表参道
南青山の根津美術館では企画展、「狩野派と土佐派 幕府・宮廷の絵師たち」展が
開かれています。
会期は3月31日(水)までです。

室町から江戸時代に幕府や宮廷で活躍した狩野派と土佐派の作品の展示です。
狩野派は室町時代の狩野正信に始まり、江戸時代には幕府の御用絵師として
画壇の中心となっています。
「四季花鳥図屏風」 伝 狩野元信 室町時代 16世紀

右隻


左隻


広々とした画面に多くの花鳥を配した、力強く堂々とした画風です。
鳥の多くは番(つがい)で描かれています。
狩野元信((1476-1559)は狩野家初代の正信の子で、絵の型(画体)を定め、
工房を構え、漢画ばかりでなく大和絵も取り入れて、狩野派の繁栄の基を築いています。
「両帝図屏風」 狩野探幽 江戸時代 寛文元年(1661)

右隻


左隻


豪華な金地に描かれていて、右隻は古代中国の皇帝とされる黄帝です。
黄帝は舟や車を発明したとされ、竜頭鷁首(りゅうとうげきしゅ)の舟や牛車も
描かれています。
左隻は、琴を弾き南風の詩を歌って天下を治めたとされる舜です。
狩野探幽(1602-1674)は元信の孫の永徳の孫で、徳川幕府の御用絵師となり、
狩野派の新しい画風を築いています。
狩野派は他に正信(伝)、之信、玉楽、尚信、安信、益信、常信、惟信、栄信、養信などの
絵が展示されています。
土佐派は室町時代に興った大和絵の流派で、宮廷の絵所預を勤めました。
「羅陵王図」 伝 土佐行秀 室町時代 15世紀

羅陵王(蘭陵王)は舞楽の一つで、北斉の武人皇族、高長恭(541 - 573)の活躍を
演じるものです。
女性や子供が舞う場合は舞楽面を着けないことがあるので、この絵は女性が
舞っている場面のようです。
土佐行秀(生没年不詳)は土佐派の創始者とされる土佐行広の弟、或いは子です。
「蛙草紙絵巻」 伝 土佐光信 室町時代 16世紀
参考


参考


牛が干してある布を食べてしまったのを見付けた貧乏な男が、自分にはものを
嗅ぎ付ける能力があると吹聴して、布の在り処を教えます。
そこで、病を持つ娘の親に原因を探るよう頼まれ、思案していると蛙の精が現れ、
自分は娘の住む屋敷の床下に閉じ込められていると告げます。
男の言う通り屋敷の娘の寝ている部屋の床下を掘ると、大きな蝦蟇が掘り出されます。
そして、男は呪いの解けたその家の娘と目出度く結ばれるというお話です。
落語の「御神酒徳利」に似た話ですが、この絵巻に描かれている他は
類例の無い話だそうです。
展示室では別の場面が展示されています。
土佐光信(1434?-1525)は室町中期から戦国時代の絵師で、特に絵巻物を
得意としています。
足利義政の寵愛を受け、宮廷の絵所預にも就いています。
「源氏物語朝顔図」 土佐光起 江戸時代 17世紀


源氏物語の「朝顔」の場面で、源氏と紫の上が語らい、庭では童女たちが
雪だるまを作っています。
夜の情景で、空には丸い月が浮かび、描写は細密で、火鉢の蒔絵まで描き込まれています。
土佐光起(1617-1691)は江戸初期の絵師で、他派の画風も学び、後水尾天皇の寵愛を受け、
土佐家が一旦失った絵所預の職を85年振りに得て、土佐家中興の祖と謳われています。
「源氏物語図屏風」 住吉具慶 江戸時代 17世紀
右隻
若菜巻上で、光源氏40歳の祝賀の場面です。


左上が源氏です。
左隻
若菜巻下で、源氏や明石の君の一行が住吉詣でをしています。


住吉具慶(1631-1705)は大和絵の絵師で京都生まれですが、幕府に呼ばれ
江戸に移り住み、狩野派と並んで幕府の御用絵師となっています。
土佐派は他に広周、光元、光吉、一得、光成、住吉広定などの絵が展示されています。
展示室5のテーマは「変化のものがたり」で、室町時代の御伽草子絵巻2作品が
展示されています。
「賢学草紙絵巻」 室町時代 16世紀

道成寺伝説と似たお話で、姫が恋する僧を追いかけ、最後は蛇体となって
鐘に巻き付く場面は同じです。
「玉藻前物語絵巻」 室町時代 16世紀
玉藻前となって鳥羽上皇に取り憑いた九尾の狐を陰陽師の安倍泰成に調伏され、
那須野に逃げますが、遂には三浦介義明、千葉介常胤らに討たれます。
2作品とも素朴な描き振りですが、かえって魅力があります。
展示室6は「雛祭りの茶」がテーマです。
「雛図」 柴田是真 江戸〜明治時代 19世紀


掛軸の表装の部分に雛道具を描き並べるという、柴田是真らしい
遊び心のある絵です。
「赤楽茶碗 銘 ハッサイ」 伝 楽道入 江戸時代 17世紀

ハッサイ(発才)とは利発な女の子という意味で、紅く丸みを帯びた可愛い形をしています。
展覧会のHPです。
根津美術館の庭園に紅梅が咲きました。

chariot
南青山の根津美術館では企画展、「狩野派と土佐派 幕府・宮廷の絵師たち」展が
開かれています。
会期は3月31日(水)までです。

室町から江戸時代に幕府や宮廷で活躍した狩野派と土佐派の作品の展示です。
狩野派は室町時代の狩野正信に始まり、江戸時代には幕府の御用絵師として
画壇の中心となっています。
「四季花鳥図屏風」 伝 狩野元信 室町時代 16世紀

右隻


左隻


広々とした画面に多くの花鳥を配した、力強く堂々とした画風です。
鳥の多くは番(つがい)で描かれています。
狩野元信((1476-1559)は狩野家初代の正信の子で、絵の型(画体)を定め、
工房を構え、漢画ばかりでなく大和絵も取り入れて、狩野派の繁栄の基を築いています。
「両帝図屏風」 狩野探幽 江戸時代 寛文元年(1661)

