上野
東京国立博物館の本館2室では創立150年記念特集 「未来の国宝―東京国立博物館
書画の逸品―」の展示がされています。
東京国立博物館の数万件の所蔵品の中には国宝や重要文化財となっていなくても
重要な作品が数多くあります。
それらの中から特に選ばれた作品を紹介する企画です。
期間は4月12日から2023年3月26日までです。
通常は国宝を展示する2室に展示されています。
上村松園 「焔」 大正7年(1918) 絹本着色 東京国立博物館

6月5日(日)までの展示です。
上村松園(1875~1949)の代表作で、謡曲「葵上」の、光源氏の正妻、葵上に嫉妬する
六条御息所の生霊の姿です。
源氏物語の世界ですが、桃山時代の風俗で描かれています。
長い髪は煙るように流れ、裾はぼかされています。
細身の体に沿う長い藤の花と、怨念を表すかのような蜘蛛の巣の柄の小袖を
片袖脱ぎにして、物狂いの様を示しています。

凄みのあるのは顔の描写で、頬や額は青ざめ、お歯黒の口は髪を噛んでいます。
能楽師の助言で、能面の目に金泥を塗る泥眼という技法を借り、絹地の裏から
目に金泥を塗って、異様な光を見せているとのことです。
指も細く、左手の小指も立って、感情の烈しさを表しています。
「見返り美人図」 菱川師宣 江戸時代・17世紀


5月8日まで展示されていました。
肉筆浮世絵で、玉結びの髪に吉弥結びの帯、振袖は菊と桜の花の丸模様です。
後ろ姿にすることで、後ろ結びである吉弥結びを見せ、左袖をひるがえして
模様を際立たせています。
洛中洛外図のような都市景観図から、集団を描いた作品に、さらに一人を描く
美人画に進んでいく様子が分かります。
「春日宮曼荼羅」 鎌倉時代・13世紀
6月7日(火)~7月3日(日)の展示予定です。
春日宮曼荼羅は奈良の春日大社を描いた絵図で、平安時代の12世紀後半から
京都の藤原氏が春日社への参詣の代わりに自邸に掛ける礼拝画として描かれる
ようになります。
幾何学的な図像の曼荼羅とはことなり、自然の風景を取り入れた優美な画像です。
鎌倉時代になると春日は地上の浄土という信仰から、社頭の景色に荘厳さを
求められるようになります。
「蝦蟇鉄拐図」 雪村周継 室町時代・16世紀
7月5日(火)~7月31日(日) の展示予定です。
鉄拐仙人(李鉄拐)は鉄の杖を突き、魂を体から遊離させる術を使う仙人です。
蝦蟇仙人(劉海蟾)一本足のガマと遊ぶ仙人です。
雪村周継(生没年未詳)は戦国時代の絵師で、常陸の佐竹氏の一族ですが、
家を継ぐことが叶わず、臨済宗の正宗寺に入って修行し、画僧となります。
50歳代になって、関東を渡り歩き、會津の葦名氏や三春の田村氏の許に身を寄せ、
80歳代で郡山で亡くなったものと思われます。
「源氏物語図屏風(初音・若菜上)」 土佐光起 江戸時代・17世紀
右隻


左隻


8月2日(火)~8月28日(日) の展示予定です。
右隻は「初音」の場面で、正月に女房たちが集まっているところへ光源氏が
顔を出します。
左隻は「若菜上」の場面で、正月に玉鬘が光源氏に若菜を献上しています。
御簾越しに覗き見るという趣向になっていて、緑色の細い横線が全面に引かれ、
画面全体が緑色掛かっています。
土佐光起(1617-1691)は大和絵の土佐家中興の祖と呼ばれた絵師で、
後水尾天皇の庇護を受けています。
「山水図屏風」 呉春 江戸時代・18世紀

右隻

左隻

右隻部分

8月30日(火)~9月25日(日)の展示予定です。
右隻には家路につく農夫、左隻に驢馬に乗った旅人が描かれています。
呉春(1752-1811)は京都の金座役人の家に生まれ、始め蕪村の弟子となって
俳諧と文人画を学びますが、蕪村の没後、円山応挙に近付き、四条派の祖と
なっています。
「金胎仏画帖」 平安時代・12世紀
9月27日(火)~10月23日(日) の展示予定です。
密教の金剛界の諸尊を描いた画帖で、絵仏師の宅磨為遠の作とされています。
高野山にありましたが、現在は断簡となって各所に所蔵されています。
「市川鰕蔵の暫(碓井荒太郎貞光)」 歌川国政 江戸時代・寛政8年(1796)
10月25日(火)~11月20日(日) の展示予定です。
歌川国政(1773年頃 – 1810)は初代歌川豊国の門人で役者絵を得意としました。
大胆な画面構成に特徴があります。
この暫(しばらく)の人物は鎌倉権五郎景政ではなく碓井荒太郎貞光です。
市川鰕蔵(1741 – 1806)は五代目市川団十郎の後の名で、市川家では代々
海老蔵を名乗っていましたが、自分は雑魚のエビだとして蝦蔵を名乗っています。
「形見の直垂(虫干)」 川村清雄 明治32~44年(1899~1911)

11月22日(火)~12月25日(日) の展示予定です。
川村清雄(1852-1934)は幕臣の子で、幕府崩壊後の明治4年(1871)に
徳川家派遣留学生として、法律や政治を学ぶためアメリカに留学しますが、
幼い頃から好きだった絵の才能を認められて洋画を学ぶことを決心します。
そして、パリやヴェネツィアで本格的に勉強した後、明治14年(1881)に
帰国し、その後、同じく幕臣だった勝海舟の庇護を受けます。
明治32年に亡くなった恩人の勝海舟の葬儀に清雄は白い直垂(ひたたれ)を
着て随行しています。
虫干にその直垂を着た少女と、海舟の胸像などを取り合わせた作品で、
終生清雄の手許に置かれていました。
「玄圃瑤華 花菖蒲・棕櫚」 伊藤若冲自画・自刻
江戸時代・明和5年(1768)

2023年1月2日(月・休)~1月29日(日) の展示予定です。
玄圃は仙人の居所、瑤華は玉のように美しい花という意味です。
版木に紙を当て、その上から墨を打つ、拓本に似た拓版画という技法に拠っており、
版木も自ら彫っています。
草花と虫などを組合わせた48図で、写実性は動植綵絵に通じるものがあります。
「江戸城本丸大奥御対面所障壁画下絵」 狩野養信 江戸時代・19世紀
2023年1月31日(火)~2月26日(日) の展示予定です。
狩野養信(1796 – 1846)は木挽町狩野9代目で、江戸城西の丸御殿や本丸御殿の
障壁画を手掛けています。
「平家納経 (模本)」 田中親美模 原本:国宝・嚴島神社蔵 大正~昭和時代・20世紀
、原本:平安時代・長寛2年(1164)
2023年2月28日(火)~3月26日(日) の展示予定です。
田中親美(たなかしんび:1875‐1975)は厳島神社の依頼で、5年をかけて
平家納経全33巻の現状模本を制作しています。
そして当初の姿を想定した数組の復元模本を制作しています。
33件のうち、信解品第四、授記品第六、化城喩品第七、人記品第九、宝塔品第十一、
提婆品第十二、厳王品第二十七、平家納経経箱(模造)が展示されます。
「平家納経 妙法蓮華経提婆達多品第十二(模本)」

