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江戸東京博物館 常設展示室 2022/1 その2
両国
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江戸東京博物館は4月1日から令和7年度中まで大規模改修工事のため、
全館休館するとのことなので、常設展示室を観てきました。
記事は2回に分け、今日はその2です。

裏店の棟割長屋
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江戸落語の舞台です。

共同井戸*
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地下を通る神田上水、玉川上水などの水道から井戸で水を汲み上げていました。

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指物師
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寺子屋
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師匠は侍のようで、刀掛けが見えます。

二八蕎麦の屋台
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落語の「時そば」の蕎麦屋はこんなお店でした。

鮨屋の屋台
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コハダ、アナゴ、マグロ、海苔巻などが並んでいます。
江戸時代の鮨は庶民の食物で、屋台で食べていました。

明治初期の銀座煉瓦街の模型
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銀座4丁目の交差点で、鉄道馬車も走っています。

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立ち退かなかったお店もあります。

朝野新聞社屋の原寸大復元
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朝野新聞は明治7年(1874)から明治25年(1892)まで刊行された民権派の新聞です。
現在の銀座和光のある場所で、1894年に服部時計店が朝野新聞から買取っています。

明治26年(1890年)に浅草に建てられた凌雲閣
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12階建てのレンガ造で浅草十二階と呼ばれ、10階までは物品の販売が行なわれ、
上層階は展望室になっていました。
浅草のランドマークでしたが、大正12年(1923)の関東大震災で上の部分が
崩壊してしまい、その後取り壊されています。

明治24年(1891)竣工の神田駿河台のニコライ堂の模型
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台地に建つひときわ大きな建築だったので、東京のあちこちから見えました。

大正初めに建てられた和洋折衷住宅
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洋室は大正から昭和初期に流行した山小屋風です。
神保町の「ラドリオ」「さぼうる」、閉店した浅草の「アンヂェラス」などは
この系統のスタイルです。

日本住宅公団が昭和34年(1959)に造成した、公団住宅のひばりが丘団地
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他にも多くの展示があって、観ていて飽きません。


江戸東京博物館では3月7日まで「徳川一門 ―将軍家をささえたひとびと―」展が
開かれています。

「徳川一門 ―将軍家をささえたひとびと―」展の記事です。


【2022/01/30 20:54】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
江戸東京博物館 常設展示室 2022/1 その1
両国
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江戸東京博物館は4月1日から令和7年度中まで大規模改修工事のため、
全館休館するとのことなので、常設展示室を観てきました。
記事は2回に分け、今日はその1です。

実際の長さの半分を復元した木製の日本橋
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これを渡って展示室に入ります。

「江戸図屏風」 江戸時代 複製
右隻
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元資料は国立歴史民俗博物館所蔵です。
明暦3年(1657)の明暦の大火以前の江戸と近郊の景色を描いています。
右隻には猪狩、鹿狩、川越城、上野東照宮、神田明神、湯島天神、水戸中納言下屋敷、
加賀肥前守下屋敷、吉祥寺、お茶の水の高林寺などが見えます。
狩りの場面では3代将軍家光を笠を差し掛けて顔が見えない形で描いています。
水戸中納言は水戸藩初代の徳川頼房、加賀肥前守は加賀藩3代の前田利常で
ともに家光と関係の良かった人物です。
現在は文京区向丘にある高林寺は明暦の大火前はお茶の水にありました。
名水の湧く井戸で知られ、お茶の水の地名の由来にもなっており、絵にも井戸が
画かれています。

左隻
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左隻には江戸城、各大名屋敷、増上寺、日本橋、京橋、新橋、目黒不動、雉狩、
江戸湾に浮かぶ幕府の軍船と御召船奉行の向井将監の屋敷などが描かれ、
遠くに富士山も見えます。
軍船には日の丸の旗が立てられ、葵紋と向井家の上がり藤紋の幕が張られています。
大名屋敷はどれも桃山風の豪壮な造りで、駿河大納言忠長の屋敷もあります。
忠長は家光の弟ですが、兄と折り合いが悪く、最後は自刃しています。
江戸城天守閣は家光の建てた黒板壁のものが描かれています。

幕末の江戸城本丸・西丸御殿の1/200模型
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江戸城天守閣は家康が慶長期に建てた後、2代秀忠の元和、3代家光の寛永と
2度も建替えられています。
しかし、明暦3年(1657)の明暦の大火で焼失した後は再建されていません。

江戸城本丸大広間・松の廊下・白書院の1/30模型
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浅野内匠頭が吉良上野介に切りつけたのは元禄14年3月14日、白書院に通じる
松の廊下でのことです。

江戸城大手門の前にあった、福井藩主松平忠昌(1597-1645)の上屋敷の模型
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明暦の大火で焼失しており、以後はこのような桃山風の豪華な大名屋敷は
建てられていません。

日本橋北詰の賑わい
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歌川広重の「東海道五十三次之内 日本橋 朝之景」はここを描いています。

越後屋の店先
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今の三越本店辺りです。
とても大きなお相撲さんが歩いていて、周りの人が驚いて見ています。