右隻


左隻


豪華な金地に描かれていて、右隻は古代中国の皇帝とされる黄帝です。
黄帝は舟や車を発明したとされ、竜頭鷁首(りゅうとうげきしゅ)の舟や牛車も
描かれています。
左隻は、琴を弾き南風の詩を歌って天下を治めたとされる舜です。
狩野探幽(1602-1674)は元信の孫の永徳の孫で、徳川幕府の御用絵師となり、
狩野派の新しい画風を築いています。
狩野派は他に正信(伝)、之信、玉楽、尚信、安信、益信、常信、惟信、栄信、養信などの
絵が展示されています。
土佐派は室町時代に興った大和絵の流派で、宮廷の絵所預を勤めました。
「羅陵王図」 伝 土佐行秀 室町時代 15世紀

羅陵王(蘭陵王)は舞楽の一つで、北斉の武人皇族、高長恭(541 - 573)の活躍を
演じるものです。
女性や子供が舞う場合は舞楽面を着けないことがあるので、この絵は女性が
舞っている場面のようです。
土佐行秀(生没年不詳)は土佐派の創始者とされる土佐行広の弟、或いは子です。
「蛙草紙絵巻」 伝 土佐光信 室町時代 16世紀
参考


参考


牛が干してある布を食べてしまったのを見付けた貧乏な男が、自分にはものを
嗅ぎ付ける能力があると吹聴して、布の在り処を教えます。
そこで、病を持つ娘の親に原因を探るよう頼まれ、思案していると蛙の精が現れ、
自分は娘の住む屋敷の床下に閉じ込められていると告げます。
男の言う通り屋敷の娘の寝ている部屋の床下を掘ると、大きな蝦蟇が掘り出されます。
そして、男は呪いの解けたその家の娘と目出度く結ばれるというお話です。
落語の「御神酒徳利」に似た話ですが、この絵巻に描かれている他は
類例の無い話だそうです。
展示室では別の場面が展示されています。
土佐光信(1434?-1525)は室町中期から戦国時代の絵師で、特に絵巻物を
得意としています。
足利義政の寵愛を受け、宮廷の絵所預にも就いています。
「源氏物語朝顔図」 土佐光起 江戸時代 17世紀


源氏物語の「朝顔」の場面で、源氏と紫の上が語らい、庭では童女たちが
雪だるまを作っています。
夜の情景で、空には丸い月が浮かび、描写は細密で、火鉢の蒔絵まで描き込まれています。
土佐光起(1617-1691)は江戸初期の絵師で、他派の画風も学び、後水尾天皇の寵愛を受け、
土佐家が一旦失った絵所預の職を85年振りに得て、土佐家中興の祖と謳われています。
「源氏物語図屏風」 住吉具慶 江戸時代 17世紀
右隻
若菜巻上で、光源氏40歳の祝賀の場面です。


左上が源氏です。
左隻
若菜巻下で、源氏や明石の君の一行が住吉詣でをしています。


住吉具慶(1631-1705)は大和絵の絵師で京都生まれですが、幕府に呼ばれ
江戸に移り住み、狩野派と並んで幕府の御用絵師となっています。
土佐派は他に広周、光元、光吉、一得、光成、住吉広定などの絵が展示されています。
展示室5のテーマは「変化のものがたり」で、室町時代の御伽草子絵巻2作品が
展示されています。
「賢学草紙絵巻」 室町時代 16世紀

道成寺伝説と似たお話で、姫が恋する僧を追いかけ、最後は蛇体となって
鐘に巻き付く場面は同じです。
「玉藻前物語絵巻」 室町時代 16世紀
玉藻前となって鳥羽上皇に取り憑いた九尾の狐を陰陽師の安倍泰成に調伏され、
那須野に逃げますが、遂には三浦介義明、千葉介常胤らに討たれます。
2作品とも素朴な描き振りですが、かえって魅力があります。
展示室6は「雛祭りの茶」がテーマです。
「雛図」 柴田是真 江戸〜明治時代 19世紀


掛軸の表装の部分に雛道具を描き並べるという、柴田是真らしい
遊び心のある絵です。
「赤楽茶碗 銘 ハッサイ」 伝 楽道入 江戸時代 17世紀

ハッサイ(発才)とは利発な女の子という意味で、紅く丸みを帯びた可愛い形をしています。
展覧会のHPです。
根津美術館の庭園に紅梅が咲きました。

両国
両国のすみだ北斎美術館では「筆魂 線の引力・色の魔力 ー又兵衛から
北斎・国芳までー」展が開かれています。
会期は4月4日(日)までです。
3月7日(日)までの前期と3月9日(火)からの後期で全品展示替えになりますので、
展覧会のHPでご確認ください。

江戸の浮世絵師の肉筆画約125点を展示する展覧会です。
以下の作品はすべて前期の展示です。
岩佐又兵衛 「弄玉仙図(旧金谷屏風)」 17世紀前半
摘水軒記念文化振興財団 千葉市美術館寄託 重要文化財


弄玉仙は中国春秋戦国時代の女性で、仙人に習って鳳凰の声のような音の
簫を吹くことが出来たということです。
桐の木の下で弄玉仙の吹く簫の音に誘われて鳳凰が現れています。
衣の翻る様にも動きがあり、弄玉仙の視線を辿ると鳳凰の姿がある、
岩佐又兵衛らしい見事な出来栄えの作品です。
元は福井の豪商、金屋家の所蔵の「金谷屏風」と呼ばれた6曲1双の屏風に
12枚の絵を貼ってあったものが、明治時代に別々に剥がされたとのことです。
菱川師宣 「二美人と若衆図」 天和年間(1681-84) 個人蔵 福井県立美術館寄託

菱川師宣は浮世絵の祖とされています。
脇息に凭れた若衆が本を読んでいて、女性が袂を押さえて覗いています。
夏の情景で、着物から手や足が透けて見える様子も描き出されています。
若衆は剃った月代を隠す手拭を付けているので、役者と思われます。
二人の女性の髪型は大島田ということです。
歌川豊国 「三代目中村歌右衛門の九変化図屏風」 文化12年(1815)頃 個人蔵

