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「魅惑のモダニスト 蕗谷虹児展」 そごう美術館
横浜
chariot

そごう横浜店のそごう美術館では「魅惑のモダニスト 蕗谷虹児展」が
開かれています。
会期は7月18日(月)までです。

蕗谷001


蕗谷虹児(1898-1979)は大正時代の末から戦後にかけて、少女雑誌の挿絵や絵本、
童話を描いた人気画家です。
展覧会では挿絵や表紙絵の原画、載せられた雑誌など約600点が展示されています。

毎週土曜日の午後2時からは学芸員による作品解説も行なわれます。

蕗谷虹児は新潟県新発田市出身で、日本画家を志して上京し、尾竹竹坡に入門します。
一時樺太で放浪生活を送ったりした後、竹久夢二の知遇を得て、その縁で1920年
(大正9年)に少女雑誌の挿絵画家としてデビューし、またたく間に人気作家となります。

「テラスの秋」(『令女界』原画) 1924年
蕗谷003

『令女界』は蕗谷虹児が多くの表紙絵や挿絵を載せた少女雑誌です。
一時デザインの修行をしていたこともあって、先輩の竹久夢二に比べ、
くっきりとした線を使った明確な描きぶりです。

「睡蓮の夢」(『睡蓮の夢』原画) 1924年
蕗谷002

アール・ヌーヴォーの世界を取り入れています。
蕗谷虹児は詩人として何冊もの詩画集を出していて、『睡蓮の夢』はその一つです。
1924年に発表した詩の「花嫁人形」は詩人としての代表作です。
蕗谷虹児の詩は叙情的で、幾分感傷味も加わっています。

しかし、挿絵画家では飽き足らず、本格的な画家になろうとの思いから1925年
(大正14年)にフランスに渡って修行し、サロンへの入選も果たし、藤田嗣治らとも
親交を深めます。

「旅の絵だより 出帆」(『小令女』原画)部分 1926年
蕗谷005

パリ時代にも日本の雑誌に作品を送り続けています。

「柘榴を持つ女(原題:女)」 1927年
パンフレットに載っている作品です。
アール・デコ調の女性をすっきりした線で描き出し、洗練された作品になっています。
この頃に蕗谷虹児独特のモダンで都会的な作風が固まったとのことです。
蕗谷虹児の魅力の一つはファッションセンスの良さにあり、若い女性に人気のあった
理由でもあります。

「潮風」(『令女界』)原画 1928年
蕗谷004

こちらもアール・デコ調の女性です。
タツノオトシゴ、カニ、ヒトデの模様も海を表しています。
打ち寄せる波、翻る布地の表現にとてもはデザイン的な感覚があります。

フランスで修行中に描いた風景画が、2010年にブリヂストン美術館で開かれていた、
「セーヌの流れに沿って-印象派と日本人画家たちの旅」展に展示されていました。
1927年の「ヴェトイユの風景」で、感傷性の強い作品です。 
読者向けの挿絵とは違って、画家の内面性が表れています。

「セーヌの流れに沿って-印象派と日本人画家たちの旅」展の記事はこちらです。

エコール・ド・パリの画家としての地位を固めようとした1929年(昭和4年)に
世界大恐慌が起こります。
その影響による留守宅の経済的破綻のために急いで帰国し、借金返済のため
再び挿絵を描くことになります。

「七人兄弟」 挿絵原画 1941-1942年
「七人兄弟」はフィンランドの作家アレクシス・キヴィが1870年に書いた小説です。
当時スウェーデンに支配され、公用語にスウェーデン語を強制されていた時代に
フィンランド語で書かれ、フィンランド語文学の草分けとされています。
両親に先立たれた農民の七人兄弟が団結して困難に立ち向かい、農場を再建する
という物語です。
私も昔読んだことがあり、その土の匂いのする力強さには深い印象を受けました。

蕗谷虹児もそれまでの作品とはまったく異なる、男性的で躍動的な画面を黒一色で
描いています。
取り囲む牛たちを銃で撃退する場面などはよく覚えています。

戦後は少年少女雑誌が文章に挿絵という形からマンガ中心に変わってきたため、
挿絵の仕事は減り、替わって絵本や童話が増えます。

講談社の絵本「人魚姫」(魔法使いと人魚) 原画 1956年
蕗谷007

光の差さない海の底の情景で、深海魚たちが泳いでいます。
水の渦が不気味さを表しています。

絵本はどれも活き活きとして、アラビアンナイトや西遊記の世界は躍動感があります。
日本の昔話の絵本では琳派の技法も取り入れています。

1954年(昭和29年)にはアニメーション、「夢見童子」の原画制作も
行なっていて、会場でも放映されています。
15分の短編ですが、奈良朝風の人物たちが物語を繰り広げていきます。

70歳の1968年(昭和43年)に個展の開催や画集の刊行を機に、
注文制作でない自由な絵画を描くことを決意します。
自分は現代の浮世絵美人画の作家なので、これからは肉筆浮世絵の世界を
描いて行きたいと述べています。

「花嫁」 部分 1968年
蕗谷006

代表作の詩、「花嫁人形」にちなんでいます。
見事に洗練されたデザインの現代的な作品です。

会場で長い画歴を物語る作品を観ていくと、蕗谷虹児がさまざまなスタイルを取り入れ、
研究を怠らなかったことがよく分かります。

蕗谷虹児は自伝的な画集も2回作っています。
自分たち兄弟3人を残して若くして亡くなった母への追慕の情が強く表れています。
その追慕の想いが叙情的な女性像を創り上げていったのでしょう。
自伝を観たり、感傷性のある詩を読むと、蕗谷虹児は情の厚い人だったのだろうと
思います。

展覧会のHPです。

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【2011/06/28 04:31】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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