上野
上野の東京国立博物館で開かれている東京国立博物館創立150年記念特別展、
「国宝 東京国立博物館のすべて」の記事の最後4回目で、第2部の東京国立博物館の
150年の歴史を紹介する展示品を載せます。
会期は12月11日(日)まで、完全予約制です。
会期中、多くの国宝が展示替えされますので、展覧会のHPでご確認下さい。
「見返り美人図」 菱川師宣 江戸時代・17世紀


11月13日までの展示です。
肉筆浮世絵で、玉結びの髪に吉弥結びの帯、振袖は菊と桜の花の丸模様です。
後ろ姿にすることで、後ろ結びである吉弥結びを見せ、左袖をひるがえして
模様を際立たせています。
早い時期に東京国立博物館に所蔵された作品です。
東京国立博物館では「踊る埴輪&見返り美人 修理プロジェクト」を実施中で、
1000万円の目標は達成しましたが、現在も進行中です。
修理プロジェクトのHPです。
遮光器土偶 縄文時代晩期(前1000~前400年)
青森県つがる市亀ヶ岡遺跡 重要文化財

顔がすべて、目を閉じた瞼になっていて、ゴーグル(遮光器)のように
見えることから、この名が付いています。
ネックレスらしい物を着け、髪も装飾的、着ている物の文様も描かれ、
華やかな姿です。
「摩耶夫人および天人像」 銅製鋳造、鍍金
法隆寺献納宝物 飛鳥時代・7世紀 重要文化財

ルンビニ―の園で摩耶夫人の腋から釈迦が誕生し、天人が空を舞う様子を表しています。
承暦2年(1078)に橘寺から法隆寺に移された小金銅仏群のひとつとされています。
普段は表慶館裏の法隆寺宝物館に展示されています。
法隆寺献納宝物とは法隆寺に伝えられた宝物の一部が明治時代に皇室に献納され、
戦後、その一部が東京国立博物館で保管されることになったものです。
法隆寺献納宝物は法隆寺宝物館に収蔵・展示されています。
「樫鳥糸肩赤威胴丸」 室町時代・15世紀 重要文化財

大袖と杏葉の付いた胴丸で、樫鳥糸とは紺糸と紅糸を混ぜた糸です。
陸奥浪岡の北畠家伝来といわれ、陸奥三春藩主秋田家に伝わっています。
「朱漆金蛭巻大小」 安土桃山時代・16世紀 重要文化財

朱鞘に金の板を巻いた安土桃山時代の豪宕な雰囲気を持つ拵えです。
豊臣秀吉の差料で、没後に鍔以外は溝口家に、鍔は浅野家に形見分けされています。
「芦穂蒔絵鞍鐙」 安土桃山時代・16世紀 重要文化財

豊臣秀吉所用とされ、高蒔絵が施された豪華な鞍鐙です。
「青磁輪花鉢」 南宋官窯 中国 南宋時代・12~13世紀 重要文化財

貫入(ヒビ)が程良い装飾になっています。
「大井戸茶碗 有楽井戸」 朝鮮時代・16世紀 重要美術品

大井戸の名の通り、大きな茶碗です。
胴の上の部分が少し立ち、釉薬の照りも落着き、高台にかいらぎ(釉薬の縮れ)があります。
織田有楽斎の所有とされ、松永安左エ門の寄贈です。
「色絵月梅図茶壺」 野々村仁清、「仁清」印 江戸時代・17世紀 重要文化財

ふっくらとした姿で、梅の赤や金泥が白地に映えてあでやかです。
「銹絵山水図水指」 野々村仁清 江戸時代 17世紀

仁清というと華やかな絵柄を思いますが、こちらは落着いた水墨画風です。
関東大震災で壊れたのを修復したそうです。
「褐釉蟹貼付台付鉢」 初代宮川香山 明治14年(1881) 重要文化財

真葛焼の創始者、宮川香山の高浮彫による作品です。
明治14年の第2回内国勧業博覧会に出品されています。
「風神雷神図屏風」 尾形光琳 江戸時代・18世紀 重要文化財

11月13日までの展示です。
俵屋宗達の「風神雷神図」の写しです。
宗達と比べると、構図の取り方がおとなしくまとまっていることが分かります。
「夏秋草図屏風」 酒井抱一 江戸時代 19世紀 重要文化財
右隻 夏

左隻 秋

11月15日からの展示です。
夏秋草図屏風は光琳が宗達を模して描いた風神雷神図屏風の裏に描いたもので、
風神図の裏に、風に晒されて揺れる秋草を、雷神図の裏に、雨に打たれてうなだれる
夏草を合わせています。
野の草のはかなさがよく表れていて、琳派の装飾性を超えた味わいがあります。
キリンの剝製の展示もあり、現在は国立科学博物館が担っていた機能を過去には
東京国立博物館が担っていたことも紹介されています。
東京国立博物館の所蔵する国宝の全てを始め、豊富な美術品の揃った、貴重な展覧会です。
展覧会のHPです。
chariot
上野の東京国立博物館で開かれている東京国立博物館創立150年記念特別展、
「国宝 東京国立博物館のすべて」の記事の最後4回目で、第2部の東京国立博物館の
150年の歴史を紹介する展示品を載せます。
会期は12月11日(日)まで、完全予約制です。
会期中、多くの国宝が展示替えされますので、展覧会のHPでご確認下さい。
「見返り美人図」 菱川師宣 江戸時代・17世紀


11月13日までの展示です。
肉筆浮世絵で、玉結びの髪に吉弥結びの帯、振袖は菊と桜の花の丸模様です。
後ろ姿にすることで、後ろ結びである吉弥結びを見せ、左袖をひるがえして
模様を際立たせています。
早い時期に東京国立博物館に所蔵された作品です。
東京国立博物館では「踊る埴輪&見返り美人 修理プロジェクト」を実施中で、
1000万円の目標は達成しましたが、現在も進行中です。
修理プロジェクトのHPです。
遮光器土偶 縄文時代晩期(前1000~前400年)
青森県つがる市亀ヶ岡遺跡 重要文化財

顔がすべて、目を閉じた瞼になっていて、ゴーグル(遮光器)のように
見えることから、この名が付いています。
ネックレスらしい物を着け、髪も装飾的、着ている物の文様も描かれ、
華やかな姿です。
「摩耶夫人および天人像」 銅製鋳造、鍍金
法隆寺献納宝物 飛鳥時代・7世紀 重要文化財

ルンビニ―の園で摩耶夫人の腋から釈迦が誕生し、天人が空を舞う様子を表しています。
承暦2年(1078)に橘寺から法隆寺に移された小金銅仏群のひとつとされています。
普段は表慶館裏の法隆寺宝物館に展示されています。
法隆寺献納宝物とは法隆寺に伝えられた宝物の一部が明治時代に皇室に献納され、
戦後、その一部が東京国立博物館で保管されることになったものです。
法隆寺献納宝物は法隆寺宝物館に収蔵・展示されています。
「樫鳥糸肩赤威胴丸」 室町時代・15世紀 重要文化財

大袖と杏葉の付いた胴丸で、樫鳥糸とは紺糸と紅糸を混ぜた糸です。
陸奥浪岡の北畠家伝来といわれ、陸奥三春藩主秋田家に伝わっています。
「朱漆金蛭巻大小」 安土桃山時代・16世紀 重要文化財

朱鞘に金の板を巻いた安土桃山時代の豪宕な雰囲気を持つ拵えです。
豊臣秀吉の差料で、没後に鍔以外は溝口家に、鍔は浅野家に形見分けされています。
「芦穂蒔絵鞍鐙」 安土桃山時代・16世紀 重要文化財

豊臣秀吉所用とされ、高蒔絵が施された豪華な鞍鐙です。
「青磁輪花鉢」 南宋官窯 中国 南宋時代・12~13世紀 重要文化財

貫入(ヒビ)が程良い装飾になっています。
「大井戸茶碗 有楽井戸」 朝鮮時代・16世紀 重要美術品

大井戸の名の通り、大きな茶碗です。
胴の上の部分が少し立ち、釉薬の照りも落着き、高台にかいらぎ(釉薬の縮れ)があります。
織田有楽斎の所有とされ、松永安左エ門の寄贈です。
「色絵月梅図茶壺」 野々村仁清、「仁清」印 江戸時代・17世紀 重要文化財

ふっくらとした姿で、梅の赤や金泥が白地に映えてあでやかです。
「銹絵山水図水指」 野々村仁清 江戸時代 17世紀

仁清というと華やかな絵柄を思いますが、こちらは落着いた水墨画風です。
関東大震災で壊れたのを修復したそうです。
「褐釉蟹貼付台付鉢」 初代宮川香山 明治14年(1881) 重要文化財

真葛焼の創始者、宮川香山の高浮彫による作品です。
明治14年の第2回内国勧業博覧会に出品されています。
「風神雷神図屏風」 尾形光琳 江戸時代・18世紀 重要文化財

11月13日までの展示です。
俵屋宗達の「風神雷神図」の写しです。
宗達と比べると、構図の取り方がおとなしくまとまっていることが分かります。
「夏秋草図屏風」 酒井抱一 江戸時代 19世紀 重要文化財
右隻 夏

左隻 秋

11月15日からの展示です。
夏秋草図屏風は光琳が宗達を模して描いた風神雷神図屏風の裏に描いたもので、
風神図の裏に、風に晒されて揺れる秋草を、雷神図の裏に、雨に打たれてうなだれる
夏草を合わせています。
野の草のはかなさがよく表れていて、琳派の装飾性を超えた味わいがあります。
キリンの剝製の展示もあり、現在は国立科学博物館が担っていた機能を過去には
東京国立博物館が担っていたことも紹介されています。
東京国立博物館の所蔵する国宝の全てを始め、豊富な美術品の揃った、貴重な展覧会です。
展覧会のHPです。
上野
上野の東京国立博物館で開かれている東京国立博物館創立150年記念特別展、
「国宝 東京国立博物館のすべて」の記事の3回目で、「蒔絵と刀剣」を載せます。
会期は12月11日(日)まで、完全予約制です。
会期中、多くの国宝が展示替えされますので、展覧会のHPでご確認下さい。
「片輪車蒔絵螺鈿手箱」 平安時代 12世紀 国宝

牛車の車輪の乾燥による割れを防ぐために川に浸けている風景を表しています。
水の流れと車輪を取り合わせたデザイン感覚は新鮮です。
泥の中に咲く蓮の花もイメージされているそうです。
「片輪車螺鈿手箱」 鎌倉時代 13世紀 国宝

