六本木・乃木坂
六本木のサントリー美術館では歌舞伎座新開場記念展、
「歌舞伎 江戸の芝居小屋」が開かれています。
会期は3月31日(日)までです。


4月の第5期歌舞伎座新開場を記念して、阿国歌舞伎に始まり、芝居小屋から
現在の歌舞伎の劇場空間の成立までの歴史を紹介する展示です。
「阿国歌舞伎草紙」 桃山時代・17世紀初頭 大和文華館 重要美術品

阿国歌舞伎の初期の形で、出雲の阿国が舞台で念仏踊りを踊って、
客席に現れた名古屋山三郎の亡霊を招き寄せています。
名古屋山三郎は美貌で有名だった武士で、阿国の夫だったという伝説が
生まれています。
能舞台を利用していて、囃子方は小鼓を置いて控えています。
踊りによって魂を招くという、芸能の起源を思わせる場面です。
「阿国歌舞伎図屏風」 桃山時代・17世紀 京都国立博物館 重要文化財


2月27日から3月11日までの展示です。
北野天満宮で興行された阿国歌舞伎の様子です。
阿国の扮するかぶき者、茶屋のおかか、道化の猿若の演じる、
「茶屋遊び」の場面です。
囃子方の小鼓、大鼓、太鼓も見えます。
京都の四条大橋の袂に立っている、刀を担ぎ、扇を持った
出雲阿国の像はこの絵を元にしています。
「歌舞伎図巻」 江戸時代・17世紀 徳川美術館 重要文化財
ポスターなどに使われている絵で、2月25日までの展示です。
阿国歌舞伎が評判になると追随者も現れたようで、四条河原で興行して
評判になったという、采女という女性による興行の様子です。
「かねきき」「して」、そして、「茶屋遊び」の場面が描かれています。
「茶屋遊び」は阿国歌舞伎とまったく一緒で、今なら著作権侵害に
なりそうです。
かぶき者は鉢巻を締め、胴着を着け、派手な蛭巻鞘の刀を持ち、
首にはロザリオを提げています。

露天の客席には老若男女が集まり、唐人や南蛮人の姿も見えます。
楽屋でくつろぐ演者や、絵巻や屏風絵ではお約束の喧嘩の場面も
描かれています。
喧嘩にも戦国の余風が残っていて、槍や薙刀を振るって闘っています。

やがて阿国歌舞伎に替わって遊女歌舞伎が流行し、風紀上問題であるとして
幕府が禁止すると、少年による若衆歌舞伎が演じられます。
「舞踊図」 江戸時代・17世紀 サントリー美術館

2月25日までの展示です。
若衆歌舞伎も禁止されると、月代(さかやき)を剃った成年男子のみによる
野郎歌舞伎が生まれます。
男性が女性を演じる女形もこれによって確立し、現在に至ります。
女形を演じるときはこの絵のような布で月代を隠していました。
「芝居狂言浮絵 百夜草鎌倉往来」 鳥居清経 宝暦13年 神戸市立博物館

3月4日までの展示です。
観客席も屋内になり、花道も備わっていますが、能舞台のような
屋根が残っています。
この絵では舞台上手に仮花道も設けられています。
仮花道は役者や観客の通行にも劇の演出にも使われていました。
舞台下手では、もろ肌脱ぎになって喧嘩をしている客も見えます。
泰平の世なので、槍ではなく下駄を振り上げています。
「役者はんじ物 市川團十郎(七代目市川團十郎)」
歌川国貞 文化9年(1812) 千葉市美術館

2月25日までの展示です。
「暫」の扮装で、左上の囲みの中が判じ物になっています。
市=市の買物
川=皮の羽織
團=階段
十=忠臣の忠に濁点
郎=蝋燭
歌舞伎が庶民に親しまれる芸能になっていたことが分かります。
「東都堀名所 山谷掘」 歌川国麿
嘉永期(1848~54)頃 たばこと塩の博物館

