渋谷
渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは、「レオナール・フジタ展」が開かれています。
会期は10月14日(月・祝)までで、会期中は無休です。

チラシの作品は「自画像」(水彩、墨、絹本 1929年 ポーラ美術館)です。
エコール・ド・パリの画家として活躍したレオナール・フジタ(藤田嗣治、1886-1968)の
展覧会です。
ポーラ美術館のコレクションを中心に、約200点が展示されています。
1913年にフランスに渡った藤田嗣治はモディリアーニ、パスキン、スーティンなど、
エコール・ド・パリの画家たちと親交を結びます。
ジュール・パスキン 「少女たち」
油彩、パステル、カンヴァス 1923年 ポーラ美術館

アメデオ・モディリアーニ 「ルニア・チェホフスカの肖像」
油彩、カンヴァス 1917年 ポーラ美術館

やがて藤田特有の乳白色の肌と細く均一な線描によ日本画的な感覚の
作品を生み出し、このスタイルで藤田はパリ画壇の寵児となります。
「タピスリーの裸婦」 油彩、カンヴァス 1923年 京都国立近代美術館

背景の花模様が華やかで、猫も登場しています。
しかし第二次世界大戦の勃発により、1940年に帰国し、今度はまったく
画風の異なる戦争画を描くことになります。
戦争画は藤田の画業の中でも重要な部分を占めていますが、藤田を特集する
展覧会でも展示されることは無く、その部分は欠落しています。
日本の画家の描いた戦争画は東京国立近代美術館の平常展で、展示替されながら
少しずつ展示されているので、藤田の作品も観ることが出来ます。
敗戦後は戦争画を積極的に描いたことで日本に居辛くなり、1949年に日本を去って、
アメリカ経由でフランスに戻っています。
1959年にはカトリックの洗礼を受け、洗礼名をレオナールとします。
「秋」 油彩、カンヴァス 1953年 ポーラ美術館

フランスでは子供を描いた絵を手がけるようになります。
子供好きだったこともありますが、長いブランクを取り戻すため、
親しみやすい画題を選んだということもあるようです。
「つばめと子供」 油彩、カンヴァス 1957年 ポーラ美術館

電線にとまったつばめと塀の上に座る子供たちがシンクロしています。
「誕生日」 油彩、カンヴァス 1958年 ポーラ美術館

お祝いしてもらう子の前にはプレゼントが置かれ、女の子たちはおめかし
していますが、一人やんちゃそうな男の子が交じっています。
窓の外にはそれを見つめる子供たちもいて、社会の一面も垣間見せています。
「ケープをまとった子どもたち」 油彩、厚紙 1956年 ポーラ美術館

スペイン旅行で持ち帰った木製の扉に嵌める小さなパネルの内の1枚です。
胸に十字架を提げているのでカトリックの学校の生徒でしょうか。
後ろにサボテンが描かれています。
1958年からは、小さなパネルにフランスの職業人を子供の姿にして描く
「小さな職人たち」のシリーズを200点近く制作します。
アトリエの壁に飾られていたうちの95点が展示されていて、職業も仕立屋、庭師、
辻音楽師、警官、弁護士などさまざまです。
ライオンを作っている剥製師、人を宙に浮かせる手品師、無理やり歯を抜く歯医者、
鐘を鳴らしながら呼び声を上げる古着屋、銀食器を盗む女泥棒もいます。
ペディキュア師、コルセット職人、心霊治療師という職業も描かれています。
「床屋」 油彩、ファイバーボード 1958年 ポーラ美術館

順番を待つ客が新聞を読んでいる状景はどこの国も同じです。
「御者」 油彩、ファイバーボード 1959年頃 ポーラ美術館

辻馬車の御者はパリのことをよく知っていて、これに乗るとちょっとした
観光旅行が出来ると藤田は書いています。
「風船売り」 油彩、ファイバーボード 1959年頃 ポーラ美術館

リュクサンブール公園でしょうか、大きながま口を提げて風船を掲げています。
多くの仕事は辛く、藤田が挿絵を描いた挿絵本の題名、「しがない職業と
少ない稼ぎ」の通りなのですが、子供の姿を借りてユーモラスに描くことで、
彼らへの共感を表しています。
「ラ・フォンテーヌ頌」 油彩、カンヴァス 1949年 ポーラ美術館

手先の器用な藤田はフランスの田舎家風の理想の家を小さな模型で造り、
それをフランスにも持参しています。
この絵の室内はその模型から採ったもので、他にもその模型(マケット)を
発想の基にしている作品があります。
藤田嗣治の作品を観て最近思うのは、社会の底辺に居る恵まれない人たちへの
眼差しです。
フランスでの初期の作品にはパリの場末の情景が描かれ、「小さな職人たち」は
石炭運びや屑拾いなど、名もない労働者が描かれています。
ホテルオークラ東京で9月1日まで開かれている、「モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の
巨匠たち」展に展示されていた、藤田の「パリ風景」も貧しい母子を題材にしています。
「モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち」展の記事です。
展覧会のHPです。
Bunkamuraザ・ミュージアムの次回の展覧会は「バルビゾンへの道展」です。
会期は10月20日(日)から11月18日(月)までです。

chariot
渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは、「レオナール・フジタ展」が開かれています。
会期は10月14日(月・祝)までで、会期中は無休です。

