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「井上萬二白磁展 -悠遊と-」 セイコーハウス銀座ホール
銀座
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セイコーハウス銀座6階のセイコーハウス銀座ホールでは、「井上萬二白磁展
-悠遊と-」が開かれています。
会期は7月3日(日)まで、入場は無料です。
和光ホールは6月10日にセイコーハウス銀座ホールに改名されました。

井上萬二さん(1929~)は佐賀県有田町出身の陶芸家で、色絵の多い有田焼とは異なる
白磁を長年にわたり追求し、1995年には重要無形文化財「白磁」保持者(人間国宝)に
認定されています。

「白磁線壷」
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「白磁渦文花瓶」
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「白磁酒器(徳利、ぐい呑)」
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「白磁緑彫文耳付花瓶」
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「白磁緑釉魚文皿」
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「青白磁金魚彫文皿」
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「黒釉緑彫文鉢」
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どの作品も引き締まった造形に艶やかで無垢の白が合わさり、涼やかです。
淡い緑釉は温かみを添えています。

6階から階段で降りると、踊場のクラシックな造りの窓を見ることが出来ます。

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【2022/06/30 19:52】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「台東区長奨励賞」 令和3年度
上野・上野広小路
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台東区では東京藝術大学の優秀な卒業制作や大学院修了作品の制作者に対して、
「台東区長奨励賞」を授与しています。
受賞作品は上野中央通り地下歩道にある展示ブースに、受賞後の3月から
1年間展示されています。

以下は令和3年度台東区長奨励賞受賞作品です。

「「包む」の文脈」 隆アリス(デザイン科)
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鉛筆をテーマに、「包む」ということを問い直しています。

「記憶の通り道」 吉田有花(工芸科)
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匂いが仲立ちとなって、さまざまな記憶を呼び起こします。

「ある英雄の為の饗宴」 元場葵(工芸科)
学生たちが焼き損じた陶片はやがて青銅器や縄文土器の形となって、むかしの輝きを
再現させます。

「景色を運ぶ」 大園恵美(工芸科)
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有線七宝で表された、もし蝶が擬態して景色を運んでくれたらという思いを表しています。

「天然色の記憶」 水巻映(彫刻科)
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今ではあまり見かけなくなったピンク電話が並んでいます。

「Unfolding」 齊藤恵理子(彫刻科)
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食材が調理される過程に想を得たとのことです。


【2022/06/28 21:39】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「ボテロ展 ふくよかな魔法」 Bunkamuraザ・ミュージアム
渋谷
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Bunkamuraザ・ミュージアムでは「ボテロ展 ふくよかな魔法」が開かれています。
会期は7月3日(日)までです。

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フェルナンド・ボテロ(1932~)はコロンビアの画家で、ふくよかな姿をした人物を
描いた作品で有名です。

「コロンビアの聖母(部分)」 1992年
聖母マリアは王冠を被り、イエスは小さなコロンビア国旗を持っています。
多くの聖母子像ではイエスは赤ちゃんの姿をしていますが、この絵では半ズボンと
靴を履いた男の子として描かれています。
子ども時代のボテロの自画像でしょうか。
聖母の持つ緑の果物は紅いイアリングと照応しています。
聖母の服の合わせが男物と同じなのはご愛敬です。
この絵の描かれた頃のコロンビアでは左翼ゲリラとの間で激しい内戦が戦われていて、
聖母は涙を流しています。
カトリックの国、コロンビアでは聖母像が教会に置かれていて、ボテロにとって
幼い頃から馴染みの深いものでした。

「守護天使」 2015年
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翼を持つふくよかな守護天使が室内に浮かんでいます。
ピンクの壁、青の布団、緑のカーペットと色彩もまとまり、鏡には天使の翼と電球が
映って、夜であることを示し、壁にはスイッチも見えます。
椅子にはパレットが置かれていて、ベッドで眠っているのはボテロ自身のようです。
なお、芸術家の守護聖人は聖ルカです。

「マリー=アントワネット(ヴィジェ・ルブランにならって)」 2005年
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エリザベト・ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン(1755-1842)はルイ16世の王妃、
マリー=アントワネットのお抱え画家としてフランス宮廷で活躍した画家です。
ルブランの描いたマリー=アントワネット像の左右を逆転させ、ドレスを
白から赤に変えています。