5月19日までの展示です。
牛車の車輪の乾燥による割れを防ぐために川に浸けている風景を意匠化したものです。
蓋と身がぴったりと合う合口造りで、紐を付ける金具も車輪の形をしています。
金粉を敷き詰めた沃懸地(いかけじ)に細く波文を描き、車輪の線には螺鈿を
嵌め込んでいます。
「舟橋蒔絵硯箱」 本阿弥光悦 江戸時代(17世紀) 国宝

何とも大胆なデザインの硯箱で、鉛の板で舟橋の橋板を表しています。
表面に散らされている文字は後撰和歌集の源等の歌です。
「東路の佐野の舟橋かけてのみ思い渡るを知る人ぞなき」を元に、
「東路乃 さ乃ゝ かけて濃三 思 わたる を知人そ なき」と書かれ、
「舟橋」の字を抜いています。
「八橋蒔絵螺鈿硯箱」 尾形光琳 江戸時代・18世紀 国宝

燕子花の花を螺鈿、葉を漆絵、橋を鉛板で表し、箱の内側には川波が描かれています。
青山の根津美術館では燕子花の咲く頃に、恒例の尾形光琳の国宝「燕子花図屏風」の
展示があります。
「太刀」 三条宗近(名物 三日月宗近) 平安時代・10~12世紀 国宝

刀身は細く長く、反りが強く、優美な姿の太刀です。
焼入れの時に刀身に幾つか現れた弧状の打除け(うちのけ)と言われる形を三日月に
なぞらえた名です。
足利13代将軍義輝が襲われ殺害された時、この太刀を振るって戦ったとされていますが、
確かではありません。
豊臣秀吉正室の高台院の遺品として徳川秀忠に贈られ、長く徳川将軍家が所有して
いました。
太刀 「福岡一文字助真」 鎌倉時代・13世紀 国宝


備前福岡庄に住した一文字派の刀工、助実の太刀です。
身幅が広く、刃文が華やかです。
紀州徳川家に伝来しています。
「太刀 来国光」 鎌倉時代・嘉暦2年(1327) 国宝

来派は鎌倉時代から京都で続く刀工の一派です。
反りの強い、堂々とした姿です。
来国光は鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての刀工です。
徳川将軍家に伝来し、皇太子時代の大正天皇に献上されています。
「刀 相州貞宗(名物 亀甲貞宗)」 鎌倉~南北朝時代・14世紀 国宝



貞宗は相州鍛冶、正宗の実子、または養子とされています。
茎の端に亀甲紋が彫ってあるのでこの名があります。
磨上げて刀身を短くして、太刀(紐で腰に提げる)から刀(帯に差す)に変えてあり、
茎にも刀身の樋が残っています。
樋は二筋入っています。
展覧会のHPです。
chariot
上野の東京国立博物館で開かれている東京国立博物館創立150年記念特別展、
「国宝 東京国立博物館のすべて」の記事の3回目で、「蒔絵と刀剣」を載せます。
会期は12月11日(日)まで、完全予約制です。
会期中、多くの国宝が展示替えされますので、展覧会のHPでご確認下さい。
「片輪車蒔絵螺鈿手箱」 平安時代 12世紀 国宝

牛車の車輪の乾燥による割れを防ぐために川に浸けている風景を表しています。
水の流れと車輪を取り合わせたデザイン感覚は新鮮です。
泥の中に咲く蓮の花もイメージされているそうです。
「片輪車螺鈿手箱」 鎌倉時代 13世紀 国宝

5月19日までの展示です。
牛車の車輪の乾燥による割れを防ぐために川に浸けている風景を意匠化したものです。
蓋と身がぴったりと合う合口造りで、紐を付ける金具も車輪の形をしています。
金粉を敷き詰めた沃懸地(いかけじ)に細く波文を描き、車輪の線には螺鈿を
嵌め込んでいます。
「舟橋蒔絵硯箱」 本阿弥光悦 江戸時代(17世紀) 国宝

何とも大胆なデザインの硯箱で、鉛の板で舟橋の橋板を表しています。
表面に散らされている文字は後撰和歌集の源等の歌です。
「東路の佐野の舟橋かけてのみ思い渡るを知る人ぞなき」を元に、
「東路乃 さ乃ゝ かけて濃三 思 わたる を知人そ なき」と書かれ、
「舟橋」の字を抜いています。
「八橋蒔絵螺鈿硯箱」 尾形光琳 江戸時代・18世紀 国宝

燕子花の花を螺鈿、葉を漆絵、橋を鉛板で表し、箱の内側には川波が描かれています。
青山の根津美術館では燕子花の咲く頃に、恒例の尾形光琳の国宝「燕子花図屏風」の
展示があります。
「太刀」 三条宗近(名物 三日月宗近) 平安時代・10~12世紀 国宝

刀身は細く長く、反りが強く、優美な姿の太刀です。
焼入れの時に刀身に幾つか現れた弧状の打除け(うちのけ)と言われる形を三日月に
なぞらえた名です。
足利13代将軍義輝が襲われ殺害された時、この太刀を振るって戦ったとされていますが、
確かではありません。
豊臣秀吉正室の高台院の遺品として徳川秀忠に贈られ、長く徳川将軍家が所有して
いました。
太刀 「福岡一文字助真」 鎌倉時代・13世紀 国宝


備前福岡庄に住した一文字派の刀工、助実の太刀です。
身幅が広く、刃文が華やかです。
紀州徳川家に伝来しています。
「太刀 来国光」 鎌倉時代・嘉暦2年(1327) 国宝

来派は鎌倉時代から京都で続く刀工の一派です。
反りの強い、堂々とした姿です。
来国光は鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての刀工です。
徳川将軍家に伝来し、皇太子時代の大正天皇に献上されています。
「刀 相州貞宗(名物 亀甲貞宗)」 鎌倉~南北朝時代・14世紀 国宝



貞宗は相州鍛冶、正宗の実子、または養子とされています。
茎の端に亀甲紋が彫ってあるのでこの名があります。
磨上げて刀身を短くして、太刀(紐で腰に提げる)から刀(帯に差す)に変えてあり、
茎にも刀身の樋が残っています。
樋は二筋入っています。
展覧会のHPです。
池袋
「但馬屋珈琲店 池袋東武店」は東武百貨店池袋店本館11階のダイニングシティ
スパイスにあります。
場所は豊島区西池袋1-1-25です。

「ホノルルコーヒー池袋東武店」の跡地に今年4月にオープンしたお店です。
通路に面してオープンテラスも広く取ってあります。


テーブルには手指用アルコールも置いてあります。

カレーチキンドリアセット1550円です。

こちらはハムと卵のサンドウィッチセット1450円です。

コーヒーは深煎りの苦みで、美味しいです。
カップは有田焼円左ェ門窯の南蛮屏風の柄です。
但馬屋珈琲店はウェッジウッドのいろいろなカップも揃えています。
ダイニングシティスパイスの通路のベンチにはハロウィンのかぼちゃが座っていました。

chariot
「但馬屋珈琲店 池袋東武店」は東武百貨店池袋店本館11階のダイニングシティ
スパイスにあります。
場所は豊島区西池袋1-1-25です。

「ホノルルコーヒー池袋東武店」の跡地に今年4月にオープンしたお店です。
通路に面してオープンテラスも広く取ってあります。


テーブルには手指用アルコールも置いてあります。

カレーチキンドリアセット1550円です。

こちらはハムと卵のサンドウィッチセット1450円です。

コーヒーは深煎りの苦みで、美味しいです。
カップは有田焼円左ェ門窯の南蛮屏風の柄です。
但馬屋珈琲店はウェッジウッドのいろいろなカップも揃えています。
ダイニングシティスパイスの通路のベンチにはハロウィンのかぼちゃが座っていました。

上野
上野の東京国立博物館で開かれている東京国立博物館創立150年記念特別展、
「国宝 東京国立博物館のすべて」の記事の2回目で、「書跡」を載せます。
会期は12月11日(日)まで、完全予約制です。
会期中、多くの国宝が展示替えされますので、展覧会のHPでご確認下さい。
「竹生島経」 平安時代・10世紀後半~11世紀初 東京国立博物館 国宝


琵琶湖竹生島の宝厳寺に伝来する法華経で、画像は方便品第二です。
下絵に金銀泥で草花、鳥、蝶、霊芝雲などを描いた上に端正な書風で書かれています。
「円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書」
小野道風 延長5年(927) 国宝

延暦寺第五世座主円珍の没後36年目に、法印大和尚位への昇任と智証大師の諡
(おくり名)を醍醐天皇が下賜したときの勅書です。
勅書なので整然としていますが、うるおいのある、のびやかな書きぶりです。
「和歌体十種」 平安時代・11世紀 国宝


歌論書の写本で、和歌を10種類に分類し、それぞれの例として5首ずつ選んであります。
料紙には藍色と紫色の模様(飛び雲)が漉き込まれています。
「寛平御時后宮歌合(十巻本)」 平安時代・11世紀 国宝

46の歌合を10巻本にまとめた草稿のうちの第4巻、寛平御時后宮歌合
(かんぴょうのおんとききさいのみやうたあわせ)を書写したものと思われます。
寛平御時后宮歌合は寛平初年(889年)頃に、宇多天皇の母后班子女王の邸で
催された歌合です。

冒頭は紀友則の歌です。
花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯さそふふしるべにはやる
「古今和歌集(元永本)」 平安時代・12世紀 国宝

古今和歌集の全巻の揃っている最古の品とのことです。
金銀箔を撒いた優美で豪華な料紙に和歌がかな書きされています。
右から巻第一春歌上四番、二条后の歌で
ゆきのうちにはるはきにけりうぐひすのこほれるなみだいまやとくらむ
五番 読人不知
うめがえにきゐるうぐひすはるかけてなけどもいまだゆきはふりつつ
六番 素性法師
はるたてば花とやみらむしらゆきのかかれるえだにうぐひすぞなく
「元暦校本万葉集 巻一(古河本)」 平安時代・11世紀 東京国立博物館 国宝

巻二十に元暦元年(1184)の校合との記載があることからこの名が付いています。
万葉仮名と平仮名の両方で書かれています。
中皇命徃于紀温泉之時御歌
きみがよもわがよもしるやいはしろのおかのくさねをいざむすびてな
医心方 巻第二十六 延年部 丹波康頼撰 1巻(30巻、1冊のうち)
平安時代 12世紀 国宝

「医心方」は平安時代前期の医師、丹波康頼(912-995)が永観2年(984)に
唐の医書を参考に編纂した全30巻の医学書で、日本最古の医学書です。
送り仮名やヲコト点も付いています。
展覧会のHPです。
chariot
上野の東京国立博物館で開かれている東京国立博物館創立150年記念特別展、
「国宝 東京国立博物館のすべて」の記事の2回目で、「書跡」を載せます。
会期は12月11日(日)まで、完全予約制です。
会期中、多くの国宝が展示替えされますので、展覧会のHPでご確認下さい。
「竹生島経」 平安時代・10世紀後半~11世紀初 東京国立博物館 国宝