江戸三座の一つ、中村座の正面の原寸大復元
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市村座、森田座とともに歌舞伎が演じられていました。

江戸三大祭の一つ、神田祭の須田町の山車
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神田祭は山車の行列で有名でした。

「火消千組の図絵馬」(複製) 歌川国芳画
 天保4年(1833) 成田山霊光館/原資料所蔵
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江戸町火消の中で、現在の中央区霊岸島辺りを受け持っていた、「千組」の絵馬です。

火事と喧嘩は江戸の華と云われていた時代、火消は江戸庶民の憧れの的で、
特に纏(まとい)持ちは目立つので美男が選ばれていました。

右:一番組い組纏(模型)
左:六区五番組纏(模型)
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い組は室町などを担当区域とし、纏の形は大岡越前守が考案したとされる
「芥子に枡」で、「消します」の洒落になっています。
歌舞伎の「め組の喧嘩」で有名なめ組は芝辺りが担当です。

明治になると江戸の火消は再編成され、番号制になります。
六区五番組の担当区域の中に江戸東京博物館の辺りがありました。


江戸東京博物館では3月7日まで「徳川一門 ―将軍家をささえたひとびと―」展が
開かれています。

「徳川一門 ―将軍家をささえたひとびと―」展の記事です。


【2022/01/29 19:53】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
湯島天神 梅の咲き始め
湯島
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湯島天神の梅が咲き始めました。

男坂を上がります。

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この季節は露店が並びますが、今日はお休みです。

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湯島天神は学問の神様なので、受験シーズンは特に参拝客が多く、
絵馬もたくさん納められています。

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白梅が少し咲き始めました。

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湯島天神のうめまつりは2月8日に始まります。

干支のおみくじの中にはアマビエもありました。

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ヒヨドリでしょうか。

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夕暮れになり、上野不忍池の弁天堂はライトアップされていました。

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【2022/01/28 20:42】 街歩き | トラックバック(0) | コメント(0) |
「東京長浜観音堂」 正妙寺の千手千足観音立像
東京
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「東京長浜観音堂」は東京駅八重洲口からさくら通りを進み、小路を左に入った
八重洲セントラルビルの4階にあります。
場所は中央区日本橋2-3-21です。

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滋賀県長浜市は2016年に上野不忍池畔に「東京にある、長浜の観音堂」を
コンセプトに「びわ湖長浜KANNON HOUSE」を開設し、長浜市にある観音像
約20体が入れ替わりで展示されていました。

「KANNON HOUSE」2020年10月に閉館しましたが、長浜の観音文化の
保存伝承のための支援者を得るため、2021年7月から長浜の観音像を
出張展示する「東京長浜観音堂」を開設しています。
約2か月ごとに観音像を入れ替え、2月27日(日)まで展示を行う予定です。

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2月27日(日)までは高月町西野、正妙寺の千手千足観音立像が展示されています。

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江戸時代の作で、像高42.1㎝の木造、憤怒の相を浮かべ、千足という他に例を見ない
極めて珍しいお姿で、天台宗系の密教(台密)に由来する像と考えられています。

正妙寺は山の中腹にあるお堂で、観音像は現在、麓の西野集落の薬師堂旧堂に
安置されています。
2016年に東京藝術大学大学美術館で開かれた「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ
-びわ湖・長浜のホトケたち-」に展示されたことで評判になり、地元を訪れる
人が増えましたが、山の中にあるため登るのが大変なことと防犯上の理由で
麓に下りてもらったそうです。

「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ」の記事です。

東京長浜観音堂の展示はこれで最後というのは残念なことではあります。


【2022/01/27 18:25】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「ハリー・ポッターと魔法の歴史展」 東京ステーションギャラリー
東京
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東京駅の東京ステーションギャラリーでは「ハリー・ポッターと魔法の歴史展」が
開かれています。
会期は3月27日(日)までです。

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J.K.ローリング(1965~)の小説、「ハリー・ポッター」の舞台、ホグワーツ魔法魔術学校の
各科目に沿って、大英図書館の所蔵する魔法にちなんだ資料を紹介する展覧会です。


第1章 旅

ジム・ケイ 「(ハリー・ポッターと賢者の石)の9と3/4番線の習作」
 2015年 ブルームズベリー社蔵

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ロンドンのキングス・クロス駅の9番線と10番線の間にある、魔法の世界につながる駅です。
荷物やシロフクロウのヘドウィグを載せた台車を押すハリー・ポッターの姿も見えます。
キングス・クロス駅はスコットランドに向かう線の起点で、ホグワーツもスコットランド
辺りにあるということです。
学校の近くの駅はホグズミード駅で、映画のロケではヨークシャーのゴースランド駅が
使われていて、映画で観た時、お伽話のような駅の佇まいに驚いたものです。


第2章 魔法薬学

ヤコブ・マイデンバッハ 「健康の庭」 1491年 大英図書館蔵
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初めて印刷された博物学の本で、このページには患者の尿を調べて病気の診断をする
学者が描かれています。
手前にはサンプルの入った筒を持った人たちがいて、順番を争っているのでしょうか、
中には喧嘩している人もいます。
尿検査は昔からあった診断方法のようです。


