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「第7回 美の魁け ―日展の現代(いま)―」展 セイコーハウス銀座ホール
銀座
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銀座和光本館6階のセイコーハウス銀座ホールでは「第7回 美の魁け
―日展の現代(いま)―」展が開かれています。
会期は11月5日(日)まで、入場は無料です。

今年の日展に先駆けて、日展を代表する以下の作家の小品が展示されています。

日本画
土屋禮一、福田 千惠、山﨑 隆夫、渡辺 信喜、長谷川 喜久

洋画
中山 忠彦、寺坂 公雄、藤森 兼明、佐藤 哲、湯山 俊久、小灘 一紀、斎藤 秀夫、
町田 博文、難波 滋、大友義博

彫刻
中村 晋也、川崎 普照、蛭田 二郎、能島 征二、山本 眞輔、神戸峰男、山田 朝彦、
宮瀬 富之、池川 直、中原 篤徳

工芸
大年朗、奥田 小由女、森野 泰明、中井 貞次、春山 文典、宮田 亮平、吉賀 將夫、
三田村 有純、井隼 慶人、山岸 大成


井茂 圭洞、尾崎 邑鵬、黒田 賢一、髙木 聖雨、星 弘道、土橋 靖子、真神 巍堂、
牛窪 梧十、中村 伸夫


土屋禮一 「亢龍」
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亢龍とは天に昇りつめた龍のことです

湯山俊久 「秋の気配」
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神戸峰男 「烽火なき世を求めてⅠ」
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平和を寿ぐ舞楽の太平楽を舞っているところです。
古来、夷敵の侵入や内乱は烽火の煙のリレーで都に告げられていました。

奥田小由女 「愛の飛翔」 レリーフ作品
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宮田亮平 「シュプリンゲン」
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宮田亮平さんは現在、日展理事長です。

土橋靖子 「よしのの桜」
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今年の日展の開始日は11月3日(日)、今から楽しみです。


和光本館のウインドーディスプレイは「Moments of Magic at the Clock Tower」です。
ディズニー創業100周年ということで、ミッキーマウスを大時計と同じサイズの文字盤に
あしらっています。
長針は10分毎にぐるりと1回転します。

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時計塔の大時計もミッキーマウスになりました。
ディスプレイは11月19日まで続けられます。

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【2023/10/31 22:15】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「近世のやまと絵-王朝美の伝統と継承-」展 東京国立博物館 その2
上野
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東京国立博物館の総合文化展(平常展)で開かれている、特集「近世のやまと絵
-王朝美の伝統と継承-」の記事を2回に分け、今日はその2です。
会期は12月3日(日)までです。

写真は以前に撮影したものです。

「柳橋水車図屏風」 筆者不詳 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 重要美術品
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金地の画面をまたぐ大きな木の橋と、若葉を付けた柳の枝で、若葉は一枚一枚
ていねいに描き込まれています。
川には岸を守る蛇籠(じゃかご)とともに水車が見えるので、宇治川と分かります。
蒔絵のように装飾的ですが、川の流れはリズムのある力強い線で描かれ、
桃山風の力強さを感じます。

「粟穂鶉図屏風」 8曲1双 土佐光起  江戸時代・17世紀 個人蔵 重要美術品
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秋の景色の穂を垂れる粟と鶉の取り合わせです。
土佐光起は鶉の絵の名手とされています。

「秋郊鳴鶉図」 土佐光起、土佐光成 江戸時代・17世紀
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菊、薄、桔梗などの秋草と鶉という、秋らしい風情の屏風です。
宮中絵師の土佐光起(1617-1691)と子の光成(1647-1710)の合作で、
鶉の名手といわれた光起が鶉を、光成が秋草を描いています。
酒井抱一の「秋草鶉図」を思い出します。

「十二ヶ月花鳥図屏風」 狩野永敬 江戸時代・17世紀
右隻
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左隻
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藤原定家の詠んだ「詠花鳥和歌各十二首」を元に右隻に春夏、左隻に秋冬を
品良く優美に描いています。
狩野永敬は狩野山楽から4代目の京狩野家の絵師です。

「囲碁図」 冷泉為恭 江戸時代・19世紀
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宇多天皇、醍醐天皇に仕えた碁の名手、寛蓮が醍醐天皇と碁を打っているところです。
金の枕を賭けた対局で、横の机に金の枕が置いてあり、寛蓮が勝ったということです。

「色紙三十六歌仙図屏風」 近衛信尹、松花堂昭乗他筆 江戸時代・17世紀
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三十六歌仙とその歌の書かれた色紙が金屏風に貼られています。

紀友則  夕されば螢よりけにもゆれども ひかりみねばや人のつれなさ
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山部赤人  和歌の浦にしおみちくればかたをなみ あしべをさしてたづ鳴きわたる
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伊勢  三輪の山いかに待ちみむ年ふとも たずぬる人もあらじと思へば
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小野小町 いろみえでうつろふものはよのなかの ひとのこころのはなにぞありける
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坂上是則  みよし野の山のしら雪つもるらし ふるさとさむくなりまさるなり
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藤原興風 契りけむ心ぞつらきたなばたの としに一度あふは逢かは
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【2023/10/29 18:22】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「近世のやまと絵-王朝美の伝統と継承-」展 東京国立博物館 その1
上野
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東京国立博物館の総合文化展(平常展)では平成館で開催中の「やまと絵 受け継がれる
王朝の美」展に合わせて、特集「近世のやまと絵-王朝美の伝統と継承-」が開かれています。
会期は12月3日(日)までです。
記事は2回に分け、今日は源氏物語など物語に関するものと琳派の作品を載せます。

写真は以前に撮影したものです。

「車争図屏風」 4曲1隻 狩野山楽 江戸時代・慶長9年(1604) 重要文化財
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「源氏物語」の「葵」の帖、賀茂祭の見物の場所を葵の上と六条御息所の牛車が
争う場面です。
右側の整然とした行列と、左側の従者たちの争いが対照的です。

狩野山楽(1559-1635)は元は近江浅井氏の家臣の子で、豊臣秀吉の命で
狩野永徳の養子となり、狩野探幽たちが徳川家に従って江戸に下った後も京に残り、
その系統は京狩野と呼ばれるようになります。

「源氏物語図屏風(胡蝶)」狩野〈晴川院〉養信 江戸時代・19世紀
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六曲一双の左隻です。
花の盛りのころの遊びの模様で、女童が蝶の衣装を着て、山吹の花を活けた
金の花瓶を持っています。

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狩野養信(かのうおさのぶ、1796-1846)は江戸狩野の絵師で、
最晩年の僅かな間、橋本雅邦、狩野芳崖を弟子にしています。

「栄花物語図屏風」 6曲1双 土佐光祐 江戸時代・17~18世紀
「栄花物語」は藤原道長たち藤原氏の繁栄を記した歴史物語で、作者は赤染衛門などの
女性ではないかとされています。
右隻
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部分
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右隻は「月の宴」の巻で、村上天皇の御前で植木の優劣を競う、前栽合せの場面です。