チラシの作品は「自画像」(水彩、墨、絹本 1929年 ポーラ美術館)です。
エコール・ド・パリの画家として活躍したレオナール・フジタ(藤田嗣治、1886-1968)の
展覧会です。
ポーラ美術館のコレクションを中心に、約200点が展示されています。
1913年にフランスに渡った藤田嗣治はモディリアーニ、パスキン、スーティンなど、
エコール・ド・パリの画家たちと親交を結びます。
ジュール・パスキン 「少女たち」
油彩、パステル、カンヴァス 1923年 ポーラ美術館

アメデオ・モディリアーニ 「ルニア・チェホフスカの肖像」
油彩、カンヴァス 1917年 ポーラ美術館

やがて藤田特有の乳白色の肌と細く均一な線描によ日本画的な感覚の
作品を生み出し、このスタイルで藤田はパリ画壇の寵児となります。
「タピスリーの裸婦」 油彩、カンヴァス 1923年 京都国立近代美術館

背景の花模様が華やかで、猫も登場しています。
しかし第二次世界大戦の勃発により、1940年に帰国し、今度はまったく
画風の異なる戦争画を描くことになります。
戦争画は藤田の画業の中でも重要な部分を占めていますが、藤田を特集する
展覧会でも展示されることは無く、その部分は欠落しています。
日本の画家の描いた戦争画は東京国立近代美術館の平常展で、展示替されながら
少しずつ展示されているので、藤田の作品も観ることが出来ます。
敗戦後は戦争画を積極的に描いたことで日本に居辛くなり、1949年に日本を去って、
アメリカ経由でフランスに戻っています。
1959年にはカトリックの洗礼を受け、洗礼名をレオナールとします。
「秋」 油彩、カンヴァス 1953年 ポーラ美術館

フランスでは子供を描いた絵を手がけるようになります。
子供好きだったこともありますが、長いブランクを取り戻すため、
親しみやすい画題を選んだということもあるようです。
「つばめと子供」 油彩、カンヴァス 1957年 ポーラ美術館

電線にとまったつばめと塀の上に座る子供たちがシンクロしています。
「誕生日」 油彩、カンヴァス 1958年 ポーラ美術館

お祝いしてもらう子の前にはプレゼントが置かれ、女の子たちはおめかし
していますが、一人やんちゃそうな男の子が交じっています。
窓の外にはそれを見つめる子供たちもいて、社会の一面も垣間見せています。
「ケープをまとった子どもたち」 油彩、厚紙 1956年 ポーラ美術館

スペイン旅行で持ち帰った木製の扉に嵌める小さなパネルの内の1枚です。
胸に十字架を提げているのでカトリックの学校の生徒でしょうか。
後ろにサボテンが描かれています。
1958年からは、小さなパネルにフランスの職業人を子供の姿にして描く
「小さな職人たち」のシリーズを200点近く制作します。
アトリエの壁に飾られていたうちの95点が展示されていて、職業も仕立屋、庭師、
辻音楽師、警官、弁護士などさまざまです。
ライオンを作っている剥製師、人を宙に浮かせる手品師、無理やり歯を抜く歯医者、
鐘を鳴らしながら呼び声を上げる古着屋、銀食器を盗む女泥棒もいます。
ペディキュア師、コルセット職人、心霊治療師という職業も描かれています。
「床屋」 油彩、ファイバーボード 1958年 ポーラ美術館

順番を待つ客が新聞を読んでいる状景はどこの国も同じです。
「御者」 油彩、ファイバーボード 1959年頃 ポーラ美術館

辻馬車の御者はパリのことをよく知っていて、これに乗るとちょっとした
観光旅行が出来ると藤田は書いています。
「風船売り」 油彩、ファイバーボード 1959年頃 ポーラ美術館

リュクサンブール公園でしょうか、大きながま口を提げて風船を掲げています。
多くの仕事は辛く、藤田が挿絵を描いた挿絵本の題名、「しがない職業と
少ない稼ぎ」の通りなのですが、子供の姿を借りてユーモラスに描くことで、
彼らへの共感を表しています。
「ラ・フォンテーヌ頌」 油彩、カンヴァス 1949年 ポーラ美術館

手先の器用な藤田はフランスの田舎家風の理想の家を小さな模型で造り、
それをフランスにも持参しています。
この絵の室内はその模型から採ったもので、他にもその模型(マケット)を
発想の基にしている作品があります。
藤田嗣治の作品を観て最近思うのは、社会の底辺に居る恵まれない人たちへの
眼差しです。
フランスでの初期の作品にはパリの場末の情景が描かれ、「小さな職人たち」は
石炭運びや屑拾いなど、名もない労働者が描かれています。
ホテルオークラ東京で9月1日まで開かれている、「モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の
巨匠たち」展に展示されていた、藤田の「パリ風景」も貧しい母子を題材にしています。
「モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち」展の記事です。
展覧会のHPです。
Bunkamuraザ・ミュージアムの次回の展覧会は「バルビゾンへの道展」です。
会期は10月20日(日)から11月18日(月)までです。

- 関連記事
-
- 「再興院展100年記念 速水御舟 ―日本美術院の精鋭たち―」 山種美術館 (2013/09/12)
- 「国宝 興福寺仏頭展」 東京藝術大学大学美術館 (2013/09/10)
- 「レオナール・フジタ展」 渋谷 Bunkamuraザ・ミュージアム (2013/09/08)
- 「オリンピック・パラリンピック報道写真展」 東京駅行幸地下ギャラリー (2013/09/06)
- 「竹内栖鳳展 近代日本画の巨人」 (2013/09/04)