第3章 錬金術

ジェームズ・スタンディッシュ 「リプリー・スクロール」 16世紀 大英図書館蔵
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長さ6mの巻物で、イギリスの錬金術師、ジョージ・リプリーにちなんで命名されています。
錬金術は金などの貴金属を他の材料を使って造り出そうとするする術で、古代エジプトで
すでに始まっています。
「賢者の石」は卑金属を金や銀に変えたり、人を不老不死にする力を持つ石のことです。
結局、成功することはなく、水銀を使ったりしたため、多くの錬金術師が命を縮めましたが、
近代化学の発展に寄与もしています。
なお、現代の核分裂の技術を使えば金の生成は可能ですが、採算は合わないそうです。


第4章 薬草学

「薬物誌(医薬の材料の書)」 14世紀 大英図書館蔵
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マンドレイク(マンドラゴラ)は神経に作用する薬草ですが、枝分かれした太い根は
人の形にも似ています。
引き抜くと悲鳴を上げると言われ、その声を聞いた者は発狂して、時には死んで
しまうそうです。


第5章 呪文学

魔法には不可欠の呪文についての展示です。
日本でも仏教諸派で呪文が唱えられています。


第6章 天文学

「天文学論集」 12世紀 大英図書館蔵
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魔法使いのシリウス・ブラックの名の元になっているシリウスはおおいぬ座の星で、
恒星の中で一番明るい星です。
実際のおおいぬ座は右を向いた形をしていて、シリウスは口の所にあります。
日本では冬の南の空に見えます。


第7章 占い学

アルマ・ブロードブリッジ 「茶葉占い」 1887年 ヨーク・アート・ギャラリー蔵
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ティーカップに残った紅茶の茶葉の形を見て占っています。
カップに残ったトルココーヒーの粉で占う方法もあります。
日本でも、茶柱が立つと良いことがあるといいます。


第8章 闇の魔術に対する防衛術

「動物誌」 1595年 大英図書館蔵
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見たり息を吹きかけただけで人を殺すといわれるバジリスクです。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 「魔法円」 1886年 テート蔵
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ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(1849-1917)はイギリスの古典主義の
画家です。
大鍋で何かを煮ている魔女は三日月鎌を持ち、棒で結界と思われる円を描いています。
円を鴉と蛙が囲み、奥の洞窟の前ではこちらを見ている人がいます。
シェイクスピアの「マクベス」に登場する3人の魔女は蛇の切り身や蝙蝠の羽根などと
一緒に蛙も煮込んでいるので、この蛙もぼやぼやしていると鍋に放り込まれてしまう
かもしれません。
私が高校生の時、学芸会で「マクベス」を演じたクラスがありましたが、黒い衣を着た
3人の魔女が呪文を唱えながら大鍋を掻きまわす様は恐ろしげでした。


第9章 魔法生物飼育学

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 「人魚」 
 1900年 ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ蔵、ロンドン

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人魚は多くの画家に好まれ、描かれています。
背景の岩はモネのよく描いたノルマンディーのエトルタの景色に
ちょっと似ています。

マヌエル・フィレス 「動物の性質について」 16世紀 大英図書館蔵
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マヌエル・フィレスは東ローマ帝国の詩人で、想像上の動物についても書いています。
写本に描かれているのは西洋ではおなじみのユニコーン(一角獣)です。

2013年に国立新美術館で、フランス国立クリュニー中世美術館の所蔵する、
「貴婦人と一角獣」という名の6枚の豪華なタピスリーが展示されていました。

(参考)
「貴婦人と一角獣」より「視覚」 1500年頃
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貴婦人は座って鏡を持ち、一角獣は前脚を貴婦人の膝に乗せて嬉しそうに
自分の顔を映しています。
鏡に映る自分の姿を自分と認識出来るので、ユニコーンの知能はかなり高いようです。

「貴婦人と一角獣展」の記事です。


第10章  過去、現在、未来

世界中のさまざまな言語に翻訳された書籍の展示です。

以前、ロンドンに行った時、大英博物館のミュージアムショップでグリフィンドール寮と
スリザリン寮のネクタイを売っていたのを思い出します。
スリザリンのエンブレムの入ったネクタイを締めるのはちょっと勇気がいるかも
しれません。

大英博物館には映画、「賢者の石」に登場した「ルイス島のチェス駒」も所蔵されています。

(参考)
「ルイス島のチェス駒」 1150‐1200年 
 イギリス、ルイス島 おそらくノルウェーで制作 セイウチの牙、クジラの歯
英011

キング、クイーン、ビショップ、ナイトなどが揃っています。

イギリスは「ハリー・ポッター」の他にも、「ピーター・ラビット」「不思議の国のアリス」
「ドリトル先生」「たのしい川べ」「メアリー・ポピンズ」など、ファンタジーや動物との
交流を題材にした優れた児童文学を「生んでいます。
有力な言語である英語で書かれていることも原因の一つでしょうが、不思議なこと
ではあります。

