は昭和19年に東京美術学校の教授に就任しています。
戦争末期で深刻な物資不足だった時代、同じく教授だった梅原龍三郎は海老や卵の
入った豪華な弁当を持ってきたのに、小林古径のは貧弱なサツマイモだけで、
二人が平然と食べているのを見た助教授の山本丘人は驚いています。


1900年のパリ万博に東京美術学校から出品した作品や、素描のコレクションの
展示もあります。


学校買上げとなった卒業制作も展示されています。

横山大観 「村童観猿翁」 明治26年(1893)
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横山大観は東京美術学校の第1回の卒業生で、1896年の図案科の新設時には
教官となっています。
美術学校の卒業制作で、猿使いの男は教官の橋本雅邦、子供たちは
大観ら同級生とされています。

島田佳矣 「徳川式室内装飾」 明治27年(1894)
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部分
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部分
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一点透視図法の見本のような構図で、武家御殿の内部の屏風絵、三福対、
欄間彫刻、天井画などが細密に描き込まれています。
島田佳矣(しまだよしなり、1870-1962)は加賀前田家の陪臣の子で、横山大観や
下村観山らと同じく東京美術学校の1期生として日本画を学んでいます。
工芸デザインを研究し、後に東京美術学校の図案科教授も勤め、工芸の復興に
尽力しています。

和田英作 「渡頭の夕暮」 明治30年(1897)
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和田英作(1874-1959)は東京美術学校で黒田清輝に学び、西洋画科の
最初の卒業生となっています。
外交派の画風で多摩川の矢口の渡しを描いています。

広島晃甫 「玉乗り」 明治45年(1912)
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広島晃甫(1889-1951)は徳島市出身で、日本画科を卒業しています。
思い切りの良い線描で、顔の表現は古代エジプト絵画を取り入れ、
玉ということで、後ろに竜が居ます。

小磯良平 「彼の休息」 昭和2年(1927)
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作品のモデルは神戸第二中学校以来の友人の竹中郁で、ラガーシャツ姿で
休んでいるところです。
勢いの良い作品で、シャツやソックス、パラソルの縞模様が眼を惹きます。
さすが神戸らしい、昭和2年とは思えないモダンな雰囲気があります。

杉山寧 「野」 昭和8年(1933) 
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薄の繁る野原に埋れるようにして遊ぶ子供たちの情景です。
活き活きとした線描で、遠景の描写も行き届いています。
1932年に描いた「磯」や1934年の「海女」にしてもこの作品にしても、
実に卓越した描き振りで、若い時の作品は後年とは違った冴えがあります。

高山辰雄 「砂丘」 昭和11年(1936)
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砂丘にすわるセーラー服姿の女性を描いています。
後の高山辰雄夫人で、この頃は女子美術専門学校の生徒だったとのことです。
若々しい力作ですが、後の画風とはかなり違って、色も形もくっきりと描いています。
ただ、人物の顔が正面からこちらを見ているのは後の作品と同じです。
その、すっきりとした描線の顔には昭和モダンの雰囲気があります。


卒業制作の自画像の展示については別の回に載せることにします。

展覧会のHPです。


【2020/09/29 19:12】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」 広尾 山種美術館
恵比寿
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広尾の山種美術館では特別展、「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」が
開かれています。
会期は11月15日(日)までです。

動物画の名手だった竹内栖鳳の描いた動物の絵など、動物を描いた作品の展示です。

竹内栖鳳 「班猫」 1924年 重要文化財
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竹内栖鳳の代表作で、4年振りの公開とのことです。
沼津の八百屋さんの飼い猫が、宋の徽宗(きそう)皇帝の描いた猫と
同じ柄なので、貰い受けて京都に連れて帰り、描いた作品です。

徽宗皇帝の猫の絵は、目を見開いて前足を舐めている姿ですが、
こちらは背中を毛繕いしながら、こちらを見上げた瞬間を捉えています。
細かい筆遣いで柔らかい毛並みの柔らかさまで表現され、瞳孔の細く
なった緑色の目が印象的です。
「班猫」は普通、「斑猫」と書くところですが、竹内栖鳳の箱書きには
「班猫」となっているそうです。

竹内栖鳳 「緑池」 1927年
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一匹の蛙が池から顔を出しています。
いかにも暖かそうな春の情景です。
竹内栖鳳は蛙を描く時も徹底的に写生を繰り返し、見事にその姿を捉えています。