新発見の作品です。
6曲1双の屏風で、歌右衛門の演じた、右から文使いの娘、老女、丁稚、小野小町、
雷神、辻君と奴(二役)、江口の君、石橋が並んでいます。
娘は御殿女中の締める立て矢結びの帯をしています。

江口の君は平安時代から鎌倉時代にかけて摂津国江口にいた遊女たちのことです。
書写山圓教寺を創建した性空上人が舟遊びをしている江口の君の長を見たところ、
それは白象に乗った普賢菩薩であっという伝説に依っています。

石橋(しゃっきょう)は、寂照法師が中国の清涼山の麓にかかる石橋のたもとで、
文殊菩薩の乗り物である獅子が牡丹と戯れるのを見たという故事を演劇化した
もので、目出度い演目として能や歌舞伎でよく演じられています。

三代目中村歌右衛門(1778-1838)は立役、女形、道化方をこなす名優でした。
残りの4面には太田蜀山人(1749-1823)の和歌が掛かれています。
葛飾北斎、勝川春英、歌川豊国、勝川春扇、勝川春周、勝川春好
「青楼美人繁昌図」 文化(1804-18)中期頃 個人蔵


新発見の作品で、6人の浮世絵師が合作で遊郭の女性を描いています。
勝川春章門下の春好、春英、春扇、春周、北斎と、歌川派を代表する
歌川豊国という珍しい組合せです。
北斎も最初、勝川春章に弟子入りして勝川春朗を名乗っていました。
最年長の春好の呼び掛けと思われますが、春好は中風を患ったため
左手で一番後ろの太鼓持ちを描いています。
北斎は春好と仲が悪かったとも言われ、勝川派も破門されていますが、
この絵では最初に妓楼の女将を描いており、勝川派との関係は保たれて
いたようです。
葛飾北斎 「合鏡美人図」 文化(1804-18)末期~文政(1818-30)初期頃 個人蔵


初公開の作品です。
べっ甲のかんざし、紗の着物、房の付いた孔雀模様の帯、麻の葉模様の帯襦袢の
女性が、萩模様の合わせ鏡で髪の具合を確かめています。
後ろ姿ですが、顔は鏡に映っています。
葛飾北斎 「登龍図」 弘化3年(1846) 個人蔵


最晩年の作で、龍が身体をくねらせて天に向かっています。
頭は濃淡を付けて立体的に描かれるなど、迫力のある姿です。
北斎は龍をよく描いていて、絶筆とされる「富士越龍図」でも龍が天に昇ろうとしています。
約60名の浮世絵師が揃い、「弄玉仙図」や「九変化図屏風」「青楼美人繁昌図」など、
興味深い作品も多く、とても見応えのある展覧会です。
展覧会のHPです。
ユニークな形をしたすみだ北斎美術館です。

chariot
両国のすみだ北斎美術館では「筆魂 線の引力・色の魔力 ー又兵衛から
北斎・国芳までー」展が開かれています。
会期は4月4日(日)までです。
3月7日(日)までの前期と3月9日(火)からの後期で全品展示替えになりますので、
展覧会のHPでご確認ください。

江戸の浮世絵師の肉筆画約125点を展示する展覧会です。
以下の作品はすべて前期の展示です。
岩佐又兵衛 「弄玉仙図(旧金谷屏風)」 17世紀前半
摘水軒記念文化振興財団 千葉市美術館寄託 重要文化財


弄玉仙は中国春秋戦国時代の女性で、仙人に習って鳳凰の声のような音の
簫を吹くことが出来たということです。
桐の木の下で弄玉仙の吹く簫の音に誘われて鳳凰が現れています。
衣の翻る様にも動きがあり、弄玉仙の視線を辿ると鳳凰の姿がある、
岩佐又兵衛らしい見事な出来栄えの作品です。
元は福井の豪商、金屋家の所蔵の「金谷屏風」と呼ばれた6曲1双の屏風に
12枚の絵を貼ってあったものが、明治時代に別々に剥がされたとのことです。
菱川師宣 「二美人と若衆図」 天和年間(1681-84) 個人蔵 福井県立美術館寄託

菱川師宣は浮世絵の祖とされています。
脇息に凭れた若衆が本を読んでいて、女性が袂を押さえて覗いています。
夏の情景で、着物から手や足が透けて見える様子も描き出されています。
若衆は剃った月代を隠す手拭を付けているので、役者と思われます。
二人の女性の髪型は大島田ということです。
歌川豊国 「三代目中村歌右衛門の九変化図屏風」 文化12年(1815)頃 個人蔵

新発見の作品です。
6曲1双の屏風で、歌右衛門の演じた、右から文使いの娘、老女、丁稚、小野小町、
雷神、辻君と奴(二役)、江口の君、石橋が並んでいます。
娘は御殿女中の締める立て矢結びの帯をしています。

江口の君は平安時代から鎌倉時代にかけて摂津国江口にいた遊女たちのことです。
書写山圓教寺を創建した性空上人が舟遊びをしている江口の君の長を見たところ、
それは白象に乗った普賢菩薩であっという伝説に依っています。

石橋(しゃっきょう)は、寂照法師が中国の清涼山の麓にかかる石橋のたもとで、
文殊菩薩の乗り物である獅子が牡丹と戯れるのを見たという故事を演劇化した
もので、目出度い演目として能や歌舞伎でよく演じられています。

三代目中村歌右衛門(1778-1838)は立役、女形、道化方をこなす名優でした。
残りの4面には太田蜀山人(1749-1823)の和歌が掛かれています。
葛飾北斎、勝川春英、歌川豊国、勝川春扇、勝川春周、勝川春好
「青楼美人繁昌図」 文化(1804-18)中期頃 個人蔵