「モナ・リザの横顔(部分)」 2020年
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レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」をルネッサンス時代によく描かれた、
顔を真横から見た肖像画に変えています。
ボテロは古典に倣った絵も描いていて、ヤン・ファン・エイクの
「アルノルフィーニ夫妻像」に倣った作品も展示されています。

「バレー・レッスン中のバレリーナ」 2001年
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高々と足を上げた、圧倒的に存在感のあるバレリーナです。
鏡に映った像が背景になっていたり、バレリーナの姿が実際に移った場合より少し
ずらしてあったりで、マネの「フォリー=ベルジェールのバー」を思わせます。

「象」 2007年
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サーカスはその祝祭性からスーラ、ロートレック、ルオー、シャガールなど
多くの画家に描かれた題材です。
大きな象が台に乗り、丸くなって芸を披露しています。
カーテン、客先、ブランコ乗りが広い空間を表し、その中に象を収めている、
考えられた画面です。

「黄色の花」「青の花」「赤の花」 2006年
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丸々とした造形的な花です
花と背景を同じ色にする工夫がしてあります。

どの絵も明るく温かな色調で、観ていて楽しくなります。
ただし、聖母は涙を流していますし、ボテロはアルグレイブ収容所虐待事件を
シリーズで描いたりしていて、単に楽しいだけの画家では済まされないところがあります。

展覧会のHPです。


【2022/06/26 20:24】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「村松英俊 -with stone-」展 日本橋髙島屋
日本橋
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日本橋髙島屋美術画廊Xでは「村松英俊 -with stone-」展が
開かれています。
会期は7月4日(月)までです。

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村松英俊氏さん(1988~)は静岡県出身で、古い既製品の一部を
大理石などに置き換えた作品を制作されています。

「moto」
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「skateboard fossil」
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「shoe keeper」
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「tape dispenser」
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「tape measure」
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「pencil sharpener」 
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琉球石灰岩が使われています。

古びた道具や機械は白く輝く大理石と取り合わせることで、
確かな形を得ているように見えます。

【2022/06/25 20:41】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「シュペット表参道店」
表参道
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「シュペット表参道店」は表参道交差点近くの小路にあります。
場所は港区南青山3-13-16で、「ブルーボトルコーヒー青山カフェ」の隣です。

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グルテンフリーのシュークリームのお店で、恵比寿店とこちらの2店があります。

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今年の2月のオープンで、ウッディなつくり、テラス席はパラソルが並んでいます。

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コーヒー500円です。

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機械で淹れるたっぷりのコーヒーはすっきりとして、飽きの来ない味で美味しいです。

場所も静かで、根津美術館に行った時に寄るのにちょうど良いお店です。

根津美術館で開かれている「阿弥陀如来-浄土への憧れ-」展の記事です。


近くには白い紫陽花が咲いていました。

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【2022/06/24 19:41】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」展 国立西洋美術館 2/2
上野
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国立西洋美術館で開かれているリニューアルオープン記念「自然と人のダイアローグ 
フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」展の記事、2/2です。
会期は9月11日(日)までです。

III 光の建築

テオ・ファン・レイセルベルヘ 「ブローニュ=シュル=メールの月光」 1900年
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ブローニュ=シュル=メールはドーバー海峡沿いの港町です。
月の光や町の灯が海面に映る、幻想味のある光景です。
テオ・ファン・レイセルベルヘ(1862-1926)はベルギー出身で、初期は印象主義の影響を
受けていましたが、1886年にスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を見て以来、
点描主義の画家となっています。

ポール・シニャック 「サン=トロぺの港」 1901–1902年 国立西洋美術館 
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海の景色を好んだシニャックの作品です。
同じ点描派で先に亡くなったスーラの影響を離れ、色彩が輝くようになります。

ポール・シニャック 「ポン・デ・ザール橋」 1912 /1913年
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明るく心地良い色彩の、タイルのような大粒の点描で、セーヌ川の景色を描いています。

ポール・セザンヌ 「ポントワーズの橋と堰」 1881年 国立西洋美術館
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オワーズ川沿いのポントワーズはピサロが住み、セザンヌやカイユボット、ゴッホなどが
訪れています。
川に架かる鉄道橋や丘の見える情景で、セザンヌらしい筆遣いが表れています。

ポール・セザンヌ 「ベルヴュの館と鳩小屋」
 1890–1892年頃 フォルクヴァング美術館

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プロヴァンスのセザンヌの生地近くの景色で、妹夫妻の別荘を描いています。
この頃、ルノワールも訪れ、一緒に制作もしています。