竹内栖鳳 「潮来小暑」 1930年
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水路を行く小舟に牛も乗せられています。
中国江南の楊州に似ているということで、竹内栖鳳はよく潮来を訪れています。
ヨーロッパ旅行でターナーやコローなどから強い影響を受けたということですが、
この作品も西洋画のような雰囲気があります。

竹内栖鳳 「鴨雛」 1937年頃
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暖かい春の日、黄色、白、茶色のアヒルのヒナがかたまって、にぎやかな鳴き声が
聞こえてきそうです。

竹内栖鳳 「艸影帖・色紙十二ヶ月のうち、鯛(一月)」 1938年頃
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めでたい画題で、鯛の淡い色合いがうまく表されています。

西村五雲 「白熊」 1907年
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大作で、白熊がオットセイを捕まえている姿です。
西村五雲(1877-1938)は師の竹内栖鳳に倣って、動物画を得意としています。
若い時の力作で、京都市動物園で写生した白熊を元に自然の中の荒々しい姿を
写実的に描いています。
師の竹内栖鳳がアントワープの動物園でライオンを写生して、1902年に「大獅子図」を
描いたのに倣っての作品と思われます。

西村五雲 「松鶴」 1933年
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松に鶴という、長寿を表す目出度い絵柄で、鶴の羽毛まで細かく描き込まれています。

西山翠嶂 「狗子」 1958年
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写実的で、毛並みの質感まで感じさせます。
ちらりとこちらを見ているところなど、可愛いところを見せています。
西山翠嶂(1879-1958)は竹内栖鳳に師事し、後に女婿となっています。

山口華楊 「生」 1973年
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山口華楊(1899-1984)は西村五雲に師事し、動物画を得意としています。
戦前の夏の日に但馬の農家で子牛を見て、その命に感動した記憶を元に
20年以上後に描いた作品です。
脚もまだ頼りなげですが、柔らかな光に包まれ、優しい目でこちらを見ています。
板壁にも時を経た風合いがあります。

上村松篁 「閑鷺」 1977年
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伏見の酒蔵に裏手にあった、枝振りの気に入った柳に白鷺を配したそうです。
柳を揺らす風の中の白鷺には気品があります。
上村松篁(1902-2001)は竹内栖鳳に師事した上村松園の子で、奈良の自宅に
動物園ほどもある鳥小屋を作って多数の鳥を飼い、熱心に写生しています。


柴田是真 「墨林筆哥」1877-88年
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漆を使って描く漆絵による、琵琶を弾く蛙です。
蛙の鳴き声を琵琶になぞらえているのでしょうか。
柴田是真(1807-1891)は漆絵の技法で有名です。

横山大観 「木兎」 1926年 
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森の中のミミズクです。
深々とした木立は墨の濃淡で表され、目にだけ色が入っています。
大観は動物好きだったそうで、この絵にも温かい眼差しが感じられます。

安田靫彦 「うさぎ」 1938年頃
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ふっくらした白兎が脚を伸ばしてリラックスしているところです。
赤い目と紫の竜胆が対になっています。

奥村土牛 「兎」 1947年頃
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奥村土牛らしい、耳を立ててきりりとした描きぶりですが、丸い姿に愛らしさがあります。

奥村土牛 「鹿」 1968年
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簡潔な描写で、鹿の体のしなやかさと命の張りを捉えています。


(併設展示)
守屋多々志(1912-2003)の「西教伝来絵巻試作」上下巻が展示されています。
2019年のローマ教皇フランシスコの来日を記念し、ヴァチカンに献呈される品で、
日本での公開は今回のみです。

守屋多々志 「慶長使節支倉常長」 1981年
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列柱のあるテラスからローマの街並を眺める支倉常長です。
支倉常長は伊達政宗の命でローマに派遣され、元和元年(1615年)に
法皇パウルス5世に謁見しています。
はるばるとここまで来た思いであろう常長は、白と黒の市松模様のタイルに
合わせるように、白の小袖に黒の裃というシックな姿で描かれています。
一緒にいる犬も白と黒です。


【2020/09/27 21:23】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「都市の輪郭―久野彩子・八木夕菜展」 日本橋髙島屋
日本橋
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日本橋髙島屋美術画廊Xでは「都市の輪郭―久野彩子・八木夕菜展」 が
開かれています。
会期は10月5日(月)までです。