新発見の作品で、6人の浮世絵師が合作で遊郭の女性を描いています。
勝川春章門下の春好、春英、春扇、春周、北斎と、歌川派を代表する
歌川豊国という珍しい組合せです。
北斎も最初、勝川春章に弟子入りして勝川春朗を名乗っていました。
最年長の春好の呼び掛けと思われますが、春好は中風を患ったため
左手で一番後ろの太鼓持ちを描いています。
北斎は春好と仲が悪かったとも言われ、勝川派も破門されていますが、
この絵では最初に妓楼の女将を描いており、勝川派との関係は保たれて
いたようです。
葛飾北斎 「合鏡美人図」 文化(1804-18)末期~文政(1818-30)初期頃 個人蔵


初公開の作品です。
べっ甲のかんざし、紗の着物、房の付いた孔雀模様の帯、麻の葉模様の帯襦袢の
女性が、萩模様の合わせ鏡で髪の具合を確かめています。
後ろ姿ですが、顔は鏡に映っています。
葛飾北斎 「登龍図」 弘化3年(1846) 個人蔵


最晩年の作で、龍が身体をくねらせて天に向かっています。
頭は濃淡を付けて立体的に描かれるなど、迫力のある姿です。
北斎は龍をよく描いていて、絶筆とされる「富士越龍図」でも龍が天に昇ろうとしています。
約60名の浮世絵師が揃い、「弄玉仙図」や「九変化図屏風」「青楼美人繁昌図」など、
興味深い作品も多く、とても見応えのある展覧会です。
展覧会のHPです。
ユニークな形をしたすみだ北斎美術館です。

東京
東京駅の東京ステーションギャラリーでは「没後70年 南薫造展」が開かれています。
会期は4月11日(日)までです。
3月14日(日)までの前期と3月16日(火)からの後期で一部展示替えがありますので、
展覧会のHPでご確認ください。

南薫造(みなみくんぞう、1883-1950)は広島県の呉出身で、東京美術学校に入学し、
岡田三郎助に師事しています。
1907年にはイギリスに留学し、ヨーロッパやアメリカを廻り、1910年に帰国しています。
「夜景」 1908年頃 東京藝術大学

南薫造はイギリスで活躍したアメリカ人画家、ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
(1834-1903)に傾倒しており、この作品もホイッスラーの影響が見られます。
ロンドンでは同じ東京美術学校出身の白滝幾之助(1873-1960)と親しくなり、
一緒に写生旅行に行っています。
「うしろむき」 1909年 広島県立美術館

前期の展示です。
水彩画で、窓から外の景色を眺める少女の後ろ姿を逆光気味に柔らかく描いています。
南薫造は水彩画も巧みで、多くの作品を描いています。
「少女」 1909年 東京国立近代美術館
チラシに使われている作品です。
印象派風の明るい色彩で、少女の足先に可愛らしさが表れています。
1921年の作品、「ピアノ」でも少女が足先でスリッパをブラブラさせている様子を描いて、
情景を活き活きとさせています。
「六月の日」 1912年 東京国立近代美術館

帰国後の第6回文展2等賞受賞作品です。
横170㎝の大きな画面に日の光を浴びた中の麦の収穫を描いていて、遠くに瀬戸内の
海も見えます。
夏目漱石はこの絵を見ていて、中央の人物がわざとらしいと言って文句を付けています。
同じ第6回文展に木島櫻谷の出品した「寒月」も2等賞を受賞していますが、漱石はこれも
狐の表現が不自然だとしています。
漱石は新しい傾向のある絵には拒否感があったようです。
「魚見(自刻)」 1911年頃 木版 個人蔵

前期の展示で、魚見は冲の魚群を見張る小屋です。
南薫造は留学中に知り合った富本憲吉と共に帰国後に木版画を制作しています。
下絵から彫り、摺りまですべて自分が行なうという、創作版画です。
「高原の村の朝」 1941年 油彩キャンバス ひろしま美術館

南薫造の画風はやがて色彩も筆遣いも力強いものになっていきます。
大きなキャベツの並んだ横に小さな子どもたちがしゃがんでいて、奥には洗濯物も見えます。
太平洋戦争の始まった年の作品ですが、のどかな農村の風景です。
南薫造の風景画にはよく点景に人物が描かれていて、自然の中の人の暮らしを思わせます。
「曝書」 1946年 広島県立美術館

終戦の翌年の作品で、戦時中に疎開した故郷の家での虫干しの様子です。
明るい庭に面した、風の通る座敷に本などが広げられ、二人の孫娘がそれを見ている、
平和な情景です。
南薫造の画風には変化がありますが、終始穏やかで親しみやすく、好もしいものがあります。
東京美術学校の教授を勤めるなど活躍しているのですが、その割に知られていないのは
疎開した後そのまま広島に留まっていたことも影響したのでしょうか。
展覧会のHPです。
chariot
東京駅の東京ステーションギャラリーでは「没後70年 南薫造展」が開かれています。
会期は4月11日(日)までです。
3月14日(日)までの前期と3月16日(火)からの後期で一部展示替えがありますので、
展覧会のHPでご確認ください。

南薫造(みなみくんぞう、1883-1950)は広島県の呉出身で、東京美術学校に入学し、
岡田三郎助に師事しています。
1907年にはイギリスに留学し、ヨーロッパやアメリカを廻り、1910年に帰国しています。
「夜景」 1908年頃 東京藝術大学

南薫造はイギリスで活躍したアメリカ人画家、ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
(1834-1903)に傾倒しており、この作品もホイッスラーの影響が見られます。
ロンドンでは同じ東京美術学校出身の白滝幾之助(1873-1960)と親しくなり、
一緒に写生旅行に行っています。
「うしろむき」 1909年 広島県立美術館

前期の展示です。
水彩画で、窓から外の景色を眺める少女の後ろ姿を逆光気味に柔らかく描いています。
南薫造は水彩画も巧みで、多くの作品を描いています。
「少女」 1909年 東京国立近代美術館
チラシに使われている作品です。
印象派風の明るい色彩で、少女の足先に可愛らしさが表れています。
1921年の作品、「ピアノ」でも少女が足先でスリッパをブラブラさせている様子を描いて、
情景を活き活きとさせています。
「六月の日」 1912年 東京国立近代美術館