琵琶湖竹生島の宝厳寺に伝来する法華経で、画像は方便品第二です。
下絵に金銀泥で草花、鳥、蝶、霊芝雲などを描いた上に端正な書風で書かれています。
「円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書」
小野道風 延長5年(927) 国宝

延暦寺第五世座主円珍の没後36年目に、法印大和尚位への昇任と智証大師の諡
(おくり名)を醍醐天皇が下賜したときの勅書です。
勅書なので整然としていますが、うるおいのある、のびやかな書きぶりです。
「和歌体十種」 平安時代・11世紀 国宝


歌論書の写本で、和歌を10種類に分類し、それぞれの例として5首ずつ選んであります。
料紙には藍色と紫色の模様(飛び雲)が漉き込まれています。
「寛平御時后宮歌合(十巻本)」 平安時代・11世紀 国宝

46の歌合を10巻本にまとめた草稿のうちの第4巻、寛平御時后宮歌合
(かんぴょうのおんとききさいのみやうたあわせ)を書写したものと思われます。
寛平御時后宮歌合は寛平初年(889年)頃に、宇多天皇の母后班子女王の邸で
催された歌合です。

冒頭は紀友則の歌です。
花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯さそふふしるべにはやる
「古今和歌集(元永本)」 平安時代・12世紀 国宝

古今和歌集の全巻の揃っている最古の品とのことです。
金銀箔を撒いた優美で豪華な料紙に和歌がかな書きされています。
右から巻第一春歌上四番、二条后の歌で
ゆきのうちにはるはきにけりうぐひすのこほれるなみだいまやとくらむ
五番 読人不知
うめがえにきゐるうぐひすはるかけてなけどもいまだゆきはふりつつ
六番 素性法師
はるたてば花とやみらむしらゆきのかかれるえだにうぐひすぞなく
「元暦校本万葉集 巻一(古河本)」 平安時代・11世紀 東京国立博物館 国宝

巻二十に元暦元年(1184)の校合との記載があることからこの名が付いています。
万葉仮名と平仮名の両方で書かれています。
中皇命徃于紀温泉之時御歌
きみがよもわがよもしるやいはしろのおかのくさねをいざむすびてな
医心方 巻第二十六 延年部 丹波康頼撰 1巻(30巻、1冊のうち)
平安時代 12世紀 国宝

「医心方」は平安時代前期の医師、丹波康頼(912-995)が永観2年(984)に
唐の医書を参考に編纂した全30巻の医学書で、日本最古の医学書です。
送り仮名やヲコト点も付いています。
展覧会のHPです。
上野
上野の東京国立博物館では東京国立博物館創立150年記念特別展
「国宝 東京国立博物館のすべて」が開かれています。
会期は12月11日(日)まで、完全予約制です。
会期中、多くの国宝が展示替えされますので、展覧会のHPでご確認下さい。

明治5年(1872)の発足以来の収蔵品のうち、国宝59点すべてを含む名品が
展示されています。
今回はそのうち、絵画作品について載せます。
「普賢菩薩像」 平安時代・12世紀 東京国立博物館 国宝

普賢菩薩は女人往生を説く法華経に登場するので、特に女性の信仰を集めています。
白象に乗った、この上なく優美な姿で、天蓋には花が飾られています。
「孔雀明王像」 平安時代・12世紀 東京国立博物館 国宝

孔雀は毒蛇を食べてしまうことから、孔雀明王は災厄や苦痛を取り除く
功徳があるとされています。
金箔を糸のように細く切って貼り付けた截金(きりかね)で飾られた羽根が
きらびやかです。
「虚空蔵菩薩像」 平安時代 12世紀 国宝

虚空蔵菩薩は密教系の菩薩で、虚空のように広大な福徳と知恵を備えていると
されています。
銀を多く使っているのが特徴で、繊細に装飾されています。
この像は絵画として日本で最も古い作例ですが、来歴は不明とのことです。
「千手観音像」 平安時代・12世紀 国宝

観音の右に功徳天、左に婆藪仙人(ばすうせんにん)を配しています。
金銀箔や截金を用いた、平安期らしい繊細優美な作品です。
「扇面法華経冊子」 平安時代 12世紀 国宝



11月15日からの展示で、冊子の形なので、このうちどれかの扇面が展示されます。
扇面に貴族や庶民の様子、花鳥や風景を描いた上に法華経を写し、冊子の形にしています。
雲母引きし、金銀の切箔、野毛、砂子を散らした、大変豪華な品です。
宮廷周辺の女性の発願で制作されたと考えられるとのことで、大阪の四天王寺に
伝来しています。
一番下の扇面には雀を罠で捕まえようとしている人たちが描かれています。
「地獄草紙」 平安~鎌倉時代・12~13世紀 国宝


岡山の安住院に伝来の絵巻で、正法念処経に基く4つの地獄が描かれています。
いずれも酒にまつわる罪を犯した者たちで、業火に焼かれ、虫や動物に食われています。
一遍聖絵 巻第七 法眼円伊 鎌倉時代 正安元年(1299) 国宝

「一遍聖絵」は一遍の死の10年後の正安元年(1299)に制作され、弟子の聖戒が
詞書を書き、円伊が描いています。
近江の国、大津、逢坂の関にあった関寺に参り、園城寺衆徒の許しを得て7日間、
さらに希望があり14日間の行法を行なっているところです。
舞台をしつらえて踊念仏を興行しており、鉦を叩きながら時計回りに回っています。
「秋冬山水図」 雪舟等楊 室町時代(15世紀末~16世紀初) 国宝

漢画特有のくっきりした描き方で、近くの岩や遠くの山は平面を前後に並べた
ように見えます。
「観楓図屏風」 狩野秀頼 室町~安土桃山時代・16世紀 国宝

紅葉の名所、高尾の紅葉狩の情景を大らかに描いていて、近世初期風俗画の
代表作とされています。
狩野秀頼は生没年未詳で、狩野元信の次男、またはその子とされています。
「檜図屏風」 狩野永徳 安土桃山時代(16世紀) 国宝

狩野永徳晩年の作で、桃山らしい豪快な筆捌きでぐいぐい描いてあります。
元は八条宮家の襖絵ということで、引き手の跡がうっすらと残っています。
お公家さんの雅びとはかなり趣きが異なりますが、この頃は宮家もこのような
画風を喜んだのでしょうか。
「松林図屏風」 安土桃山時代 16世紀 国宝
右隻

左隻

お正月によく展示される作品です。
遠くにかすかに見える山を頂点にした、ゆるやかな三角形の構図で、
霧の中に濃く薄く現われる松林の情景は、等伯独自の画境です。
近付いて観ると、松の枝は簡潔ながら力強く描かれています。
様式性や装飾性を超えて、自分たちが現実に観て感じている自然の
佇まいを描き出しています。
「花下遊楽図屏風」 左隻 狩野長信
安土桃山~江戸時代 17世紀 国宝

こちらは毎年春になるとよく展示されます。
解説によれば、刀を差して踊っているのは女性とのことです。
駕籠の脇で居眠りしている従者も描き込まれています。
桜が大きく描かれているのは右隻ですが、残念なことに真中の2面は
関東大震災で失われています。
「洛中洛外図屏風 舟木本」 岩佐又兵衛 江戸時代・17世紀 国宝
右隻

左隻

滋賀県の舟木家に伝わったことから、この名があります。
上京と下京を別の視点から見る従来の方式と違って、東寺の五重塔の上からの
視点で、右隻の右端に豊臣家の象徴の方広寺大仏殿、左隻の左端に徳川家の象徴、
二条城を置いた形です。
「納涼図屏風」 久隅守景 江戸時代・17世紀 国宝

久隅守景の代表作で、月夜の夕顔棚の下で涼む家族のおだやかな情景です。
淡く着色され、月は、輪郭に沿って外側を墨で塗る外隈(そとくま)という技法に
拠っています。
四季農耕図の一場面のような情景で、棚にぶら下がっている瓢箪がユーモラスな
味わいを見せています。
これは守景自身と娘の雪信、息子の彦十郎を描いた、家族の肖像ではないかとも
言われています。
「楼閣山水図屏風」 池大雅 江戸時代・18世紀 国宝

右隻

左隻

南画の大家、池大雅の作品で、金地屏風の右隻に洞庭湖を望む岳陽楼を、
左隻に安徽省琅琊山(ろうやさん)の酔翁亭を描いています。
池大雅らしい伸びやかな風景画で、人物の衣服を青や赤に塗って
アクセントを付けています。
一橋徳川家の旧蔵です。
「鷹見泉石像」 渡辺崋山 江戸時代・天保8年(1837) 国宝

鷹見泉石は幕末の下総古河藩(茨城県古河市)の家老で、
大塩平八郎の乱の鎮圧にも当たっています。
素襖に折烏帽子の正装で、西洋画の影響を受けて顔の描写は
徹底的に写実にこだわり、絵具の濃淡で立体感を出そうと
努めており、目や唇の表現は生々しい程です。
中国絵画の展示もあります。
「紅白芙蓉図」 李迪 南宋時代 慶元3(1197)年 国宝


一日のうちに白から紅に色の変わる酔芙蓉を描いています。
ふっくらとした花弁、淡い紅の色付き、濃淡のある葉の色など、繊細優美な描き振りです。
李迪(りてき)は南宋宮廷画院の画家で、花鳥画を得意としています。
「瀟湘臥遊図巻」 李氏 中国 南宋時代・12世紀 国宝


宋代の山水水墨画です。
清の乾隆帝の愛蔵品で、乾隆帝の書が付いています。
展覧会のHPです。
chariot
上野の東京国立博物館では東京国立博物館創立150年記念特別展
「国宝 東京国立博物館のすべて」が開かれています。
会期は12月11日(日)まで、完全予約制です。
会期中、多くの国宝が展示替えされますので、展覧会のHPでご確認下さい。

明治5年(1872)の発足以来の収蔵品のうち、国宝59点すべてを含む名品が
展示されています。
今回はそのうち、絵画作品について載せます。
「普賢菩薩像」 平安時代・12世紀 東京国立博物館 国宝

普賢菩薩は女人往生を説く法華経に登場するので、特に女性の信仰を集めています。
白象に乗った、この上なく優美な姿で、天蓋には花が飾られています。
「孔雀明王像」 平安時代・12世紀 東京国立博物館 国宝