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久野彩子さん(1983~)はロウで作った原型に金属を流し込むロストワックス鋳造により、
増殖し、変貌する都市の姿を表現しています。

「transform-hemisphere」 アルミニウム青銅、ブロンズ
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都市が半球の形に広がっています。

「transform-square」 ブロンズ、真鍮
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こちらは四角い形に延びています。

「grow-wheel」 古道具(車輪)、真鍮
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植物のように増殖しています。

「pole」 古道具(トレー)、真鍮
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建物に根を下ろしています。

都市の拡大する様は植物の増殖するのと似ていますが、それを無機的な金属で
表現しています。

・・・・・

八木夕菜さん(1980~)は写真家で、建築事務所勤務の後、国内外の建築を撮影した
素材による作品を制作しています。

「City of Bangkok」
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写真の一部をアルゴリズムによって崩しているそうです。

「Hotel Okura, Tokyo」
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ホテルオークラ旧本館のロビーです。

「KENCHIKU Apartment in Berlin」
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アクリルの立体によって写真が浮き上がって見えます。

「Anonymous_B」
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デッサウにあるバウハウスの建物の「BAUHAUS」の字も浮いて見えます。


見慣れた都市や建築も写真の少しの加工により、違った姿を現します。

2018年に銀座のポーラ ミュージアム アネックスでは、『八木夕菜「NOWHERE」』展が
開かれていました。

『八木夕菜「NOWHERE」』展の記事です。


【2020/09/26 18:40】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「第二回 万葉の言の葉」展 丸善丸の内本店
東京
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丸善丸の内本店4階ギャラリーでは、「第二回 万葉の言の葉」展が開かれています。
会期は9月29日(火)までです。

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万葉の時代の言葉から感じるイメージを表現した、日本画と陶芸、6人の作家の
作品の展示です。

阿部観水 「露茂谷」
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岩魚がウロコの模様まで、写実的に描かれています。
露茂谷は飛騨の民話に出てくる、岩魚の棲む谷です。
鯰や泥鰌、海老などの作品もあります。

磯部光太郎 「Biotop 雨宿り」
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雨蛙の留まった蕗が揺れ、金地に緑色が映えています。

楚里勇己 「イロノツラナリ」
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赤と白の芥子の花が連なり、茎は流れのように揺れています。

蒼野甘夏 「令月気淑く向かい風をゆけ」
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「令月気淑く」は万葉集にある言葉で、令和の年号の基になっています。
絵は古事記にある因幡の白兎のお話で、兎のコスチュームの女性が
波の上を跳んでいて、ちょっと不気味なところもあります。
蒼野さんの女性像は物語性があります。

田中陽子 「清華」
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大きな蓮の花を象っていて、オシベまで再現されています。
田中さんは細かい作業を積み重ねて造形しています。

田村星都 「細字萬葉集和歌赤絵鹿摘香爐」
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九谷焼で、胴にびっしりと万葉集の和歌が書かれています。
古今集の香炉もあります。


【2020/09/25 19:10】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「敦煌写経と永樂陶磁」展 日本橋 三井記念美術館
三越前
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日本橋の三井記念美術館では「敦煌写経と永樂陶磁」展が開かれています。
会期は11月8日(日)まで、開館時間は11時から16時までです。

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三井記念美術館の所蔵する敦煌写経と永樂保全作の陶磁器を展示するものです。

敦煌写経は中国の内陸、敦煌の洞窟で1900年に発見された古写経のことです。
後に蔵経窟と呼ばれる小さな洞窟に経典など数万点の文書を納め、入口を土壁で
塞いでいたもので、11世紀前半に隠されたものと思われます。
発見の後、イギリス、フランス、ロシア、日本(大谷探検隊)などがかなりの数を
持ち出しています。

展覧会ではこの敦煌写経24点が展示されています。

妙法蓮華経巻第七(敦煌出土) 鳩摩羅什訳 唐時代・上元3年(676)
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妙法蓮華経(法華経)は大乗仏教を代表する経典で、万人の往生可能を説いています。
インドで成立したと思われ、鳩摩羅什(344-413、または350-409)の漢訳が
最も読まれています。
日本でも古来、重んじられ、天台宗や法華宗の中心経典であり、厳島神社の
平家納経も法華経が中心です。
展示品は長安宮廷写経と呼ばれる写経で、唐の高宗の時代に宮廷で書写され、
古写経の中で最高の出来栄えとされており、敦煌写経の中でも30点あまりしか
現存しないそうです。