地色の変化に合わせて、経文の字の色も変えています。
見返しには釈迦が説法している所へ龍女が侍女を従え、宝珠を捧げ持って
海上を進む様子が描かれています。
展覧会のHPです。
上野不忍池の蓮が伸びています。


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東京国立博物館の本館2室では創立150年記念特集 「未来の国宝―東京国立博物館
書画の逸品―」の展示がされています。
東京国立博物館の数万件の所蔵品の中には国宝や重要文化財となっていなくても
重要な作品が数多くあります。
それらの中から特に選ばれた作品を紹介する企画です。
期間は4月12日から2023年3月26日までです。
通常は国宝を展示する2室に展示されています。
上村松園 「焔」 大正7年(1918) 絹本着色 東京国立博物館

6月5日(日)までの展示です。
上村松園(1875~1949)の代表作で、謡曲「葵上」の、光源氏の正妻、葵上に嫉妬する
六条御息所の生霊の姿です。
源氏物語の世界ですが、桃山時代の風俗で描かれています。
長い髪は煙るように流れ、裾はぼかされています。
細身の体に沿う長い藤の花と、怨念を表すかのような蜘蛛の巣の柄の小袖を
片袖脱ぎにして、物狂いの様を示しています。

凄みのあるのは顔の描写で、頬や額は青ざめ、お歯黒の口は髪を噛んでいます。
能楽師の助言で、能面の目に金泥を塗る泥眼という技法を借り、絹地の裏から
目に金泥を塗って、異様な光を見せているとのことです。
指も細く、左手の小指も立って、感情の烈しさを表しています。
「見返り美人図」 菱川師宣 江戸時代・17世紀


5月8日まで展示されていました。
肉筆浮世絵で、玉結びの髪に吉弥結びの帯、振袖は菊と桜の花の丸模様です。
後ろ姿にすることで、後ろ結びである吉弥結びを見せ、左袖をひるがえして
模様を際立たせています。
洛中洛外図のような都市景観図から、集団を描いた作品に、さらに一人を描く
美人画に進んでいく様子が分かります。
「春日宮曼荼羅」 鎌倉時代・13世紀
6月7日(火)~7月3日(日)の展示予定です。
春日宮曼荼羅は奈良の春日大社を描いた絵図で、平安時代の12世紀後半から
京都の藤原氏が春日社への参詣の代わりに自邸に掛ける礼拝画として描かれる
ようになります。
幾何学的な図像の曼荼羅とはことなり、自然の風景を取り入れた優美な画像です。
鎌倉時代になると春日は地上の浄土という信仰から、社頭の景色に荘厳さを
求められるようになります。
「蝦蟇鉄拐図」 雪村周継 室町時代・16世紀
7月5日(火)~7月31日(日) の展示予定です。
鉄拐仙人(李鉄拐)は鉄の杖を突き、魂を体から遊離させる術を使う仙人です。
蝦蟇仙人(劉海蟾)一本足のガマと遊ぶ仙人です。
雪村周継(生没年未詳)は戦国時代の絵師で、常陸の佐竹氏の一族ですが、
家を継ぐことが叶わず、臨済宗の正宗寺に入って修行し、画僧となります。
50歳代になって、関東を渡り歩き、會津の葦名氏や三春の田村氏の許に身を寄せ、
80歳代で郡山で亡くなったものと思われます。
「源氏物語図屏風(初音・若菜上)」 土佐光起 江戸時代・17世紀
右隻


左隻


8月2日(火)~8月28日(日) の展示予定です。
右隻は「初音」の場面で、正月に女房たちが集まっているところへ光源氏が
顔を出します。
左隻は「若菜上」の場面で、正月に玉鬘が光源氏に若菜を献上しています。
御簾越しに覗き見るという趣向になっていて、緑色の細い横線が全面に引かれ、
画面全体が緑色掛かっています。
土佐光起(1617-1691)は大和絵の土佐家中興の祖と呼ばれた絵師で、
後水尾天皇の庇護を受けています。
「山水図屏風」 呉春 江戸時代・18世紀

右隻

左隻

右隻部分

8月30日(火)~9月25日(日)の展示予定です。
右隻には家路につく農夫、左隻に驢馬に乗った旅人が描かれています。
呉春(1752-1811)は京都の金座役人の家に生まれ、始め蕪村の弟子となって
俳諧と文人画を学びますが、蕪村の没後、円山応挙に近付き、四条派の祖と
なっています。
「金胎仏画帖」 平安時代・12世紀
9月27日(火)~10月23日(日) の展示予定です。
密教の金剛界の諸尊を描いた画帖で、絵仏師の宅磨為遠の作とされています。
高野山にありましたが、現在は断簡となって各所に所蔵されています。
「市川鰕蔵の暫(碓井荒太郎貞光)」 歌川国政 江戸時代・寛政8年(1796)
10月25日(火)~11月20日(日) の展示予定です。
歌川国政(1773年頃 – 1810)は初代歌川豊国の門人で役者絵を得意としました。
大胆な画面構成に特徴があります。
この暫(しばらく)の人物は鎌倉権五郎景政ではなく碓井荒太郎貞光です。
市川鰕蔵(1741 – 1806)は五代目市川団十郎の後の名で、市川家では代々
海老蔵を名乗っていましたが、自分は雑魚のエビだとして蝦蔵を名乗っています。
「形見の直垂(虫干)」 川村清雄 明治32~44年(1899~1911)

11月22日(火)~12月25日(日) の展示予定です。
川村清雄(1852-1934)は幕臣の子で、幕府崩壊後の明治4年(1871)に
徳川家派遣留学生として、法律や政治を学ぶためアメリカに留学しますが、
幼い頃から好きだった絵の才能を認められて洋画を学ぶことを決心します。
そして、パリやヴェネツィアで本格的に勉強した後、明治14年(1881)に
帰国し、その後、同じく幕臣だった勝海舟の庇護を受けます。
明治32年に亡くなった恩人の勝海舟の葬儀に清雄は白い直垂(ひたたれ)を
着て随行しています。
虫干にその直垂を着た少女と、海舟の胸像などを取り合わせた作品で、
終生清雄の手許に置かれていました。
「玄圃瑤華 花菖蒲・棕櫚」 伊藤若冲自画・自刻
江戸時代・明和5年(1768)

2023年1月2日(月・休)~1月29日(日) の展示予定です。
玄圃は仙人の居所、瑤華は玉のように美しい花という意味です。
版木に紙を当て、その上から墨を打つ、拓本に似た拓版画という技法に拠っており、
版木も自ら彫っています。
草花と虫などを組合わせた48図で、写実性は動植綵絵に通じるものがあります。
「江戸城本丸大奥御対面所障壁画下絵」 狩野養信 江戸時代・19世紀
2023年1月31日(火)~2月26日(日) の展示予定です。
狩野養信(1796 – 1846)は木挽町狩野9代目で、江戸城西の丸御殿や本丸御殿の
障壁画を手掛けています。
「平家納経 (模本)」 田中親美模 原本:国宝・嚴島神社蔵 大正~昭和時代・20世紀
、原本:平安時代・長寛2年(1164)
2023年2月28日(火)~3月26日(日) の展示予定です。
田中親美(たなかしんび:1875‐1975)は厳島神社の依頼で、5年をかけて
平家納経全33巻の現状模本を制作しています。
そして当初の姿を想定した数組の復元模本を制作しています。
33件のうち、信解品第四、授記品第六、化城喩品第七、人記品第九、宝塔品第十一、
提婆品第十二、厳王品第二十七、平家納経経箱(模造)が展示されます。
「平家納経 妙法蓮華経提婆達多品第十二(模本)」