孔雀は毒蛇を食べてしまうことから、孔雀明王は災厄や苦痛を取り除く
功徳があるとされています。
金箔を糸のように細く切って貼り付けた截金(きりかね)で飾られた羽根が
きらびやかです。
「虚空蔵菩薩像」 平安時代 12世紀 国宝

虚空蔵菩薩は密教系の菩薩で、虚空のように広大な福徳と知恵を備えていると
されています。
銀を多く使っているのが特徴で、繊細に装飾されています。
この像は絵画として日本で最も古い作例ですが、来歴は不明とのことです。
「千手観音像」 平安時代・12世紀 国宝

観音の右に功徳天、左に婆藪仙人(ばすうせんにん)を配しています。
金銀箔や截金を用いた、平安期らしい繊細優美な作品です。
「扇面法華経冊子」 平安時代 12世紀 国宝



11月15日からの展示で、冊子の形なので、このうちどれかの扇面が展示されます。
扇面に貴族や庶民の様子、花鳥や風景を描いた上に法華経を写し、冊子の形にしています。
雲母引きし、金銀の切箔、野毛、砂子を散らした、大変豪華な品です。
宮廷周辺の女性の発願で制作されたと考えられるとのことで、大阪の四天王寺に
伝来しています。
一番下の扇面には雀を罠で捕まえようとしている人たちが描かれています。
「地獄草紙」 平安~鎌倉時代・12~13世紀 国宝


岡山の安住院に伝来の絵巻で、正法念処経に基く4つの地獄が描かれています。
いずれも酒にまつわる罪を犯した者たちで、業火に焼かれ、虫や動物に食われています。
一遍聖絵 巻第七 法眼円伊 鎌倉時代 正安元年(1299) 国宝

「一遍聖絵」は一遍の死の10年後の正安元年(1299)に制作され、弟子の聖戒が
詞書を書き、円伊が描いています。
近江の国、大津、逢坂の関にあった関寺に参り、園城寺衆徒の許しを得て7日間、
さらに希望があり14日間の行法を行なっているところです。
舞台をしつらえて踊念仏を興行しており、鉦を叩きながら時計回りに回っています。
「秋冬山水図」 雪舟等楊 室町時代(15世紀末~16世紀初) 国宝

漢画特有のくっきりした描き方で、近くの岩や遠くの山は平面を前後に並べた
ように見えます。
「観楓図屏風」 狩野秀頼 室町~安土桃山時代・16世紀 国宝

紅葉の名所、高尾の紅葉狩の情景を大らかに描いていて、近世初期風俗画の
代表作とされています。
狩野秀頼は生没年未詳で、狩野元信の次男、またはその子とされています。
「檜図屏風」 狩野永徳 安土桃山時代(16世紀) 国宝

狩野永徳晩年の作で、桃山らしい豪快な筆捌きでぐいぐい描いてあります。
元は八条宮家の襖絵ということで、引き手の跡がうっすらと残っています。
お公家さんの雅びとはかなり趣きが異なりますが、この頃は宮家もこのような
画風を喜んだのでしょうか。
「松林図屏風」 安土桃山時代 16世紀 国宝
右隻

左隻

お正月によく展示される作品です。
遠くにかすかに見える山を頂点にした、ゆるやかな三角形の構図で、
霧の中に濃く薄く現われる松林の情景は、等伯独自の画境です。
近付いて観ると、松の枝は簡潔ながら力強く描かれています。
様式性や装飾性を超えて、自分たちが現実に観て感じている自然の
佇まいを描き出しています。
「花下遊楽図屏風」 左隻 狩野長信
安土桃山~江戸時代 17世紀 国宝

こちらは毎年春になるとよく展示されます。
解説によれば、刀を差して踊っているのは女性とのことです。
駕籠の脇で居眠りしている従者も描き込まれています。
桜が大きく描かれているのは右隻ですが、残念なことに真中の2面は
関東大震災で失われています。
「洛中洛外図屏風 舟木本」 岩佐又兵衛 江戸時代・17世紀 国宝
右隻

左隻

滋賀県の舟木家に伝わったことから、この名があります。
上京と下京を別の視点から見る従来の方式と違って、東寺の五重塔の上からの
視点で、右隻の右端に豊臣家の象徴の方広寺大仏殿、左隻の左端に徳川家の象徴、
二条城を置いた形です。
「納涼図屏風」 久隅守景 江戸時代・17世紀 国宝

久隅守景の代表作で、月夜の夕顔棚の下で涼む家族のおだやかな情景です。
淡く着色され、月は、輪郭に沿って外側を墨で塗る外隈(そとくま)という技法に
拠っています。
四季農耕図の一場面のような情景で、棚にぶら下がっている瓢箪がユーモラスな
味わいを見せています。
これは守景自身と娘の雪信、息子の彦十郎を描いた、家族の肖像ではないかとも
言われています。
「楼閣山水図屏風」 池大雅 江戸時代・18世紀 国宝

右隻

左隻

南画の大家、池大雅の作品で、金地屏風の右隻に洞庭湖を望む岳陽楼を、
左隻に安徽省琅琊山(ろうやさん)の酔翁亭を描いています。
池大雅らしい伸びやかな風景画で、人物の衣服を青や赤に塗って
アクセントを付けています。
一橋徳川家の旧蔵です。
「鷹見泉石像」 渡辺崋山 江戸時代・天保8年(1837) 国宝

鷹見泉石は幕末の下総古河藩(茨城県古河市)の家老で、
大塩平八郎の乱の鎮圧にも当たっています。
素襖に折烏帽子の正装で、西洋画の影響を受けて顔の描写は
徹底的に写実にこだわり、絵具の濃淡で立体感を出そうと
努めており、目や唇の表現は生々しい程です。
中国絵画の展示もあります。
「紅白芙蓉図」 李迪 南宋時代 慶元3(1197)年 国宝


一日のうちに白から紅に色の変わる酔芙蓉を描いています。
ふっくらとした花弁、淡い紅の色付き、濃淡のある葉の色など、繊細優美な描き振りです。
李迪(りてき)は南宋宮廷画院の画家で、花鳥画を得意としています。
「瀟湘臥遊図巻」 李氏 中国 南宋時代・12世紀 国宝


宋代の山水水墨画です。
清の乾隆帝の愛蔵品で、乾隆帝の書が付いています。
展覧会のHPです。
中村橋
練馬区立美術館では「日本の中のマネ」展が開かれています。
会期は11月3日(木・祝)までです。

エドゥアール・マネ(1832-1883)の日本への受容について考察する展覧会です。
革新的な作品を描き、印象派の先駆ともされるエドゥアール・マネ(1832-1983)は
日本人の画家たちにも大きな影響を与えています。
エドゥアール・マネ 「イザベル・ルモニエ嬢の肖像」 1879年頃 吉野石膏コレクション

マネの晩年の作品で、平面的な描き方をしていて、つつましい表情の顔は緻密に
描かれていますが、ドレスなどはベラスケスに倣った、ざっくりとした筆遣いです。
イザベル・ルモニエは、ルノワールのパトロンでもあったジョルジュ・シャルパンティエの
義妹で、マネと親しくしています。
エドゥアール・マネ 「散歩(ガンビー夫人)」 1880-81年頃 東京富士美術館

晩年のマネが梅毒治療のため、パリの南西ムードンのベルヴュ地区に
滞在していた時の作品で、モデルは見舞客の一人と言われています。
マネ得意の黒を使った作品で、手早い描き振りですが、当時のパリの女性の
たたずまいを見事に捉えています。
モネ、ルノワール、シスレーなど、印象派の作品も何点か展示されています。
クロード・モネ 「アンティーブ岬」 1888年 愛媛県美術館

アンティーブは地中海沿いの町です。
ジヴェルニー時代の作品で、モネはアンティーブにしばらく滞在し、30点ほどを
制作しています。
正面に立ち木を配した大胆な構図で、広重などの浮世絵の影響を感じます。
アルフレッド・シスレー 「モレのポプラ並木」 1888年 吉野石膏コレクション

川沿いのポプラ並木が日の光を浴びて輝く様を、印象派らしい明るい筆遣いで
描いています。
アルフレッド・シスレー 「ロワン川沿いの小屋、夕べ」
1896年 吉野石膏コレクション

シスレーの特徴の地平線を低く取った画面です。
1899年にシスレーが亡くなると、画塾仲間だったモネはシスレーの遺族のための
展示即売会を呼び掛けています。
マネの未亡人やベルト・モリゾも協力して、手持ちの作品を提供したとのことで、
この絵はその折に出品されたそうです。
2019年に三菱一号館美術館で開かれた、「印象派からその先へ—世界に誇る
吉野石膏コレクション展」に展示されていた時の写真です。
メアリー・カサット 「マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像」
1911年 吉野石膏コレクション

パステル画で、モデルは画商のデュラン=リュエルの14歳の孫娘です。
ピンクの服が可愛さを引き立てています。
メアリー・カサット(1844-1926)はアメリカ人の印象派の画家で、
子どもの絵を得意としています。
影響を受けた日本人の画家たちの作品が展示されています。
石井柏亭 「草上の小憩」 1904年 東京国立近代美術館

初期の作品で、マネの「草上の昼食」に想を得ており、太平洋画会展に出品されています。
モデルは弟妹たちで、印象派風に光を強調するため、黄色の線を軽くかけたそうです。
林の向こうの景色も淡い色調で描いて、上手く遠近感を出しています。
石井柏亭(1882-1958)は1904年に東京美術学校に入学しますが、眼病のため
中退しています。
その後、1910年に渡欧し、帰国後は二科会の結成に参加しています。
安井曾太郎 「水浴裸婦」 1914年 アーティゾン美術館

安井曾太郎(1888-1955)は1907年から1914年まで、フランスに留学し、
特にセザンヌに大きな影響を受けています。
フランスで修業中の作品で、傾倒していたセザンヌの影響が見られます。
大きな画面ですが、奥行きが浅く感じられます。
セザンヌもマネの影響を受け、「草上の昼食」や「オランピア」に倣った
作品を描いています。
小磯良平 「斉唱」 1941年 兵庫県立美術館
小磯良平(1903-1988)の代表作で、黒い服の女性たちが並んで歌っています。
黒を使いこなした、都会的なセンスはまさにマネに通じるものがあります。
東京美術学校時代、マネを熱心に研究していて、師の藤島武二にも
「マネが好きなのだろう」と言われています。
(参考)
小磯良平 「彼の休息」 1927年 東京藝術大学大学美術館