3月4日までの展示です。
船宿の女将のしている前掛けは高麗屋格子といって、四代目松本幸四郎が
「幡随院長兵衛精進俎板」の「鈴ケヶ森」の場で着ていた合羽の柄です。
幡随院長兵衛が白井権八に、「お若えの、お待ちなせえやし」と呼びかける
有名な場面です。
帯の裏にも市川家の三升の紋が入っています。
歌舞伎はファッションの発信源でもありました。
「六代菊五鏡獅子」 平櫛田中 昭和15年(1940) 株式会社歌舞伎座

3月18日までの展示です。
高さ50.4cmの彩色木彫で、六代目尾上菊五郎(1885-1949)の当り芸、
「春興鏡獅子」を写した作品です。
左腕を後ろに伸ばし、腰を落として体を前に押し出した姿には力と動きがあります。
この「鏡獅子」を元にした平櫛田中の代表作の高さ2mの「鏡獅子」が
三宅坂の国立劇場のロビーに展示されています。
会場には第1期から完成予定の第5期までの歌舞伎座の模型も展示されています。
第1期は正面が洋風建築ですが、第2期からは破風を付けた和風のデザインに
なっています。
第5期は隈研吾設計で、第4期の外観を残し、高層のオフィスビルと
組合わされています。

四条河原や社寺の境内で始まった歌舞伎は江戸の芝居小屋で発展し、
その伝統は現在の歌舞伎座に受け継がれています。
新歌舞伎座の開業を期に、新しい花道を歩む歌舞伎の千秋萬歳を願います。
会期中、かなりの展示替えがありますので、展覧会のHPの中の展示替リストで
ご確認下さい。
サントリー美術館の次回の展覧会は、『「もののあはれ」と日本の美』展です。
会期は4月17日(水)から6月16日(日)までです。

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六本木のサントリー美術館では歌舞伎座新開場記念展、
「歌舞伎 江戸の芝居小屋」が開かれています。
会期は3月31日(日)までです。


4月の第5期歌舞伎座新開場を記念して、阿国歌舞伎に始まり、芝居小屋から
現在の歌舞伎の劇場空間の成立までの歴史を紹介する展示です。
「阿国歌舞伎草紙」 桃山時代・17世紀初頭 大和文華館 重要美術品

阿国歌舞伎の初期の形で、出雲の阿国が舞台で念仏踊りを踊って、
客席に現れた名古屋山三郎の亡霊を招き寄せています。
名古屋山三郎は美貌で有名だった武士で、阿国の夫だったという伝説が
生まれています。
能舞台を利用していて、囃子方は小鼓を置いて控えています。
踊りによって魂を招くという、芸能の起源を思わせる場面です。
「阿国歌舞伎図屏風」 桃山時代・17世紀 京都国立博物館 重要文化財


2月27日から3月11日までの展示です。
北野天満宮で興行された阿国歌舞伎の様子です。
阿国の扮するかぶき者、茶屋のおかか、道化の猿若の演じる、
「茶屋遊び」の場面です。
囃子方の小鼓、大鼓、太鼓も見えます。
京都の四条大橋の袂に立っている、刀を担ぎ、扇を持った
出雲阿国の像はこの絵を元にしています。
「歌舞伎図巻」 江戸時代・17世紀 徳川美術館 重要文化財
ポスターなどに使われている絵で、2月25日までの展示です。
阿国歌舞伎が評判になると追随者も現れたようで、四条河原で興行して
評判になったという、采女という女性による興行の様子です。
「かねきき」「して」、そして、「茶屋遊び」の場面が描かれています。
「茶屋遊び」は阿国歌舞伎とまったく一緒で、今なら著作権侵害に
なりそうです。
かぶき者は鉢巻を締め、胴着を着け、派手な蛭巻鞘の刀を持ち、
首にはロザリオを提げています。