展覧会のHPです。


【2022/01/25 18:25】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
特別展「ポンペイ」 東京国立博物館 その2
上野
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東京国立博物館平成館で開かれている特別展「ポンペイ」の記事その2です。
会期は4月3日(日)までです。


3章 人々の暮らしー食と仕事

「ワイン用のアンフォラ」 1世紀後半 土器
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ワインを貯蔵する大きな壺で、これを船に載せて遠方まで運びました。

「南ガリア製の陶器(テッラ・シジッラータの杯)」 1世紀 土器
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現在のドイツのトリーアで生産された陶器はテッラ・シジッラータと呼ばれていました。
トリーアは古くからローマの植民都市でした。
色合いも良く、今でも使えそうな器です。

「職人仕事をするクピドたち」 50~79年 フレスコ
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ポンペイと同じく噴火で埋没したエルコラーノの出土で、クピド(キューピッド)たちが
いろいろな仕事をしています。

家具職人
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土地測量
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レオナール・フジタも子どもたちが職人などの仕事をする絵を描いています。

「鍬、三日月鎌、熊手」 1世紀 鉄
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奴隷たちもこれを使って働いていたのでしょう。

「ユピテル=アンモン形の錘付き竿秤」 1世紀 ブロンズ
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錘はローマのユピテル(ジュピター)とエジプトのアンモン(アメン)の習合した神の顔の
形をしています。
おおらかな多神教の国だったローマが一神教のキリスト教に統一されたのは不思議です。

「パン屋の店先」 50~79年 フレスコ
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ポンペイにはパン屋は約30軒あったようです。
庶民の家では台所は小さいか無かったりで、多くは外食していたらしいとのことです。
有力な公職者が宣伝のためパンを配っている情景との説もあるそうで、そうなると
まさに「パンとサーカス」です。
「パンとサーカス」は詩人、ユウェナリス(60~130)がローマの世相を批判した
詩の中の言葉で、民衆は食料(パン)と娯楽(サーカス)が無償で得られることだけを
願っているとしています。

「炭化したパン」 79年
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8等分した切込みのあるパンで、現在でもこの形のパンが焼かれています。


4章 ポンペイ繁栄の歴史

「猛犬注意」 1世紀 モザイク
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玄関の床モザイクで、番犬が居ることを示しています。
簡潔な造形で、白と黒のコントラストが効いています。

「ナイル川風景」 前2世紀末 モザイク
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「アレクサンドロス大王のモザイク」のある「ファウヌスの家」の敷居にあるモザイクです。
アレクサンドリア発祥の意匠で、ワニ、カバ、コブラとマングース、トキ、カモなど、
さまざまな動植物が描かれています。

「アレクサンドロス大王のモザイク」も高精細映像で巨大なディスプレイで映されています。

(参考)
「アレクサンドロス大王のモザイク」
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「葉綱と悲劇の仮面」 前2世紀末 モザイク
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「ファウヌスの家」の敷居にあるモザイクで、花綱にギリシャ悲劇の仮面をあしらっています。

「ネコとカモ」 前1世紀 モザイク 
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ヤマネコの面影を残した精悍なネコです。
ネコと静物という題材はシャルダンやフジタに受け継がれています。

「踊るファウヌス」 前2世紀 ブロンズ
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「ファウヌスの家」のアトリウムに飾られていました。
ファウヌスは古代イタリアの神ですが、この像はデュオニュソスの従者、
サテュロスがアウロスを吹きながら踊っている姿と思われるということです。

「スフィンクスのテーブル脚」
 アウグストゥス時代・前27~後14年 ペンテリコン大理石

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「ファウヌスの家」にあった作品で、ペンテリコンはギリシャの大理石の産地です。
これとよく似たスフィンクスが大英博物館に所蔵されています。

(参考)
「スフィンクス像(おそらくテーブル脚部)」 大理石
 紀元後120-140年頃 大英博物館蔵
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2011年に国立西洋美術館で開かれた「大英博物館 古代ギリシャ展」に
展示されていました。

「竪琴を弾くアポロ」 前1世紀 ブロンズ
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左手に竪琴、右手にピックを持つアポロを表しています。
この像が出土した家は「竪琴奏者の家」と名付けられました。

「竪琴奏者の家」の復元
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中庭に噴水があり、動物のブロンズが置かれ、吊り飾りが下がっていました。

「イヌとイノシシ」 1世紀 ブロンズ
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「シカ」 1世紀 ブロンズ
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「ライオン」 1世紀 ブロンズ
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「ブリテイスの引き渡し」 50~79年 フレスコ
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「悲劇詩人の家」の壁画で、トロイア戦争を題材にした、ホメロスの「イーリアス」の
一場面です。

「ヘレネの略奪(あるいはクリュセイスの帰還)」 50~79年 フレスコ
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5章 発掘のいま、むかし

「ペプロスを着た女性 通称、踊り子」 アウグストゥス時代・前27~後14年 ブロンズ
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ペプロスは古代ギリシャの女性の衣服です。
衣装に銀と胴の象嵌が施され、目には石が嵌められています。
エルコラーノの「パピルス荘」の中庭に置かれていた5体の一つで、アッピア上水道を
守護する5柱の女神、アッピアデスと考えられています。
アッピア上水道はローマ最古の上水道です。