地色の変化に合わせて、経文の字の色も変えています。
見返しには釈迦が説法している所へ龍女が侍女を従え、宝珠を捧げ持って
海上を進む様子が描かれています。
展覧会のHPです。
上野不忍池の蓮が伸びています。


銀座
GINZA SIXの6階にある銀座蔦屋書店のギャラリーTHE CLUBでは
6月11日(土)まで猪瀬直哉個展「The Utopia Chapter 6」が開かれています。

猪瀬直哉さん(1988~)は神奈川県出身、東京藝術大学油画専攻を卒業し、
現在ロンドンを拠点に活動されています。
人間の考えるユートピアの傲慢ともいえる姿と、それへの自然の復讐がテーマです。
2018年に国立新美術館で開かれた「20th DOMANI・明日展 未来を担う美術家たち
文化庁芸術家在外研修の成果」では猪瀬直哉さんの作品も展示されていました。
「20th DOMANI・明日展」の記事です。
***
同じ銀座蔦屋書店のアートウォールギャラリーでは6月9日(木)まで高橋健太新作展示、
「流動するラスター」が開かれています。

高橋健太さん(1996~)は宮崎県出身で東京藝術大学日本画専攻を卒業し、
大学院に在学中です。
ラスターとは光沢という意味で、日本画の鉱物性顔料の特徴の一つです。



「room」 2022年

和紙に顔料など日本画の画材を使って、無名性の高いデジタルな情景です。
現代の日本画の一つの表現のようにも見えます。
chariot
GINZA SIXの6階にある銀座蔦屋書店のギャラリーTHE CLUBでは
6月11日(土)まで猪瀬直哉個展「The Utopia Chapter 6」が開かれています。

猪瀬直哉さん(1988~)は神奈川県出身、東京藝術大学油画専攻を卒業し、
現在ロンドンを拠点に活動されています。
人間の考えるユートピアの傲慢ともいえる姿と、それへの自然の復讐がテーマです。
2018年に国立新美術館で開かれた「20th DOMANI・明日展 未来を担う美術家たち
文化庁芸術家在外研修の成果」では猪瀬直哉さんの作品も展示されていました。
「20th DOMANI・明日展」の記事です。
***
同じ銀座蔦屋書店のアートウォールギャラリーでは6月9日(木)まで高橋健太新作展示、
「流動するラスター」が開かれています。

高橋健太さん(1996~)は宮崎県出身で東京藝術大学日本画専攻を卒業し、
大学院に在学中です。
ラスターとは光沢という意味で、日本画の鉱物性顔料の特徴の一つです。



「room」 2022年

和紙に顔料など日本画の画材を使って、無名性の高いデジタルな情景です。
現代の日本画の一つの表現のようにも見えます。
銀座
銀座の日動画廊では、「第59回太陽展」が開かれています。
会期は6月7日(火)まで、会期中は無休です。

現在活躍中の多くの画家の作品を中心にした、毎年恒例の展覧会です。
林武や鴨居玲など、代表的な物故作家の作品も展示されています。
フジタ、ユトリロ、キスリング、ローランサンなどもあります。
岡鹿之助 「パンジー」

岡鹿之助特有の点描で、人気のある題材のパンジーを描いています。
山本大貴さんの作品はクラシックな雰囲気の女性像でした。
同じ日動画廊で先日、個展を開かれていた松本亮平さんの作品では
透明な目の美しい猫が岸田劉生の「麗子像」のような表情で座って
いました。
銀座に咲き始めたアジサイです。


chariot
銀座の日動画廊では、「第59回太陽展」が開かれています。
会期は6月7日(火)まで、会期中は無休です。

現在活躍中の多くの画家の作品を中心にした、毎年恒例の展覧会です。
林武や鴨居玲など、代表的な物故作家の作品も展示されています。
フジタ、ユトリロ、キスリング、ローランサンなどもあります。
岡鹿之助 「パンジー」

岡鹿之助特有の点描で、人気のある題材のパンジーを描いています。
山本大貴さんの作品はクラシックな雰囲気の女性像でした。
同じ日動画廊で先日、個展を開かれていた松本亮平さんの作品では
透明な目の美しい猫が岸田劉生の「麗子像」のような表情で座って
いました。
銀座に咲き始めたアジサイです。


上野
上野の東京都美術館で開かれている「スコットランド国立美術館 THE GREATS
美の巨匠たち」展の記事、2/2です。
会期は7月3日(日)までです。

3.グランド・ツァーの時代
18世紀にはイギリスの上流階級の子弟は見聞を広めるため、道路が開かれて
交通の容易になったスイスを経由してイタリアに旅行するグランド・ツァーが流行します。
これによりイギリスの若者は大陸の文化に触れるようになります。
フランソワ・ブーシェ 「田園の情景」

左から「愛すべきパストラル」1762年、「田舎風の贈物」1761年、「眠る女教師」1762年
パストラルは羊飼いの移動生活という意味から転じて、田園の理想郷を指す
言葉となります。
農村の男女の恋物語を思わせ、犬や猫、驢馬も描かれています。
それぞれ独立した作品ですが、所有者によって一連の作品として扱われるように
なっています。
フランソワ・ブーシェ(1703-1770)はフランスのロココを代表する画家で、
ルイ15世や愛妾ポンパドゥール夫人に寵愛されています。
ジョシュア・レノルズ 「ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち」 1780-81年

上流家庭の3姉妹が糸繰りをしたり、刺繍をしているところを三美神になぞらえています。
白色の際立つ画面で、髪形や化粧など、当時の流行も分かります。
ウォルドグレイヴ家は貴族の家系で、多くの軍人や政治家を輩出し、その血筋は現在の
イギリス王室ともつながっています。
ジョシュア・レノルズ(1723-1792)はイギリスのロイヤル・アカデミーの初代会長に
なった画家で、特に肖像画に優れ、古典的な雰囲気の中の人物を描きました。
トマス・ゲインズバラ 「ノーマン・コートのセリーナ・シスルスウェイトの肖像」 1778年頃

トマス・ゲインズバラ(1727-1788)はイングランドのサフォークの生まれで、
本人は風景画を好んでいましたが、肖像画家として有名になっています。
豪華なドレスと流行の髪型の女性ですが、背景の景色も力を入れて描いています。
4.19世紀の開拓者たち
ジョン・エヴァレット・ミレイ 「古来比類なき甘美な瞳」 1881年

レノルズの女性たちの高貴さに対し、こちらはごくあっさりした描き振りの少女です。
髪は切ったまま、服も質素ですが、その自然な姿に魅力があります。
モデルは子役俳優のベアトリス・バックストンで、題名はロバート・ブラウニング
(1812-1889)の詩に拠っています。
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)はラファエル前派の画家で、高い技量の
持ち主ですが、後にラファエル前派を離れ、感傷的な作品で名声を得ています。
ジョン・ラスキンの妻はミレイと恋仲になり、ラスキンと別れてミレイと結婚したため、
それまでミレイを寵愛していたヴィクトリア女王はそれを不道徳として怒ったそうです。
フランシス・グラント 「アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)
ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)」 1857年

