fc2ブログ
「生誕120年記念 長谷川潔展」 横浜美術館
みなとみらい
chariot

横浜美術館では、「生誕120年記念 長谷川潔展」が開かれています。
期間は6月26日(日)までです。

長谷川001


長谷川潔(1891-1980)はくっきりとした清潔な作風の銅版画家で、
深い黒色を基調にしたメゾチント(マニエール・ノワール)という、
銅版画の技法を復活させた作品で有名です。

横浜美術館の所蔵する版画や、油彩、スケッチなど約200点の展示です。

長谷川潔は銀行家の子として横浜に生まれています。
幼少期は家の窓から横浜港を眺め、海の向こうにある見たこともない何かに
憧れていたとのことです。
初め外交官を志しますが、病弱のため好きな美術の道に進むことになり、
最初は木版画を制作しています。

「風(イェーツの詩に寄す)」 1915年 木版
長谷川002

大正浪漫の香りのする作品です。

その後、1918年にフランスに渡り、以後第二次世界大戦中も含め一度も
帰国していません。
パリでは版画をサロンなどに出品し、評価を高めていきます。

「花束」 1926年 ドライポイント
長谷川003


「聖体を受けたる少女」 1938年 ドライポイント
長谷川005

硬質で清潔な長谷川潔の作風が表れています。

「アレクサンドル三世橋とフランスの飛行船」 1930年 メゾチント
長谷川004

長谷川潔はメゾチント(マニエール・ノワール)という古い技法を復活
させています。
メゾチントは明暗の表現に適していて、17世紀に開発され、18世紀には
風俗画や肖像画に良く使われ、19世紀になると写真の発達とともに廃れた
とのことです。
長谷川自身の言葉によれば、それまでこの技法による作品に良い物が無いので、
活を入れるつもりで使ってみることにしたそうです。
この作品では無数の斜めの線を見せていますが、後には斜め線は無くなります。

長谷川潔は裕福だった実家の仕送りもあり、パリでは早くから認められて、
不自由の無い生活をしていましたが、第二次世界大戦で生活環境が
大きく変わり、ドイツの敗戦後は収容所に入れられたこともあって、
物心両面で大変苦労しています。
その生活の中で、ある時歩いていて見慣れたニレの木から「ボンジュール。」と
呼び掛けられ、自分も「ボンジュール。」と答えたことがあったそうです。
この経験から、野の枯れ草にまで自然の摂理が働いていることを悟り、
一本の木を克明に描くことで自然や生命のすべてを描くことが出来ると思うに
至ったとのことです。

「野辺小禽」 1957年 エングレーヴィング
10-25-2009_002長谷川


長谷川潔はさまざまの版画技法を研究していますが、1958年以降はほとんど
メゾチントによる深い漆黒の作品を制作しています。
西洋には無い、自分の慣れ親しんだ墨の持つ黒を追求したそうで、長谷川潔の
魅力となっています。

「時 静物」 1969年 メゾチント 手彩色
長谷川007

版画に彩色した珍しい作品です。
青い鳥は幸福の青い鳥、砂時計は時を表わしているとのことです。

「草花とアカリョム」 1969年 メゾチント
長谷川006

草花を挿した壷の向こうの水槽に魚が泳いでいます。
自然の中の生命のつながりを表わしているとのことで、長谷川潔の自然観、
世界観の集大成とのことです。

長谷川潔はルドンやムンクに惹かれていたものの、彼らが神秘的なものを
描くことで神秘を表現しようとしたのとは異なり、自分にとっては白昼に
感じるものこそ神であると述べています。

たしかにどの作品も感覚に流れず明晰で、誠実さを感じます。
コツコツと彫り込んでいく銅版画の技法がその明晰さと合っていたのかも
しれません。


2010年に東京都美術館の「ボルゲーゼ美術館展」でレオナルド・ダ・ヴィンチの
「レダ」の模写を観た時、足許の草花や鳥の描き方が長谷川潔とよく似ていると
思いました。
長谷川潔の作風の源の一つはルネサンスにあったようです。

「レダ」 レオナルド・ダ・ヴィンチ(模写) 16世紀
ボ1-17-2010_003


展覧会のHPです。

関連記事

【2011/05/04 05:35】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
comment
 
コメントを書く
コメントは承認後に公開されます。ご了承ください。
please comment















管理者にだけ表示を許可する

trackback
trackback url ↓
https://nekoarena.blog.fc2.com/tb.php/1024-c82581ab

プロフィール

chariot

Author:chariot
美術館・博物館めぐりとカフェの記事を書いています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

カテゴリー

ブログ内検索

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード


| ホーム |