大手町
宮内庁三の丸尚蔵館では開館20周年記念、「美を伝えゆく
-名品にみる20年の歩み-」展が開かれています。
会期は11月24日(日)まで、10月31日(木)までの前期と11月2日(土)からの
後期で一部展示替があります。
休館日は月曜・金曜で、入館は無料です。

前・後期合わせて15点が展示され、貴重な名品の修理事業の様子も紹介されています。
「春日権現験記絵(巻第3)」 1巻(20巻のうち) 鎌倉時代、延慶2年(1309)頃

西園寺公衡が一門の繁栄を願って発願して制作された、春日明神の霊験譚の絵巻で、
絵は絵所預の高階隆兼が描き、書は前関白鷹司基忠父子4人が担当しています。
源俊房に春日明神が乗り移って婿の藤原忠実に対面している場面です。
室内は吹抜屋台、人物の顔は引目鉤鼻で描かれ、襖には山水と騎馬の人物が
描かれています。

「四季草花図屏風」 伝狩野永徳 四曲一隻 安土桃山時代(16世紀)


前期の展示です。
八条宮智仁親王(1579-1629)は後陽成天皇の弟で、豊臣秀吉の猶子となった後、
八条宮家(後の桂宮家)を創設し、現在の桂離宮を造営しています。
この屏風は桂宮家に伝来したもので、二曲一双の屏風の間に四曲一隻の屏風
(画像の絵)を置くと絵柄がつながることから、元は襖絵だったようです。
狩野永徳一門の作と思われ、芍薬、菊、竜胆、百合などが描かれています。
「蔦細道蒔絵文台・硯箱(御在来)」 安土桃山時代(16世紀)

前期の展示です。
蔦の模様の豪華な高蒔絵の文台と硯箱で、「蔦細道」は伊勢物語第9段の、
男が東下りの途中、宇津の山で知り合いの修行者に出会い、都に残した女に
送る歌を託するというお話です。
駿河なる宇津の山辺のうつつにも夢にも人に逢わぬなりけり
画題にもよく選ばれていて、この蒔絵でも蔦と一緒に彫られた笈が修行者を、
結び文が女への手紙を表しています。
宮内庁はこの(御在来)とそっくり同じデザインの、旧高松宮家所蔵と
上杉家所蔵のセットも所蔵しています。
調べてみると、外見は同じでも素材などに違いがあるそうです。
「巌(裏面:風景)」 中村彝 1面 明治42年(1909)

水戸徳川家の献上品で、千葉県白浜の風景です。
調べてみると裏にも風景画が描かれていることが分かりました。
裏面は後期に展示されます。
「萬国絵図屏風」 八曲一双 江戸時代(17世紀)
後期の展示です。
西洋からもたらされた資料を元に日本で作られたと思われる屏風で、
右隻は、画面の上に、トルコや西欧風の騎馬王侯が2人ずつ8人、
剣を振るって戦っています。
下にはポルトガルの地図と、ローマ、ロンドン、パリ、ヴェネツィアなど
各国の28都市の絵図が描かれています。
左隻は、世界地図の左右に世界の人物風俗図が並んでいます。

ヨーロッパの地図はかなり正確です。

日本は北海道がありません。
日本人自身、蝦夷地のことをあまり知らなかった時代です。

日本人の男性は羽織袴を着て、刀を落とし差しにしています。

「動植綵絵(群鶏図、紅葉小禽図)」 伊藤若冲 2幅(30幅のうち)
江戸時代(18世紀)
後期の展示です。
(紅葉小禽図)

枝が斜めに画面を分割する面白い構図で、丸い輪になった枝が眼を惹きます。
若冲が京都の相国寺に釈迦三尊像と共に寄進したもので、明治時代に
皇室に献上されています。
「動植綵絵」全30幅は2009年に東京国立博物館で開かれた、「皇室の名宝
―日本美の華」展に展示され、大きな評判になりました。
「皇室の名宝―日本美の華」展の記事です。
「喪乱帖」 王羲之(搨本) 1幅 中国・唐時代(7世紀)
後期の展示です。


王羲之(おうぎし、303-361)は東晋時代の政治家、書家で、後の時代の書に
多くの影響を与え、書聖と讃えられていますが、真蹟は1点も残っていません。
最初の2行は「羲之頓首 喪乱之極 先墓再離荼毒 追」となっています。
「先墓再離荼毒」とは先祖の墓が匈奴によって荒らされたことを云うそうで、
苦難を深く嘆いた文面です。
王羲之は西晋の出身ですが、西晋は匈奴によって滅ぼされ、東晋が後継国家として
残っています。
点数は少ないですが、貴重な作品揃いで、保存事業の重要性も知ることの出来る
展覧会です。
展覧会のHPです。
宮内庁三の丸尚蔵館の次回の展覧会は「華麗なる近代京焼―有栖川宮家伝来、
幹山伝七の逸品」(仮称)です。
会期は平成26年1月11日(土)から3月23日(日)(予定)です。
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宮内庁三の丸尚蔵館では開館20周年記念、「美を伝えゆく
-名品にみる20年の歩み-」展が開かれています。
会期は11月24日(日)まで、10月31日(木)までの前期と11月2日(土)からの
後期で一部展示替があります。
休館日は月曜・金曜で、入館は無料です。

前・後期合わせて15点が展示され、貴重な名品の修理事業の様子も紹介されています。
「春日権現験記絵(巻第3)」 1巻(20巻のうち) 鎌倉時代、延慶2年(1309)頃