結婚を前にした娘さんの肖像で、ほぼ等身大に描かれ、グラントの亡くなるまで
手元に置かれていたそうです。
冬、手袋を嵌めるところで、雪の白、コートの黒、スカートの赤の対照が際立ち、
特に特に黒には深みがあります。
フランシス・グラント(1803-1878)はスコットランド出身の肖像画家で、ヴィクトリア女王や
多くの貴族の肖像を描き、スコットランド人として初めてロイヤル・アカデミーの会長も
勤めています。
ジョン・コンスタブル 「デダムの谷」 1828年

大きな作品で、広々とした風景は活き活きとしています。
手前に小さく人物と小屋が描かれ、遠くにはパリッシュ教会の塔が見え、
にわか雨も降っています。
コンスタブルが影響を受けたクロード・ロラン(1600-1682)の「ハガルと天使のいる
風景」に倣った構図です。
ジョン・コンスタブル(1776-1837)はウィリアム・ターナー(1775-1851)と並ぶ
19世紀のイギリスの代表的な風景画家で、故郷のサフォークなど、自分の生活に
密着した風景を生涯描き続けています。
印象派・ポスト印象派の作品も並びます。
クロード・モネ 「エプト川沿いのポプラ並木」 1891年

ジヴェルニーでセーヌ川に合流するエプト川の岸辺で1891年の春から秋に
制作した連作の1つで、舟の上から見た景色と思われます。
明るく鮮やかな色彩が輝き、会場の中で圧倒的な存在感があります。
ポール・ゴーガン 「三人のタヒチ人」 1899年

背景は縞模様になっていて、象徴的な雰囲気を見せています。
左の女性の持っている果物はアダムとイヴの果物、つまり誘惑を、右の女性の
結婚指輪は義務と責任を暗示しているそうです。
エピローグ
フレデリック・エドウィン・チャーチ 「アメリカ側から見たナイアガラの滝」 1867年

会場の最後に置かれている、高さ3mくらいある大きな作品です。
広大な空間が描き出され、轟々とした滝の音まで聞こえそうです。
右下には虹が架かり、左上の展望台には人の姿も見えます
スコットランドの貧しい家に生まれ、アメリカに渡って成功した実業家が美術館に
寄贈しています。
フレデリック・エドウィン・チャーチ(1826-1900)はアメリカの画家で、雄大な風景画を
得意としています。
スコットランド国立美術館はこのような寄贈や寄付により支えられてきたそうです。
展覧会のHPです。
chariot
上野の東京都美術館で開かれている「スコットランド国立美術館 THE GREATS
美の巨匠たち」展の記事、2/2です。
会期は7月3日(日)までです。

3.グランド・ツァーの時代
18世紀にはイギリスの上流階級の子弟は見聞を広めるため、道路が開かれて
交通の容易になったスイスを経由してイタリアに旅行するグランド・ツァーが流行します。
これによりイギリスの若者は大陸の文化に触れるようになります。
フランソワ・ブーシェ 「田園の情景」

左から「愛すべきパストラル」1762年、「田舎風の贈物」1761年、「眠る女教師」1762年
パストラルは羊飼いの移動生活という意味から転じて、田園の理想郷を指す
言葉となります。
農村の男女の恋物語を思わせ、犬や猫、驢馬も描かれています。
それぞれ独立した作品ですが、所有者によって一連の作品として扱われるように
なっています。
フランソワ・ブーシェ(1703-1770)はフランスのロココを代表する画家で、
ルイ15世や愛妾ポンパドゥール夫人に寵愛されています。
ジョシュア・レノルズ 「ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち」 1780-81年

上流家庭の3姉妹が糸繰りをしたり、刺繍をしているところを三美神になぞらえています。
白色の際立つ画面で、髪形や化粧など、当時の流行も分かります。
ウォルドグレイヴ家は貴族の家系で、多くの軍人や政治家を輩出し、その血筋は現在の
イギリス王室ともつながっています。
ジョシュア・レノルズ(1723-1792)はイギリスのロイヤル・アカデミーの初代会長に
なった画家で、特に肖像画に優れ、古典的な雰囲気の中の人物を描きました。
トマス・ゲインズバラ 「ノーマン・コートのセリーナ・シスルスウェイトの肖像」 1778年頃

トマス・ゲインズバラ(1727-1788)はイングランドのサフォークの生まれで、
本人は風景画を好んでいましたが、肖像画家として有名になっています。
豪華なドレスと流行の髪型の女性ですが、背景の景色も力を入れて描いています。
4.19世紀の開拓者たち
ジョン・エヴァレット・ミレイ 「古来比類なき甘美な瞳」 1881年

レノルズの女性たちの高貴さに対し、こちらはごくあっさりした描き振りの少女です。
髪は切ったまま、服も質素ですが、その自然な姿に魅力があります。
モデルは子役俳優のベアトリス・バックストンで、題名はロバート・ブラウニング
(1812-1889)の詩に拠っています。
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)はラファエル前派の画家で、高い技量の
持ち主ですが、後にラファエル前派を離れ、感傷的な作品で名声を得ています。
ジョン・ラスキンの妻はミレイと恋仲になり、ラスキンと別れてミレイと結婚したため、
それまでミレイを寵愛していたヴィクトリア女王はそれを不道徳として怒ったそうです。
フランシス・グラント 「アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)
ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)」 1857年

結婚を前にした娘さんの肖像で、ほぼ等身大に描かれ、グラントの亡くなるまで
手元に置かれていたそうです。
冬、手袋を嵌めるところで、雪の白、コートの黒、スカートの赤の対照が際立ち、
特に特に黒には深みがあります。
フランシス・グラント(1803-1878)はスコットランド出身の肖像画家で、ヴィクトリア女王や
多くの貴族の肖像を描き、スコットランド人として初めてロイヤル・アカデミーの会長も
勤めています。
ジョン・コンスタブル 「デダムの谷」 1828年

大きな作品で、広々とした風景は活き活きとしています。
手前に小さく人物と小屋が描かれ、遠くにはパリッシュ教会の塔が見え、
にわか雨も降っています。
コンスタブルが影響を受けたクロード・ロラン(1600-1682)の「ハガルと天使のいる
風景」に倣った構図です。
ジョン・コンスタブル(1776-1837)はウィリアム・ターナー(1775-1851)と並ぶ
19世紀のイギリスの代表的な風景画家で、故郷のサフォークなど、自分の生活に
密着した風景を生涯描き続けています。
印象派・ポスト印象派の作品も並びます。
クロード・モネ 「エプト川沿いのポプラ並木」 1891年

ジヴェルニーでセーヌ川に合流するエプト川の岸辺で1891年の春から秋に
制作した連作の1つで、舟の上から見た景色と思われます。
明るく鮮やかな色彩が輝き、会場の中で圧倒的な存在感があります。
ポール・ゴーガン 「三人のタヒチ人」 1899年

背景は縞模様になっていて、象徴的な雰囲気を見せています。
左の女性の持っている果物はアダムとイヴの果物、つまり誘惑を、右の女性の
結婚指輪は義務と責任を暗示しているそうです。
エピローグ
フレデリック・エドウィン・チャーチ 「アメリカ側から見たナイアガラの滝」 1867年