「豹を抱くバックス(ディオニュソス)」
 前27~後14年 パロス大理石 ノーラ歴史考古学博物館蔵

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ヴェスヴィオ山の北麓にあるソンマ・ヴェスヴィアーナの「アウグストゥス荘」で、
2001年から始まった東京大学の学術調査隊による発掘調査により発見されました。
パロス島は大理石の産地で、ミロのヴィーナスもパロス島の大理石で造られています。
調査の結果、「アウグストゥス荘」は79年の噴火ではなく、472年の噴火で埋没したことが
判明したそうです。
ヴェスヴィオ山周辺はいつも噴火や地震の危険に晒されていたようです。

ミュージアムグッズも面白い物が揃っています。
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素晴らしい彫刻や壁画が数多く揃った展覧会で、ローマの文化がいかに
洗練されていたかを示しています。
これだけ高い文化を誇ったローマが滅んで、中世社会になったと思うと、
感慨深いものがあります。

展覧会のHPです。


【2022/01/23 19:04】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
特別展「ポンペイ」 東京国立博物館 その1
上野
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東京国立博物館平成館では特別展「ポンペイ」が開かれています。
会期は4月3日(日)までです。

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ナポリ国立考古学博物館の所蔵品を中心に、紀元後79年にヴェスヴィオ火山の噴火で
埋没したポンペイの遺跡などから出土した遺物、約150点が展示されています。

記事は2回に分け、今日はその1です。

会場は撮影可能です。


序章 ヴェスヴィオ火山噴火とポンペイ埋没

「バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山」 62~79年 フレスコ
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「百年祭の家」の壁画です。
バックス(バッカス)はローマ神話のワインの神で、ギリシャ神話のディオニュソスに
当たり、ブドウの実を身に着けています。
大蛇はブドウ畑の神、アガトダイモーンです。
噴火で山体が変わる前のヴェスヴィオ山の山麓にはブドウ畑が見えます。

「女性犠牲者の石膏像」 79/1875年
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火山灰に埋もれた犠牲者の遺体で出来た空洞に石膏を流して取り出しています。
紀元79年のある日、ヴェスヴィオ山は大噴火を起こし、火砕流が山麓を駆け下り、
ポンペイなどを呑み込んでいます。


1章 ポンペイの街―公共建築と宗教

ポリュクレイトス 「槍を持つ人」 前1~後1世紀 カッラーラ大理石
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古代ギリシャの彫刻家、ポリュクレイトスの作品の忠実な模刻と思われます。
カッラーラは大理石の産地として有名で、ミケランジェロのダビング像も
カッラーラの大理石を彫っています。

「擬アルカイック様式のアポロ」 前1世紀後半 大理石
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古代ギリシャのアルカイック様式の髪型や表情をした太陽神アポロです。
車を牽くグリフィンを従えています。
「槍を持つ人」と比べると表情が古拙(アルカイック)なのが分かります。

「ビキニのウェヌス」 前1~後1世紀 大理石
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ウェヌス(ヴィーナス)はローマ神話の美と愛の女神です。
サンダルを脱ごうとしているウェヌスで、金彩の装飾が残っています。

「俳優、悲劇の若者役と女性役(おそらく遊女)」 1世紀後半 土製
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口を大きく開けて何か叫んでいる姿で、庭に置かれていました。
ポンペイ遺跡にも大きな円形劇場が残っています。

「フォルムの日常風景」 62~79年 フレスコ
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公共空間であるフォルムでの商人の活動を描いています。
布地を売っている人もいます。

「辻音楽師」 前1世紀 モザイク
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仮面を着け、タンバリン、シンバル、アウロス(2本管の笛)を奏でています。
前300年頃のアッティカ新喜劇の一場面とされ、左上に制作者であるギリシャ人、
ディオスクリデスの署名があります。
動きと立体感のある見事な出来栄えのモザイクです。


2章 ポンペイの社会と人々の活躍

「ブドウ摘みを表した小アンフォラ(通称、青の壺)」 1世紀前半 カメオ・ガラス
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青色のガラスに白色のガラスを被せ、ワイン作りをするクピドたちを精巧に
削り出しています。
ウェッジウッドのジャスパーウエアを思い出します。

「書字板と尖筆を持つ女性 通称、サッフォー」 50~79年 フレスコ
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書字板は木の板の表面を蝋で固め、先の尖った筆で字を書き付けるメモ帳です。
何か想を練っている風で、古代ギリシャの女性詩人、サッフォー(前7~6世紀)に
ちなんで名付けられています。

「三美神」 前15~後50年 フレスコ
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この形の三美人は人気のあった図柄のようで、同じ姿が彫られたカメオも
展示されています。
後世にもいろいろな画家に描かれた題材です。

(参考)
エドワード・バーン=ジョーンズ 「三美神」 1885-96年頃
 パステル、紙 タリー・ハウス美術館蔵

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2019年に三菱一号館美術館で開かれた「ラファエル前派の軌跡展」に展示されて
いた時の写真です。