左隻
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部分
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左隻には「はつ花」の巻で、中宮彰子の出産場面が描かれています。
魔除けに弓の弦を鳴らす鳴弦も行なわれています。
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土佐光祐(1675―1710)は土佐光起の孫です。

「伊勢物語 鳥の子図」 岩佐又兵衛 安土桃山~江戸時代・17世紀
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女が自分に恨み言を述べた男に歌を返したというお話で、
女性が流水に何か書いています。

  ゆく水に数かくよりもはかなきは 思わぬ人を 思ふなりけり

岩佐又兵衛らしい、力のある描き振りです。
元は福井の豪商の金屋家の所蔵の「金谷屏風」と呼ばれた6曲1双の屏風に
12枚の絵を貼ってあったものが、明治時代に別々に剝がされたとのことです。

「槙図屏風」 尾形光琳 江戸時代・18世紀
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元は右方向に続いていた画面を切詰めて、二曲一双の屏風に仕立てたと
考えられるそうです。

「桜山吹図屏風」 伝俵屋宗達 江戸時代・17世紀
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右隻
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左隻
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右隻部分
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大きく土坡を配し、桜と山吹を厚塗りで描き入れ、和歌色紙が貼られています。

「四季花鳥図巻」巻下 酒井抱一筆 江戸時代・文化15年(1818)
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上下巻の下巻で、秋冬の花鳥が鮮やかな色彩で描かれています。
巻末に「文化戊寅晩春 抱一暉真写之」とあります。


【2023/10/28 18:42】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「東京ビエンナーレ2023秋会期」
上野
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東京都の千代田区、中央区、文京区、台東区の各地では東京ビエンナーレ
2023秋会期が開かれています。

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東京ビエンナーレは今年が2回目で、会期は11月5日(日)までです。
上野、湯島、神田、日本橋、京橋、銀座、神保町、谷中などで、さまざまなプロジェクトが
企画されています。

東京ドームシティのGallery AaMoと都営三田線水道橋駅A3出口をつなぐ通路では
遠藤麻衣さんの大きな写真の作品展示があります。

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東京ビエンナーレ2023のHPです。


【2023/10/27 19:55】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「日本画聖地巡礼―東山魁夷の京都、 奥村土牛の鳴門―」展 山種美術館
恵比寿
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広尾の山種美術館では、特別展「日本画聖地巡礼―東山魁夷の京都、
奥村土牛の鳴門―」展が開かれています。
会期は11月26日(日)までです。

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各地を描いた日本画の展示により、聖地巡礼するという企画で、同じ場所を写した写真も
一緒に展示されています。

奥田元宋 「奥入瀬(秋)」 1983年
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縦約2m、横約5mの大作で、青森県十和田市の奥入瀬渓流の紅葉を描いています。
年を取ると大きな作品を描けなくなるので、80歳までは日展とは別に
年に1作描くことにしたそうで、これは71歳のときの作品です。
奥田元宋は赤色をあふれるように使ったことで有名で、「元宋の赤」と
呼ばれています。
その赤は深く、荘厳さがあります。

石田武 「四季奥入瀬 秋韻」 1985年 個人蔵
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こちらは紅葉の季節で、川岸は黄金色に輝いています。

奥田元宋 「松島暮色」 1976年
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日本三景の一つ、宮城県松島の景色です。
雪を被った島が夕暮れの光に包まれて浮かび上がっています。

橋本明治 「朝陽桜」 1970年
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福島県三春の滝桜のスケッチを元にした作品です。
1968年に完成した皇居宮殿を飾った作品群に感銘を受けた山種美術館の
初代館長、山﨑種二が同種の作品を各作家に直接依頼したものです。

速水御舟 「名樹散椿」 1929年 重要文化財
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京都の地蔵院の五色八重散り椿を描いたものです。
花びらが一枚づつ散るという、珍しい椿です。
右から左に下る構図で、椿の枝はねじれながら伸び広がっています。
紅、白、斑の花を付けた枝は重みで傾き、地面には花びらが散っています。
奥にある葉、手前の葉を一枚一枚描き分け、量感と立体感があります。
背景は「撒きつぶし」という、金砂子を竹筒に入れて撒いていく方法です。
金箔のような縦横の線が無く、同じ調子の金地がびっしりと広がっています。
しんと静まった画面で、有無を言わせぬ迫力と緊迫感があります。

「京洛四季」の4点は親交の深かった川端康成に、京都の風景の残っている
今のうちに描くように奨められ、取組んだものです。

東山魁夷 「春静」 1968年
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洛北、鷹峯の桜です。
一面の北山杉を背景に、一本の満開の桜を配しています。
深い緑に桜が映えます。

東山魁夷 「緑潤う」 1976年
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修学院離宮の庭です。
木々の緑と池の水に映った影が涼しげです。

東山魁夷 「秋彩」 1986年
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小倉山の紅葉です。
手前に紅葉、背景に紫の小倉山の構図は、「春静」と同じです。

東山魁夷 「年暮る」 1968年
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河原町にある、京都ホテルオークラの屋上からの景色とのことです。
昔ながらの町家の屋根にも、遠くのお寺にも雪が積もっています。
手前の家の窓に一つ、明かりが点いています。
いかにも京都の暮れの情景です。
青と白でまとまった、東山魁夷らしい、静寂で、詩情のある世界です。

山口華楊 「木精」 1976年
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京都の北野天満宮にあるケヤクの老木で、以前飼っていたミミズクを添えたそうです。

今村紫紅 「大原の奥」 1909年
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平家が壇ノ浦で滅亡した後、京都の大原に隠棲した建礼門院徳子の姿です。
今村紫紅(1880-1916)は若くして亡くなりましたが、歴史人物画を得意としていました。

吉田善彦 「大仏殿春雪」 1969年
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東大寺大仏殿は淡い春雪に覆われ、屋根の鴟尾(しび)の金色が映えます。
吉田善彦は彩色した和紙に金箔を貼り、無数の細かい線を引いた後、軽く掻き取って
下地として淡く柔らかな画面をつくり出す、「吉田様式」を考案しています。
私も「大仏殿春雪」を初めて観た時、壮大でありながら暖かく優しさのある画面に
深い印象を受けました。
作品に近付いて観ると、画面に細かい金線が無数に見え、これが画面を淡く
柔らかなものにする「吉田様式」の効果であることが分かります。

奥村土牛 「吉野」 1977年
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霞の中に広がる、花の吉野です。
緑から青へと変わる色彩と山の間の霞によって、遠近感を出しています。
手前から奥へと三角形を重ね、桜の木も三角形にした理知的な構成の画面ですが、
描いていて、「歴史画を描いているようで、目頭が熱くなった」とのことです。
歴史画を描かなかった奥村土牛ですが、戦前生まれの人だけに、南朝の歴史への思いは
深かったのでしょう。