東京美術学校の卒業制作です。
作品のモデルは神戸第二中学校以来の友人の竹中郁で、ラガーシャツ姿で
休んでいるところで、マネの画集も置いてあります。
勢いの良い作品で、シャツやソックス、パラソルの縞模様が眼を惹きます。
さすが神戸らしい、1927年とは思えないモダンな雰囲気があります。
現代の作家、森村泰昌と福田美蘭のマネへのオマージュ作品も展示されています。
森村泰昌 「肖像(少年1、2、3)」 1988年 東京都現代美術館

「笛を吹く少年」を自身が演じています。
「フォリー=ベルジェールのバー」のパロディー作品などもあります。
福田美蘭 「帽子を被った男性から見た草上の二人」 1992年 高松市美術館

筆触も似せ、影の出来具合も考えて描かれています。
福田さんは絵の中の人物の視点で見た様子を描いてもおられます。
(参考)
「侍女ドーニャ・マリア・アウグスティーナから見た王女マルガリータ、
ドーニャ・イサベル・ベラスコ、婦人マリア・バルボラ、矮人ニコラシート
・ベルトゥサートと犬」 パネルにアクリル絵具 1992年

ベラスケスの有名な「ラス・メニーナス(女官たち)」を元にしています。
2013年に東京都美術館で開かれた、「福田美蘭展」に展示されていました。
福田美蘭 「ゼレンスキー大統領」 2022年
厳しい表情で執務室に座るウクライナのゼレンスキー大統領の肖像です。
福田さんは時事的な作品もよく描いておられます。
マネも普仏戦争敗戦後に起きたパリ・コミューン蜂起の犠牲者の姿を描いています。
展覧会のHPです。
chariot
練馬区立美術館では「日本の中のマネ」展が開かれています。
会期は11月3日(木・祝)までです。

エドゥアール・マネ(1832-1883)の日本への受容について考察する展覧会です。
革新的な作品を描き、印象派の先駆ともされるエドゥアール・マネ(1832-1983)は
日本人の画家たちにも大きな影響を与えています。
エドゥアール・マネ 「イザベル・ルモニエ嬢の肖像」 1879年頃 吉野石膏コレクション

マネの晩年の作品で、平面的な描き方をしていて、つつましい表情の顔は緻密に
描かれていますが、ドレスなどはベラスケスに倣った、ざっくりとした筆遣いです。
イザベル・ルモニエは、ルノワールのパトロンでもあったジョルジュ・シャルパンティエの
義妹で、マネと親しくしています。
エドゥアール・マネ 「散歩(ガンビー夫人)」 1880-81年頃 東京富士美術館

晩年のマネが梅毒治療のため、パリの南西ムードンのベルヴュ地区に
滞在していた時の作品で、モデルは見舞客の一人と言われています。
マネ得意の黒を使った作品で、手早い描き振りですが、当時のパリの女性の
たたずまいを見事に捉えています。
モネ、ルノワール、シスレーなど、印象派の作品も何点か展示されています。
クロード・モネ 「アンティーブ岬」 1888年 愛媛県美術館

アンティーブは地中海沿いの町です。
ジヴェルニー時代の作品で、モネはアンティーブにしばらく滞在し、30点ほどを
制作しています。
正面に立ち木を配した大胆な構図で、広重などの浮世絵の影響を感じます。
アルフレッド・シスレー 「モレのポプラ並木」 1888年 吉野石膏コレクション

川沿いのポプラ並木が日の光を浴びて輝く様を、印象派らしい明るい筆遣いで
描いています。
アルフレッド・シスレー 「ロワン川沿いの小屋、夕べ」
1896年 吉野石膏コレクション

シスレーの特徴の地平線を低く取った画面です。
1899年にシスレーが亡くなると、画塾仲間だったモネはシスレーの遺族のための
展示即売会を呼び掛けています。
マネの未亡人やベルト・モリゾも協力して、手持ちの作品を提供したとのことで、
この絵はその折に出品されたそうです。
2019年に三菱一号館美術館で開かれた、「印象派からその先へ—世界に誇る
吉野石膏コレクション展」に展示されていた時の写真です。
メアリー・カサット 「マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像」
1911年 吉野石膏コレクション

パステル画で、モデルは画商のデュラン=リュエルの14歳の孫娘です。
ピンクの服が可愛さを引き立てています。
メアリー・カサット(1844-1926)はアメリカ人の印象派の画家で、
子どもの絵を得意としています。
影響を受けた日本人の画家たちの作品が展示されています。
石井柏亭 「草上の小憩」 1904年 東京国立近代美術館

初期の作品で、マネの「草上の昼食」に想を得ており、太平洋画会展に出品されています。
モデルは弟妹たちで、印象派風に光を強調するため、黄色の線を軽くかけたそうです。
林の向こうの景色も淡い色調で描いて、上手く遠近感を出しています。
石井柏亭(1882-1958)は1904年に東京美術学校に入学しますが、眼病のため
中退しています。
その後、1910年に渡欧し、帰国後は二科会の結成に参加しています。
安井曾太郎 「水浴裸婦」 1914年 アーティゾン美術館

安井曾太郎(1888-1955)は1907年から1914年まで、フランスに留学し、
特にセザンヌに大きな影響を受けています。
フランスで修業中の作品で、傾倒していたセザンヌの影響が見られます。
大きな画面ですが、奥行きが浅く感じられます。
セザンヌもマネの影響を受け、「草上の昼食」や「オランピア」に倣った
作品を描いています。
小磯良平 「斉唱」 1941年 兵庫県立美術館
小磯良平(1903-1988)の代表作で、黒い服の女性たちが並んで歌っています。
黒を使いこなした、都会的なセンスはまさにマネに通じるものがあります。
東京美術学校時代、マネを熱心に研究していて、師の藤島武二にも
「マネが好きなのだろう」と言われています。
(参考)
小磯良平 「彼の休息」 1927年 東京藝術大学大学美術館

東京美術学校の卒業制作です。
作品のモデルは神戸第二中学校以来の友人の竹中郁で、ラガーシャツ姿で
休んでいるところで、マネの画集も置いてあります。
勢いの良い作品で、シャツやソックス、パラソルの縞模様が眼を惹きます。
さすが神戸らしい、1927年とは思えないモダンな雰囲気があります。
現代の作家、森村泰昌と福田美蘭のマネへのオマージュ作品も展示されています。
森村泰昌 「肖像(少年1、2、3)」 1988年 東京都現代美術館

「笛を吹く少年」を自身が演じています。
「フォリー=ベルジェールのバー」のパロディー作品などもあります。
福田美蘭 「帽子を被った男性から見た草上の二人」 1992年 高松市美術館

筆触も似せ、影の出来具合も考えて描かれています。
福田さんは絵の中の人物の視点で見た様子を描いてもおられます。
(参考)
「侍女ドーニャ・マリア・アウグスティーナから見た王女マルガリータ、
ドーニャ・イサベル・ベラスコ、婦人マリア・バルボラ、矮人ニコラシート
・ベルトゥサートと犬」 パネルにアクリル絵具 1992年

ベラスケスの有名な「ラス・メニーナス(女官たち)」を元にしています。
2013年に東京都美術館で開かれた、「福田美蘭展」に展示されていました。
福田美蘭 「ゼレンスキー大統領」 2022年
厳しい表情で執務室に座るウクライナのゼレンスキー大統領の肖像です。
福田さんは時事的な作品もよく描いておられます。
マネも普仏戦争敗戦後に起きたパリ・コミューン蜂起の犠牲者の姿を描いています。
展覧会のHPです。
銀座一丁目
銀座のポーラ ミュージアム アネックスでは八木マリヨ・八木夕菜『地殻を辿る』展が
開かれています。
会期は10月23日(日)までです。

八木マリヨさんは環境芸術家で、地球のエネルギーをテーマにした作品を
制作されています。
今回は鉄を素材にした作品が展示されています。


八木夕菜さんは写真家で、建築事務所勤務の後、視覚の持つ不確かさと
視覚を超えた本質をテーマに、国内外の建築などを撮影した素材による
作品を制作されています。



2018年に同じポーラ ミュージアム アネックスで開かれた
「「八木夕菜「NOWHERE」展」の記事です。
アネックスのあるポーラ銀座ビルの1階にも二人の作品が展示されています。



chariot
銀座のポーラ ミュージアム アネックスでは八木マリヨ・八木夕菜『地殻を辿る』展が
開かれています。
会期は10月23日(日)までです。

八木マリヨさんは環境芸術家で、地球のエネルギーをテーマにした作品を
制作されています。
今回は鉄を素材にした作品が展示されています。


八木夕菜さんは写真家で、建築事務所勤務の後、視覚の持つ不確かさと
視覚を超えた本質をテーマに、国内外の建築などを撮影した素材による
作品を制作されています。



2018年に同じポーラ ミュージアム アネックスで開かれた
「「八木夕菜「NOWHERE」展」の記事です。
アネックスのあるポーラ銀座ビルの1階にも二人の作品が展示されています。



六本木1丁目
六本木の泉屋博古館東京では泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展 III、
「古美術逍遥 東洋へのまなざし」展が開かれています。
会期は10月23日(日)までです。

1 中国絵画 ― 気は熟した
八大山人 「安晩帖」 清・康熙33年(1694) 重要文化財
八大山人(1626~1705)、本名は朱耷(しゅとう)で、明の太祖洪武帝の子孫です。
明の滅亡により逃亡した後に出家し、やがて多くの弟子を持ちますが、
清に警戒されたため還俗して故郷の南昌に戻ります。
以後は書画を売って酒を飲む生活を送っています。
「安晩帖」は20図からなる冊子です。
「叭々鳥」

10月2日までの展示でした。
叭々鳥(ははちょう)はムクドリ科の黒い鳥です。
輪郭線を使わない、没骨(もっこつ)によって描いていますが、縦横を
強調した特異な造形です。
「鱖魚」

墨に味わいのある筆で鱖魚(けつぎょ)が一匹描かれていますが、
目は上を向いていて、にらむような白眼になっています。
白眼視の故事に拠っているともされ、滅亡した明への思いと清への反抗の
気持ちを表しているとのことです。
八大山人という号の由来は分かっていません。
崩し字の署名を観ると、八大は「笑」あるいは「哭」、山人は「之」とも読め、
「哭之(これをこくす)」「笑之(これをわらう)」となって、自己の境遇への
嘆きを表したのではないかとも云われているそうです。
確かに署名は、「哭之」「笑之」のようにも読めます。

石濤 「廬山観瀑図」(部分) 清時代 重要文化財

江西省の廬山の景色で、画面の上の部分には有名な香炉峰が描かれています。
広々と大きな空間を感じる風景で、描かれている人物を通じて自分が景色の中に
いるような気分になります。
石濤(1642~1707)も明の王族の一人で、明の滅亡時に出家し、晩年は揚州で
画家として暮らし、八大山人とも交流しています。
南京に滞在していた時には、南巡中の清の康熙帝にも2度拝謁しており、
同じ明の遺民でも生き方は少し違っているようです。
呉歴 「秋景山水図巻」 (部分) 清・康熙32年(1693) 重要美術品