会場の最後に置かれている、高さ3mくらいある大きな作品です。
広大な空間が描き出され、轟々とした滝の音まで聞こえそうです。
右下には虹が架かり、左上の展望台には人の姿も見えます
スコットランドの貧しい家に生まれ、アメリカに渡って成功した実業家が美術館に
寄贈しています。
フレデリック・エドウィン・チャーチ(1826-1900)はアメリカの画家で、雄大な風景画を
得意としています。
スコットランド国立美術館はこのような寄贈や寄付により支えられてきたそうです。
展覧会のHPです。
上野
東京都美術館では、「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」展が
開かれています。
会期は7月3日(日)までです。

スコットランドのエディンバラのスコットランド国立美術館の所蔵するルネッサンスから
19世紀後半までの絵画と、スコットランドやイングランドの画家の作品で構成された
展覧会で、約90点が展示されています。
記事は2回に分け、今回は1/2です。
プロローグ
アーサー・エルウェル・モファット 「スコットランド国立美術館の内部」 1885年

スコットランド国立美術館は1859年に開館した美術館で、寄贈された作品がびっしり並び、
イーゼルを立てて模写に励んでいる人もいます。
1.ルネサンス
アンドレア・デル・ヴェロッキオ(帰属) 「幼児キリストを礼拝する聖母
(「ラスキンの聖母」)」 1470年頃

幼子イエスに手を合わせて礼拝する聖母の姿はとても優雅です。
イエスが誕生した瞬間にローマの建築が崩壊したという伝説を基にしていて、
背景はテンピオ・デッラ・パーチェ(平和の神殿)の廃墟とも言われています。
ヴェロッキオの弟子だったボッティチェリもよく似た雰囲気の聖母子像を描いています。
美術評論家のジョン・ラスキン(1819-1900)が所蔵していたことから
「ラスキンの聖母」とも呼ばれています。
ラファエロ・サンツィオ 「魚の聖母のための習作」 1512-14年頃

小さな作品で、スペインのプラド美術館の所蔵する「魚の聖母」の習作です。
右には聖ヒエロニムスと足のトゲをヒエロニムスに抜いてもらったライオンが控え、
左では大天使ラファエルが魚を持ったトビアスを聖母に示しています。
旧約聖書のトビト記ではチグリス河畔でトビアスが巨大な魚に食われようとして、
大天使ラファエルに救われ、その魚の内臓によってさまざまな奇蹟が起こります。
聖ヒエロニムスはトビト記をラテン語に翻訳した人物で、「魚の聖母」はトビト記が
カトリックの正典に加えられたことを記念して描かれたそうです。
ラファエロらしい三角形の堂々とした画面構成です。
エル・グレコ 「祝福するキリスト(「世界の救い主」)」 1600年頃

世界を表す水晶球に左手を置き、右手で祝福しているキリストで、「世界の救い主
(サルバトール・ムンディ)」と呼ばれる図像形式です。
最近、レオナルド・ダ・ヴィンチ作ではないかとして有名になった作品も同じ形式です。
グレコらしい精神性の高さ、神々しさに満ちています。
2.バロック
ディエゴ・ベラスケス 「卵を料理する老婆」 1618年

10代の頃の作品で、何気ない庶民の暮らしを描いています。
人物に存在感があり、衣服、金属、ガラス、陶器、食材などの質感まで見事に
描いていて、力量の高さを存分に示しています。
ペーテル・パウル・ルーベンス 「頭部習作(聖アンブロジウス)」 1618年頃

大きな祭壇画を制作する際の習作です。
聖アンブロジウスは4世紀のミラノの司教で、キリスト教の発展に尽くし、
聖人に叙されています。
意志と知性に満ちた威厳のある人物として描かれています。
レンブラント・ファン・レイン 「ベッドの中の女性」 1647年

旧約聖書のトビト記の中のトビアスの妻、サラを描いたとも言われていますが、
現実生活の一場面のような生々しさがあります。
3.グランド・ツァーの時代、以下は次回に書きます。
展覧会のHPです。
chariot
東京都美術館では、「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」展が
開かれています。
会期は7月3日(日)までです。

スコットランドのエディンバラのスコットランド国立美術館の所蔵するルネッサンスから
19世紀後半までの絵画と、スコットランドやイングランドの画家の作品で構成された
展覧会で、約90点が展示されています。
記事は2回に分け、今回は1/2です。
プロローグ
アーサー・エルウェル・モファット 「スコットランド国立美術館の内部」 1885年

スコットランド国立美術館は1859年に開館した美術館で、寄贈された作品がびっしり並び、
イーゼルを立てて模写に励んでいる人もいます。
1.ルネサンス
アンドレア・デル・ヴェロッキオ(帰属) 「幼児キリストを礼拝する聖母
(「ラスキンの聖母」)」 1470年頃

幼子イエスに手を合わせて礼拝する聖母の姿はとても優雅です。
イエスが誕生した瞬間にローマの建築が崩壊したという伝説を基にしていて、
背景はテンピオ・デッラ・パーチェ(平和の神殿)の廃墟とも言われています。
ヴェロッキオの弟子だったボッティチェリもよく似た雰囲気の聖母子像を描いています。
美術評論家のジョン・ラスキン(1819-1900)が所蔵していたことから
「ラスキンの聖母」とも呼ばれています。
ラファエロ・サンツィオ 「魚の聖母のための習作」 1512-14年頃

小さな作品で、スペインのプラド美術館の所蔵する「魚の聖母」の習作です。
右には聖ヒエロニムスと足のトゲをヒエロニムスに抜いてもらったライオンが控え、
左では大天使ラファエルが魚を持ったトビアスを聖母に示しています。
旧約聖書のトビト記ではチグリス河畔でトビアスが巨大な魚に食われようとして、
大天使ラファエルに救われ、その魚の内臓によってさまざまな奇蹟が起こります。
聖ヒエロニムスはトビト記をラテン語に翻訳した人物で、「魚の聖母」はトビト記が
カトリックの正典に加えられたことを記念して描かれたそうです。
ラファエロらしい三角形の堂々とした画面構成です。
エル・グレコ 「祝福するキリスト(「世界の救い主」)」 1600年頃

世界を表す水晶球に左手を置き、右手で祝福しているキリストで、「世界の救い主
(サルバトール・ムンディ)」と呼ばれる図像形式です。
最近、レオナルド・ダ・ヴィンチ作ではないかとして有名になった作品も同じ形式です。
グレコらしい精神性の高さ、神々しさに満ちています。
2.バロック
ディエゴ・ベラスケス 「卵を料理する老婆」 1618年

10代の頃の作品で、何気ない庶民の暮らしを描いています。
人物に存在感があり、衣服、金属、ガラス、陶器、食材などの質感まで見事に
描いていて、力量の高さを存分に示しています。
ペーテル・パウル・ルーベンス 「頭部習作(聖アンブロジウス)」 1618年頃

大きな祭壇画を制作する際の習作です。
聖アンブロジウスは4世紀のミラノの司教で、キリスト教の発展に尽くし、
聖人に叙されています。
意志と知性に満ちた威厳のある人物として描かれています。
レンブラント・ファン・レイン 「ベッドの中の女性」 1647年

