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「フェルメールからのラブレター展」 Bunkamuraザ・ミュージアム
渋谷
chariot

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは「フェルメールからのラブレター展」が
開かれています。
会期は2012年3月14日(水)までで、1月1日のみ休館です。

フェ001


副題は「コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ」と
なっていて、フェルメールの手紙を題材にした作品3点を中心に、17世紀のオランダの
日常生活を描いた作品、約40点が展示されています。

展覧会は4つの章で構成されています。

・人々のやりとり―しぐさ、視線、表情
・家族の絆・家族の空間
・手紙を通したコミュニケーション
・職業上の、あるいは学術的コミュニケーション


・人々のやりとり―しぐさ、視線、表情

ヤン・ステーン 「生徒にお仕置きをする教師」 1663-65年頃 
 油彩、キャンヴァス アイルランド・ナショナル・ギャラリー

フェ005

床に落ちている紙に汚い字が書いてあるところを見ると、この子はまじめにお習字を
しなかったようです。
横で女の子が、それ見たことかといった表情で笑っています。
こういうとき、女の子は残酷なものです。
教室は先生の自宅のようで、壁に日用品が掛けてあります。

塾の様子というのは絵の題材に向いているようで、 渡辺崋山の「一掃百態図」にも
寺子屋の腕白小僧たちが描かれています。
ヤン・ステーン(1626-1679)はライデンやハールレムで活動した画家で、猥雑な
情景の風俗画で有名です。

オランダは商業が盛んだったので識字率も高く、子供たちもこういう所で読み書きを
習ったのでしょう。

・家族の絆・家族の空間

ピーテル・デ・ホーホ 「中庭にいる女と子供」 1658-60年頃 
 油彩、キャンヴァス ワシントン・ナショナル・ギャラリー

フェ010

中庭でのおだやかな家族のひとときです。
石段と石壁、扉、その奥にさらに石段、扉と続いて奥行きを深くし、空間に変化を
持たせています。
ピーテル・デ・ホーホ(1629-1684)はフェルメールと同じデルフトやアムステルダムで
活動した画家で、デルフト時代は透視図法を使って静謐な作品を描いています。

ピーテル・デ・ホーホ 「室内の女と子供」 1658年頃 
 油彩、キャンヴァス アムステルダム国立美術館

フェ009

こちらも静かな室内の情景ですが、奥の部屋の二つの窓の見える複雑な構図です。
床のデルフトタイルの市松模様が透視図法の消失点が左側にあることを示しています。

ヤン・ステーン 「老人が歌えば若者は笛を吹く」 1670-75年頃 
 油彩、キャンヴァス フィラデルフィア美術館
 
家の中で老人たちが楽器を弾いて歌を歌い、若い者や子供まで一緒になって、
飲めや歌えの大騒ぎです。
ヤン・ステーンのよく描く教訓的な場面ですが、観ていて面白い情景です。


・職業上の、あるいは学術的コミュニケーション

ヤン・リーフェンス 「机に向かう簿記係」 1629年頃 油彩、板 個人蔵
フェ011

光と影を強調してレンブラント風に描かれた老人は簿記係というより聖書の
登場人物のようです。
ヤン・リーフェンス(1607-1674)はオランダやイギリスなどで活動した画家で、
レンブラントと共同の工房を設けたこともあります。

コルネリス・デ・マン 「薬剤師イスブラント博士」 1667年頃 
 油彩、キャンヴァス 個人蔵

フェ007

机の上には本、楽器、天球儀、さらには頭骸骨まで置いてあります。
博士の学識を示す一方でヴァニタス(人生のはかなさの寓意)の意味も持たせて
いますが、欲張った画面構成になっています。

博士の着ているガウンは日本との貿易でもたらされた着物かそれを元にした服で、
富裕層の間で流行していたそうです。
フェルメールの「地理学者」でも、地理学者が同じようなガウンを着ています。