岩に皺を描き込む皺法(しゅんぽう)で立体感を出し、色彩も濃淡があって
華やかです。
呉歴(1632-1718)は清の正統派山水画を代表する一人で、
50歳ごろにキリスト教に入信しており、作品にも西洋画の影響が
見られるとのことです。
2 仏教美術 ― かたちの彼岸
「水月観音像」 徐九方(ソグバン)筆
1323年(至治3年・忠粛王10年) 泉屋博古館 重要文化財


華厳経の中の入法界品では、善財童子が観音菩薩や弥勒菩薩など、53人の賢者の許を訪れて、
教えを乞うています。
水月観音は楊柳観音とも呼ばれ、補陀落山の水辺に座し、水に映る月を眺める姿で表されます。
作品では左下に善財童子が描かれ、入法界品の場面であることを表しています。
高麗仏教は華厳経の影響を強く受けているとのことです。
奈良東大寺の大仏も華厳経の教えに拠っています。
3 日本美術 ― 数寄あらば
「佐竹本三十六歌仙絵切 源信明」 鎌倉時代 重要文化財

大名の佐竹家に伝わった鎌倉時代の三十六歌仙絵巻です。
元は2巻の絵巻だったのが、大正時代に巻頭部分の「住吉明神」を含め、
37枚に切断されたものです。
源信明(みなもとのさねあきら)は女流歌人の中務(なかつかさ)と親密な関係にあり、
中務に贈った歌が書かれています。
こひしさは 同じこころにあらずとも今宵の月をきみみざらめや.
「是害房絵巻」 南北朝時代 重要文化財

「今昔物語」にあるお話で、中国から来た天狗の是害房は比叡山の僧と法力競べを
して負けてしまいます。
日本の天狗たちによる賀茂河原での湯治などの介抱のおかげで回復した是害房は
送別の歌会を催してもらった後、帰って行きます。
巧みな筆さばきの絵巻で、湯を沸かして是害房を風呂に入れたりして甲斐甲斐しく
介抱する天狗たちの様子が活き活きと描かれています。
「二条城行幸図屏風」 江戸時代・17世紀

寛永3(1626)年に上洛中の徳川秀忠、家光に招かれて、後水尾天皇と中宮和子
(後の東福門院)が二条城に行幸したときの盛儀を描いています。
中宮和子は秀忠の娘で、尾形光琳の実家の雁金屋に多額の着物の注文をしています。
上段は堀川通りを行く後水尾天皇と中宮和子の一行です。
堀川には仮説の桟敷が設けられて、大勢の見物人でひしめいています。
野点をしている人たちや、お約束の喧嘩の場面も描かれています。
下段は天皇を迎えに中立売通を御所に参内する将軍たちの一行です。
商家でも大勢の人が見物していて、子供に乳をやる母もいます。
左隻の左側には上段に天皇の御輿、下段には御所の門に到着した武家の一行が
描かれています。

沿道では武士たちが平伏しています。

伊藤若冲 「海棠目白図」 江戸時代


シデコブシと海棠(カイドウ)が描かれ、海棠にはメジロが目白押しに並んでいます。
コブシは木蓮の仲間で、白木蓮は玉蘭と呼ばれ、海棠の棠は堂に通じ、
これに富貴を表す牡丹を合わせると玉堂富貴という目出度い言葉となります。
一羽だけ、背を向けて離れて止まっているメジロがほほえましくもあります。
「小井戸茶碗 銘 六地蔵」 朝鮮時代・16世紀

井戸茶碗は朝鮮時代の日常雑器で、日本の茶人が茶器に見立てたものです。
小振りの井戸茶碗を小井戸と呼びます。
小堀遠州の愛蔵の品で、京都の六地蔵で見出したことからこの名が付いています。
元が日常品なのであっさりした姿をしていて、高台に釉の固まったカイラギが見えます。
「白鶴香合」 仁清 江戸時代・17世紀

うずくまり、首を少し横に向けた鶴の姿です。
表情やたたんだ脚の具合が可愛く、釉の色合もやわらかく、温かです。
仁清は鳥や動物の姿を写した作品をよく作っています。
「唐物文琳茶入 銘 若草」 南宋~元時代・13~14世紀

文琳とは林檎の異名で、ふっくらした形から名付けられています。
釉が下まで垂れた、なだれのあるのが景色になっています。
「若草」は後陽成天皇(1571-1617)の命銘です。
新古今集の後鳥羽院宮内卿の歌に拠っているとのことです。
4 文房具と煎茶 ― 清風は吹く
鍍金魁星像 明時代

高さ29.1cmの、風神に似た姿の小像です。
魁の字は北斗七星の中の斗形をした四星を指すとのことです。
鬼が斗を持っていて、魁の字体を表しています。
持っている筆は文房の神を象徴しています。
魁(さきがけ)の意味から科挙試験を目指す者はその像を祀って、
一番の合格を祈願したそうです。
たしかに3本爪の足で雲の上を駆けています。
筆と斗を持つ姿は文房というより計量の神様のように見えます。
展覧会のHPです。
chariot
六本木の泉屋博古館東京では泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展 III、
「古美術逍遥 東洋へのまなざし」展が開かれています。
会期は10月23日(日)までです。

1 中国絵画 ― 気は熟した
八大山人 「安晩帖」 清・康熙33年(1694) 重要文化財
八大山人(1626~1705)、本名は朱耷(しゅとう)で、明の太祖洪武帝の子孫です。
明の滅亡により逃亡した後に出家し、やがて多くの弟子を持ちますが、
清に警戒されたため還俗して故郷の南昌に戻ります。
以後は書画を売って酒を飲む生活を送っています。
「安晩帖」は20図からなる冊子です。
「叭々鳥」

10月2日までの展示でした。
叭々鳥(ははちょう)はムクドリ科の黒い鳥です。
輪郭線を使わない、没骨(もっこつ)によって描いていますが、縦横を
強調した特異な造形です。
「鱖魚」

墨に味わいのある筆で鱖魚(けつぎょ)が一匹描かれていますが、
目は上を向いていて、にらむような白眼になっています。
白眼視の故事に拠っているともされ、滅亡した明への思いと清への反抗の
気持ちを表しているとのことです。
八大山人という号の由来は分かっていません。
崩し字の署名を観ると、八大は「笑」あるいは「哭」、山人は「之」とも読め、
「哭之(これをこくす)」「笑之(これをわらう)」となって、自己の境遇への
嘆きを表したのではないかとも云われているそうです。
確かに署名は、「哭之」「笑之」のようにも読めます。

石濤 「廬山観瀑図」(部分) 清時代 重要文化財

江西省の廬山の景色で、画面の上の部分には有名な香炉峰が描かれています。
広々と大きな空間を感じる風景で、描かれている人物を通じて自分が景色の中に
いるような気分になります。
石濤(1642~1707)も明の王族の一人で、明の滅亡時に出家し、晩年は揚州で
画家として暮らし、八大山人とも交流しています。
南京に滞在していた時には、南巡中の清の康熙帝にも2度拝謁しており、
同じ明の遺民でも生き方は少し違っているようです。
呉歴 「秋景山水図巻」 (部分) 清・康熙32年(1693) 重要美術品

岩に皺を描き込む皺法(しゅんぽう)で立体感を出し、色彩も濃淡があって
華やかです。
呉歴(1632-1718)は清の正統派山水画を代表する一人で、
50歳ごろにキリスト教に入信しており、作品にも西洋画の影響が
見られるとのことです。
2 仏教美術 ― かたちの彼岸
「水月観音像」 徐九方(ソグバン)筆
1323年(至治3年・忠粛王10年) 泉屋博古館 重要文化財


華厳経の中の入法界品では、善財童子が観音菩薩や弥勒菩薩など、53人の賢者の許を訪れて、
教えを乞うています。
水月観音は楊柳観音とも呼ばれ、補陀落山の水辺に座し、水に映る月を眺める姿で表されます。
作品では左下に善財童子が描かれ、入法界品の場面であることを表しています。
高麗仏教は華厳経の影響を強く受けているとのことです。
奈良東大寺の大仏も華厳経の教えに拠っています。
3 日本美術 ― 数寄あらば
「佐竹本三十六歌仙絵切 源信明」 鎌倉時代 重要文化財

大名の佐竹家に伝わった鎌倉時代の三十六歌仙絵巻です。
元は2巻の絵巻だったのが、大正時代に巻頭部分の「住吉明神」を含め、
37枚に切断されたものです。
源信明(みなもとのさねあきら)は女流歌人の中務(なかつかさ)と親密な関係にあり、
中務に贈った歌が書かれています。
こひしさは 同じこころにあらずとも今宵の月をきみみざらめや.
「是害房絵巻」 南北朝時代 重要文化財

「今昔物語」にあるお話で、中国から来た天狗の是害房は比叡山の僧と法力競べを
して負けてしまいます。
日本の天狗たちによる賀茂河原での湯治などの介抱のおかげで回復した是害房は
送別の歌会を催してもらった後、帰って行きます。
巧みな筆さばきの絵巻で、湯を沸かして是害房を風呂に入れたりして甲斐甲斐しく
介抱する天狗たちの様子が活き活きと描かれています。
「二条城行幸図屏風」 江戸時代・17世紀

寛永3(1626)年に上洛中の徳川秀忠、家光に招かれて、後水尾天皇と中宮和子
(後の東福門院)が二条城に行幸したときの盛儀を描いています。
中宮和子は秀忠の娘で、尾形光琳の実家の雁金屋に多額の着物の注文をしています。
上段は堀川通りを行く後水尾天皇と中宮和子の一行です。
堀川には仮説の桟敷が設けられて、大勢の見物人でひしめいています。
野点をしている人たちや、お約束の喧嘩の場面も描かれています。
下段は天皇を迎えに中立売通を御所に参内する将軍たちの一行です。
商家でも大勢の人が見物していて、子供に乳をやる母もいます。
左隻の左側には上段に天皇の御輿、下段には御所の門に到着した武家の一行が
描かれています。

沿道では武士たちが平伏しています。

伊藤若冲 「海棠目白図」 江戸時代


シデコブシと海棠(カイドウ)が描かれ、海棠にはメジロが目白押しに並んでいます。
コブシは木蓮の仲間で、白木蓮は玉蘭と呼ばれ、海棠の棠は堂に通じ、
これに富貴を表す牡丹を合わせると玉堂富貴という目出度い言葉となります。
一羽だけ、背を向けて離れて止まっているメジロがほほえましくもあります。
「小井戸茶碗 銘 六地蔵」 朝鮮時代・16世紀