「ライオン形3本脚付きモザイク天板テーブル」 前1~後1世紀 大理石、モザイク
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ポンペイと同じく噴火で埋没したエルコラーノの出土です。

「マケドニアの王子と哲学者」 前60~前40年頃 フレスコ 
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ポンペイと同じく埋没したボスコレアーレの出土です。
槍と盾を持ち、マケドニアの衣装を着た王子と、肘を突いてそれを見上げる女性、
ギリシャ風のマント着て杖を突く老人です。
アレキサンダー大王に始まる支配者としてのマケドニアと、敗者としてのアジアや
ペルシャを表しているとも言われています。

「エウマキア像」 1世紀初頭 大理石
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ポンペイの毛織物業組合が業界の守護者で財産家のエウマキアを顕彰するため
制作された像です。
折り重なった衣装の表現も巧みです。

「賃貸広告文」 62~79年 ストゥッコ
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ユリア・フェリクスという女性の屋敷の外壁に書かれた広告文です。
62年の地震の後、自分の屋敷の一部を賃貸に出していたようです。
佐伯祐三が喜びそうな壁面です。

「ワニとカモ」 62~79年 フレスコ
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エジプト的な意匠で、ユリア・フェリクスの屋敷の壁に描かれています。

「エメラルドの目の蛇形ブレスレット」 前1~後1世紀 金、エメラルド
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蛇は脱皮するので、古代から若さや永遠のシンボルとなっています。
ブルガリの装飾品を思い出します。

「エメラルドと真珠母貝のネックレス」 前1~後1世紀 金、真珠母貝、エメラルド
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「テーブル天板 通称、メメント・モリ」 前1世紀 モザイク
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右側に下がっているボロ布は貧困を、左側は笏と紫のマントで、権力と富を
表しているそうです。
「メメント・モリ」は「死を忘れるな」という古代からの警句です。
ローマ時代は、「だから今ある生を楽しめ」という意味で使われていて、
この頭蓋骨も笑っています。
中世のキリスト教の時代になると、この世の虚しさを表す言葉に変わったようです。

「円形闘技場での乱闘」 59~79年 フレスコ
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59年に円形闘技場で起きた、ポンペイと近隣のヌケリアの住民の乱闘を描いています。
乱闘の結果、ポンペイ市は以後10年間、闘技会の開催を禁止されています。
競技が原因で観客が乱闘騒ぎを起こすのは現在のサッカー試合も同じです。
大きな階段を使って上から出入りする構造になっていて、日除けも見えます。

「パレード用の兜、ユピテルとネプトゥヌスを表した脛当て、ヘラクレスを表した肩当て」
 1世紀 ブロンズ

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闘技会に先立って剣闘士たちは豪華な甲冑を着けてパレードします。
剣闘士は捕虜や奴隷が中心で、自由民も一部混じっていました。
剣闘士だったスパルタクスは前73年に叛乱を起こして、ヴェスヴィオ山に
立て籠もり、その勢力は数万人に膨れ上がってイタリア中を荒らし回り、
ローマ軍を苦しめていますが、やがて追い詰められ、全滅しています。

「奴隷の拘束具」 1世紀 鉄
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輪と輪の間に足を入れ、棒を輪の間に通して使いました。
古代ローマは奴隷に支えられた社会でした。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ(1720-1778)が1770年にポンペイを訪れた時に
この拘束具を見て描いたスケッチです。
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続きは、その2に書きます。

展覧会のHPです。


【2022/01/22 19:13】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「スターバックスコーヒー日本橋高島屋S.C.1階店」
日本橋
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「スターバックスコーヒー日本橋高島屋S.C.1階店」は髙島屋新館の1階にあります。
日本橋高島屋には以前から新館5階に「日本橋高島屋S.C.店」もあります。

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1階店は2021年の12月のオープンで、イートインはテラス席の6席のみです。

カプチーノSにしました。

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隣は「DEAN & DELUCA日本橋高島屋S.C.店」、斜め向かいは髙島屋本館の
「フォション ル・カフェ (FAUCHON LE CAFE)」で、どちらもテラス席があります。

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「DEAN & DELUCA日本橋高島屋S.C.店」の記事です。

「フォション ル・カフェ」の記事です。

日本橋高島屋の本館と新館の間の小路は車が入ってこないので、テラス席で
ゆっくりと寛ぐことができます。


【2022/01/21 19:31】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「未来へつなぐ陶芸 ―伝統工芸のチカラ展」 パナソニック汐留美術館
新橋・汐留
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パナソニック汐留美術館では「未来へつなぐ陶芸 ―伝統工芸のチカラ展」が
開かれています。
会期は3月21日(月・祝)まで、休館日は水曜日です。

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日本工芸会陶芸部会50周年を記念して、人間国宝から若手まで137名の作品が
勢揃いした展覧会です。す。