帰国後の第6回文展2等賞受賞作品です。
横170㎝の大きな画面に日の光を浴びた中の麦の収穫を描いていて、遠くに瀬戸内の
海も見えます。
夏目漱石はこの絵を見ていて、中央の人物がわざとらしいと言って文句を付けています。
同じ第6回文展に木島櫻谷の出品した「寒月」も2等賞を受賞していますが、漱石はこれも
狐の表現が不自然だとしています。
漱石は新しい傾向のある絵には拒否感があったようです。
「魚見(自刻)」 1911年頃 木版 個人蔵

前期の展示で、魚見は冲の魚群を見張る小屋です。
南薫造は留学中に知り合った富本憲吉と共に帰国後に木版画を制作しています。
下絵から彫り、摺りまですべて自分が行なうという、創作版画です。
「高原の村の朝」 1941年 油彩キャンバス ひろしま美術館

南薫造の画風はやがて色彩も筆遣いも力強いものになっていきます。
大きなキャベツの並んだ横に小さな子どもたちがしゃがんでいて、奥には洗濯物も見えます。
太平洋戦争の始まった年の作品ですが、のどかな農村の風景です。
南薫造の風景画にはよく点景に人物が描かれていて、自然の中の人の暮らしを思わせます。
「曝書」 1946年 広島県立美術館

終戦の翌年の作品で、戦時中に疎開した故郷の家での虫干しの様子です。
明るい庭に面した、風の通る座敷に本などが広げられ、二人の孫娘がそれを見ている、
平和な情景です。
南薫造の画風には変化がありますが、終始穏やかで親しみやすく、好もしいものがあります。
東京美術学校の教授を勤めるなど活躍しているのですが、その割に知られていないのは
疎開した後そのまま広島に留まっていたことも影響したのでしょうか。
展覧会のHPです。
銀座一丁目
銀座のポーラ ミュージアム アネックスでは『柏原由佳「1:1」』展が開かれています。
会期は3月14日(日)まで、会期中は無休、入場無料です。

柏原由佳さん(1980-)は油絵具などを溶剤で薄く溶いて、風景画を描いておられます。
「Dog Day 1」 2020年

「Ice Life 1」 2020年

「Dusty Jungle」 2021年

「C World」 2020年

見た景色が一度自分の中で消化されているような、のびのびと自由な描き振りで、
色調もまとめられ、観ていて心地良さがあります。
展覧会のHPです。
chariot
銀座のポーラ ミュージアム アネックスでは『柏原由佳「1:1」』展が開かれています。
会期は3月14日(日)まで、会期中は無休、入場無料です。

柏原由佳さん(1980-)は油絵具などを溶剤で薄く溶いて、風景画を描いておられます。
「Dog Day 1」 2020年

「Ice Life 1」 2020年

「Dusty Jungle」 2021年

「C World」 2020年

見た景色が一度自分の中で消化されているような、のびのびと自由な描き振りで、
色調もまとめられ、観ていて心地良さがあります。
展覧会のHPです。
新宿
新宿のSOMPO美術館では「FACE展2021」が開かれています。
会期は3月7日(日)までです。

FACEは損保ジャパン美術財団の公益財団法人への移行を期に創設された
公募コンクールです。
会場には応募した1,193名の新進作家から選ばれた、受賞作品9点を含む
入選作品83点が展示されています。
会期中、観覧者投票による「オーディエンス賞」の選出も行われます。
会場は撮影可能です。
グランプリ 魏嘉 「sweet potato」 パステル・スプレー・エアブラシ・キャンバス

優秀賞 鈴木玲美 「夜は静かに寝たい」 油彩・キャンバス

家のお子さんたちが夜、賑やかなのでしょうか。
優秀賞 高見基秀 「対岸で燃える家」 油彩・パネル

ちょっとマグリット風です。
優秀賞 町田帆実 「records」 アクリル・クレパス・キャンバス

入選 中村あや子 「宇佐儀洛中図」 アクリル・雲肌麻紙

部分

ウサギが集まって盛大に盛り上がっている洛中図です。
入選 伊吹拓 「Lap time」 アクリル・油彩・綿布

入選 野中美里 「そこにはもういない」 木製パネル・油彩

入選 原真吾 「デリバリさん」 アクリル・キャンバス

輝くハンバーガーの周りを回っているのはランドセルを担いだデリバリーの配達員さんです。
入選 松本玲子 「Digging Up」 アクリル・キャンバス

「FACE展2020」展の記事です。
展覧会のHPです。
chariot
新宿のSOMPO美術館では「FACE展2021」が開かれています。
会期は3月7日(日)までです。

FACEは損保ジャパン美術財団の公益財団法人への移行を期に創設された
公募コンクールです。
会場には応募した1,193名の新進作家から選ばれた、受賞作品9点を含む
入選作品83点が展示されています。
会期中、観覧者投票による「オーディエンス賞」の選出も行われます。
会場は撮影可能です。
グランプリ 魏嘉 「sweet potato」 パステル・スプレー・エアブラシ・キャンバス

優秀賞 鈴木玲美 「夜は静かに寝たい」 油彩・キャンバス

家のお子さんたちが夜、賑やかなのでしょうか。
優秀賞 高見基秀 「対岸で燃える家」 油彩・パネル

ちょっとマグリット風です。
優秀賞 町田帆実 「records」 アクリル・クレパス・キャンバス

入選 中村あや子 「宇佐儀洛中図」 アクリル・雲肌麻紙

部分

ウサギが集まって盛大に盛り上がっている洛中図です。
入選 伊吹拓 「Lap time」 アクリル・油彩・綿布

入選 野中美里 「そこにはもういない」 木製パネル・油彩

入選 原真吾 「デリバリさん」 アクリル・キャンバス

輝くハンバーガーの周りを回っているのはランドセルを担いだデリバリーの配達員さんです。
入選 松本玲子 「Digging Up」 アクリル・キャンバス

「FACE展2020」展の記事です。
展覧会のHPです。
日本橋
日本橋髙島屋美術画廊Xでは「ー肌理と知覚ー半澤友美・盛永省治展」が開かれています。
会期は3月1日(月)までです。
半澤友美さん(1988-)は植物繊維を紙漉きの技法によって固めた作品を制作されています。
着色された材料を固めて幾重にも重ね、プレスして大きな1枚の紙のように仕上げています。
時間というものを意識されているそうで、力強さがありながら、やがて崩れて行くことも
予感させます。
「note」シリーズ