奥村土牛 「城」 1955年
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輪郭線を使わず、対象を図形として捉え、画面を大胆に分割するという
セザンヌに通じる作風は姫路城を描いたこの作品に始まるといいます。
天守閣を下から見上げた構図ですが、画面の下側に大きく白壁の面を取り、
その上に屋根の構造物の重なりを黒く太い線で積み上げて描いています。

strong>奥村土牛 「鳴門」 1959年
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遠くの島影に黄土色が少し使われている他は、緑青の緑と胡粉の白のみで
構成されています。
塗りを何十回も重ねた、近景の動と遠景の静が一体となった、量感のある、
重厚な作品です。
塗り重ねによる堅牢な画面造りは、奥村土牛の特徴です。
連絡船に乗っていて、たまたま渦潮に出会い、当時の小さな船の上から、
奥さんに帯を掴んでもらって、渦潮を覗き込んでスケッチしたということです。

守屋多々志 「平家厳島納経」(部分) 1978年
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平家一門の公達が何艘もの舟に乗って厳島神社に法華経を納めに詣でています。
武士たちのきらびやかな大鎧姿は歴史画の見せ所です。
前年に亡くなった恩師の前田青邨を悼んで納経の場面を描いたとのことです。

小堀鞆音 「那須宗隆射扇図」 1890年
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平家物語の一節の那須与一が屋島の戦いで扇を射落す場面です。
波の形は様式的ですが、平家物語の記述を参考にした戦装束の与一の姿は
濃い色彩で写実的に描かれています。
小堀鞆音(1864~1931)は安田靫彦の師で、歴史画を得意としています。

やはり、長く文化の中心だった京都周辺を題材にした作品が多いようです。

山種美術館のHPです。


【2023/10/26 19:41】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「ゴッホと静物画ー伝統から革新へ」展 SOMPO美術館
新宿
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新宿のSOMPO美術館では「ゴッホと静物画ー伝統から革新へ」展が開かれています。
会期は2024年1月21日(日)までです。

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フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の作品を中心にして、17世紀オランダから
20世紀初めまでの西洋絵画における静物画の流れを一覧する展覧会です。

作品は一部を除き撮影可能です。

1 伝統 ― 17世紀から19世紀

静物画は商業活動により市民階級が力を持ち始めた17世紀オランダで盛んになります。
壮大な宗教画や歴史画に替わって、個人の家の中で楽しめる作品の需要が高まります。

ピーテル・ファン・ノールト 「 静物(魚)」 1670年頃
  オッテルロー、クレラー=ミュラー美術館

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ピーテル・ファン・ノールト(1602-1672)はオランダの静物画家で、魚をよく描いています。
台所にある食材を題材にした作品を厨房画と言い、スペインではボデコンと呼ばれ、
ファン・サンチェス・コタンやベラスケスが描いています。

アンリ・ファンタン=ラトゥール 「プリムラ、洋ナシ、ザクロのある静物」 1866年
 オッテルロー、クレラー=ミュラー美術館

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アンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)はサロンで認められた画家ですが、
印象派の人たちとも親しく、その運動にも共感しています。
描き方はていねいな写実で、印象派とは異なります。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「アネモネ」 1883~1890年頃 ポーラ美術館
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一度、古典主義風の作風になったルノワールが以前の色彩を重視した作風に
戻った頃の作品です。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「麦わら帽のある静物」 1881年11月下旬~12月中旬
 オッテルロー、クレラー=ミュラー美術館

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ハーグで絵画の勉強をしていた頃の作品で、陶器への光の反射など、質感の表現を
研究しています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「コウモリ」 1884年10月~11月
 アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館

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ゴッホの描いた動物の絵を初めて観ました。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「青い花瓶にいけた花」 1887年6月頃
 オッテルロー、クレラー=ミュラー美術館

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ゴッホは1886年に画商をしている弟のテオを頼ってパリに出てきて一緒に暮らします。
パリでは当時興っていた印象派の影響を受けて、色彩は明るく、筆触も大胆になります。
背景は点描ですが、花は厚塗り、机も長い筆触で描いています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「髑髏」 1887年5月
 アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館

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オランダで流行したヴァニタス(人生の虚しさ)という主題の絵にはよく髑髏が
描かれているので、ゴッホもそれに倣ったのでしょうか。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「野牡丹とばらのある静物」 1886~87年
 オッテルロー、クレラー=ミュラー美術館

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花瓶の下も花で埋まった豪奢な画面で、ゴッホとしては変わった印象の作品です。


2 花の静物画 ― 「ひまわり」をめぐって

コルネリス・ファン・スペンドンク 「花と果物のある静物」 1804年 東京富士美術館
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コルネリス・ファン・スペンドンク(スパーンドンク、1756-1840)はオランダ出身の画家で、
植物画を得意とし、パリで活躍していました。
セーヴル磁器の絵付のデザインを担当し、工場の主任も務めています。
ルノワールはリモージュの絵付職人でしたが、機械による絵付の普及で失職し
、画家を志しています。

エドゥアール・マネ 「白いシャクヤクとその他の花のある静物」 1880年頃
 ロッテルダム ボイマンス・ファン・ブーニンヘン美術館

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マネらしい品の良い描き振りです。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「赤と白の花をいけた花瓶」 1886年
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 ロッテルダム、ボイマンス・ファン・ブーニンヘン美術館
弟のテオを頼ってパリに出てきた年の作品で、まだ暗くて重い画面です。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「ひまわり」 1888年11月~12月 SOMPO美術館
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SOMPO美術館で常設展示されている有名な作品です。
満開の花、しおれた花など、時の経過を表しています。
アルルにやって来たゴーギャンと仲が悪くなった頃に描いていますが、黄色でまとめ、
ひまわりの生命力を見せて迫力があります。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「アイリス」 1890年5月
 アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館

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亡くなる年にサン=レミの病院で描いた作品です。
ゴッホはひまわりと共にアイリスもよく描いています。
「ひまわり」と似た絵柄ですが、紫色と黄色の思い切った対比が印象的です。
ゴッホはドラクロワの色遣いに感銘を受けていて、この補色の使い方も
ドラクロワの手本に倣っているそうです。
燃えるように咲くアイリス、まっすぐに伸びた緑の葉、一方で萎れた花と、
生命そのものを描いているようです。

イサーク・イスラエルス 「「ひまわり」の横で本を読む女性」 1915~20年
 アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館

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ヨーゼフ・イスラエルス(1824-1911)は落着いた色調と精神性の高さから
第2のレンブラントと呼ばれていたそうです。
ゴッホの色彩に魅せられたイスラエルスはゴッホの弟のテオの妻ヨハンナに頼んで
「ひまわり」を借り、自分の絵の中に描き込んでいます。
白い額縁はゴッホ自身が指定したものです。


3 革新 ― 19世紀から20世紀

フィンセント・ファン・ゴッホ 「靴」 1886年9月~11月
 アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館

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パリに移った年に描かれた、オランダ時代の農民の生活を主題にした作品です。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「皿とタマネギのある静物」 1889年1月上旬
 オッテルロー、クレラー=ミュラー美術館