露天の客席には老若男女が集まり、唐人や南蛮人の姿も見えます。
楽屋でくつろぐ演者や、絵巻や屏風絵ではお約束の喧嘩の場面も
描かれています。
喧嘩にも戦国の余風が残っていて、槍や薙刀を振るって闘っています。

やがて阿国歌舞伎に替わって遊女歌舞伎が流行し、風紀上問題であるとして
幕府が禁止すると、少年による若衆歌舞伎が演じられます。
「舞踊図」 江戸時代・17世紀 サントリー美術館

2月25日までの展示です。
若衆歌舞伎も禁止されると、月代(さかやき)を剃った成年男子のみによる
野郎歌舞伎が生まれます。
男性が女性を演じる女形もこれによって確立し、現在に至ります。
女形を演じるときはこの絵のような布で月代を隠していました。
「芝居狂言浮絵 百夜草鎌倉往来」 鳥居清経 宝暦13年 神戸市立博物館

3月4日までの展示です。
観客席も屋内になり、花道も備わっていますが、能舞台のような
屋根が残っています。
この絵では舞台上手に仮花道も設けられています。
仮花道は役者や観客の通行にも劇の演出にも使われていました。
舞台下手では、もろ肌脱ぎになって喧嘩をしている客も見えます。
泰平の世なので、槍ではなく下駄を振り上げています。
「役者はんじ物 市川團十郎(七代目市川團十郎)」
歌川国貞 文化9年(1812) 千葉市美術館

2月25日までの展示です。
「暫」の扮装で、左上の囲みの中が判じ物になっています。
市=市の買物
川=皮の羽織
團=階段
十=忠臣の忠に濁点
郎=蝋燭
歌舞伎が庶民に親しまれる芸能になっていたことが分かります。
「東都堀名所 山谷掘」 歌川国麿
嘉永期(1848~54)頃 たばこと塩の博物館

3月4日までの展示です。
船宿の女将のしている前掛けは高麗屋格子といって、四代目松本幸四郎が
「幡随院長兵衛精進俎板」の「鈴ケヶ森」の場で着ていた合羽の柄です。
幡随院長兵衛が白井権八に、「お若えの、お待ちなせえやし」と呼びかける
有名な場面です。
帯の裏にも市川家の三升の紋が入っています。
歌舞伎はファッションの発信源でもありました。
「六代菊五鏡獅子」 平櫛田中 昭和15年(1940) 株式会社歌舞伎座

3月18日までの展示です。
高さ50.4cmの彩色木彫で、六代目尾上菊五郎(1885-1949)の当り芸、
「春興鏡獅子」を写した作品です。
左腕を後ろに伸ばし、腰を落として体を前に押し出した姿には力と動きがあります。
この「鏡獅子」を元にした平櫛田中の代表作の高さ2mの「鏡獅子」が
三宅坂の国立劇場のロビーに展示されています。
会場には第1期から完成予定の第5期までの歌舞伎座の模型も展示されています。
第1期は正面が洋風建築ですが、第2期からは破風を付けた和風のデザインに
なっています。
第5期は隈研吾設計で、第4期の外観を残し、高層のオフィスビルと
組合わされています。

四条河原や社寺の境内で始まった歌舞伎は江戸の芝居小屋で発展し、
その伝統は現在の歌舞伎座に受け継がれています。
新歌舞伎座の開業を期に、新しい花道を歩む歌舞伎の千秋萬歳を願います。
会期中、かなりの展示替えがありますので、展覧会のHPの中の展示替リストで
ご確認下さい。
サントリー美術館の次回の展覧会は、『「もののあはれ」と日本の美』展です。
会期は4月17日(水)から6月16日(日)までです。

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サントリー美術館で開催中の
「歌舞伎座新開場記念展 歌舞伎 ―江戸の芝居小屋―」に行って来ました。
http://suntory.jp/SMA/
歌舞伎展と聞くと、ブロマイド的な要素で当時絶大な人気...
【2013/02/19 21:29】
【2013/02/19 21:29】