井戸茶碗は朝鮮時代の日常雑器で、日本の茶人が茶器に見立てたものです。
小振りの井戸茶碗を小井戸と呼びます。
小堀遠州の愛蔵の品で、京都の六地蔵で見出したことからこの名が付いています。
元が日常品なのであっさりした姿をしていて、高台に釉の固まったカイラギが見えます。
「白鶴香合」 仁清 江戸時代・17世紀

うずくまり、首を少し横に向けた鶴の姿です。
表情やたたんだ脚の具合が可愛く、釉の色合もやわらかく、温かです。
仁清は鳥や動物の姿を写した作品をよく作っています。
「唐物文琳茶入 銘 若草」 南宋~元時代・13~14世紀

文琳とは林檎の異名で、ふっくらした形から名付けられています。
釉が下まで垂れた、なだれのあるのが景色になっています。
「若草」は後陽成天皇(1571-1617)の命銘です。
新古今集の後鳥羽院宮内卿の歌に拠っているとのことです。
4 文房具と煎茶 ― 清風は吹く
鍍金魁星像 明時代

高さ29.1cmの、風神に似た姿の小像です。
魁の字は北斗七星の中の斗形をした四星を指すとのことです。
鬼が斗を持っていて、魁の字体を表しています。
持っている筆は文房の神を象徴しています。
魁(さきがけ)の意味から科挙試験を目指す者はその像を祀って、
一番の合格を祈願したそうです。
たしかに3本爪の足で雲の上を駆けています。
筆と斗を持つ姿は文房というより計量の神様のように見えます。
展覧会のHPです。
銀座
セイコーハウス銀座6階のセイコーハウス銀座ホールでは、「ムッリーネのアラベスク
―江波冨士子 ガラススケッチ―」展が開かれています。
会期は10月23日(日)まで、入場は無料です。
和光ホールは6月10日にセイコーハウス銀座ホールに改名されました。

江波冨士子さん(1968~)は小さな模様をモザイクのようにつなぎ合わせる、
ムッリーネというヴェネツィアグラスの技法によって、ガラスの作品を制作されています。
小さな模様が広がり、レースを編み上げたような繊細な造形です。
「白蔓草 蓋物」 6個重ね 高30㎝

「空蔓草 ちろり」 高12㎝

「藍蔓草ドーム付コンポート」 高24㎝

「Arabesque Nero オブジェ」 高12㎝

「Arabesque Rosso ゴブレット」 高16.6㎝

ホールの窓の側に置かれた作品には日光が当たって、自身が光っているようでした。
展覧会のHPです。
chariot
セイコーハウス銀座6階のセイコーハウス銀座ホールでは、「ムッリーネのアラベスク
―江波冨士子 ガラススケッチ―」展が開かれています。
会期は10月23日(日)まで、入場は無料です。
和光ホールは6月10日にセイコーハウス銀座ホールに改名されました。

江波冨士子さん(1968~)は小さな模様をモザイクのようにつなぎ合わせる、
ムッリーネというヴェネツィアグラスの技法によって、ガラスの作品を制作されています。
小さな模様が広がり、レースを編み上げたような繊細な造形です。
「白蔓草 蓋物」 6個重ね 高30㎝

「空蔓草 ちろり」 高12㎝

「藍蔓草ドーム付コンポート」 高24㎝

「Arabesque Nero オブジェ」 高12㎝

「Arabesque Rosso ゴブレット」 高16.6㎝

ホールの窓の側に置かれた作品には日光が当たって、自身が光っているようでした。
展覧会のHPです。
三越前
日本橋の三井記念美術館では「大蒔絵展―漆と金の千年物語」が開かれています。
会期は11月13日(日)までです。

MOA美術館、三井記念美術館、徳川美術館の3館が共同で開催する展覧会で、
平安時代から現代まで蒔絵の名品が揃います。
他にも徳川美術館所蔵の「源氏物語絵巻」など、多数の国宝や重要文化財も
展示されています。
どれも細密な技法が使われているので、単眼鏡の持参をお勧めします。
一部、展示替えがありますので、展覧会のHPでご確認ください。
第1章 源氏物語絵巻と王朝の美
「源氏物語絵巻 柏木一」 平安時代 12世紀 愛知・徳川美術館 国宝

10月25日から30日までの展示です。
現存最古の源氏物語絵巻とされる、貴重な作品です。
朱雀院が娘の女三宮を見舞っている場面が描かれています。
薫を生んで衰弱した女三宮は出家を願い、それを聞いた朱雀院は涙しています。
「源氏物語絵巻 宿木一」 平安時代 12世紀 愛知・徳川美術館 国宝
10月9日までの展示です。
帝と薫が碁を打っている場面で、蒔絵を施した調度類まで細かく描かれています。
第2章 神々と仏の荘厳
「澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃」 平安時代 12世紀 高野山金剛峰寺 国宝

手箱ほどの大きさで、蒔絵でカキツバタ、オモダカ、千鳥を描いています。
螺鈿を貼った千鳥には毛彫りも施されています。
懸子は透かし彫りになっていて、螺鈿がふんだんに使われている、この上なく優美な
拵えの唐櫃です。
平安貴族の寄進した経文でも納めてあったのでしょうか。
「片輪車蒔絵螺鈿手箱」 平安時代 12世紀 東京国立博物館 国宝

10月23日までの展示です。
牛車の車輪の乾燥による割れを防ぐために川に浸けている風景を表しています。
水の流れと車輪を取り合わせたデザイン感覚は新鮮です。
泥の中に咲く蓮の花もイメージされているそうです。
「桐蒔絵手箱」
南北朝時代 明徳元年(1390)頃 和歌山・熊野速玉大社 国宝

10月30日までの展示です。
熊野速玉大社古神宝の一つで、足利義満の奉納です。
中に入っている化粧道具も揃っています。
第3章 鎌倉の手箱
「掃墨物語絵巻」(上巻) 南北朝~室町時代 14~15世紀 愛知・徳川美術館
白粉と間違えて眉に塗る黒い掃墨(はいずみ)を顔に塗ってしまった娘が鬼と間違えられ、
これをきっかけに仏門に入るというお話です。
真っ黒くなった顔を見て驚いた母親に鏡を見せられ、今度は自分が驚いた娘が水で
顔を洗い、元の白い顔に戻る場面が描かれています。
四季の変化の中で場面は移り、水を張った角盥の蒔絵も細かく描き込まれています。
「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」 鎌倉時代 13世紀 サントリー美術館 国宝

10月25日からの展示です。
一面に螺鈿の模様を施した手箱で、北条政子の所持とも伝えられています。
浮線綾文様は公家の用いた、花を象った文様で、1個の文様を作るために
13個もの貝のピースが使われています。
立派な装飾の手箱を玉手箱と呼ぶ訳が分かります。

「長生殿蒔絵手箱」 鎌倉時代 14世紀 愛知・徳川美術館 重要文化財

10月23日までの展示です。
和漢朗詠集の慶滋保胤の詩に拠った意匠で、葦手書きで詩の一部が埋め込まれています。
葦手書きは絵の中に文字を忍ばせておく装飾技法です。
長生殿裏春秋富 不老門前日月遅
第4章 東山文化 ― 蒔絵と文学意匠
「孫次郎(ヲモカゲ)」 孫次郎 室町時代 14~16世紀 三井記念美術館 重要文化財

茶室に展示されています。
金剛座の太夫だった金剛右京久次(孫次郎)が若くして亡くなった妻の面影を写して
打った面といわれています。
「砧蒔絵硯箱」 室町時代 15世紀 東京国立博物館 重要文化財

10月30日までの展示です。
女郎花や竜胆の咲く秋の野に枕がおかれ、銀の月が出ています。
「しられぬる」の文字が細い銀で書かれていて、千載和歌集の俊盛法師の歌に
拠っていることが分かります。
衣打つ音を聞くにぞ知られぬる里遠からぬ草枕とは
第5章 桃山期の蒔絵 ― 黄金と南蛮
「聚楽第図屏風」 桃山時代 16世紀 三井記念美術館

聚楽第は豊臣秀吉が京都に建てた御殿で、甥の豊臣秀次に譲られましたが、
秀次の切腹後に取り壊され、詳しいことは分かっていません。
この屏風では四層以上の高さの天守閣がそびえています。
安土桃山時代の城壁は安土城も大坂城も黒漆を塗った黒壁ですが、
この屏風では白壁です。
天守閣の左下には現在数少ない聚楽第の遺構として残る梅雨の井と思われる
井戸も描かれています。

「秋草蒔絵歌書簞笥」 桃山時代 16世紀 京都・高台寺 重要文化財

高台寺は豊臣秀吉の正室、北政所の建立自他寺院で、高台寺蒔絵で知られています。
菊・萩・薄などの秋草を意匠としていて、平蒔絵を特徴とする高台寺蒔絵の代表作と
されています。
「花樹鳥獣蒔絵螺鈿聖龕」 桃山時代 16世紀 愛知・名古屋市博物館

10月23日までの展示です。
南蛮貿易の始まりにより西洋向けに蒔絵螺鈿の聖具や櫃が制作され、輸出されていました。
江戸時代になってもオランダの注文で出島を通じて豪華な家具類が輸出されています。
第6章 江戸蒔絵の諸相
「東福門院入内図屏風」(左隻) 四曲一双 江戸時代 17世紀 重要文化財

東福門院和子(1607-1678)は2代将軍徳川秀忠と江の娘で、後水尾天皇の許に
元和6年(1620)に入内しています。
その時の華やかな行列の模様を描いたもので、元は絵巻の形だったらしく、
目録も付いています。
井伊、酒井、松平などの幕臣の名前も見えます。
東福門院の乗った牛車は二頭立てで、葵の紋が付いています。

「初音蒔絵貝桶」 幸阿弥長重 江戸時代 寛永16年(1639) 徳川美術館 国宝

10月23日までの展示です。
国宝の「初音の調度」の中の一対です。
「初音の調度」は3代将軍徳川家光の娘の千代姫が尾張家2代光友に
嫁した時の道具類です。
源氏物語の「初音」の帖にある歌を芦手書きにしています。
明石の上が娘の明石の姫君に送った歌です。
年月を松にひかれてふる人に今日鴬の初音きかせよ
技巧を凝らした華麗な蒔絵が施され、葵の紋も入っています。
貝桶は貝合わせの貝を納めた桶で、大名の婚礼行列では先頭を飾り、
婚家に着くと先ず貝桶渡しの儀が行われたそうです。
「蔓梅擬目白蒔絵軸盆」 原羊遊斎/蒔絵、酒井抱一/下絵
文政4年(1821) 江戸東京博物館