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アルルで耳切事件を起こし、退院した直後の作品です。
蝋燭やパイプなど、ヴァニタスを思わせるところもありますが、色彩は明るく、
日常性を感じさせます。

ポール・セザンヌ 「りんごとナプキン」 1879~80年 SOMPO美術館
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絵画とは実物を写すものではなく、要するに色と形の集合なのだという方向に
画家たちが進み始めた端緒はセザンヌです。
言葉として明言したのナビ派のモーリス・ドニで、「ある一定の秩序で集められた
色彩によっておおわれた平坦な面」と述べています。

ポール・ゴーギャン  「ばらと彫像のある静物」 1889年 ランス美術館
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ブルターニュのル・ブルデュの宿屋で描いた作品で、マルティニークで制作した
丸彫り彫刻が置いてあります。
この彫刻は宿屋の主人に借金のかたとして取られてしまったそうです。
ゴーギャンの生活も大変だったようです。

ポール・ゴーギャン  「花束」 1897年 パリ、マルモッタン・モネ美術館
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この年、娘が亡くなり、自身も健康上の問題と借金を抱えていて、自殺を図っています。
そんな苦悩の中で描かれた作品です。

エドゥアール・ヴュイヤール 「アネモネ」 1906年 ヤマザキマザック美術館
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濃密な色彩で、背景もしっかり描き込んで、その場の雰囲気を表しています。
エドゥアール・ヴュイヤール(1868-1940)は室内の情景を好んで描き、
自らアンティミスト(親密派)と名乗っています。

モーリス・ド・ヴラマンク 「花瓶の花」 1905~06年頃 メナード美術館
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初期の野獣派時代の作品で、ゴッホの影響を受け、赤、白、青の原色を思うままに
塗りつけています。
後の暗く重い画風とは激しいところは似ていますが、色調はかなり異なります。

大変力の入った展覧会で、ゴッホの静物画が25点も展示されています。
今まで観たことのなかったゴッホの静物画を数多く観ることが出来ました。
とても人気の高い展覧会で混雑が予想されるので、日時指定予約の利用をお勧めします。

展覧会のHPです。


【2023/10/24 20:28】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(4) |
「二つの頂―宋磁と清朝官窯」展 静嘉堂@丸の内
二重橋前・東京
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丸の内に昨年開館した静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)では開館1周年記念特別展
「二つの頂―宋磁と清朝官窯」が開かれています。
会期は12月17日(日)までです。
会期中、一部に展示替えがありますので、展覧会のHPでご確認下さい。

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静嘉堂の所蔵する宋代の磁器と清朝の官窯磁器、約90点を展示する展覧会です。

「白磁刻花蓮花文輪花鉢」 定窯 北宋~金時代 12世紀 重要文化財
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切込みの入った牙白色(象牙色)の器に蓮の花の模様を彫り込んでいます。
加賀前田家に伝わった品です。
定窯は河北省保定市曲陽県澗磁村にあった窯で、唐代から金代まで続いています。
石炭を燃料にした焼成による象牙色の白磁で有名です。

「白地黒搔落牡丹文枕」 磁州窯 北宋時代 12世紀
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白化粧の地に鉄絵具を塗り、搔落しで牡丹模様を残しています。
牡丹は富貴を表し、枕は仏教の法具の如意の形をしており、意の如くなるの
意味があります。
磁州窯は華北一帯で陶器を生産した民窯の総称です。
陶の枕は磁州窯の特産で、展覧会でも何点か展示されています。
北宋の徽宗の時代、1108年の黄河の支流の洪水で埋没した河北省南部にあった
鉅鹿(巨鹿)の跡が1920年頃に発掘され、多くの陶磁器が出土しましたが、
この枕はその中の一つです。

「青磁鼎形香炉」 南宋官窯 南宋時代 12~13世紀
静嘉堂img138 (10)

古代青銅器の鼎を模しています。
澄んだ青緑色と一面の貫入(釉薬のヒビ)が見所です。
南宋の官窯は首都の杭州(浙江省)にありました。

「青磁貼花牡丹唐草文深鉢」 龍泉窯 南宋~元時代 13~14世紀
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型抜きで作った牡丹の花や葉を貼った青磁の鉢で、蓋の摘みは花のがくの形で、
蓋の周囲には銀の覆輪を施しています。
龍泉窯は浙江省龍泉市周辺にあった窯で、南宋から元代に青磁を生産していました。
澄んだ青色の、貫入(釉薬のヒビ)のほとんど無い器体が特徴です。
大坂の鴻池家に伝来しました。


以下は清の官窯の作品です。
清の官窯は江西省の景徳鎮にあり、技術的に極めて高度な陶磁器を制作していました。
こちらの展示室は撮影可能です。

「五彩百子図鉢」 一対 「大清康煕年製」銘 景徳鎮官窯
 清時代・康煕年間(1662~1722)

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百子は沢山の子に恵まれるという吉祥図で、それぞれの鉢には偶数を嫌って、
101人の童子が描かれています。
官位が次々上がる平昇三級を表す、瓶に挿した3本の戟なども描かれた、
盛り沢山の図柄です。

「豆彩翠竹文碗」 一対 「大清雍正年製」銘 景徳鎮官窯
 清時代・雍正年間(1723~35)

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豆彩は青花で輪郭線を描き、上絵具で色を加える技法です。
清雅な趣きの碗で、一対の意匠が少し異なることから、数の多いセットの一部だった
可能性があるとのことです。

「青花臙脂紅龍鳳文瓶」 一対  「大清乾隆年製」銘 景徳鎮官窯
 清時代・乾隆年間(1736~95) 重要美術品

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青花(染付)で雲気文が、臙脂紅という釉で、片側に5本爪の龍、反対側に鳳、
そしてコウモリが描かれています。
コウモリ(蝙蝠)の蝠は福と同音の吉祥文様です。
精緻な作りで、龍や鳳は濃淡を付けて、立体的に表現されています。
5本爪の龍は皇帝専用の品だけに描かれるものです。

「素三彩寿字蝙蝠文盤」 「大清乾隆年製」銘 景徳鎮官窯
 清時代・乾隆年間(1736~95)

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素三彩は素焼きの白磁に緑、黄、紫などの色釉で描いたものです。
濃い黄色の地で、寿の字を囲んで見込みに並ぶ5匹のコウモリは五福
(長寿、富貴、無病、好徳、天命)を表します。

「粉彩百鹿図壺」 「大清乾隆年製」銘 景徳鎮官窯 清時代・乾隆年間(1736~95)
静嘉堂img138 (9)

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百鹿は受天百禄(天から数多くの幸)の意味の吉祥図で、コウモリや長寿を表す
松と共に描かれています。
朝廷の記録に、「耳の無い形の百鹿図の尊(壺)を作れ」という乾隆帝の命令の
記録があるそうです。

「青花豆青釉唐草文双耳扁壺」 「大清乾隆年製」銘 景徳鎮官窯
 清時代・乾隆年間(1736~95)