旧約聖書のトビト記の中のトビアスの妻、サラを描いたとも言われていますが、
現実生活の一場面のような生々しさがあります。
3.グランド・ツァーの時代、以下は次回に書きます。
展覧会のHPです。
銀座
銀座の日動画廊では、「鴨居玲展」が開かれています。
会期は5月23日(月)まで、日曜・祝日は休廊です。

鴨居玲(1928~1985)は金沢市出身で、1946年に金沢美術工芸専門学校
(現在の金沢美術工芸大学)に入学し、宮本三郎に師事しています。
1971年に、スペインのバルデペーニャスにアトリエを置き、74年まで
滞在しています。
ここで、酔っ払いや老人、手足の無い廃兵をテーマにした、鴨居玲の
世界が生まれ、高い評価を受けることになります。
展覧会では帰国後に描いた裸婦像を含め、約30点が展示されています。
今も人気の高い画家で、会場では多くの方が観ておられました。
「肖像」 1985年

亡くなった年の作品です。
世間的な評判と、それに馴染まない自分とのずれと痛みを表しているように見えます。
2010年に横浜そごう美術館で開かれた「没後25年 鴨居玲 終わらない旅」展の
記事です。
2015年に東京ステーションギャラリーで開かれた「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」の
記事です。
***
同じ日動画廊では、「昭和会賞受賞記念 松本亮平展」が開かれています。
会期は同じく5月23日(月)までです。
昭和会賞は日動画廊の主催する若手作家の公募展である昭和会展の最高賞です。
鴨井玲は1969年度、第4回の優秀賞受賞者です。
松本亮平さん(1988~)は神奈川県出身で、2019年度、第54回での受賞です。
早稲田大学大学院情報生命工学科修了で、生き物の生命としての共通性の高さを
学んだことから生き物を通して人間社会を表現されるようになったそうです。
猫を始めとして、いろいろの動物たちが楽しそうに、そしてちょっと戯画的に
描かれています。
絵筆を取って円山応挙ばりの孔雀の絵を描いている猫もいます。
「千客万来」 アクリル

大きな作品で、大勢の動物たちが集まっているので何かと思ったら、遠くの野原に
招き猫が座っていました。

猫好きの松本さんらしく、手前にはちゃんと猫も描かれています。

蛙や虫まで居て、その賑やかさは釈迦涅槃図を思わせます。
釈迦の入滅に際して母親の摩耶夫人が天界から投げ下ろした薬袋が木に
引っ掛かったので鼠が取りに行こうとしたのを猫が邪魔したというので、
中国の涅槃図には猫は描かれていませんでしたが、日本ではやがて
描かれるようになったそうです。
伊藤若冲の動植綵絵に倣った絵の中に猫がいる作品もあります。
松本さんによれば、若冲は絵のモデルにするため鶏を飼っていたため、
猫を描くことはなかったので、敢えて若冲と猫を取り合わせてみたそうです。
chariot
銀座の日動画廊では、「鴨居玲展」が開かれています。
会期は5月23日(月)まで、日曜・祝日は休廊です。

鴨居玲(1928~1985)は金沢市出身で、1946年に金沢美術工芸専門学校
(現在の金沢美術工芸大学)に入学し、宮本三郎に師事しています。
1971年に、スペインのバルデペーニャスにアトリエを置き、74年まで
滞在しています。
ここで、酔っ払いや老人、手足の無い廃兵をテーマにした、鴨居玲の
世界が生まれ、高い評価を受けることになります。
展覧会では帰国後に描いた裸婦像を含め、約30点が展示されています。
今も人気の高い画家で、会場では多くの方が観ておられました。
「肖像」 1985年

亡くなった年の作品です。
世間的な評判と、それに馴染まない自分とのずれと痛みを表しているように見えます。
2010年に横浜そごう美術館で開かれた「没後25年 鴨居玲 終わらない旅」展の
記事です。
2015年に東京ステーションギャラリーで開かれた「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」の
記事です。
***
同じ日動画廊では、「昭和会賞受賞記念 松本亮平展」が開かれています。
会期は同じく5月23日(月)までです。
昭和会賞は日動画廊の主催する若手作家の公募展である昭和会展の最高賞です。
鴨井玲は1969年度、第4回の優秀賞受賞者です。
松本亮平さん(1988~)は神奈川県出身で、2019年度、第54回での受賞です。
早稲田大学大学院情報生命工学科修了で、生き物の生命としての共通性の高さを
学んだことから生き物を通して人間社会を表現されるようになったそうです。
猫を始めとして、いろいろの動物たちが楽しそうに、そしてちょっと戯画的に
描かれています。
絵筆を取って円山応挙ばりの孔雀の絵を描いている猫もいます。
「千客万来」 アクリル

大きな作品で、大勢の動物たちが集まっているので何かと思ったら、遠くの野原に
招き猫が座っていました。

猫好きの松本さんらしく、手前にはちゃんと猫も描かれています。

蛙や虫まで居て、その賑やかさは釈迦涅槃図を思わせます。
釈迦の入滅に際して母親の摩耶夫人が天界から投げ下ろした薬袋が木に
引っ掛かったので鼠が取りに行こうとしたのを猫が邪魔したというので、
中国の涅槃図には猫は描かれていませんでしたが、日本ではやがて
描かれるようになったそうです。
伊藤若冲の動植綵絵に倣った絵の中に猫がいる作品もあります。
松本さんによれば、若冲は絵のモデルにするため鶏を飼っていたため、
猫を描くことはなかったので、敢えて若冲と猫を取り合わせてみたそうです。
神保町
久し振りに「ミカフェート 一ツ橋店」に行ってきました。
場所は千代田区一ツ橋2-3-1 です。

小学館ビルの1階で、土日祝はお休み、テラス席もあります。
コーヒーハンター川島良彰さんのお店で、店内は40席ほど、
壁はコンクリート打ちっ放しで、シンプルなつくりです。



カフェラテ620円、コーヒー510円、ガトーショコラ600円です。


ガトーショコラはきめ細かく、コーヒーとよく合って美味しいです。
以前、「ミカフェート 一ツ橋店」に行った時の記事です。
近くの花壇です。


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久し振りに「ミカフェート 一ツ橋店」に行ってきました。
場所は千代田区一ツ橋2-3-1 です。

小学館ビルの1階で、土日祝はお休み、テラス席もあります。
コーヒーハンター川島良彰さんのお店で、店内は40席ほど、
壁はコンクリート打ちっ放しで、シンプルなつくりです。



カフェラテ620円、コーヒー510円、ガトーショコラ600円です。


ガトーショコラはきめ細かく、コーヒーとよく合って美味しいです。
以前、「ミカフェート 一ツ橋店」に行った時の記事です。
近くの花壇です。


銀座
銀座和光本館6階の和光ホールでは、「平井 智 INCONTRO 陶・在伊50年 出会い」展が
開かれています。
会期は5月22日(日)まで、入場は無料です。

平井智さん(1947-)は尼崎市出身で、1972年にイタリアに渡り、ファエンツァで
マヨリカ焼の制作を続けておられます。
イタリア在住50年を記念する展覧会で、人物像や食器、陶片などさまざまな作品が
展示されています。
色彩はくっきりと明るく温かく、形は柔らかく、観ていると気持ちが晴れやかになります。
「飛べ、黄金の翼にのって」
約150点の翼のあるハートが壁に貼ってあるインスタレーションです。
作品名はヴェルディのオペラの一節に拠っています。
「トスカーナの風」