第Ⅰ章 伝統工芸(陶芸)の確立

先ず、金重陶陽、加守田章二、藤本能道、松井康成、三輪休和など、人間国宝を
始めとする作家の作品の展示です。

荒川豊蔵 「志野茶垸」 1957年 東京国立近代美術館蔵
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荒川豊蔵は志野の再現に力を尽くしています。

富本憲吉 「色絵金銀彩四弁花染付風景文字模様壺」
1957年 東京国立近代美術館蔵

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後期に開発した華やかな金銀彩の地で、丸窓の中に染付で風景を描いています。

松井康成 「練上嘯裂文大壺」 1979年 茨城県陶芸美術館蔵
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違う色の粘土を組み合わせる、練り上げという技法を使っています。

2019年に菊池寛実記念智美術館で開かれた「加守田章二展」の記事です。

同じく2019年に菊池寛実記念智美術館で開かれた「藤本能道展」の記事です。

日本工芸会とは別団体の日展の作家、板谷波山、六代清水六兵衞などの作品も
展示されています。

2014年に出光美術館で開かれた「板谷波山展」の記事です。


第Ⅱ章 伝統工芸(陶芸)のわざと美

さまざまな技法による多彩な美の紹介です。

三代德田八十吉 「耀彩鉢 創生」 1991年 東京国立近代美術館蔵
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九谷焼作家ですが、鮮やかな色彩のグラデーションを追求しました。


第Ⅲ章 未来へつなぐ伝統工芸(陶芸)

現代作家の作品の展示です。

前田昭博 「白瓷壺」 2012年 東京国立近代美術館蔵
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柔らかく艶やかな白磁壺で、ゆるやかな曲線が入って変化を見せています。

隠﨑隆一 「備前広口花器」 2012年 個人蔵
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モダンな造形の備前焼です。
地元出身ではないため、備前焼に必要な良い田土の入手が難しいことから、
いろいろ工夫が凝らされています。

和田的 「白器 ダイ/台」 2017年 茨城県陶芸美術館蔵
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佐倉市在住で、ろくろ成形した磁土から削り出すという、他には無い技法に拠っています。
天草の磁土でないと、このようなシャープな形にならないそうです。

鈴木徹 「緑釉花器」 2019年 個人蔵
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多治見在住で、織部釉を使っていますが、緑釉と呼んで多様性を追求しています。

十四代今泉今右衛門 「色絵雪花薄墨墨はじき萩文鉢」 2019年 個人蔵
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鍋島焼で、墨はじきとは白く残す部分を墨で描くとその部分は染付の絵具をはじき、
焼成すると墨も焼き飛んで白く残るという技法です。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は「イスラエル博物館所蔵 ピカソ― ひらめきの原点 ―」です。
会期は4月9日(土)から 6月19日(日)までです。


【2022/01/20 19:12】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「徳川一門 ―将軍家をささえたひとびと―」展 江戸東京美術館
両国
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両国の江戸東京博物館では企画展「徳川一門 ―将軍家をささえたひとびと―」が
開かれています。
会期は3月6日(日)までです。

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徳川家康から慶喜まで15代続いた徳川将軍家と、それを支えた一門についての展示です。

徳川将軍家の系譜
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8代将軍吉宗以来、分家の紀伊徳川家と水戸徳川家の系統が将軍職を継いでいます。

「東照大権現像」 天海賛 四代木村了琢筆
 江戸時代 德川記念財団

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南光坊天海(1536?-1643)は天台宗の僧で、徳川家康に仕えています。
家康の死後の神号を権現と定めたのは天海の案です。

「本小札濃勝糸威二枚胴具足」 江戸時代末期 江戸東京博物館
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胴は前後二枚で、兜の前立はカマキリ、勝糸は濃い藍色の威し糸のことです。
清水徳川家3代当主で紀州藩11代藩主、徳川斉順(なりゆき)所用の鎧です。
11代将軍徳川家斉の七男で、14代将軍徳川家茂の父でもあります。

「松の徳葵の賑わい」  明治20年(1887) 江戸東京博物館
明治になり江戸時代を懐かしむ気分から描かれた6枚続きの錦絵で、
徳川家斉が儲けた53人の子を描いています。

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左上が家斉、左下の青い着物姿が斉順です。
子どもの絵が多いのは子の多くが幼少時に夭折していることによるものです。

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右上の束帯姿が次男で12代将軍の家慶、手前の紫の着物に袴姿が
十五男の斉民です。

「山水図」 松平斉民 明治23年(1890) 徳川記念財団
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松平斉民(1814-1891)は11代将軍徳川家斉の十五男で、津山藩松平家を継いでいます。
父の家斉は26人もの男子を儲けていますが、家斉の男系子孫で残っているのは
斉民の系統のみとのことで、斉民自身も78歳の長命で、明治後の徳川一門で
重んじられました。

「徳川慶喜像」 川村清雄 明治時代・19世紀 徳川記念財団
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最後の将軍となった15代慶喜(1837-1913)の像で、写真を基に描かれています。
徳川慶喜は初めての水戸徳川家出身の将軍です。
川村清雄(1852-1934)は幕臣の子で、少年時代は徳川慶喜の後の徳川宗家の当主、
家達(いえさと:1863-1940)の遊び相手役の近習として仕え、幕府崩壊後の
明治4年(1871)に徳川家派遣留学生として、法律や政治を学ぶためアメリカに
留学しますが、幼い頃から好きだった絵の才能を認められ、パリやヴェネツィアで
洋画を学んでいます。