部分 妙荘厳王本事品第二十七
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二十八品で構成されるうちの第二十七で、爾時仏告諸大衆の文で始まっています。

他に、摩訶般若波羅蜜経、維摩吉経、大般若経や、西遊記の三蔵法師のモデル、
玄奘三蔵訳の経典も展示されています。
どれも謹直な書体でていねいに書写されていて、都から遠く離れた敦煌に
よくこれだけの経典が残っていたものだと思います。


永樂保全(1795-1854)は京焼の土風炉師・善五郎の11代目で、土風炉ばかりでなく、
金襴手や赤絵、染付、交趾などさまざまな技法による茶碗や水指などを制作しています。

「交趾釉踊桐文道安形小風炉」 永樂保全
 江戸時代・文政10年~天保14年(1827-1843)

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茶室の如庵に置かれています。
家業の土風炉で、道安形は千利休の子、道安の考案した形です。
風炉は夏の茶事で使われる炉で、土風炉は土で作られた風炉のことです。
桐の葉と花を彫り込み、緑色の釉を施した、華やかな姿です。
交趾とは、中国の広東地方で焼かれ、ベトナム南部の交趾支那(コーチシナ)との
貿易船によって運ばれてきた陶器を言います。

他に茶碗や香合、水指など、約30点が展示されています。
三井家の注文で作られた、三井家の四つ目結紋の入った金襴手の茶碗もあります。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は「国宝の名刀「日向政宗」と武将の美」展です。
会期は11月21日(土)から2021年1月27日(水)までです。


【2020/09/24 19:49】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「もうひとつの江戸絵画 大津絵」展 東京ステーションギャラリー
東京
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東京駅の東京ステーションギャラリーでは、「もうひとつの江戸絵画 大津絵」展が
開かれています。
会期は11月8日(日)までです。
入館には日時指定のローソンチケットの購入が必要です。
前売券・招待券などを所持している場合は事前予約は不要です。

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大津絵は江戸時代、東海道の大津の宿場で土産として売られていた絵で、
素朴でおおらかな描き振りに味わいがあります。
初期には仏画が描かれていましたが、やがて世俗画、風刺画も盛んに
描かれるようになります。
街道の廃れた明治以降は一時衰えましたが、やがて愛好者が増え、浅井忠、
竹内栖鳳、上村松園なども描き、現在も制作が続いています。
展覧会では来歴の分かる作品として、小絲源太郎、柳宗悦、芹沢銈介、
北大路魯山人、梅原龍三郎、麻生三郎、棟方志功らの所蔵していた大津絵、
約150点を展示しています。

「鬼の行水」 日本民藝館蔵
パンフレットに使われている絵です。
鬼か雷神が風呂に入ろうとしていて、腰蓑を雲に掛けています。
外見を奇麗にしても、心が鬼のままであってはいけないという、寓意のようです。

「提灯釣鐘」 日本民藝館蔵
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担っている提灯より釣鐘が軽く見え、物事の価値の分からない者への風刺に
なっています。

「猫と鼠」(古筆大津絵より) 笠間日動美術館蔵
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喰う喰われるの関係の猫と鼠が酒盛りで盛り上がり、大杯で飲む鼠に猫が
赤唐辛子を勧めています。
猫の方が酒を飲んでいる絵もあります。
古筆大津絵は古い時代の大津絵集で、富岡鉄斎の旧蔵です。
元々、折本の形でしたが、現在はそれぞれの絵が額装されています。

「鬼の念仏」 笠間日動美術館蔵
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角の折れた怖ろしい鬼が撞木、鉦と奉加帳を持ち、寄付を募る勧進をしています。
邪悪な心の人が善人のふりをしています。
人気のある画題で、井伊の赤鬼と恐れられた井伊直弼もこの絵を描いています。
鬼の柄にもない殊勝な姿は微笑ましく、大津絵の中で一番好きな絵です。

「傘さす女」 笠間日動美術館蔵
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梅原龍三郎の旧蔵で、小絲源太郎も所蔵していた作品です。
ていねいに描かれ、保存状態も良い名品です。

「頼光」 笠間日動美術館蔵
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酒呑童子の説話で、源頼光と家来たちが酒呑童子を討って首を刎ねると、その首が
頼光の頭に喰らい付きますが、兜を被っていたので防ぐことが出来ました。