せDSC07443

中近東の金属器を模した形で、明の永楽年間の青花磁器の翻案です。
胴の豆青釉という淡い緑色の釉が乾隆官窯の特徴とのことで、釉の下には
牡丹唐草文が線彫りされています。
胴の中央に寿の字を囲んだ蓮華文がアクセントになっています。


国宝の曜変天目も一室を設けて展示してあります。

「曜変天目」(稲葉天目) 建窯 南宋時代 12~13世紀 国宝
三002

徳川家光から春日局に下され、子孫の稲葉家に伝えられたのでその名があります。
曜変天目は日本に数点あるだけの大変珍しい品で、特にこの稲葉天目は有名です。
小さな天目茶碗ですが、見込みの斑文は星のように輝き、観る角度によって
その色も微妙に変わり、小さな宇宙を観るような景色です。

展覧会のHPです。


【2023/10/22 17:41】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
「激動の時代 幕末明治の絵師たち」展 サントリー美術館
六本木・乃木坂
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六本木のサントリー美術館では「激動の時代 幕末明治の絵師たち」展が開かれています。
会期は12月3日(日)まで、休館日は火曜日です。

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国内政治が大転換し、絵画の世界にも西洋画の流入など大きな変革のあった時代の
絵師たちの活躍を特集した展覧会です。

会期中、かなりの展示替えがありますので、展覧会のHPでご確認下さい。

「四季耕作図屛風」) 六曲一隻 狩野養信
 江戸時代 文政8年(1825) サントリー美術館

右隻
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左隻
サIMG_0663

11月8日からの展示です。
桜の咲く春、田楽踊りに合わせて田植えをしています。
紅葉の秋、4人掛かりで石臼で籾摺りをしたり、唐箕(とうみ)を使って
籾殻を選り分けています。
11代将軍徳川家斉の娘、盛姫の肥前佐賀藩10代藩主鍋島直正(閑叟)との
婚礼調度として制作されたものです。
鍋島直正(1815-1871)は幕末の佐賀藩の近代化に成功し、藩は維新勢力の
一角となっています。
狩野養信(かのうおさのぶ、1796-1846)は江戸木挽町狩野派9代目の絵師で、
最晩年の僅かな間、橋本雅邦、狩野芳崖を弟子にしています。


狩野一信(1816-1863)が描き、芝の増上寺に奉納した全100幅の五百羅漢像の内、
6幅が展示されています。
狩野一信は幕末に活躍した絵師ですが、誰に学んだかよく分かっていません。
縦172cm、横85cmの大きな掛軸で、各幅に5名ずつ描かれ、その迫力には圧倒されます。

「五百羅漢図 第二十一」 狩野一信 嘉永7 ~文久3年(1854 ~ 63) 大本山増上寺
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羅漢たちが風を起こして、亡者たちを地獄の業火から救っています。

「五百羅漢図 第二十二」
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鬼が火を焚いている地獄の窯に杖を下して亡者を救い上げています。

「五百羅漢図 第四十五」
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西洋絵画の陰影法を取り入れて、灯明の明かりによる光と影を描いています。
不思議な雰囲気の情景になっています。

「五百羅漢図 第四十九」
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墓場で修行して人の世の虚しさを悟っているところです。
月夜のほの暗さを表わすため、絵の裏側から彩色する裏彩色がなされている
とのことです。

五百羅漢図は第二十一・二十二・四十五・四十六・四十九・五十幅が展示されています。

2011年に江戸東京博物館で「五百羅漢―増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」展が
開かれ、五百羅漢図全100幅が一挙に公開されました。

「五百羅漢」展の記事です。

「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」 歌川国芳 
 大判錦絵3枚続 嘉永3~5年(1850-1852)

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11月6日までの展示です。
滝沢馬琴の「椿説弓張月」の一場面で、讃岐院(崇徳上皇)に遣わされた
鰐鮫と烏天狗が、琉球に渡ろうとして海で嵐に遭った源為朝父子を救助しています。
大判を3枚並べて一つの絵にした躍動的な画面には迫力があります。
史実では、崇徳上皇は保元の乱に敗れ、讃岐に流されて、そこで憤死しています。
源為朝は崇徳上皇に従って戦い、捕えられて伊豆大島に流されています。
歌川国芳(1798~1861)は初代歌川豊国(1769~1825)の弟子で、勇壮な武者絵を
得意としています。

「魁題百撰相 井上五郎兵衛」 大判錦絵 月岡芳年
 江戸~明治時代 19世紀 町田市立国際版画美術館

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11月6日までの展示です。
「魁題百撰相」は南北朝から江戸初期までの豪傑などの人物を描いたことに
なっていますが、当時は時事的な問題を扱うのを憚られていました。
鉢巻を締め、石灯籠の陰で剣を構えているのは上野寛永寺に立て籠もった
彰義隊士のようです。

「魁題百撰相 菅谷九右ヱ門」 大判錦絵 月岡芳年
 慶応4年(1868) 町田市立国際版画美術館

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11月6日までの展示です。
菅谷九右ヱ門(長頼)は織田信長の家臣で、本能寺の変で信忠と共に討死しています。
月岡芳年(1839-92)は歌川国芳の弟子で、多くの弟子の中で最もその作風を
受け継いだとされています。

「鍾馗ニ鬼図」 双幅 河鍋暁斎 明治4 ~ 22年(1871 ~ 89) 板橋区立美術館
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虎に乗り、剣を構えて睨みつける鍾馗に恐れをなした鬼たちが橋を渡って逃げますが、
慌てて川に落ちる者もいます。
河鍋暁斎(1831-1889)は幕末から明治にかけての絵師で、始め歌川国芳に弟子入りし、
その後狩野派に学び、後にさまざまな画法も手掛けて、
多彩な画業を展開しています。

「ヒポクラテス像」 渡辺崋山 天保11年(1840) 九州国立博物館
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ヒポクラテスは古代ギリシャの医者で、医聖と呼ばれ、医師の倫理を謳った
ヒポクラテスの誓いで有名です。
渡辺崋山は陰影を付けて立体感を出す西洋画の技法を取り入れていて、
「鷹見泉石像」などにそれが表れています。

「捕鯨図」 安田雷洲 江戸時代 19世紀 歸空庵(板橋区立美術館寄託)
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11月8日からの展示です。
そそり立つ山には洋画風の陰影が付けられ、海には西洋帆船が浮かんでいます。
安田雷洲(生没年不詳)は御家人で、葛飾北斎に弟子入りし、浮世絵を学び、
後に洋風画や銅版画も手掛けています。

「忠臣蔵十一段目夜討之図」 歌川国芳 天保3年(1832)頃 川崎・砂子の里資料館
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11月6日までの展示です。
吉良邸討入の場面ですが、どこか変わった雰囲気の光景です。
オランダの銅版画の図柄を使っているためで、西洋式の遠近法が見られ、
人物には影もあり、建物も日本家屋にしてはおかしな形です。
国芳が西洋画に関心を持っていたことが分かります。

「赤穂義士報讐図」 安田雷洲   江戸時代 19世紀 本間美術館
大石内蔵助が討ち取った吉良上野介の首を抱えて座り、赤穂浪士たちが周りを囲んで
喜んでいるという、不思議な雰囲気の絵です。
実はオランダの銅版画にあった聖母子像の構図を借りたものでした。