「天璋院像」 川村清雄 明治17年(1884) 徳川記念財団蔵
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13代将軍徳川家定の正室、天璋院篤姫(1836-1883)の所用です。
天璋院は薩摩島津家の分家の出身で、大奥の中心人物ですが、明治維新後は
質素な生活態度を貫いています。
天璋院の一周忌を前に遺影として制作された作品です。

「小袖 萌黄紋縮緬地雪持竹雀模様」 
 江戸時代・19世紀 徳川記念財団
 
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藤に蝶をあしらった格子模様の地の裾は雪を被った竹と雀で埋められています。
白糸で刺繍された、竹に積もる雪は盛り上がり、色彩も鮮やかで豪華です。
背には養女となった近衛家の牡丹紋が刺繍されています。

「黒塗牡丹紋散松唐草蒔絵 雛道具」 江戸時代後期 徳川記念財団
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天璋院所用の雛飾りです。

「御意之振(桜田門外の変につき)」 安政7年(1860) 個人蔵(徳川宗家文書)
「御意之振」は将軍の発言の記録です。
安政7年(1860)に大老井伊直弼を水戸藩の脱藩者などが暗殺した桜田門外の変の
直後に14代将軍家茂が御三家当主などを集めて会談した時の記録です。
集められたのは徳川茂徳(尾張徳川家)、徳川茂承(紀伊徳川家)、
前田斉泰(加賀前田家)、松平忠国(武蔵国忍藩)です。
水戸徳川家は当主の慶篤が安政の大獄で登城停止となっており、
事件が水戸藩脱藩者の起こしたものであるためか、呼ばれていません。
加賀前田家は外様大名ですが、別格の扱いを受けていることが分かります。
忍藩が呼ばれたのは当時、外国船に対する沿岸警備を命じられていたためでしょうか。
幕末の政情の一端を見せてくれる興味深い資料です。

展覧会のHPです。

江戸東京博物館は4月1日から令和7年度中まで大規模改修工事のため、
全館休館するとのことです。


【2022/01/18 20:24】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「第39回 日本伝統漆芸展」 西武池袋本店
池袋
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西武池袋本店の西武アート・フォーラムでは「第39回 日本伝統漆芸展」が
開かれています。
会期は1月25日(火)までです。

日本工芸会の主催で、さまざまな素材と技法による漆芸品が展示されています。
輪島塗、山中塗の産地である石川県の作家が多いようです。+

文部科学大臣賞 蒔絵沈金箱 「夜遊戯(よあそび)」 坂本康則 石川県
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暗がりに浮かぶ蛍光を沈金で表しています。

朝日新聞社賞 蒔絵箱 「遊彩(ゆうさい)」 米本有希 石川県
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輪島の海を元気に泳ぐクサフグです。
波紋も蜻蛉塗を使って描いています。

奨励賞 石川県輪島漆芸美術館賞 
蒔絵箱 「衾雪(ふすまゆき)」 中室惣一郎 石川県

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絞漆で格子状の筋を付け、銀粉を蒔いて夜に積もった雪が朝に光る様子を
見せているそうです。

漆芸は日本で高度に発達した工芸で、その多彩さ、巧みさには驚き、感心します。


【2022/01/16 21:13】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「第27回 佐藤哲郎 油画展」
池袋
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池袋の東武百貨店の美術画廊では、「第27回 佐藤哲郎 油画展」が
1月13日(水)まで開かれています。

佐藤哲郎さん(1924~)は点描の技法でヨーロッパの古城や日本の古都、
舞妓、花などを描いておられます。

終戦直後に始まる長い画業で、サロン・ドートンヌの会員でもあります。
色調は明るく柔らかく、点描独特の華やぎがあります。

「ロワールの眞珠 アゼ・ル・リドー城」 20P
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16世紀に川の中州に建てられたお城です。

「バズージュ城」 6F
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バズージュ城はロワール川沿いにあるお城です。

「静日・浄瑠璃寺」 20P
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京都と奈良な境にあるお寺で、平安末期建立の本堂に9体の阿弥陀仏が
並んでいることから九体寺とも呼ばれています。
私はむかし、お寺廻りをしていた時、雨の日に本堂で休んでいたら、
隣の木に雷が落ちて驚いたことがあります。

「からげ」
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からげは舞妓さん芸妓さんの日常の装いのことです。

「秋 ばら」 15F
佐藤img473 (1)

秋に咲くバラです。

「有明け エデン・ローズ」 4F
佐藤img480 (2)

エデン・ローズは大輪の花を咲かせる品種です。

「薔薇 サッチモ」 10F
佐藤img473 (4)

ジャズミュージシャンのルイ・アームストロングの通称を名前にしています。


【2022/01/15 19:18】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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Author:chariot
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