フェルディナント・ホドラー 「モンタナ湖から眺めたヴァイスホルン」
 1915年 フォルクヴァング美術館

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ヴァイスホルンは南スイスにある標高4505mの山です。
ホドラーの風景画の多くは左右対称を基本にしています。

2014年に同じ国立西洋美術館で開かれた「フェルディナント・ホドラー展」の記事です。

アクセリ・ガッレン=カッレラ 「ケイテレ湖」 1906年 国立西洋美術館
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ケイテレ湖はフィンランド南部の湖です。
アクセリ・ガッレン=カッレラ(1865 - 1931)はフィンランドを代表する画家で、
叙事詩「カレワラ」を題材にした作品を多く描いています。

パウル・クレー 「月の出(サン=ジェルマン界隈)」
 1915年 水彩、鉛筆、紙 フォルクヴァング美術館

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色彩が明るく、抽象化が始まった頃の作品です。
パウル・クレーはスイスの画家で、ドイツで活動し、第一次世界大戦にも従軍していますが、
後にナチスにより退廃芸術家として弾圧されたため、スイスに戻って晩年を過ごしています。

ピート・モンドリアン 「コンポジション X」 1912–1913年 フォルクヴァング美術館
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モンドリアンも始めは具象画でしたが、だんだん抽象化を進めています。


IV 天と地のあいだ、循環する時間

ジャン=フランソワ・ミレー 「春(ダフニスとクロエ)」 1865年 国立西洋美術館
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ジャン=フランソワ・ミレー(1814-75)の晩年の作品で、古代ギリシャの
恋愛小説を題材にしています。
大きな絵で、邸宅の装飾パネルの注文を受けて制作された、四季を描いた
4枚のうちの一つです。

モーリス・ドニ 「踊る女たち」 1905年 国立西洋美術館
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モーリス・ドニ(1870-1943)は象徴的、装飾的な絵画グループであるナビ派の
メンバーとして有名です。
舞台はフィレンツェ郊外のフィエーゾレの丘とされ、象徴的な雰囲気に満ちています。

ジョヴァンニ・セガンティーニ 「羊の剪毛」 1883–1884年 国立西洋美術館
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ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858-99)はイタリアの画家で、アルプス地方の
農民の生活を描いた画家ですが、その描写の確かさには感心します。

カミーユ・ピサロ 「収穫」 1882年 国立西洋美術館
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この頃のピサロは人物を描くことが多くなっています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「刈り入れ(刈り入れをする人のいる
サン=ポール病院裏の麦畑)」 1889年 フォルクヴァング美術館

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サン=レミの病院に入院していた時の作品で、ゴッホが好んで描いた麦の刈り入れの風景です。

クロード・モネ 「陽を浴びるポプラ並木」 1891年 国立西洋美術館
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1891年の春から秋にエプト川の岸辺で制作した連作の1つで、
アトリエ舟から見た景色と思われます。
並木が面白い形をつくっています。

クロード・モネ 「睡蓮」 1916年 国立西洋美術館
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縦横それぞれ約2mの大作です。
筆遣いは力強く自由で、水面には柳が映り、色彩と光があふれています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「ばら」 1889年 国立西洋美術館
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サン=レミの病院に入院していた時の作品で、庭に咲くバラを描いたもののようです。


展覧会のHPです。


【2022/06/23 21:31】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」展 国立西洋美術館 1/2
上野
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上野の国立西洋美術館ではリニューアルオープン記念「自然と人のダイアローグ 
フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」が開かれています。
会期は9月11日(日)までです。

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ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館の協力で、自然と人の対話(ダイアローグ)から
生まれた近代の芸術の展開を紹介する展覧会です。

フォルクヴァング美術館は美術収集家カール・エルンスト・オストハウス(1874-1921)の
個人美術館とエッセンの市立美術館が統合した美術館で、印象派・ポスト印象派・
ドイツ表現派・ドイツロマン主義の作品を多く所蔵しています。

記事は2回に分け、今日は1/2です。
作品は一部を除き、撮影可能です。


I 空を流れる時間

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「ナポリの浜の思い出」
 1870–1872年 国立西洋美術館

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大きな作品で、若い時のイタリア旅行の思い出を晩年になって叙情的に描いています。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「森の外れの騎手」
 1874 / 1875年 フォルクヴァング美術館

