根津・東大前
文京区の弥生美術館では「大正から始まった日本のKawaii(カワイイ)展
~ファンシーグッズを中心に~」が開かれています。
会期は7月1日(日)までです。

2012年は大正元年から数えて100年目ということで、大正時代から始まる
ファンシーグッズを通じて、日本「カワイイ」の変化をたどる展覧会です。
日本のファンシーグッズの始まりは、大正3(1914)年に竹久夢二が
東京日本橋に開いた、「港屋絵草紙店」に始まるとのことです。
アール・ヌーヴォー風の千代紙などを販売しています。

キノコを千代紙に描くのは珍しく、渦巻き柄とともにアール・ヌーヴォーの
影響が見られるそうです。
小林かいち(1896-1968)のデザインした絵はがきや絵封筒などは
京都の「さくら井屋」で販売されていました。
大正浪漫の時代で、今の「可愛い」に比べ耽美的、退廃的な雰囲気を
持っています。
小林かいちの作品は2010年に渋谷区立松涛美術館で開かれていた、
「大正イマジュリィの世界展」にも展示されていました。
「大正イマジュリィの世界展」展の記事はこちらです。
高畠華宵(1888-1966)は大正から昭和初期にかけて活躍した画家で、
当時は絵封筒などとして販売され、人気を得ていました。
弥生美術館は高畠華宵の作品を常設展示しています。
松本かつぢ(1904-1986)は少女キャラクターグッズの元祖とされています。
「くるくるクルミちゃん」は、顔の輪郭がちょっとベティちゃんに似た元気な女の子の
クルミちゃんを主人公にした少女マンガです。

昭和13(1938)年に連載が始まり、戦時中の中断をはさんで、昭和29(1954)年まで
続き、戦前戦後を通じて多数のグッズが作られています。
「くるくるクルミちゃん」の皇軍慰問絵はがきまであるのには驚きました。
中原淳一(1913-1983)は昭和14(1939)年に麹町に「ヒマワリ」を開店し、
戦後は雑誌「ひまわり」の発行所として神保町に建てたビルにグッズの販売店を
開いています。
また昭和29(1954)年には「それいゆの店」を全国のデパートなどに出店して、
グッズの販売を行なっています。
2011年に弥生美術館で開かれた、『中原淳一の少女雑誌 「ひまわり」』展の
記事はこちらです。
戦後の高度経済成長期に向かう時代は、技術革新による素材の多様化、
ベビーブーム世代が10代になって購買層を形成したことなどにより、
ファンシーグッズも盛んに作られています。
内藤ルネ(1932-2007)は中原淳一の発行する雑誌、「それいゆ」などの
イラストを担当し、多くのグッズのデザインも手がけています。

特に昭和46(1971)年にデザインした日本初のパンダグッズは、翌年のパンダの
来日もあって、大変な人気となります。

藤田ミラノ(1930-)のポスターなどは、長く暮らしていたフランスをはじめ、
ヨーロッパやアメリカなどで評判を得ています。
2011年に弥生美術館で開かれた、 「藤田ミラノ展」の記事はこちらです。
田村セツコ(1938-)はファンシーグッズに初めてお料理ネタを取り入れています。
食物が豊富になった時代の反映です。
今よく見かけるハンバーガーやソフトクリームのキーホルダーというのも、
その延長にあるということでしょう。

水森亜土はファンシーグッズの世界に「セクシー」を持ち込むことで、以後の
「カワイイ」の領域を大きく広げています。

今年の2月、東京駅地下1階の銀の鈴にも水森亜土のイラストがありました。

株式会社サンリオは昭和49(1974)年にハローキティのキャラクターを開発し、
翌年リトルツインスターズ(キキララ)を開発しています。
ハローキティのはとバスもあります。

グッズのアイテム別に見ると、苺を取り入れたのは竹久夢二、リボンは内藤ルネ、
田村セツコとのことです。
はやりすたりもあって、昭和初期まで人気のあった鈴蘭や百合は、そのうなだれた
姿から今はあまり好まれていません。
また、大正から昭和30年頃にかけてのグッズは封筒、便箋、絵はがきが中心で、
女学校に進学する少女が増えたことによるものだそうです。
これは昭和40年代からの電話の普及まで続いています。
現在では日本の若い女性のストリートファッションが「Kawaii」として世界に広まり、
それとともにファンシーグッズも注目されています。
この「カワイイ」という日本固有の価値観は世界共通の価値観になりつつあるとのことです。
世界共通の価値観にまでなるかどうかは分かりませんが、今の日本文化として海外で
受け入れられているのは能や歌舞伎よりもマンガやアニメ、そして「カワイイ」文化
かもしれません。
「可愛い」「かわいい」「カワイイ」「Kawaii」と、言葉も少しずつ異なるニュアンスを持つ
「カワイイ」の世界の移り変わりを知ることが出来ました。
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文京区の弥生美術館では「大正から始まった日本のKawaii(カワイイ)展
~ファンシーグッズを中心に~」が開かれています。
会期は7月1日(日)までです。