安田雷洲が東海道などを描いた細密な銅版画も多数、展示されています。

「横浜異人商館座敷之図」 五雲亭貞秀 大判錦絵三枚続
 文久元年(1861) サントリー美術館

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安政5年( 1858)の 日米修好通商条約により開港して間もない横浜の異人館の
様子です。
シャンデリアが下がり、窓から帆船の見える室内に日本人、西洋人、清国人が
描かれています。
歌川貞秀(五雲亭貞秀、1807- 1879?)は歌川国貞(1786-1865)の門人で、
開港した横浜を題材にした横浜絵を数多く描いています。

「東京日本橋風景」 歌川芳虎 大判錦絵三枚続
 明治3年(1870) サントリー美術館

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10月30日までの展示です。
日本橋がまだ太鼓橋の頃です。
騎馬、馬車、荷車、人力車や自転車まで描き込まれていて、力士は両刀を差しています。
左側の高札場がひときわ立派で、人力車はこの年に高札場横で営業を始めています。
日本橋の絵で高札場が注目されるのは、新しいお触れが次々出される明治維新直後の
特徴とのことです。

「隅田川夜」 小林清親 明治14年(1881)  サントリー美術館
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11月6日までの展示です。
川辺にたたずむ男女のシルエットが浮かび、川面には人家の明かりが映っています。
「光線画」と呼ばれる西洋画を取入れた、光と影を強調した技法で人気を得ています。
小林清親(1847 -1915〉は下級幕臣の出身で、鳥羽伏見の戦いや上野戦争にも
参加しています。
後に河鍋暁斎や柴田是真に絵を学び、明治の東京を叙情的な浮世絵に描いて、
最後の浮世絵師と呼ばれるようになります。

谷文晁、菊池容斎、柴田是真など狩野派や浮世絵、洋風画など多様な作品が
展示されていて、幕末明治という時代の熱気が伝わってくる展覧会です。

フォトスポットは歌川国芳の「相馬の古内裏」です。

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展覧会のHPです。


【2023/10/21 17:55】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「小野月世 水彩画展」と 「お文具の原画展」 丸善丸の内本店
東京
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丸善丸の内本店4階ギャラリーでは、「小野月世 水彩画展」が開かれています。
会期は10月24日(火)までです。
小野月世さん(1969~)は水彩画家で、みずみずしく透明感のある色彩で花や人物を
描いておられます。

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今回は油彩画の展示もあります。

「秋の声」 100号
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制作中の作品の展示もあります。

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2018年に丸善丸の内本店と神保町の文房堂で開かれた「小野月世展」の記事です。


***

同じ丸善丸の内本店の4階ギャラリーBでは、「お文具の原画展~ちいさな日常~」が
開かれています。
会期は10月24日(火)までです。

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SNSで人気のキャラクター、お文具さんの原画が展示販売されています。
白くて丸くて可愛いお文具さんの楽しい日常です。


【2023/10/20 19:25】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「コスチュームジュエリー 展」 パナソニック汐留美術館
新橋・汐留
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パナソニック汐留美術館では開館20周年記念展「コスチュームジュエリー
美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール
小瀧千佐子コレクションより」が開かれています。
会期は12月17日(日)まで、休館日は水曜日です。

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作品の一部は撮影可能です。

コスチュームジュエリーとはデザイン性を重視して、宝石や貴金属の代わりにガラスや
樹脂などを使った装飾品のことで、ポール・ポワレに始まり、シャネルが広めています。

展覧会では研究家の小瀧千佐子さんのコレクションのシャネル、 スキャパレッリ、
クリスチャン・ディオールなどオートクチュールのジュエリー、フランスのリーン・ヴォートランや
イタリアのコッポラ・エ・トッポなどの工房の作品、アメリカン・コスチュームジュエリーの
ミリアム・ハスケルやトリファリなど、約400点が展示されています。

「夜会用マスク、ブレスレット “深海”」
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デザイン:ポール・ポワレ
制作:マドレーヌ・パニゾン
制作年:1919年
制作国:フランス
素材:メタリックチュールにガラスビーズとクリスタルガラスで刺繍

会場の最初に展示されています。


「ネックレス “ビザンチンクロス”」
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制作:ロベール・ゴッサンス
制作年:1960年頃
制作国:フランス
素材:ガラスビーズ、メタル

ビザンチン風のエキゾチックなデザインです。
ロベール・ゴッサンスはシャネルに作品を提供している工房です。


「ブローチ “白鳥” モチーフ」
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デザイン/制作:ミッチェル・メイアー
制作年:1954年頃
制作国:イギリス
素材:ラインストーン、模造パール、メタル

クリスチャン・ディオールのための作品です。


「オープンネックレス “エデンの園のアダムとイヴ”」
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デザイン/制作:リーン・ヴォートラン
制作年:1947年頃
制作国:フランス
素材:金色ブロンズ、メタルチェーン

リーン・ヴォートランは金属や樹脂などを用い、よく古代世界に想を求めています。

「チョーカー “花火”」
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デザイン:リダ・コッポラ
制作:コッポラ・エ・トッポ
制作年:1968年
制作国:イタリア
素材:クリスタルガラス、ガラスビーズ、ワイヤー、メタル

イタリアの素材であるヴェネツィアのガラスなどを用いています。


「ネックレス」
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デザイン:フランク・ヘス
制作:ミリアム・ハスケル工房
制作年:1950年代
制作国:アメリカ
素材:模造パール、シトリン、ガラスペースト、メタル

ミリアム・ハスケルは花や植物をモチーフにしているのが特徴です。


「ブローチ」
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制作:アイゼンバーグ&サンズ
制作年:1942-1945年
制作国:アメリカ
素材:クリスタルガラス、ラインストーン、シルバー

アイゼンバーグはオーストリア出身で、オーストリアのスワロフスキーのガラスを
素材にしています。


「ネックレス “ジャッキー・オナシス スタイル”」
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デザイン/制作:ケネス・ジェイ・レーン
制作年:1970年
制作国:アメリカ
素材:カボションガラス、ラインストーン、メタル

オードリー・ヘップバーンやダイアナ元王妃などを顧客に持ち、今もセレブに
愛されています。


コスチュームジュエリーは高価な宝石を使わず、比較的安価な素材で作っているので、
デザインも自由で多様、かえって豪華でもあります。
デザイナーの個性の違いも分かり、興味深いものがあります。

展覧会のHPです。


ルオー・ギャラリーのテーマは「ルオーとサーカス」です。

ジョルジュ・ルオー 「女曲芸師(人形の顔)」 1925年頃 パナソニック汐留美術館
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イヤリングとネックレスを着けています。

ジョルジュ・ルオー 「マドレーヌ」 1956年 パナソニック汐留美術館
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ルオー最晩年の作品で、サーカスの女道化師を描いています。
マドレーヌはマグダラのマリアのフランス名です。