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コロ―の特徴の、自然の中の点景としての人物です。

クロード・モネ 「雪のアルジャントゥイユ」 1875年 国立西洋美術館
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淡い藤色の入った雪の色に味わいがあります。

クロード・モネ 「セーヌ河の朝」 1898年 国立西洋美術館
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浮世絵風に画面の上から覆いかぶさっている柳も水面も風に騒いでいます。

クロード・モネ 「ウォータールー橋、ロンドン」 1902年 国立西洋美術館
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1899年から1901年にかけては毎年ロンドンを訪れて、国会議事堂や
ウォータールー橋などを描いています。

クロード・モネ 「ルーアン大聖堂のファサード(朝霧)」
 1894年 フォルクヴァング美術館

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ルーアン大聖堂シリーズです。

クロード・モネ 「舟遊び」 1887年 国立西洋美術館
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ジヴェルニーでセーヌ川に合流するエプト川での舟遊びです。
モデルは二度目の妻、アリス・オシュデの娘たちです。
水面に映る2人の影が描かれています。
1880年代後半から1890年代初期は「風景のように戸外の人物を描く」という、
年来の夢に取組んでいた時期とのことです。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「オリーヴの園」
 1910年頃 フォルクヴァング美術館

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 「風景の中の三人」
 1916年 国立西洋美術館

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マックス・リーバーマン 「ラーレンの通学路」
 パステル、紙 1898年 フォルクヴァング美術館

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木漏れ日の照らす林の中を、制服姿の女学生たちが元気に学校に向かっています。
マックス・リーバーマン(1847 – 1935)はドイツの画家で、芸術の革新を目指した
ベルリン分離派の創設者の一人です。
ユダヤ系だったため、晩年はナチスの抑圧を受け、不遇でした。

ゲルハルト・リヒター 「雲」 1970年 フォルクヴァング美術館
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ゲルハルト・リヒター(1932-)はドイツの画家で、写真を拡大し、ぼかして描いた
作品などで有名です。
竹橋の国立近代美術館では10月2日まで「ゲルハルト・リヒター展」が開かれて
いるところです。

II 〈彼方〉への旅

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ 「夕日の前に立つ女性」
 1818年頃 フォルクヴァング美術館

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カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(1774 – 1840)はドイツロマン主義の画家です。
壮大な風景を眺める後ろ姿の人物を描いた作品をよく描いています。

ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダール 「ピルニッツ城の眺め」
 1823年 フォルクヴァング美術館

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ピルニッツ城はドレスデン近郊のエルベ川沿いにある、ザクセン選帝侯の宮殿です。
窓越しに眺めるという、面白い構図です。
ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダール(1788 – 1857)はノルウェーの画家で、
ドイツのドレスデンとノルウェーを中心に活躍しています。
ドレスデンではフリードリヒと出会って親交を深め、強い影響を受けて、故郷ノルウェーの
自然を題材にした、民族的ロマン主義の画家となります。

「アクタイオンに驚くディアナ」 1840年  国立西洋美術館
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ディアナはローマ神話の狩の女神で、月の女神ともされています。
ギリシャ神話のアルテミスのことです。
水浴中の姿を見た漁師のアクタイオンは鹿の姿に変えられ、連れていた猟犬たちに
噛み殺されてしまいます。
頭に三日月を付けたディアナは背中を見せ、ニンフたちは驚き、アクタイオンは
遠くで鹿の姿になって、犬に襲われています。
夕暮れの光の中でニンフたちはただならぬ表情を見せ、異様な雰囲気を持つ作品です。

ギュスターヴ・クールベ 「波」 1870年 フォルクヴァング美術館
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クールベがよく描いた波の絵です。
1870年は普仏戦争の興った年で、クールベはパリ・コミューンに参加した罪に問われ、
後にスイスに亡命を余儀なくされています。

ギュスターヴ・モロー 「聖なる象(ペリ)」
 1882年 水彩、グワッシュ、紙 国立西洋美術館

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モロー独特の、東洋趣味の幻想的な世界です。
細かいところまで、様々な色彩が宝石のように使われています。
仏画に似て正面から描いていて、虹のような情景は来迎図を思わせます。
女神の周りに集まっているのは、飛天にも見えます。

ポール・ランソン 「ジギタリス」 1899年 国立西洋美術館
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テンペラ画で、タピスリーの下絵とされています。
平面的な描き方で、花や蔓がうねるように延びている、装飾的な画面です。
ポール・ランソン(1864-1909)はフランスの画家で、アカデミー・ジュリアンで学び、
ナビ派に参加しています。