「浴室から」

「花」

「蝶」

「陶片シリーズ 1」

マヨリカ焼はイタリア産の鈴釉陶器のことで、スペインのマヨルカ島から
陶器が輸入され、陶器職人も渡ってきたことから、この名があります。
鈴釉のつくる白地に明るい彩色を施した後、焼成しています。
ファエンツァはイタリア中部の都市で、中世以来、陶器の生産地として知られ、
ファイアンス焼の語源ともなっています。
2018年にLIXILギャラリーで開かれた「平井智展」展の記事です。
chariot
銀座和光本館6階の和光ホールでは、「平井 智 INCONTRO 陶・在伊50年 出会い」展が
開かれています。
会期は5月22日(日)まで、入場は無料です。

平井智さん(1947-)は尼崎市出身で、1972年にイタリアに渡り、ファエンツァで
マヨリカ焼の制作を続けておられます。
イタリア在住50年を記念する展覧会で、人物像や食器、陶片などさまざまな作品が
展示されています。
色彩はくっきりと明るく温かく、形は柔らかく、観ていると気持ちが晴れやかになります。
「飛べ、黄金の翼にのって」
約150点の翼のあるハートが壁に貼ってあるインスタレーションです。
作品名はヴェルディのオペラの一節に拠っています。
「トスカーナの風」

「浴室から」

「花」

「蝶」

「陶片シリーズ 1」

マヨリカ焼はイタリア産の鈴釉陶器のことで、スペインのマヨルカ島から
陶器が輸入され、陶器職人も渡ってきたことから、この名があります。
鈴釉のつくる白地に明るい彩色を施した後、焼成しています。
ファエンツァはイタリア中部の都市で、中世以来、陶器の生産地として知られ、
ファイアンス焼の語源ともなっています。
2018年にLIXILギャラリーで開かれた「平井智展」展の記事です。
京橋・東京
京橋のアーティゾン美術館4階展示室では「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示
ピカソとミロの版画 —教育普及企画—」が
開かれています。
会期は7月10日(日)までです。
ウェブ予約チケットは一般1200円で、同時開催の3つの展覧会すべてを観覧出来ます。

スペインの画家、パブロ・ピカソ(1881‒1973)とジョアン・ミロ(1893‒1983)の版画が
石橋財団コレクション選(常設展示)の特集コーナーに展示されています。
パブロ・ピカソ 「彫刻と花瓶 「ヴォラールのための連作」より」
1933年 エッチング、アクアチント

画商のヴォラールの依頼で制作した、100枚の銅版画のシリーズです。
アンブロワーズ・ヴォラールは印象派やポスト印象派の画家を援助した画商として
知られています。
パブロ・ピカソ 「四人の裸婦と頭部像 「ヴォラールのための連作」より」
1934年 エッチング、エングレーヴィング

左 ジョアン・ミロ 「犬IV」 1978-79年 アクアチント
右 ジョアン・ミロ 「犬IX」 1978-79年 アクアチント

左はまだ犬が見えますが、右はかなり抽象化が進んでいます。
左 ジョアン・ミロ 「人と鳥」 1948年 リトグラフ
右 ジョアン・ミロ 「記号と流星」 1958年 リトグラフ

「人と鳥」はパリの画廊でミロの最初の個展が開かれた時のポスターのデザインを
用いています。
ピカソが古典主義時代の趣きがあって造形的なのに対し、ミロは色彩豊かで
音楽的と、違いがはっきりしています。
展覧会のHPです。
アーティゾン美術館になって展示室が多くなり、3つの展覧会を一度に観ることが
出来て、大変満足しました。
chariot
京橋のアーティゾン美術館4階展示室では「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示
ピカソとミロの版画 —教育普及企画—」が
開かれています。
会期は7月10日(日)までです。
ウェブ予約チケットは一般1200円で、同時開催の3つの展覧会すべてを観覧出来ます。

スペインの画家、パブロ・ピカソ(1881‒1973)とジョアン・ミロ(1893‒1983)の版画が
石橋財団コレクション選(常設展示)の特集コーナーに展示されています。
パブロ・ピカソ 「彫刻と花瓶 「ヴォラールのための連作」より」
1933年 エッチング、アクアチント

画商のヴォラールの依頼で制作した、100枚の銅版画のシリーズです。
アンブロワーズ・ヴォラールは印象派やポスト印象派の画家を援助した画商として
知られています。
パブロ・ピカソ 「四人の裸婦と頭部像 「ヴォラールのための連作」より」
1934年 エッチング、エングレーヴィング

左 ジョアン・ミロ 「犬IV」 1978-79年 アクアチント
右 ジョアン・ミロ 「犬IX」 1978-79年 アクアチント

左はまだ犬が見えますが、右はかなり抽象化が進んでいます。
左 ジョアン・ミロ 「人と鳥」 1948年 リトグラフ
右 ジョアン・ミロ 「記号と流星」 1958年 リトグラフ

「人と鳥」はパリの画廊でミロの最初の個展が開かれた時のポスターのデザインを
用いています。
ピカソが古典主義時代の趣きがあって造形的なのに対し、ミロは色彩豊かで
音楽的と、違いがはっきりしています。
展覧会のHPです。
アーティゾン美術館になって展示室が多くなり、3つの展覧会を一度に観ることが
出来て、大変満足しました。
京橋・東京
京橋のアーティゾン美術館5階展示室では「Transformation 越境から生まれるアート」が
開かれています。
会期は7月10日(日)までです。
ウェブ予約チケットは一般1200円で、同時開催の3つの展覧会すべてを観覧出来ます。

美術の国際化の強まった近代以降の芸術家の軌跡を、「越境」と「変化」を着眼点に、
ピエール=オーギュスト・ルノワール、藤島武二、パウル・クレー、ザオ・ウーキーの
4人の作品に焦点を当てて考察する企画です。
第1章 歴史に学ぶ̶ピエール =オーギュスト・ルノワール
ルノワールは印象派の画家ですが、古典絵画の研究も行なっています。
ピエール=オーギュスト・ルノワール 「「ルーベンス作「神々の会議」の模写」
1861年 国立西洋美術館

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「欲後の女」 1896年 東京富士美術館

古典主義を取り入れた時代を過ぎ、豊満な女性像を描いた晩年の時期の作品です。
第2章 西欧を経験する̶藤島武二、藤田嗣治、小杉未醒
明治以降、藤島武二など多くの洋画家は西欧に渡って経験を積んでいます。
藤島武二 「東海旭光」 1932年

フランスに留学して西洋絵画を身に付けていますが、晩年の1930年代は
時代の風潮によって、題名も東洋風になっています。
藤田嗣治 「猫のいる静物」 1939-40年

スペインのファン・サンチェス・コタンやフランスのシャルダンの
「赤エイのある静物」に倣っていますが、飛び立つ鳥と藤田得意の猫が
画面に動きを添えています。
面相筆によるきわめて細く均一な線描を観ると、藤田の技量の高さが
よく分かります。
藤田の居たフランスは1939年に第2次世界大戦が始まり、ドイツと戦争状態に
なっています。
小杉未醒(放庵、放菴) 「山幸彦」 1917年