10月25日からの展示です。
メジロの止まるツルウメモドキの赤い実は珊瑚です。
原羊遊斎(1769-1846)は江戸時代後期の蒔絵師で、
酒井抱一や太田蜀山人などの文化人と交流しています。
第7章 近代の蒔絵 ― 伝統様式
「蒔絵八角菓子器」 白山松哉 明治44年(1911) 静岡・MOA美術館

五段重ねの器で、蓋に鳥を描き、側面はさまざまな素材と技法を駆使しています。
白山松哉(しらやましょうさい、1853-1923)は江戸生まれの漆芸家で、
東京美術学校で教え、帝室技芸員にも選ばれています。
第8章 現代の蒔絵 ― 人間国宝
「赤とんぼ蒔絵箱」 松田権六 昭和44年(1969) 京都国立近代美術館

とんぼの羽根は貝を貼り、葦の葉は波打って動きがあります。
松田権六(1896-1986)は金沢出身の漆芸家で、東京美術学校に学び、後に
同校および後身の東京藝術大学で教え、人間国宝にも指定されています。
展覧会のHPです。
chariot
日本橋の三井記念美術館では「大蒔絵展―漆と金の千年物語」が開かれています。
会期は11月13日(日)までです。

MOA美術館、三井記念美術館、徳川美術館の3館が共同で開催する展覧会で、
平安時代から現代まで蒔絵の名品が揃います。
他にも徳川美術館所蔵の「源氏物語絵巻」など、多数の国宝や重要文化財も
展示されています。
どれも細密な技法が使われているので、単眼鏡の持参をお勧めします。
一部、展示替えがありますので、展覧会のHPでご確認ください。
第1章 源氏物語絵巻と王朝の美
「源氏物語絵巻 柏木一」 平安時代 12世紀 愛知・徳川美術館 国宝

10月25日から30日までの展示です。
現存最古の源氏物語絵巻とされる、貴重な作品です。
朱雀院が娘の女三宮を見舞っている場面が描かれています。
薫を生んで衰弱した女三宮は出家を願い、それを聞いた朱雀院は涙しています。
「源氏物語絵巻 宿木一」 平安時代 12世紀 愛知・徳川美術館 国宝
10月9日までの展示です。
帝と薫が碁を打っている場面で、蒔絵を施した調度類まで細かく描かれています。
第2章 神々と仏の荘厳
「澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃」 平安時代 12世紀 高野山金剛峰寺 国宝

手箱ほどの大きさで、蒔絵でカキツバタ、オモダカ、千鳥を描いています。
螺鈿を貼った千鳥には毛彫りも施されています。
懸子は透かし彫りになっていて、螺鈿がふんだんに使われている、この上なく優美な
拵えの唐櫃です。
平安貴族の寄進した経文でも納めてあったのでしょうか。
「片輪車蒔絵螺鈿手箱」 平安時代 12世紀 東京国立博物館 国宝

10月23日までの展示です。
牛車の車輪の乾燥による割れを防ぐために川に浸けている風景を表しています。
水の流れと車輪を取り合わせたデザイン感覚は新鮮です。
泥の中に咲く蓮の花もイメージされているそうです。
「桐蒔絵手箱」
南北朝時代 明徳元年(1390)頃 和歌山・熊野速玉大社 国宝

10月30日までの展示です。
熊野速玉大社古神宝の一つで、足利義満の奉納です。
中に入っている化粧道具も揃っています。
第3章 鎌倉の手箱
「掃墨物語絵巻」(上巻) 南北朝~室町時代 14~15世紀 愛知・徳川美術館
白粉と間違えて眉に塗る黒い掃墨(はいずみ)を顔に塗ってしまった娘が鬼と間違えられ、
これをきっかけに仏門に入るというお話です。
真っ黒くなった顔を見て驚いた母親に鏡を見せられ、今度は自分が驚いた娘が水で
顔を洗い、元の白い顔に戻る場面が描かれています。
四季の変化の中で場面は移り、水を張った角盥の蒔絵も細かく描き込まれています。
「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」 鎌倉時代 13世紀 サントリー美術館 国宝

10月25日からの展示です。
一面に螺鈿の模様を施した手箱で、北条政子の所持とも伝えられています。
浮線綾文様は公家の用いた、花を象った文様で、1個の文様を作るために
13個もの貝のピースが使われています。
立派な装飾の手箱を玉手箱と呼ぶ訳が分かります。

「長生殿蒔絵手箱」 鎌倉時代 14世紀 愛知・徳川美術館 重要文化財

10月23日までの展示です。
和漢朗詠集の慶滋保胤の詩に拠った意匠で、葦手書きで詩の一部が埋め込まれています。
葦手書きは絵の中に文字を忍ばせておく装飾技法です。
長生殿裏春秋富 不老門前日月遅
第4章 東山文化 ― 蒔絵と文学意匠
「孫次郎(ヲモカゲ)」 孫次郎 室町時代 14~16世紀 三井記念美術館 重要文化財


茶室に展示されています。
金剛座の太夫だった金剛右京久次(孫次郎)が若くして亡くなった妻の面影を写して
打った面といわれています。
「砧蒔絵硯箱」 室町時代 15世紀 東京国立博物館 重要文化財

10月30日までの展示です。
女郎花や竜胆の咲く秋の野に枕がおかれ、銀の月が出ています。
「しられぬる」の文字が細い銀で書かれていて、千載和歌集の俊盛法師の歌に
拠っていることが分かります。
衣打つ音を聞くにぞ知られぬる里遠からぬ草枕とは
第5章 桃山期の蒔絵 ― 黄金と南蛮
「聚楽第図屏風」 桃山時代 16世紀 三井記念美術館

聚楽第は豊臣秀吉が京都に建てた御殿で、甥の豊臣秀次に譲られましたが、
秀次の切腹後に取り壊され、詳しいことは分かっていません。
この屏風では四層以上の高さの天守閣がそびえています。
安土桃山時代の城壁は安土城も大坂城も黒漆を塗った黒壁ですが、
この屏風では白壁です。
天守閣の左下には現在数少ない聚楽第の遺構として残る梅雨の井と思われる
井戸も描かれています。

「秋草蒔絵歌書簞笥」 桃山時代 16世紀 京都・高台寺 重要文化財

高台寺は豊臣秀吉の正室、北政所の建立自他寺院で、高台寺蒔絵で知られています。
菊・萩・薄などの秋草を意匠としていて、平蒔絵を特徴とする高台寺蒔絵の代表作と
されています。
「花樹鳥獣蒔絵螺鈿聖龕」 桃山時代 16世紀 愛知・名古屋市博物館

10月23日までの展示です。
南蛮貿易の始まりにより西洋向けに蒔絵螺鈿の聖具や櫃が制作され、輸出されていました。
江戸時代になってもオランダの注文で出島を通じて豪華な家具類が輸出されています。
第6章 江戸蒔絵の諸相
「東福門院入内図屏風」(左隻) 四曲一双 江戸時代 17世紀 重要文化財

東福門院和子(1607-1678)は2代将軍徳川秀忠と江の娘で、後水尾天皇の許に
元和6年(1620)に入内しています。
その時の華やかな行列の模様を描いたもので、元は絵巻の形だったらしく、
目録も付いています。
井伊、酒井、松平などの幕臣の名前も見えます。
東福門院の乗った牛車は二頭立てで、葵の紋が付いています。

「初音蒔絵貝桶」 幸阿弥長重 江戸時代 寛永16年(1639) 徳川美術館 国宝

10月23日までの展示です。
国宝の「初音の調度」の中の一対です。
「初音の調度」は3代将軍徳川家光の娘の千代姫が尾張家2代光友に
嫁した時の道具類です。
源氏物語の「初音」の帖にある歌を芦手書きにしています。
明石の上が娘の明石の姫君に送った歌です。
年月を松にひかれてふる人に今日鴬の初音きかせよ
技巧を凝らした華麗な蒔絵が施され、葵の紋も入っています。
貝桶は貝合わせの貝を納めた桶で、大名の婚礼行列では先頭を飾り、
婚家に着くと先ず貝桶渡しの儀が行われたそうです。
「蔓梅擬目白蒔絵軸盆」 原羊遊斎/蒔絵、酒井抱一/下絵
文政4年(1821) 江戸東京博物館

10月25日からの展示です。
メジロの止まるツルウメモドキの赤い実は珊瑚です。
原羊遊斎(1769-1846)は江戸時代後期の蒔絵師で、
酒井抱一や太田蜀山人などの文化人と交流しています。
第7章 近代の蒔絵 ― 伝統様式
「蒔絵八角菓子器」 白山松哉 明治44年(1911) 静岡・MOA美術館

五段重ねの器で、蓋に鳥を描き、側面はさまざまな素材と技法を駆使しています。
白山松哉(しらやましょうさい、1853-1923)は江戸生まれの漆芸家で、
東京美術学校で教え、帝室技芸員にも選ばれています。
第8章 現代の蒔絵 ― 人間国宝
「赤とんぼ蒔絵箱」 松田権六 昭和44年(1969) 京都国立近代美術館

とんぼの羽根は貝を貼り、葦の葉は波打って動きがあります。
松田権六(1896-1986)は金沢出身の漆芸家で、東京美術学校に学び、後に
同校および後身の東京藝術大学で教え、人間国宝にも指定されています。
展覧会のHPです。
三越前
日本橋三越向かいにある、「ミカド珈琲店日本橋本店」に行ってきました。
場所は中央区日本橋室町1-6-7です。

創業は1948年、1階はスタンド席かテイクアウトで、階段を囲む形で
2階席と3階席があります。


モカソフト600円です。

スタンド席かテイクアウトだとかなりお安くなります。
カップとコーンがあり、カップにはプルーンが1個付いています。
行ったのは9月で、まだ暑さが残っている間に、美味しいソフトクリームを
いただくことが出来ました。
2008年に「ミカド珈琲店」に行った時の記事です。
chariot
日本橋三越向かいにある、「ミカド珈琲店日本橋本店」に行ってきました。
場所は中央区日本橋室町1-6-7です。

創業は1948年、1階はスタンド席かテイクアウトで、階段を囲む形で
2階席と3階席があります。


モカソフト600円です。

スタンド席かテイクアウトだとかなりお安くなります。
カップとコーンがあり、カップにはプルーンが1個付いています。
行ったのは9月で、まだ暑さが残っている間に、美味しいソフトクリームを
いただくことが出来ました。
2008年に「ミカド珈琲店」に行った時の記事です。