ポール・ゴーガン 「扇を持つ娘」 1902年 フォルクヴァング美術館
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亡くなる前の年のかなり体調が悪くなった時期に描かれていますが、画面は単純化され、
見応えのある作品になっています。
持っている扇にはフランスの三色旗を思わせる飾りが付いていて、ゴーガンが暮らした
ポリネシアがフランス領であることを暗示しています。

展覧会のHPです。


【2022/06/21 18:15】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
東京国立博物館本館の総合文化展(平常展) 2022/6 その4
上野
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東京国立博物館本館1階14室では総合文化展の中で、創立150周年記念特集として、
「収蔵品でたどる日本仏像史」の展示があります。
会期は7月10日(日)までです。

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「摩耶夫人および天人像」 銅製鋳造、鍍金
 法隆寺献納宝物 飛鳥時代・7世紀 重要文化財

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ルンビニ―の園で摩耶夫人の腋から釈迦が誕生し、天人が空を舞う様子を表しています。
承暦2年(1078)に橘寺から法隆寺に移された小金銅仏群のひとつとされています。
普段は表慶館裏の法隆寺宝物館に展示されています。
法隆寺献納宝物とは法隆寺に伝えられた宝物の一部が明治時代に皇室に献納され、
戦後、その一部が東京国立博物館で保管されることになったもののことです。

法隆寺宝物館の記事です。

「如来立像」 木造、漆箔 法隆寺献納宝物 飛鳥時代・7世紀
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金銅仏中心の飛鳥時代には珍しく木造で、クスノキから彫られています。

「日光菩薩坐像」 木芯乾漆、漆箔
 京都・金輪寺、京都・高山寺旧蔵 奈良時代・8世紀 重要文化財

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奈良時代に盛んだった乾漆造で、写実的な造作が特徴です。

「十一面観音菩薩立像」 木造 平安時代・9世紀
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頭と体の一部を一材から彫り出した一木造です。
お顔と腕は後補です。
立体感のある体躯、反らした背、鋭い衣の襞の線など、平安初期の特徴が
表れています。
下半身にガラス板の反射が映っています。
平安時代も後期になると定朝様式のような繊細な作風が盛んになります。

「阿弥陀如来坐像」 木造 鎌倉時代・12~13世紀 静岡・願生寺蔵
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はっきりした顔立ち、奥行きのある体躯、水晶の目を嵌めた玉眼など、
鎌倉時代の特徴が表れています。
運慶の系統の仏師による作と思われます。
鎌倉時代になると武士の注文による制作も増えます。

「如来立像」 円空作 木造 群馬・光性寺旧蔵 江戸時代・17世紀
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円空(1632-1695)は美濃(現在の岐阜県)生まれの江戸時代前期の僧で、
全国を行脚しながら各地で仏像や神像を彫っています。
現存する作品は5300体以上とのことです。

「木喰自身像」木喰作 木造 江戸時代・享和4年(1804)
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木喰明満(1718-1810)は千体仏の制作を決意し、全国を巡って
大胆なノミさばきによる仏像を彫っています。
木喰は自身の像を数多く彫っており、これは87歳の時の作です。

「龍頭観音像」 木造、彩色 佐藤朝山作 昭和時代・20世紀
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飛鳥時代の法隆寺救世観音をモデルにした、現代的で彫刻的な作品です。
佐藤朝山(1888-1963)は高村光雲の孫弟子に当たります。


【2022/06/19 20:37】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
東京国立博物館本館の総合文化展(平常展) 2022/6 その3
上野
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東京国立博物館本館の総合文化展(平常展)のうち、 住吉具慶の絵巻物の展示です。

「洛中洛外図巻」 住吉具慶 江戸時代・17世紀

京の町の賑わいと郊外の農村の暮らしぶりを描いた図巻です。
住吉具慶(1631-1705)は大和絵の絵師で京都生まれですが、幕府に呼ばれ
江戸に移り住み、狩野派と並んで幕府の御用絵師となっています。