「The Histories of the self」シリーズ



盛永省治さん(1976-)は鹿児島市在住の木工作家で、木工旋盤を使ったウッドターニングと
呼ばれる技法で制作されています。
陶磁器の花瓶や弥生式土器のような形をしていて、木目の美しさも表れています。
木の節もそのまま取り込んであるので、節穴の隙間が空いているのもあります。
自然の形と人工の造形が合わさって面白く、手に持って味わいたい風合いがあります。




chariot
日本橋髙島屋美術画廊Xでは「ー肌理と知覚ー半澤友美・盛永省治展」が開かれています。
会期は3月1日(月)までです。
半澤友美さん(1988-)は植物繊維を紙漉きの技法によって固めた作品を制作されています。
着色された材料を固めて幾重にも重ね、プレスして大きな1枚の紙のように仕上げています。
時間というものを意識されているそうで、力強さがありながら、やがて崩れて行くことも
予感させます。
「note」シリーズ


「The Histories of the self」シリーズ



盛永省治さん(1976-)は鹿児島市在住の木工作家で、木工旋盤を使ったウッドターニングと
呼ばれる技法で制作されています。
陶磁器の花瓶や弥生式土器のような形をしていて、木目の美しさも表れています。
木の節もそのまま取り込んであるので、節穴の隙間が空いているのもあります。
自然の形と人工の造形が合わさって面白く、手に持って味わいたい風合いがあります。




三越前
日本橋三越本店6階コンテンポラリーギャラリーでは3月1日(月)まで「『dual』 内海聖史展」が
開かれています。

内海聖史さん(1977―)は様々な色の小さな円で画面を埋める作品を制作されています。
縦230cm、横1440cmという、横長の「dual」という作品と、この作品が18枚に分割
されることから、縦61㎝、横46㎝の18枚の作品が展示されています。
no.2021-11

no.2021-13

no.2021-16

画面の大きさによって円の大きさも変わりますが、鮮やかな色彩で、リズム感があり、
抽象画でありながら、花のようにも森のようにも滝のようにも見えます。
参考
虎ノ門ヒルズに展示されている内海さんの作品、「新しい水」です。



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日本橋三越本店6階コンテンポラリーギャラリーでは3月1日(月)まで「『dual』 内海聖史展」が
開かれています。

内海聖史さん(1977―)は様々な色の小さな円で画面を埋める作品を制作されています。
縦230cm、横1440cmという、横長の「dual」という作品と、この作品が18枚に分割
されることから、縦61㎝、横46㎝の18枚の作品が展示されています。
no.2021-11

no.2021-13

no.2021-16

画面の大きさによって円の大きさも変わりますが、鮮やかな色彩で、リズム感があり、
抽象画でありながら、花のようにも森のようにも滝のようにも見えます。
参考
虎ノ門ヒルズに展示されている内海さんの作品、「新しい水」です。



銀座
銀座和光本館6階の和光ホールでは、「日本陶磁協会賞受賞作家展
花のうつわ-生きとし生けるものへ-」が開かれています。
会期は2月23日(火)まで、入場は無料です。
日本陶磁協会賞は、その年のもっともすぐれた焼物を制作した新進の作家を
表彰する趣旨で設けられた賞です。
今回の展覧会は62回目で、歴代受賞者約50名による花器を中心にした作品が
展示されています。
前田昭博 「白瓷捻面取壺」

金賞受賞者です。
柔らかく艶やかな白磁壺で、ゆるやかな曲線が入っています。
和田的 白器「ENERGY-T」

和田的(わだあきら)さんはロクロ成形した磁土から削り出すという、
他には無い技法に拠っています。
上からかぶさっている穴の開いた円筒は取り外すことが出来ます。
シャープな造形が特徴でしたが、この作品は曲線を強調しています。
田原崇雄 「流白釉花入」

田原崇雄さんは萩焼の作家です。
すらりとした形で、底の部分に変化を付け、色の違う藁灰釉を掛けて
面白くしています。
和光のショーウインドウには丑年にちなんで、球に乗った牛が並んでいました。


chariot
銀座和光本館6階の和光ホールでは、「日本陶磁協会賞受賞作家展
花のうつわ-生きとし生けるものへ-」が開かれています。
会期は2月23日(火)まで、入場は無料です。
日本陶磁協会賞は、その年のもっともすぐれた焼物を制作した新進の作家を
表彰する趣旨で設けられた賞です。
今回の展覧会は62回目で、歴代受賞者約50名による花器を中心にした作品が
展示されています。
前田昭博 「白瓷捻面取壺」

金賞受賞者です。
柔らかく艶やかな白磁壺で、ゆるやかな曲線が入っています。
和田的 白器「ENERGY-T」

和田的(わだあきら)さんはロクロ成形した磁土から削り出すという、
他には無い技法に拠っています。
上からかぶさっている穴の開いた円筒は取り外すことが出来ます。
シャープな造形が特徴でしたが、この作品は曲線を強調しています。
田原崇雄 「流白釉花入」

田原崇雄さんは萩焼の作家です。
すらりとした形で、底の部分に変化を付け、色の違う藁灰釉を掛けて
面白くしています。
和光のショーウインドウには丑年にちなんで、球に乗った牛が並んでいました。


霞ヶ関・内幸町
日比谷公園の千代田区立日比谷図書文化館では、「複製芸術家 小村雪岱」展が
開かれています。
副題は「装幀と挿絵に見る二つの精華」となっています。
会期は3月23日(火)までで、観覧料は一般300円です。

小村雪岱(こむらせったい、1887-1940)は川越の出身で、東京美術学校で
日本画を学び、大正3年(1914)に出版された泉鏡花の「日本橋」の装幀を
行なって以来、装幀家、挿絵画家として多くの作品を手がけます。
装幀を手掛けた作家は泉鏡花の作品をはじめ、水上瀧太郎、久保田万太郎、
里見弴、岡本綺堂、村松梢風、大仏次郎、長田幹彦、邦枝完二、長谷川伸など
多数にのぼります。
展覧会では当時の新聞、雑誌、単行本、下絵などの豊富な資料によって
小村雪岱の世界を紹介しています。
泉鏡花 「日本橋」 千章館 1914年