(参考)
「酒伝童子絵巻」(部分) 狩野元信 大永2年(1522) サントリー美術館蔵
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「外法梯子剃」(大津絵図巻)より 福岡市博物館蔵
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寿老人(外法)の長い頭を大黒が梯子に乗って剃っています。
大津絵図巻は26の大津絵を集めた絵巻で、序文には大津絵屋仲間が集まって、
絵の呼称を「大津絵」にしたと書かれています。
ブランド名を統一したということです。

「藤娘」(大津絵図巻)より 福岡市博物館蔵
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「鬼の念仏」と並んで、大津絵を代表する絵です。
歌舞伎舞踊の「藤娘」もこの絵を基にしています。
大津絵では着物はよく黒色で描かれています。

(参考)
上村松園 「藤娘之図」 大正初期 松岡美術館蔵
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「長刀弁慶」 大津市歴史博物館蔵
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鎧を着け、赤い鉢巻きを締め、七つ道具を背負った弁慶が長刀を持って立っています。

「青面金剛」 静岡市立芹沢銈介美術館蔵
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青面金剛(しょうめんこんごう)は道教に関係のある神様で、人の体の中に住んで
その人の悪事を天帝に知らせる三尸(さんし)を抑える力があるとされています。

初期の大津絵は仏画だったので、仏画も何点かあります。
簡略化した描き方ながら、観音菩薩が蓮台を捧げ持つ来迎図型の阿弥陀三尊像も
あります。

(参考)
「阿弥陀三尊来迎図」 鎌倉時代 14世紀 大倉集古館蔵
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大津絵の筆のはじめは何仏  松尾芭蕉

展覧会のHPです。


【2020/09/22 19:13】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(4) |
東京国立博物館本館の総合文化展(平常展) 2020/9 その2
上野
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東京国立博物館本館の総合文化展(平常展)のその2です。

9月になったので、秋に因んだ展示が増えています。

右「深鉢形土器」 東京都あきる野市雨間塚場出土 縄文時代(中期)・前3000~前2000年
中「埴輪 盛装の男子」 栃木県壬生町 ナナシ塚古墳出土 古墳時代・6世紀
左「袈裟襷文銅鐸」 静岡県浜松市東区和田町出土 弥生時代(後期)・1~3世紀

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ナナシ塚古墳は全長約45mの前方後円墳ですが、現在はほとんど残っていません。

「扇面法華経冊子」 平安時代・12世紀 国宝
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扇面に貴族や庶民の様子、花鳥や風景を描いた上に法華経を写し、冊子の形にしています。
雲母引きし、金銀の切箔、野毛、砂子を散らした、大変豪華な品です。
宮廷周辺の女性の発願で制作されたと考えられるとのことで、大阪の四天王寺に
伝来しています。

(参考)
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2017年の正月に別の場面が展示されていた時の写真です。
雀を罠で捕まえようとしている人たちが描かれています。

「地蔵菩薩立像」 平安時代・12世紀 京都・浄瑠璃寺蔵 重要文化財
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定朝様式の優しいお顔のお地蔵さまで、彩色も残っています。

「阿弥陀如来像」 鎌倉時代・14世紀 福島・いわき市蔵 重要文化財
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阿弥陀三尊が往生者を迎えに来る来迎図で、脇侍の観音菩薩は蓮台を捧げ、
勢至菩薩は合唱しています。

「玄奘三蔵像」 鎌倉時代・14世紀 重要文化財
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玄奘三蔵(602?-664)は唐時代の僧で、苦労してインドに渡り、大量の経典を持ち帰り、
漢訳しています。
西遊記の三蔵法師のモデルとなった人物です。

「呉須赤絵龍文双耳花入」 中国・漳州窯  明時代・17世紀
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呉須赤絵は福建州などで焼かれた磁器で、ざっくりしたつくりに味わいがあり、
主に日本に輸出されています。

「紺糸威六枚胴具足」 江戸時代・18世紀
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桃型兜に月形の脇立、蝶番で6枚をつないだ胴、胴には梅花形の鋲を打ち、
籠手も梅花形の金具で埋められています。
籠手に「為澤木氏正造之 筑前住藤原金久作」の銘があるので、澤木氏正は
九州の武士でしょうか。

「囲碁図」 冷泉為恭 江戸時代・19世紀
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宇多天皇、醍醐天皇に仕えた碁の名手、寛蓮が醍醐天皇と碁を打っているところです。
金の枕を賭けた対局で、横の机に金の枕が置いてあり、寛蓮が勝ったということです。