公家の屋敷の門前です。
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古今伝授の場面らしく、白と黒の装束の人物が紙の載った机を前に向き合っています。
床の間には歌聖と崇められた柿本人麻呂の肖像が掛けられ、楽人たちが
笙や笛を奏でています。
古今伝授とは古今和歌集の解釈を代々、秘伝として伝えるものです。
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庭の桜を眺める人たち、通りから見上げる人、覆面をした女性、傘売りの商人。
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武家屋敷の長屋門の門前の武士と中間です。
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商店街が賑わっています。
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お正月の獅子舞が回って来て、子どもたちが驚いています。
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暖簾の掛かったお店の前を猿回しが行きます。
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洗い張り屋、薪屋、焼物屋などが見えます。
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川辺の景色で、橋や蛇篭、水鳥が見え、馬方が荷を載せた馬を曳いています。
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農家の庭先です。
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紅葉の頃、農家では臼で脱殻し、子どもたちは遊んでいます。
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公家、武士、商人、農民の様を季節の変化の中で描いた力作です。


【2022/06/18 20:52】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「ブルーボトルコーヒー 神田万世橋カフェ」 2022
淡路町・秋葉原
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「ブルーボトルコーヒー 神田万世橋カフェ」に行ってきました。
場所は千代田区神田須田町1-25-4、マーチ エキュート神田万世橋の1階です。

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テイクアウトのみのお店で、イートインはありませんが、お店の前にテーブルが
2つほどあります。

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カプチーノ594円はまろやかで美味しいです。

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中央線万世橋駅は昭和18年(1943)に休止されましたが、明治45年(1912)に
完成した煉瓦造りの構築物を利用して、常設ショップとイベントスペースで
構成される、「mAAch ecute(マーチ エキュート)神田万世橋」になって復活しました。

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神田川に沿ってテラスが延びています。

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電車の見える2階の通路に上がります。

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2階はテラスになっています。

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向こうに見えるのが秋葉原です。

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目の前を中央線が走り過ぎて行きます。

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【2022/06/17 20:26】 お店 | トラックバック(0) | コメント(0) |
東京国立博物館本館の総合文化展(平常展) 2022/6 その2
上野
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東京国立博物館本館の総合文化展(平常展)のうち、屏風絵の展示です。
屏風絵の多くは6月26日までの展示です。

「山水図屏風」 「秀峰」印 室町時代・16世紀
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瀟湘八景を取り入れた山水図です。

「山水図屏風」 海北友松 安土桃山時代・慶長7年(1602)
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濃淡を強調した、力強い描き振りです。
海北友松(1533-1615)は近江浅井氏の家臣の子で、父や兄弟は討死しています。

「山水図屏風」 雲谷等顔 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 重要文化財
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雲谷等顔(1547-1618)は毛利輝元に仕えた絵師で、雪舟の画風を伝えています。

「山水図押絵貼屏風」 久隅守景 江戸時代・17世紀 重要美術品
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12枚の雪舟風の山水図を屏風に貼ってあります。

「山水図屏風」 狩野興以 江戸時代・17世紀
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2021年に展示されていた時の写真です。
狩野派得意の山水図で、桃山時代に比べ余白の大きな画面です。
狩野興以(?~1636)は狩野光信の門人で、光信の甥の探幽などを支えています。

「四季花鳥図屏風」 岡本秋暉 江戸時代・19世紀
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岡本秋暉(1807-1862)は幕末の絵師で、小田原藩大久保家に仕え、
渡辺崋山とも交流がありました。
写実を基本にした華やかな画風が特徴です。



【2022/06/16 18:24】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
東京国立博物館本館の総合文化展(平常展) 2022/6 その1
上野
chariot

東京国立博物館本館の総合文化展(平常展)に行ってきました。
4回に分けて記事にします。

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東京国立博物館は2022年3月、創立150周年を迎え、さまざまな企画が行なわれています。

いつもは国宝を展示する本館2室(国宝室)では創立150年記念特集 「未来の国宝
―東京国立博物館 書画の逸品―」の展示がされています。
7月3日(日)までは「春日宮曼荼羅」が展示されています。

「春日宮曼荼羅」 鎌倉時代・13世紀
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春日宮曼荼羅は奈良の春日大社を描いた絵図で、平安時代の12世紀後半から
京都の藤原氏が春日社への参詣の代わりに自邸に掛ける礼拝画として描かれる
ようになります。
幾何学的な図像の曼荼羅とは異なり、自然の風景を取り入れた優美な画像です。
鎌倉時代になると春日は地上の浄土という信仰から、社頭の景色に荘厳さを
求められるようになります。