2012年は大正元年から数えて100年目ということで、大正時代から始まる
ファンシーグッズを通じて、日本「カワイイ」の変化をたどる展覧会です。
日本のファンシーグッズの始まりは、大正3(1914)年に竹久夢二が
東京日本橋に開いた、「港屋絵草紙店」に始まるとのことです。
アール・ヌーヴォー風の千代紙などを販売しています。

キノコを千代紙に描くのは珍しく、渦巻き柄とともにアール・ヌーヴォーの
影響が見られるそうです。
小林かいち(1896-1968)のデザインした絵はがきや絵封筒などは
京都の「さくら井屋」で販売されていました。
大正浪漫の時代で、今の「可愛い」に比べ耽美的、退廃的な雰囲気を
持っています。
小林かいちの作品は2010年に渋谷区立松涛美術館で開かれていた、
「大正イマジュリィの世界展」にも展示されていました。
「大正イマジュリィの世界展」展の記事はこちらです。
高畠華宵(1888-1966)は大正から昭和初期にかけて活躍した画家で、
当時は絵封筒などとして販売され、人気を得ていました。
弥生美術館は高畠華宵の作品を常設展示しています。
松本かつぢ(1904-1986)は少女キャラクターグッズの元祖とされています。
「くるくるクルミちゃん」は、顔の輪郭がちょっとベティちゃんに似た元気な女の子の
クルミちゃんを主人公にした少女マンガです。

昭和13(1938)年に連載が始まり、戦時中の中断をはさんで、昭和29(1954)年まで
続き、戦前戦後を通じて多数のグッズが作られています。
「くるくるクルミちゃん」の皇軍慰問絵はがきまであるのには驚きました。
中原淳一(1913-1983)は昭和14(1939)年に麹町に「ヒマワリ」を開店し、
戦後は雑誌「ひまわり」の発行所として神保町に建てたビルにグッズの販売店を
開いています。
また昭和29(1954)年には「それいゆの店」を全国のデパートなどに出店して、
グッズの販売を行なっています。
2011年に弥生美術館で開かれた、『中原淳一の少女雑誌 「ひまわり」』展の
記事はこちらです。
戦後の高度経済成長期に向かう時代は、技術革新による素材の多様化、
ベビーブーム世代が10代になって購買層を形成したことなどにより、
ファンシーグッズも盛んに作られています。
内藤ルネ(1932-2007)は中原淳一の発行する雑誌、「それいゆ」などの
イラストを担当し、多くのグッズのデザインも手がけています。


特に昭和46(1971)年にデザインした日本初のパンダグッズは、翌年のパンダの
来日もあって、大変な人気となります。

藤田ミラノ(1930-)のポスターなどは、長く暮らしていたフランスをはじめ、
ヨーロッパやアメリカなどで評判を得ています。
2011年に弥生美術館で開かれた、 「藤田ミラノ展」の記事はこちらです。
田村セツコ(1938-)はファンシーグッズに初めてお料理ネタを取り入れています。
食物が豊富になった時代の反映です。
今よく見かけるハンバーガーやソフトクリームのキーホルダーというのも、
その延長にあるということでしょう。

水森亜土はファンシーグッズの世界に「セクシー」を持ち込むことで、以後の
「カワイイ」の領域を大きく広げています。

今年の2月、東京駅地下1階の銀の鈴にも水森亜土のイラストがありました。

株式会社サンリオは昭和49(1974)年にハローキティのキャラクターを開発し、
翌年リトルツインスターズ(キキララ)を開発しています。
ハローキティのはとバスもあります。

グッズのアイテム別に見ると、苺を取り入れたのは竹久夢二、リボンは内藤ルネ、
田村セツコとのことです。
はやりすたりもあって、昭和初期まで人気のあった鈴蘭や百合は、そのうなだれた
姿から今はあまり好まれていません。
また、大正から昭和30年頃にかけてのグッズは封筒、便箋、絵はがきが中心で、
女学校に進学する少女が増えたことによるものだそうです。
これは昭和40年代からの電話の普及まで続いています。
現在では日本の若い女性のストリートファッションが「Kawaii」として世界に広まり、
それとともにファンシーグッズも注目されています。
この「カワイイ」という日本固有の価値観は世界共通の価値観になりつつあるとのことです。
世界共通の価値観にまでなるかどうかは分かりませんが、今の日本文化として海外で
受け入れられているのは能や歌舞伎よりもマンガやアニメ、そして「カワイイ」文化
かもしれません。
「可愛い」「かわいい」「カワイイ」「Kawaii」と、言葉も少しずつ異なるニュアンスを持つ
「カワイイ」の世界の移り変わりを知ることが出来ました。
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