「色絵秋草文扇形皿」 京焼 江戸時代・18世紀
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扇型に型作りした器に萩を描き、金彩を施して雲を表した、優美繊細な作です。

「秋郊鳴鶉図」 土佐光起、土佐光成 江戸時代・17世紀
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菊、薄、桔梗などの秋草と鶉という、秋らしい風情の屏風です。
宮中絵師の土佐光起(1617-1691)と子の光成(1647-1710)の合作で、
鶉の名手といわれた光起が鶉を、光成が秋草を描いています。
酒井抱一の「秋草鶉図」を思い出します。

「立姿美人図」 喜多川歌麿 江戸時代・18世紀 重要美術品
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肉筆画で、外出のため揚帽子を被った御殿女中がしごきを締めているところです。

「茄子を取る男女」 鈴木春信 江戸時代・18世紀
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畑に実った茄子を若衆が取って娘に渡しています。
茄子→那須与一→矢→矢文→恋文の謎掛けでしょうか。

「大川楼上の月見」 鳥居清長 江戸時代・18世紀
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隅田川沿いの柳橋辺り、座敷での月見です。

「東都名所・佃 月夜之圖」 歌川広重  江戸時代・天保10年(1839)
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団扇絵で、佃島に留まる舟の横で、小舟に乗った二人が月見をしています。

「小袖 白綸子地竹垣萩文字模様」 江戸時代・18世紀
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江戸中期の武家女性の小袖で、背や袖に文字が入れて、清少納言の父、
清原元輔の「秋の野の萩の錦をふるさとに鹿の音ながらうつしてしがな」の
歌の一部を写しています。

「小袖 萌黄縮緬地菊薄垣水模様」 江戸時代・18世紀
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光琳水と呼ばれる琳派風の流水模様に秋草を友禅と刺繍で表しています。

「竹取物語」 前田青邨 明治44年(1911)
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かぐや姫を迎えに来る月からの使者を阻もうと、屋根に上って立ち騒ぐ武者たちを
絵巻物風に描いています。


【2020/09/20 16:58】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
東京国立博物館本館の総合文化展(平常展) 2020/9 その1
上野
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東京国立博物館本館の総合文化展(平常展)に行ってきました。

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本店中央階段はドラマ「半沢直樹」で、東京中央銀行の本店として登場しています。
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絵巻物と屏風絵を載せました。
展示は9月22日までです。

「土蜘蛛草紙絵巻」 鎌倉時代・14世紀 重要文化財
源頼光(948-1021)が家来の渡辺綱と共に京都の神楽岡(吉田山)に棲む
土蜘蛛を退治するというお話です。

荒れた古屋敷に頼光と綱が居ると、異形の者たちがやって来て、
やがて消え去ります。
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頼光は続いて現れた怪しい美女に斬りかかります。
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探索をして進むとまた怪物が現れます。
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怪物たちの正体は巨大な土蜘蛛で、頼光たちが首を斬り、腹を裂くと、
無数の人の頭や小蜘蛛が現れます。
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「車争図屏風」 4曲1隻 狩野山楽 江戸時代・慶長9年(1604) 重要文化財
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「源氏物語」の「葵」の帖、賀茂祭の見物の場所を葵の上と六条御息所の牛車が
争う場面です。
右側の整然とした行列と、左側の従者たちの争いが対照的です。

狩野山楽(1559-1635)は元は近江浅井氏の家臣の子で、豊臣秀吉の命で
狩野永徳の養子となり、狩野探幽たちが徳川家に従って江戸に下った後も京に残り、
その系統は京狩野と呼ばれるようになります。

「源氏物語図屏風(初音・若菜上)」 6曲1双 土佐光起 江戸時代・17世紀
右隻
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「初音」の帖の場面で、正月に女房たちが集まっているところへ源氏が顔を出します。

部分
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左隻
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「若菜上」の場面で、正月に玉鬘が源氏に若菜を献上しています。

部分
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御簾越しに覗き見るという趣向になっていて、緑色の細い横線が全面に引かれ、
画面全体が緑色掛かっています。

土佐光起(1617-1691)は大和絵の土佐家中興の祖と呼ばれた絵師で、
後水尾天皇の庇護を受けています。

「栄花物語図屏風」 6曲1双 土佐光祐 江戸時代・17~18世紀
「栄花物語」は藤原道長たち藤原氏の繁栄を記した歴史物語で、作者は赤染衛門などの
女性ではないかとされています。
右隻
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部分
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右隻は「月の宴」の巻で、村上天皇の御前で植木の優劣を競う、前栽合せの場面です。