江戸情緒を極めて細くすっきりとしたモダンな線で表すのが小村雪岱の
持ち味で、「日本橋」の装幀などは最近の装幀家の作品に見えるほどです。
近代的な感覚で江戸情緒を再現しているといえます。
浮世絵を基本にして、近代的な感覚で江戸情緒を再現しているといえます。
小村雪岱は資生堂に入社し、雑誌の表紙絵などを担当したこともあります。
現在も使われている「資生堂書体」は小村雪岱の考案した「雪岱文字」が
基本になっているそうです。
小村雪岱が挿絵を手掛けた、矢田挿雲の新聞小説、「忠臣蔵」の載った
昭和11年(1936)3月1日の報知新聞のページが展示されていましたが、
二・二六事件終結直後に当たり、反乱軍兵士が原隊に復帰する様子や
戒厳司令官の布告なども載っていて、時代を感じさせます。
展覧会のHPです。
また、三井記念美術館では4月18日(日)まで「小村雪岱
江戸の粋から東京モダンへ」展が開かれているところです。
「小村雪岱 江戸の粋から東京モダンへ」展の記事です。
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日比谷公園の千代田区立日比谷図書文化館では、「複製芸術家 小村雪岱」展が
開かれています。
副題は「装幀と挿絵に見る二つの精華」となっています。
会期は3月23日(火)までで、観覧料は一般300円です。

小村雪岱(こむらせったい、1887-1940)は川越の出身で、東京美術学校で
日本画を学び、大正3年(1914)に出版された泉鏡花の「日本橋」の装幀を
行なって以来、装幀家、挿絵画家として多くの作品を手がけます。
装幀を手掛けた作家は泉鏡花の作品をはじめ、水上瀧太郎、久保田万太郎、
里見弴、岡本綺堂、村松梢風、大仏次郎、長田幹彦、邦枝完二、長谷川伸など
多数にのぼります。
展覧会では当時の新聞、雑誌、単行本、下絵などの豊富な資料によって
小村雪岱の世界を紹介しています。
泉鏡花 「日本橋」 千章館 1914年

江戸情緒を極めて細くすっきりとしたモダンな線で表すのが小村雪岱の
持ち味で、「日本橋」の装幀などは最近の装幀家の作品に見えるほどです。
近代的な感覚で江戸情緒を再現しているといえます。
浮世絵を基本にして、近代的な感覚で江戸情緒を再現しているといえます。
小村雪岱は資生堂に入社し、雑誌の表紙絵などを担当したこともあります。
現在も使われている「資生堂書体」は小村雪岱の考案した「雪岱文字」が
基本になっているそうです。
小村雪岱が挿絵を手掛けた、矢田挿雲の新聞小説、「忠臣蔵」の載った
昭和11年(1936)3月1日の報知新聞のページが展示されていましたが、
二・二六事件終結直後に当たり、反乱軍兵士が原隊に復帰する様子や
戒厳司令官の布告なども載っていて、時代を感じさせます。
展覧会のHPです。
また、三井記念美術館では4月18日(日)まで「小村雪岱
江戸の粋から東京モダンへ」展が開かれているところです。
「小村雪岱 江戸の粋から東京モダンへ」展の記事です。
三越前
日本橋の三井記念美術館では特別展、「小村雪岱スタイルー江戸の粋から
東京モダンへ」が開かれています。
会期は4月18日(日)まで、開館時間は11時から16時まで、日時予約が必要です。
3月14日までの前期と16日からの後期で一部展示替えがありますので、
展覧会のHPでご確認ください。

小村雪岱(こむらせったい、1887-1940)は川越の出身で、東京美術学校で
日本画を学び、大正3年(1914)に出版された泉鏡花の「日本橋」の装幀を
行なって以来、装幀家、挿絵画家、舞台芸術家として多くの作品を手がけます。
また小村雪岱は資生堂に入社し、雑誌の表紙絵などを担当したこともあります。
現在も使われている「資生堂書体」は小村雪岱の考案した「雪岱文字」が
基本になっているそうです。
展覧会では清水三年坂美術館蔵所蔵の作品を中心にして、肉筆画、挿絵原画、
装幀本、舞台装置原画などが展示されています。
「盃を持つ女」 絹本着色 清水三年坂美術館

肉筆画で、べっ甲と珊瑚の櫛かんざし、蝶模様の着物の鈴木春信風の美人が
朱盃を差し出しています。
画面の外の人物のことが気になります。
「月に美人」 絹本着色 清水三年坂美術館

肉筆画で、涼し気な麻の葉模様と松葉模様の掛軸に丸い団扇絵が貼られています。
中で橋の欄干に凭れている女性はとても細い三日月を眺めていて、夜の川風を感じます。
泉鏡花 「日本橋」 装幀:小村雪岱 出版:千章館 大正3年(1914)

江戸時代、日本橋は水運の中心地で、商家の蔵が建ち並んでいました。
蔵が甍を並べ、川舟が行き交う上を夥しい蝶が舞っています。
鏡花の幻想と雪岱のモダンが合わさった、小村雪岱の代表作です。
「おせん 雨」 木版 昭和16年(1941)頃 清水三年坂美術館

邦枝完二(1892-1956)の新聞小説、「おせん」の挿絵です。
雨の線と広げた傘の線の表現が効いています。
小村雪岱を特徴付けるのはこの繊細な線描です。
「雪の朝」 木版多色刷 昭和16年(1941)頃 個人蔵

思い切った構図で、家屋の障子や板壁などの線を見せています。
「蛍」 木版多色刷 昭和17年(1942) 清水三年坂美術館

これも団扇絵のようで、楓模様の帯をした女性が袖を丸めて蛍を捉まえようと
しているところで、鬢(びん)のほつれまで描き込まれています。
「見立寒山拾得」 木版多色刷 昭和17年(1942) 個人蔵