【2023/10/19 19:33】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「やまと絵 受け継がれる王朝の美」展 東京国立博物館 その3
上野
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東京国立博物館で開かれている特別展「やまと絵 受け継がれる王朝の美」の記事を
3回に分けたその3です。
11月7日から展示される作品を中心に載せます。
会期は12月3日(日)までです。

会期中、細かい展示替えがありますので、展覧会のHPでご確認下さい。
写真の一部は過去の展覧会のものです。

序章 伝統と革新―やまと絵の革新―

「日月四季山水図屏風」 室町時代 15世紀 大阪・金剛寺 国宝
右隻
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左隻
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11月7日からの展示です。
右隻に金の日輪、左隻に銀の三日月を配し、山を高く盛り上げ、金銀箔を散らして
輝かせた、迫力にあふれた山水図です。

「四季花鳥図屏風」 雪舟等楊 室町時代・15世紀 京都国立博物館 重要文化財
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右隻
名作img307 (1)

11月7日からの展示です。
雪舟は中国画の画風を、四季の屏風という和の様式に取り入れ、新たな花鳥画を
作り上げたということです。


第1章 やまと絵の成立―平安時代ー

「法華経冊子」 平安時代 11世紀 京都国立博物館 重要文化財
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11月7日からの展示です。
舶載の唐紙に法華経を書写してあり、下絵の一部に人物などが描かれています。

「倭漢朗詠抄 巻下(太田切)」 平安時代 11世紀 静嘉堂文庫美術館 国宝
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11月7日からの展示です。
豪華な舶載の唐紙に日本で金銀泥で花鳥などを描き、和漢朗詠集を書いています。
掛川藩太田家に伝わった品です。


第2章 やまと絵の新様―鎌倉時代―

「伝源頼朝像」 鎌倉時代 13世紀 京都・神護寺 国宝
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10月24日から11月5日までの展示です。
端正な姿で、肖像画の最高傑作とも評されています。
伝平重盛像、伝藤原光能像も共に展示されます。
近年は源頼朝ではなく、足利尊氏の弟、足利直義像ではないかとする説も有力です。

「那智瀧図」 鎌倉時代 13〜14世紀 根津美術館 国宝
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11月21日からの展示です。
飛瀧神社のご神体の飛瀧権現(ひろうごんげん)としての那智の瀧です。
高々とした崖からまっすぐ流れ落ちる瀧を真白に描いています。
自然崇拝が形となった図で、仏画の来迎図ような荘厳さがあります。

「春日宮曼荼羅」 鎌倉時代 13世紀 奈良・南市町自治会蔵 重要文化財
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10月24日から11月19日までの展示です。
春日宮曼荼羅は平安時代の12世紀後半から京都の藤原氏が春日社への参詣の
代わりに自邸に掛ける礼拝画として描かれるようになります。
幾何学的な図像の曼荼羅とは異なり、自然の風景を取り入れた優美な画像です。

この曼荼羅は西から東に向かう参詣路に沿って下から上がっていく構図です。
後の「春日宮曼荼羅」もこの形式で描き続けられます。

「小野雪見御幸絵巻」(部分) 鎌倉時代 13世紀 東京藝術大学 重要文化財
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11月7日からの展示です。
小野皇太后(藤原歓子、1021-1102)は藤原道長の孫で、後冷泉天皇の皇后です。
小野の山荘で余生を送っていたとき、白河上皇が急に雪見を思い立って訪れます。
知らせを聞いた歓子は屋形の御簾の下に出衣(いだしぎぬ)を並べて上皇を迎えます。
出衣とは寝殿や牛車の簾の下に装束の袖や裾を少し出してその色合いを見せるもので、
上皇は歓子の雅なもてなしに感心したというお話です。


第3章 やまと絵の成熟―南北朝・室町時代―

「厩図屏風」 左隻  室町時代 15~16世紀 三の丸収蔵館
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駒比べ2

11月7日からの展示です。
6曲1双の屏風で、たくましく足掻きする馬が並んでいます。
馬をつないだ厩を描いた屏風は武家に好まれました。

「四季草花小禽図屏風」 室町~安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館
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11月7日からの展示です。
金地に四季の景色や草花、小鳥を描いた優美な屏風で、狩野派の作と思われます。

「是害房絵巻」 南北朝時代 14世紀 泉屋博古館 重要文化財
伽002

11月7日からの展示で、場面替えがあります。
「今昔物語」にあるお話で、中国から来た天狗の是害房は比叡山の僧と法力競べを
して負けてしまいます。
日本の天狗たちによる賀茂河原での湯治などの介抱のおかげで回復した是害房は
送別の歌会を催してもらった後、帰って行きます。
巧みな筆さばきの絵巻で、湯を沸かして是害房を風呂に入れたりして甲斐甲斐しく
介抱する天狗たちの様子が活き活きと描かれています。

「四季花鳥図屏風」 右隻 伝土佐広周 室町時代 15世紀
日本美img341 (2)

11月7日からの展示です。
六曲一双の屏風で、四季の花を一つの画面に収めてあります。


第4章 宮廷絵所の系譜

「山王霊験記絵巻断簡」 伝六角寂済 室町時代・14~15世紀
へDSC05141

11月7日からの展示です。
近江の日吉山王社の霊験譚を描いた絵巻の断簡とされていますが、
他の山王霊験記絵巻にはこれと同じ場面がありません。
作品名も作者名も箱書によるもので、別の絵巻の断簡だった可能性が
あるとのことです。
騎馬の武士や米俵を載せた馬を牽く馬借が見えます。
私はむかし、この場面を図鑑で見た覚えがあります。


終章 やまと絵と四季―受け継がれる王朝の美―

「浜松図屏風」 室町時代・15世紀 文化庁 重要文化財
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11月7日からの展示です。
2曲1双で、こちらは左隻です。
一面に松の緑が広がり、右隻は春と夏、左隻は秋と冬の景色を描いています。
秋の紅葉、冬の雪山も見えます。

「吉野図屏風」 室町時代 16世紀 サントリー美術館
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11月7日からの展示です。
吉野は古来、歌の名所です。
桜の花は胡粉を盛上げてあります。

展覧会のHPです。


【2023/10/17 19:21】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
「やまと絵 受け継がれる王朝の美」 東京国立博物館 その2
上野
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東京国立博物館で開かれている特別展「やまと絵 受け継がれる王朝の美」の記事
その2で、通期展示されている作品を中心に載せます。
会期は12月3日(日)までです。

会期中、細かい展示替えがありますので、展覧会のHPでご確認下さい。
写真の一部は過去の展覧会のものです。

第1章 やまと絵の成立―平安時代ー

「平家納経 薬王菩薩本事品 第二十三」 平安時代 長寛2年(1164)奉納
 広島・嚴島神社 国宝
 
やまと絵img148 (3)

展示期間は以下の通りです。
分別功徳品 第十七:10月11日~11月5日
薬王菩薩本事品 第二十三:11月7日~12月3日

平家納経は平家一門が厳島神社に奉納した、法華経30巻を中心にした経典で、
見返しに優美な絵が描かれています。
薬王菩薩本事品 第二十三には阿弥陀如来と女性が描かれ、葦手文字で、
経典の一節が書かれています。