左隻
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部分
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左隻には「はつ花」の巻で、中宮彰子の出産場面が描かれています。
魔除けに弓の弦を鳴らす鳴弦も行なわれています。
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土佐光祐(1675―1710)は土佐光起の孫です。

「粟穂鶉図屏風」 8曲1双 土佐光起  江戸時代・17世紀 個人蔵 重要美術品
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秋の景色の穂を垂れる粟と鶉の取り合わせです。
土佐光起は鶉の絵の名手とされています。

その他の展示は別の回に載せます。


【2020/09/19 18:01】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「第67回 日本伝統工芸展」 日本橋三越本店
三越前
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日本橋三越本店本館7階ギャラリーでは9月28日(月)まで、
「第67回 日本伝統工芸展」が開かれています。
入場は無料です。

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1950年に施行された文化財保護法の趣旨に沿って、1954年以来毎年
陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門の作品を審査し、
入選作品を展示するものです。
今年は約560点が展示されています。

以下は受賞作品の一部です。

日本工芸会総裁賞 乾漆平文蒔絵漆箱 「氷壁」 須藤靖典 漆芸
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平文(ひょうもん)は金属の板を貼り、漆を塗ってから研ぎ出す技法で、
銀の板と夜光貝の粒をを貼っています。
日本工芸会総裁の眞子様は展覧会初日に会場に来られて、この作品について、
「冬の厳しさがよく表れていますね。」と感想を述べられています。

高松宮記念賞 神代杉彩線木象嵌十二角箱 桑山弥宏 木竹工
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神代杉は長期間、水中や地中に埋没していた杉材で、貴重な材です。
柔らかな色合いの肌理に精緻な細工を施しています。

文部科学大臣賞 久留米絣着物 「光芒」 松枝哲哉
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深い紺色の夜空に光る星を表していて、星の光は花火のように散っています。
松枝哲哉さんは久留米絣を業とする松枝家の5代目で、久留米絣の第一人者として
重要無形文化財に認定されています。
惜しくも今年7月に64歳で亡くなられました。

東京都知事賞 真珠光彩壺 中田博士 陶芸
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精巧な形に練り上げられた艶やかな白磁の器面は真珠光彩と名付けた耀きを
見せています。
極めて細い筋が何本も入り、見る角度によって光の筋が現れます。

日本工芸会奨励賞 木彫彩色 「時」 松崎幸一光 人形
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松崎幸一光さんは節句人形作家です。
節句人形とは趣きの異なる、夢幻的な雰囲気の作品です。

日本工芸会新人賞 被硝子切子鉢 「糸遊」 安田公子 諸工芸
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2枚のガラスを重ねた被硝子(きせガラス)をカット(切子)しています。
切子は江戸切子と薩摩切子が有名ですが、安田さんは大阪の作家です。

各工芸分野の様々な技法の作品を一度に鑑賞することが出来て、とても
見応えのある展覧会です。


【2020/09/18 19:26】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「野村重存展―風景水彩画を中心に―」 丸善丸の内本店
東京
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丸善丸の内本店4階ギャラリーでは、「野村重存展―風景水彩画を中心に―」が
開かれています。
会期は9月22日(火)までです。

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野村重存さん(1959~)は東京出身で、水彩や色鉛筆による風景画などを
描き、NHK文化センターの講師などを勤めておられます。
「水彩&色鉛筆で描く 野村重存のぬり絵式練習帳」の出版記念の展覧会で、
イタリアやドイツをはじめ、国内外の風景、静物などを題材にした作品が
展示されています。

画像の作品は水彩画の「雲海暁光」(高千穂)です。
野村さんは特に水彩の特徴を活かした、水気を含んだ雲と光の表現に魅力があります。


【2020/09/17 19:47】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「アートアワードトーキョー丸の内2020」 行幸地下ギャラリー
東京
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丸の内では行幸地下ギャラリーを中心に「アートアワードトーキョー丸の内2020」が
開かれています。
会期は9月25日(金)までです。

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「アートアワードトーキョー丸の内」は若手アーティストの発掘・育成を目的に
7人の審査員が日本の美術大学・大学院の卒業・終了制作展の中から選抜して、
ギャラリーで展示する展覧会です。