・手紙を通したコミュニケーション

フランス・ファン・ミーリス(I世) 「手紙を書く女」 1680年 
 油彩、板 アムステルダム国立美術館

フェ008

サテンの服を着た裕福そうな家庭の女性が手紙を書いています。
横にあるマンドリンのような楽器はリュートで、愛を象徴するとのことです。
犬も忠実を表すので、手紙の相手への愛と忠実を寓意化した絵ということでしょうか。
向こうに見える肖像画の人物が夫か恋人なのでしょう。
フランス・ファン・ミーリス(I世)(1635-1681)はライデンで活動した画家で、
人物画を描いています。

17世紀のオランダは東インド会社を通じて遠く日本などの東アジアにまで進出しています。
故郷を遠く離れた男たちとの間で手紙のやりとりがなされますが、届くのには2年ほども
かかったそうです。

ヘリット・ダウ 「羽根ペンを削る学者」 1628-31年頃 油彩、板 個人蔵
小品で、老学者がナイフで羽根ペンを削っているという、変わった場面を捉えています。
ヘリット・ダウ(1613-1675)はライデン生まれで、陰影を強調した細密な画風で知られています。
15歳でレンブラントの弟子になっており、この作品もその頃のものとされています。

ヨハネス・フェルメール 「手紙を書く女」 1665年頃 
 油彩、キャンヴァス ワシントン・ナショナル・ギャラリー

フェ004

若い手紙を書く手を止めてこちらを見ています。
顔はややぼかし気味で、窓の光の照らす彼女の服、イヤリング、リボン、小物入れや
椅子の金具を強調しています。
特に白貂の縁取りの付いた金色の上着は輝いています。

ヨハネス・フェルメール 「手紙を読む青衣の女」  1663-64年頃 
 油彩、キャンヴァス アムステルダム国立美術館

フェ002

修復後の初公開とのことです。
高価なラピスラズリを原料にしたウルトラマリンブルーが女性の服、椅子、壁の下塗り
にも使われ、全体に青みがかった静かな印象を与えています。
壁の色も窓からの距離による日の光の微妙な強弱を表し、地図のしわに当たる光も
細かく描き出しています。
壁の地図は夫や恋人の不在を暗示しているとのことです。

ヨハネス・フェルメール 「手紙を書く女と召使い」 1670年頃  
 油彩、キャンヴァス アイルランド・ナショナル・ギャラリー

フェ003

一心に手紙を書く女性の足許には反古紙や封印の蜜蝋が散らばっていて、
女性の感情を表しているとのことです。
カメラのピントを合わせたように、女性はくっきりと描き込まれていますが、
召使いはあっさりとした筆遣いで描かれています。
女性や召使いの服、窓、タイルの床の白が印象的で、それに窓や前掛け、
椅子の青が添えられています。

背景の絵画は「モーセの発見」で、旧約聖書のファラオがエジプトで生まれた
イスラエルの男児をすべて殺すよう命じたとき、ひそかに葦舟に乗せられて
ナイル川に流されたモーセをファラオの王女が見つけて養育したという話です。
そのため、「モーセの発見」には敵対者の和解という寓意があるそうで、
この情景も劇的な意味を持った場面ということになります。
それにしては手紙の書き上がりを待っているらしい召使いは窓の外を眺めていて、
観る人の意識を外に向けているのが面白いところです。


「手紙を書く女」、「手紙を読む青衣の女」、「手紙を書く女と召使い」の3点は一緒に
展示されていますが、少し離れて眺めたとき、それぞれの作品に本当に淡い日の光が
差しているように見えました。
当時、実際に室内に飾られていたときには、観る人はもっと日の光を感じていたことでしょう。
このことを発見しただけでもこの展覧会に来た甲斐があったと思いました。


何しろフェルメール展ですので、早めに行かれることをお奨めします。

展覧会のHPです。

渋谷の「109」のあたりには昔は飲み屋などの小さなお店が軒を連ねる
「恋文横丁」がありました。
進駐軍を相手にする英語の書けない女性のために手紙を代書する商売の
お店があったので、その名が付きました。

恋文0989

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