小杉放菴(1881~1964)は洋画家として出発し、小杉未醒(みせい)と名乗っていました。
1913年にフランスに留学し、そこで逆に東洋画に目覚め、帰国後は飄々とした画風の
日本画に転向しています。
西洋画に馴染めなかったきっかけがルーヴル美術館で見たルーベンスというのも
面白い所で、あの圧倒的な量感を好まなかったのでしょう。
シャヴァンヌには傾倒していて、帰国後もシャヴァンヌと同じく壁画を油彩で
手掛けており、東京大学安田講堂にも小杉の壁画があります。
この絵も壁画の原画で、古事記の海幸彦山幸彦の物語の山幸彦と豊玉姫が
出会う場面です。
平面的ですっきりとまとめられ、色調も穏やかで、シャヴァンヌの影響が感じられます。
第3章 移りゆくイメージ̶パウル・クレー
スイス生まれの画家、パウル・クレー(1879-1940)はドイツで絵画を学び、
カンディンスキーやフランツ・マルクと出会い、後にパリに出てドローネーと
出会うことで、自己の作風を形成しています。
右 ロベール・ドローネー 「街の窓」 1912年
左 パウル・クレー 「小さな抽象的-建築的油彩
(黄色と青色の球形のある)」 1915年



右 パウル・クレー 「守護者」 1932年
左 ジョアン・ミロ 「夜の女と鳥」 1944年



パウル・クレーの作品はニューヨーク近代美術館で1936-37年に開かれた
シュルレアリスムを紹介する展覧会にデ・キリコやホアン・ミロの作品と共に
展示されています。
第4章 東西を超越する̶ザオ・ウーキー
ザオ・ウーキー(1921-2013)は北京生まれで、1948年にパリに移住して活躍しています。
作品は抽象画で、題名にも制作年月日を付けていますが、東洋画の雰囲気があり、
どこか親しみやすいものがあります。
ザオ・ウーキー 「07.06.85」1985年

アーティゾン美術館の所蔵する抽象画の中でとりわけ印象に残る作品で、
立ち上がる波のような深い青色に
引き込まれます。
ザオ・ウーキー 「無題」 1980年

墨で中国紙に描かれていて、水墨画風です。
ザオ・ウーキー 「10.06.75」 1975年

右 ジョアン・ミッチェル 「ブルー・ミシガン」 1961年
左 ザオ・ウーキー 「24.02.70」 1970年



ジョアン・ミッチェル(1925–1992)はシカゴ出身の女性の抽象画家で、1959年に
パリに移り住んでいます。
子どもの頃、家の窓から眺めたミシガン湖を題材にした作品です。
同じような抽象画でも、並べてみると二人の風合いの違いが分かります。
展覧会のHPです。
chariot
京橋のアーティゾン美術館5階展示室では「Transformation 越境から生まれるアート」が
開かれています。
会期は7月10日(日)までです。
ウェブ予約チケットは一般1200円で、同時開催の3つの展覧会すべてを観覧出来ます。

美術の国際化の強まった近代以降の芸術家の軌跡を、「越境」と「変化」を着眼点に、
ピエール=オーギュスト・ルノワール、藤島武二、パウル・クレー、ザオ・ウーキーの
4人の作品に焦点を当てて考察する企画です。
第1章 歴史に学ぶ̶ピエール =オーギュスト・ルノワール
ルノワールは印象派の画家ですが、古典絵画の研究も行なっています。
ピエール=オーギュスト・ルノワール 「「ルーベンス作「神々の会議」の模写」
1861年 国立西洋美術館

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「欲後の女」 1896年 東京富士美術館

古典主義を取り入れた時代を過ぎ、豊満な女性像を描いた晩年の時期の作品です。
第2章 西欧を経験する̶藤島武二、藤田嗣治、小杉未醒
明治以降、藤島武二など多くの洋画家は西欧に渡って経験を積んでいます。
藤島武二 「東海旭光」 1932年

フランスに留学して西洋絵画を身に付けていますが、晩年の1930年代は
時代の風潮によって、題名も東洋風になっています。
藤田嗣治 「猫のいる静物」 1939-40年

スペインのファン・サンチェス・コタンやフランスのシャルダンの
「赤エイのある静物」に倣っていますが、飛び立つ鳥と藤田得意の猫が
画面に動きを添えています。
面相筆によるきわめて細く均一な線描を観ると、藤田の技量の高さが
よく分かります。
藤田の居たフランスは1939年に第2次世界大戦が始まり、ドイツと戦争状態に
なっています。
小杉未醒(放庵、放菴) 「山幸彦」 1917年

小杉放菴(1881~1964)は洋画家として出発し、小杉未醒(みせい)と名乗っていました。
1913年にフランスに留学し、そこで逆に東洋画に目覚め、帰国後は飄々とした画風の
日本画に転向しています。
西洋画に馴染めなかったきっかけがルーヴル美術館で見たルーベンスというのも
面白い所で、あの圧倒的な量感を好まなかったのでしょう。
シャヴァンヌには傾倒していて、帰国後もシャヴァンヌと同じく壁画を油彩で
手掛けており、東京大学安田講堂にも小杉の壁画があります。
この絵も壁画の原画で、古事記の海幸彦山幸彦の物語の山幸彦と豊玉姫が
出会う場面です。
平面的ですっきりとまとめられ、色調も穏やかで、シャヴァンヌの影響が感じられます。
第3章 移りゆくイメージ̶パウル・クレー
スイス生まれの画家、パウル・クレー(1879-1940)はドイツで絵画を学び、
カンディンスキーやフランツ・マルクと出会い、後にパリに出てドローネーと
出会うことで、自己の作風を形成しています。
右 ロベール・ドローネー 「街の窓」 1912年
左 パウル・クレー 「小さな抽象的-建築的油彩
(黄色と青色の球形のある)」 1915年



右 パウル・クレー 「守護者」 1932年
左 ジョアン・ミロ 「夜の女と鳥」 1944年



パウル・クレーの作品はニューヨーク近代美術館で1936-37年に開かれた
シュルレアリスムを紹介する展覧会にデ・キリコやホアン・ミロの作品と共に
展示されています。
第4章 東西を超越する̶ザオ・ウーキー
ザオ・ウーキー(1921-2013)は北京生まれで、1948年にパリに移住して活躍しています。
作品は抽象画で、題名にも制作年月日を付けていますが、東洋画の雰囲気があり、
どこか親しみやすいものがあります。
ザオ・ウーキー 「07.06.85」1985年

アーティゾン美術館の所蔵する抽象画の中でとりわけ印象に残る作品で、
立ち上がる波のような深い青色に
引き込まれます。
ザオ・ウーキー 「無題」 1980年

墨で中国紙に描かれていて、水墨画風です。
ザオ・ウーキー 「10.06.75」 1975年

右 ジョアン・ミッチェル 「ブルー・ミシガン」 1961年
左 ザオ・ウーキー 「24.02.70」 1970年



ジョアン・ミッチェル(1925–1992)はシカゴ出身の女性の抽象画家で、1959年に
パリに移り住んでいます。
子どもの頃、家の窓から眺めたミシガン湖を題材にした作品です。
同じような抽象画でも、並べてみると二人の風合いの違いが分かります。
展覧会のHPです。