今回で14回目で、25人の作品が5か所で展示され、最終日の24日にグランプリや
その他の賞が決定します。

行幸地下ギャラリーに展示されている作品

青山夢 東北芸術工科大学
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「術中デモクラシー」 パネルに油彩 2020年
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何とも賑やかに雑多な物が描かれ、お祭り騒ぎのようです。

松井暢也 武蔵野美術大学 「瑰麗」 クラフト紙、パステル 
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大きな画面の中で噴煙を上げる桜島に力強さがあります。

大越円香 秋田公立美術大学 「もちゆくもの」
 キャンバスにインクジェットプリント、漂白剤 

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秋田県の能代駅前のパノラマで、雪の降り残る、がらんとして寂しい景色です。

竹林玲香 京都芸術大学 「Turku」 パネル、キャンバス、油彩、石膏粘土
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四角い形を集めて大きな形を作り、その中にまた四角い空間を空けています。
Turkuはフィンランドの都市で、石を高く組上げた城壁のTurku城があります。

サ・ブンティ 女子美術大学大学院 「九猫図」 キャンバスに油彩
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九龍図ならぬ九猫図で、猫の頭は皆、上を向いています。


新丸ビル3階アトリウムに展示されている作品

近藤七彩 東北芸術工科大学 「奇ッ怪家具」 鉄、古家具
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長い脚が付いていたり、吊り下げられていたりと、オブジェ的な家具です。

石井海音 京都市立芸術大学大学院 「room1、room2、room3」
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アニメ風だったり、地中海風だったりしますが、すべて画中画が描かれています。

皆さん、いろいろな表現を試みていて、それぞれ面白く、意欲を感じます。

展覧会のHPです。


【2020/09/15 19:43】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
企画展、「大東京の華 都市を彩るモダン文化」 江戸東京博物館
両国
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両国の江戸東京博物館では企画展、「大東京の華 都市を彩るモダン文化」展が
開かれています。
常設展示室内での展示で、会期は11月23日(月・祝)までです。

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明治以来の東京のモダンな文化に焦点を当てた展示です。

電気ストーブ 芝浦製作所製 昭和前期
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アール・デコ調のデザインで、同じアール・デコ様式のす。
芝浦製作所は東芝の前身です。

お洒落な日傘
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後ろの写真は銀座を歩く女性です。

婦人クラブ 大正13-15年(1924-1926)
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竹久夢二らが描いた表紙や挿絵の木版画を貼った、凝ったつくりです。

三越呉服店ポスター 春の新柄陳列会(複製) 杉浦非水 大正3年(1914)
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アール・ヌーヴォー調のデザインで、華やかなに花や蝶をあしらっています。

昭和大東京百図絵版画 第五十六景 淀橋区・早稲田大学街
 小泉癸巳男 昭和9年(1934)
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早稲田の学生さんが学生服に学帽姿で歩いています。
大隈記念講堂は昭和2年(1927)に完成しています。

昭和大東京百図絵版画 第八十四景 東京駅と中央郵便局
 小泉癸巳男 昭和11年(1936)
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奥の中央郵便局は現在、外観を残して、JPタワーになっています。

大東京十二景の内 八月 豊島園の夏(板橋区) 藤森静雄 昭和18年(1933)
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豊島園は大正15年(1926)に開園し、翌年に武蔵野鉄道(現西武鉄道)豊島駅が
開業しています。
東京の西部は関東大震災の被害が少なかったので、人口の流入が進みました。
その豊島園も今年の8月31日に閉園しました。


常設展示室には明治初期の銀座煉瓦街の模型が展示されています。
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東京日日新聞の社屋です。
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東京日日新聞は毎日新聞の前身で、明治5年(1872)に創刊され、明治7年に銀座に
移転しています。
スリが巡査に捕まっています。
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床下には日比谷の鹿鳴館の模型が嵌め込まれています。
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鹿鳴館は明治16年(1883)に現在の帝国ホテルの隣に建てられた西洋建築で、
迎賓館として使われ、しばしば舞踏会が催されました。
屋根が開くと、ウインナワルツに合わせて人形たちが輪になって踊り、
大きなオルゴールを見ているようです。
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神田駿河台のニコライ堂の模型です。
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明治24年(1891)の竣工で、台地に建つひときわ大きな建築だったので、
東京のあちこちから見えました。

展覧会のHPです。


【2020/09/13 18:13】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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Author:chariot
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