寒山拾得図は文を読む寒山と箒を持った拾得を描きますが、こちらは柏の落葉に
何かを書いている女性とそれを見ている女性です。
地面に散っている欅の葉は関東の秋らしい風情で、拾得ははまだ掃き掃除を
していないようです。
小村雪岱は昭和の鈴木春信とも呼ばれていて、よく似た構図の二人の絵が
並んでいたりもします。
「三十六歌仙 三条院女蔵人左近」 鈴木春信 中判錦絵 江戸時代中期・18世紀

3月14日までの展示です。
夜に吊り灯篭の明かりで女性が手紙を読み、もう一人がそれをのぞき込んでいます。
紅葉の枝も見えます。
いわ橋のよるのちぎりもたえぬべしあくるわびしきかつらぎの神
小村雪岱と同じように江戸の粋を近代につなげる、柴田是真、並河靖之、
濤川惣助など、数々の工芸品も展示されています。
また、現代の作品も展示されています。
並河靖之 「藤に蝶図花瓶」 明治時代・19~20世紀

並河靖之(1845-1927)は七宝作家で、色の境目に金属線を置く、くっきりとした
輪郭線の有線七宝が特徴です。
彦十蒔絵 見立漆器 「苫舟日本橋蒔絵」
朴の木、天然漆、金、螺鈿 2019年 個人蔵

彦十蒔絵は石川県輪島市出身の漆工芸家、若宮隆志さん(1964~)の主宰する
漆装飾の専門家集団です。
石川県金沢出身の泉鏡花にちなんだ作品も制作しています。
展覧会のHPです。
展示室入口には、雛祭も近いので、光山作「陶製奈良雛」が展示されています。
奈良一刀彫の雛人形を模しています。

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日本橋の三井記念美術館では特別展、「小村雪岱スタイルー江戸の粋から
東京モダンへ」が開かれています。
会期は4月18日(日)まで、開館時間は11時から16時まで、日時予約が必要です。
3月14日までの前期と16日からの後期で一部展示替えがありますので、
展覧会のHPでご確認ください。

小村雪岱(こむらせったい、1887-1940)は川越の出身で、東京美術学校で
日本画を学び、大正3年(1914)に出版された泉鏡花の「日本橋」の装幀を
行なって以来、装幀家、挿絵画家、舞台芸術家として多くの作品を手がけます。
また小村雪岱は資生堂に入社し、雑誌の表紙絵などを担当したこともあります。
現在も使われている「資生堂書体」は小村雪岱の考案した「雪岱文字」が
基本になっているそうです。
展覧会では清水三年坂美術館蔵所蔵の作品を中心にして、肉筆画、挿絵原画、
装幀本、舞台装置原画などが展示されています。
「盃を持つ女」 絹本着色 清水三年坂美術館

肉筆画で、べっ甲と珊瑚の櫛かんざし、蝶模様の着物の鈴木春信風の美人が
朱盃を差し出しています。
画面の外の人物のことが気になります。
「月に美人」 絹本着色 清水三年坂美術館

肉筆画で、涼し気な麻の葉模様と松葉模様の掛軸に丸い団扇絵が貼られています。
中で橋の欄干に凭れている女性はとても細い三日月を眺めていて、夜の川風を感じます。
泉鏡花 「日本橋」 装幀:小村雪岱 出版:千章館 大正3年(1914)

江戸時代、日本橋は水運の中心地で、商家の蔵が建ち並んでいました。
蔵が甍を並べ、川舟が行き交う上を夥しい蝶が舞っています。
鏡花の幻想と雪岱のモダンが合わさった、小村雪岱の代表作です。
「おせん 雨」 木版 昭和16年(1941)頃 清水三年坂美術館

邦枝完二(1892-1956)の新聞小説、「おせん」の挿絵です。
雨の線と広げた傘の線の表現が効いています。
小村雪岱を特徴付けるのはこの繊細な線描です。
「雪の朝」 木版多色刷 昭和16年(1941)頃 個人蔵

思い切った構図で、家屋の障子や板壁などの線を見せています。
「蛍」 木版多色刷 昭和17年(1942) 清水三年坂美術館

これも団扇絵のようで、楓模様の帯をした女性が袖を丸めて蛍を捉まえようと
しているところで、鬢(びん)のほつれまで描き込まれています。
「見立寒山拾得」 木版多色刷 昭和17年(1942) 個人蔵

寒山拾得図は文を読む寒山と箒を持った拾得を描きますが、こちらは柏の落葉に
何かを書いている女性とそれを見ている女性です。
地面に散っている欅の葉は関東の秋らしい風情で、拾得ははまだ掃き掃除を
していないようです。
小村雪岱は昭和の鈴木春信とも呼ばれていて、よく似た構図の二人の絵が
並んでいたりもします。
「三十六歌仙 三条院女蔵人左近」 鈴木春信 中判錦絵 江戸時代中期・18世紀

3月14日までの展示です。
夜に吊り灯篭の明かりで女性が手紙を読み、もう一人がそれをのぞき込んでいます。
紅葉の枝も見えます。
いわ橋のよるのちぎりもたえぬべしあくるわびしきかつらぎの神
小村雪岱と同じように江戸の粋を近代につなげる、柴田是真、並河靖之、
濤川惣助など、数々の工芸品も展示されています。
また、現代の作品も展示されています。
並河靖之 「藤に蝶図花瓶」 明治時代・19~20世紀

並河靖之(1845-1927)は七宝作家で、色の境目に金属線を置く、くっきりとした
輪郭線の有線七宝が特徴です。
彦十蒔絵 見立漆器 「苫舟日本橋蒔絵」
朴の木、天然漆、金、螺鈿 2019年 個人蔵

彦十蒔絵は石川県輪島市出身の漆工芸家、若宮隆志さん(1964~)の主宰する
漆装飾の専門家集団です。
石川県金沢出身の泉鏡花にちなんだ作品も制作しています。
展覧会のHPです。
展示室入口には、雛祭も近いので、光山作「陶製奈良雛」が展示されています。
奈良一刀彫の雛人形を模しています。