「源氏物語絵巻 夕霧」 平安時代 12世紀 五島美術館 国宝 
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光源氏の子、夕霧に届いた手紙を奪い取ろうとする妻の雲居の雁です。
室内は吹抜屋台、人物の顔は引目鉤鼻で描かれています。

各場面の展示期間は以下の通りです。
関屋・絵合:10月11日~10月22日
柏木二:10月24日~11月5日
横笛:11月7日~11月19日(以上、徳川美術館蔵)
夕霧:11月21日~12月3日(五島美術館蔵)

「信貴山縁起絵巻 飛倉巻」 平安時代 12世紀 奈良・朝護孫子寺 国宝
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各巻の展示期間は以下の通りです。
飛倉巻:10月11日~11月5日
延喜加持巻:11月7日~11月19日
尼公巻:11月21日~12月3日

信貴山の中興の祖である命蓮の霊験譚を描いた絵巻です。
飛倉巻は命運の托鉢に用いる鉢が山崎の長者の米倉を持ち上げて、
信貴山にまで空を運んだというお話です。
空を飛ぶ蔵を見上げ、追いかける人々が生き生きと描かれています。
倉は校倉造りなのが分かります。

「辟邪絵 神虫(へきじゃえ しんちゅう)」 
 平安~鎌倉時代・12世紀 奈良国立博物館 国宝

妖怪3

会期中、場面替えがあります。
辟邪絵は邪を避ける効力のある物を集めた絵のことです。
神虫は南方の山中にあって、朝に三千、夕に三百の人に害を為す虎鬼を食すという、
ありがたい虫です。
鬼を捕まえ、赤い血にまみれながら、むさぼり食っています。
後白河法皇周辺で制作され、元は蓮華王院(三十三間堂)に保管されていたという
伝承があります。
「辟邪絵」は実業家の益田孝(鈍翁)の所蔵でしたが、戦後に5つに切断され、
掛軸になっています。

「鳥獣戯画 甲巻」 平安~鎌倉時代 12~13世紀 京都・高山寺 国宝
やまと絵img148 (1)
 
甲巻は擬人化された猿、兎、蛙などが活躍する、鳥獣戯画の中でも最も人気のある巻で、
今回の展示は滅多とない機会です。

展示期間は以下の通りです。
甲巻:10月11日~10月22日
乙巻:10月24日~11月5日
丙巻:11月7日~11月19日
丁巻:11月21日~12月3日

2015年の東京国立博物館の平常展で「鳥獣戯画」の模写が展示されていた時の記事です。


第2章 やまと絵の新様―鎌倉時代―

「紫式部日記絵巻断簡」 鎌倉時代 13世紀 東京国立博物館 重要文化財
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通期展示で、第2会場の最初に展示され、金字の表装が煌めいています。
藤原道長の娘、彰子の生んだ敦成親王(後一条天皇)の五十日の祝いの場面で、
道長の妻が抱いています。
手前の男性が道長、几帳を後ろにしているのが紫式部です。
元は巻物でしたが、昭和8年(1933)に益田鈍翁が分割して、掛軸に変えています。

「一遍聖絵 巻十」 法眼円伊 鎌倉時代 正安元年(1299)
 神奈川・清浄光寺(遊行寺) 国宝

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「一遍聖絵」は時宗の祖、一遍の死の10年後に制作され、弟子の聖戒が詞書を書き、
円伊が描いています。

2015年に「一遍聖絵」全12巻が東京国立博物館などで公開された時の記事です。


第3章 やまと絵の成熟―南北朝・室町時代―

「松図屏風」 伝土佐光信 室町時代・16世紀 東京国立博物館 重要文化財
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通期展示です。
金箔地に松と岩が描かれています。
大きな松と小さな松を配して奥行きがあります。

「土蜘蛛草紙」 鎌倉時代・14世紀 東京国立博物館 重要文化財
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会期中、場面替えがあります。
源頼光(948-1021)が家来の渡辺綱と共に京都の神楽岡(吉田山)に棲む
土蜘蛛を退治するというお話です。
荒れた古屋敷に頼光と綱が居ると、異形の者たちがやって来て、やがて消え去り、
頼光は続いて現れた怪しい美女に斬りかかります。

「福富草紙」 室町時代 14~15世紀 京都・春浦院 重要文化財
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伽011

会期中、場面替えがあります。
ある男が、自在に放屁する芸で財を得た男をうらやんで、貴人の前で真似を
したところ、粗相をしてしまい、散々に打たれて追い出されるという話です。
血が噴き出し、着物は破れて逃げ帰る男を、道行く人も容赦なく笑っています。
愚か者に対する痛烈な嘲りを観て取れます。
個人の才覚に目覚め始めた、室町という時代を表しているのでしょうか。

「百鬼夜行絵巻(ひゃっきやぎょうえまき)」 部分 
 室町時代・16世紀 伝土佐光信 京都・真珠庵 重要文化財

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会期中、場面替えがあります。
仏事の道具や生活の道具が妖怪となって深夜の京都の町を練り歩いている図です。
「百鬼夜行」を描いた作品の中で最古とされる有名な絵巻で、「付喪神絵巻」と
関連があるようです。
日本の妖怪たちにはどこか微笑ましいところがあり、観ていて楽しくなってしまう
絵巻です。

「砧蒔絵硯箱」 室町時代 15世紀 東京国立博物館 重要文化財
大蒔絵img134 (3)

通期の展示です。
女郎花や竜胆の咲く秋の野に枕がおかれ、銀の月が出ています。
「しられぬる」の文字が細い銀で書かれていて、千載和歌集の俊盛法師の歌に
拠っていることが分かります。

衣打つ音を聞くにぞ知られぬる里遠からぬ草枕とは


第4章 宮廷絵所の系譜

「石山寺縁起絵巻」 巻第三 伝高階隆兼
 鎌倉~南北朝時代 14世紀 滋賀・石山寺 重要文化財

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11月7日からの展示です。
巻第二は11月5日までの展示です。
近江の石山寺の創建の次第と本尊の如意輪観音の霊験を記した全7巻の絵巻です。
石山寺は紫式部が源氏物語の想を練ったと伝えられている寺です。
第3巻までは14世紀に完成しましたが、江戸時代に谷文晁が6、7巻を描いたことで
全7巻が完成しました。


終章 やまと絵と四季―受け継がれる王朝の美―

「浜松図屏風」 室町時代 15~16世紀 東京国立博物館 重要文化財
右隻
やまと絵img148 (10)

左隻
やまと絵img148 (9)

通期展示です。
一面に松の緑が広がり、右隻は春と夏、左隻は秋と冬の景色です。
秋の紅葉、冬の雪山も見えます。
古くからの山水図の形式ですが、狩や漁をする人たちなど、日常の生活も描かれています。

展覧会のHPです。


【2023/10/15 20:03】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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