他の展示室にも春日宮曼荼羅に関係した作品が展示されています。

「春日鹿曼荼羅」 室町時代・15世紀
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春日大社の祭神、武甕槌命(たけみかづちのみこと)は元々、常陸の鹿島の神で、
藤原氏の勧請で春日に遷るにあたり、白鹿に乗って出発したとされ、鹿は春日社の
神鹿として崇められています。

「阿弥陀如来立像」 永仙作 鎌倉時代・正嘉3年(1259) 重要文化財
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来迎印を結んだ、大きさ三尺の阿弥陀如来立像は鎌倉時代から
多く作られるようになります。
像内の銘文に、施主の真観法師が、21歳の永仙に作らせたとあります。
実業家、安田善次郎の寄贈です。

「金海茶碗 銘 福寿草」 朝鮮時代・17世紀
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金海の名は慶尚南道金海の地にちなんで付けられたとされています。
温かみのある色合いの白磁碗で、丸みがあり、胴に横筋が入っています。
日本からの注文品と思われます。

「古染付手桶形水指」 景徳鎮窯 明時代・17世紀
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古染付とは明の末期に焼かれた染付雑器の日本での呼び名で、
素朴で庶民的な味わいが茶の世界で好まれ、日本からの注文で作られています。
水辺の生き物が描かれた、夏にふさわしい器です。

「肩脱二枚胴具足」 安土桃山~江戸時代・16~17世紀
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鉄板を打ち出して片肌脱ぎの肉身を表し、金箔を貼った小札を五色の糸で威し、
兜を獣毛で覆った、個性的な甲冑です。

「色絵紫陽花文鉢」 讃窯 江戸時代・19世紀
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讃窯は讃岐高松藩の御庭焼で、仁阿弥道八と弟子を招いて天保3年(1832)に
開いた窯です。
紫陽花をあしらって涼やかです。

「色絵牡丹紫陽花文水注」 明石 江戸時代・19世紀
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「明石」の印があり、明石焼と分かります。
明石焼は兵庫県明石を中心に江戸時代に栄えた窯で、京風の陶磁器も焼いています。
つまみは大根の形です。

「褐釉人面貼付文徳利」 讃窯 江戸時代・19世紀
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髭徳利と呼ばれる酒の容器です。
ドイツ・ケルン近郊のフレッヒェン窯で焼かれた物がオランダ経由で日本に伝わり、
讃窯で真似して作ったようです。

「玄鶴芦雁図」 狩野山雪 江戸時代・17世紀
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輪郭線を使わない没骨法で巧みに描き出しています。
狩野山雪はちょっとユーモラスな雰囲気の動物画で知られていますが、
瞼を下から上に半分上げたマナヅルの表情にも趣きがあります。

「花鳥図」 英一蝶 江戸時代・18世紀
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ヤツガシラと尾長鳥です。

「青梅図」 松村景文 江戸時代・19世紀
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濃淡2種の墨や絵具を含ませた筆で描く、「付け立て」という円山四条派の
技法を使った、季節感のある作品です。
松村景文(1779-1843)は呉春の弟で、品の良い花鳥画を得意とし、
四条派の形を確立したとされています。

「洛中洛外図巻」 住吉具慶 江戸時代・17世紀
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京の町の賑わいと郊外の農村の暮らしぶりを描いた図巻です。
住吉具慶(1631-1705)は大和絵の絵師で京都生まれですが、幕府に呼ばれ
江戸に移り住み、狩野派と並んで幕府の御用絵師となっています。
枚数が多いので、残りは後の回に載せます。

「唐織 紅萌葱段流水に杜若模様」 江戸時代・18世紀
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能の若い女性の役が着る衣装で、「伊勢物語」の「八橋」を題材にした演目、
「杜若」などで使われます。

「小袖 白黒紅染分綸子地熨斗藤模様」 江戸時代・17世紀 重要文化財
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刺繍や金の摺箔を小袖の全面に隈なく施された「地無(じなし)」という意匠は
江戸時代初期の流行です。

浮世絵コーナーは歌川広重の「名所江戸百景」の展示です。

「名所江戸百景・八ツ見のはし」 歌川広重 江戸時代・安政3年(1856)
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日本橋川に架かる橋から富士山を眺めた景色です。
ツバメが飛び交っています。

「名所江戸百景・大はしあたけの夕立」 歌川広重 江戸時代・安政4年(1857)
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川向こうに幕府の御船蔵があり、安宅船(戦艦)を収容していたので、「あたけ」の
地名が付いています。


【2022/06/14 19:15】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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