西園寺公衡が一門の繁栄を願って発願して制作された、春日明神の霊験譚の絵巻で、
絵は絵所預の高階隆兼が描き、書は前関白鷹司基忠父子4人が担当しています。
源俊房に春日明神が乗り移って婿の藤原忠実に対面している場面です。
室内は吹抜屋台、人物の顔は引目鉤鼻で描かれ、襖には山水と騎馬の人物が
描かれています。

「四季草花図屏風」 伝狩野永徳 四曲一隻 安土桃山時代(16世紀)


前期の展示です。
八条宮智仁親王(1579-1629)は後陽成天皇の弟で、豊臣秀吉の猶子となった後、
八条宮家(後の桂宮家)を創設し、現在の桂離宮を造営しています。
この屏風は桂宮家に伝来したもので、二曲一双の屏風の間に四曲一隻の屏風
(画像の絵)を置くと絵柄がつながることから、元は襖絵だったようです。
狩野永徳一門の作と思われ、芍薬、菊、竜胆、百合などが描かれています。
「蔦細道蒔絵文台・硯箱(御在来)」 安土桃山時代(16世紀)

前期の展示です。
蔦の模様の豪華な高蒔絵の文台と硯箱で、「蔦細道」は伊勢物語第9段の、
男が東下りの途中、宇津の山で知り合いの修行者に出会い、都に残した女に
送る歌を託するというお話です。
駿河なる宇津の山辺のうつつにも夢にも人に逢わぬなりけり
画題にもよく選ばれていて、この蒔絵でも蔦と一緒に彫られた笈が修行者を、
結び文が女への手紙を表しています。
宮内庁はこの(御在来)とそっくり同じデザインの、旧高松宮家所蔵と
上杉家所蔵のセットも所蔵しています。
調べてみると、外見は同じでも素材などに違いがあるそうです。
「巌(裏面:風景)」 中村彝 1面 明治42年(1909)

水戸徳川家の献上品で、千葉県白浜の風景です。
調べてみると裏にも風景画が描かれていることが分かりました。
裏面は後期に展示されます。
「萬国絵図屏風」 八曲一双 江戸時代(17世紀)
後期の展示です。
西洋からもたらされた資料を元に日本で作られたと思われる屏風で、
右隻は、画面の上に、トルコや西欧風の騎馬王侯が2人ずつ8人、
剣を振るって戦っています。
下にはポルトガルの地図と、ローマ、ロンドン、パリ、ヴェネツィアなど
各国の28都市の絵図が描かれています。
左隻は、世界地図の左右に世界の人物風俗図が並んでいます。

ヨーロッパの地図はかなり正確です。

日本は北海道がありません。
日本人自身、蝦夷地のことをあまり知らなかった時代です。

日本人の男性は羽織袴を着て、刀を落とし差しにしています。


「動植綵絵(群鶏図、紅葉小禽図)」 伊藤若冲 2幅(30幅のうち)
江戸時代(18世紀)
後期の展示です。
(紅葉小禽図)

枝が斜めに画面を分割する面白い構図で、丸い輪になった枝が眼を惹きます。
若冲が京都の相国寺に釈迦三尊像と共に寄進したもので、明治時代に
皇室に献上されています。
「動植綵絵」全30幅は2009年に東京国立博物館で開かれた、「皇室の名宝
―日本美の華」展に展示され、大きな評判になりました。
「皇室の名宝―日本美の華」展の記事です。
「喪乱帖」 王羲之(搨本) 1幅 中国・唐時代(7世紀)
後期の展示です。


王羲之(おうぎし、303-361)は東晋時代の政治家、書家で、後の時代の書に
多くの影響を与え、書聖と讃えられていますが、真蹟は1点も残っていません。
最初の2行は「羲之頓首 喪乱之極 先墓再離荼毒 追」となっています。
「先墓再離荼毒」とは先祖の墓が匈奴によって荒らされたことを云うそうで、
苦難を深く嘆いた文面です。
王羲之は西晋の出身ですが、西晋は匈奴によって滅ぼされ、東晋が後継国家として
残っています。
点数は少ないですが、貴重な作品揃いで、保存事業の重要性も知ることの出来る
展覧会です。
展覧会のHPです。
宮内庁三の丸尚蔵館の次回の展覧会は「華麗なる近代京焼―有栖川宮家伝来、
幹山伝七の逸品」(仮称)です。
会期は平成26年1月11日(土)から3月23日(日)(予定)です。
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後期もいい感じでした。萬国絵図屏風八曲一双思いのほか素晴らしい。喪乱帖は書聖 王羲之展でも見ています。
伊藤若冲は近年人気で宮内庁三の丸尚蔵館でも他の展示でも見ていますし、NHKで嵐の大野君がでた特集番組もありましたが何度見てもいいですね。
伊藤若冲は近年人気で宮内庁三の丸尚蔵館でも他の展示でも見ていますし、NHKで嵐の大野君がでた特集番組もありましたが何度見てもいいですね。
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「美を伝えゆく −名品にみる20年の歩み−」展@宮内庁三の丸尚蔵館に行ってきました。10月31日までが前期。場所柄外国人が多く来ていました。11月2日(土)から後期で一部展示替があります。休館日は月曜・金曜、但し月曜が祝日の場合開館翌火曜休館入館無料。11月2日(土)からは9時ー3時45分開館。展示点数は少ないが貴重な作品揃いで、保存事業の重要性も知ることの出来る展覧会です。春日権現記絵 源...
【2013/10/31 20:01】
【2013/10/31 20:01】
萬国絵図屏風は地図の他にも都市や人物の絵など、見所が多く楽しめる屏風です。
若冲の動植綵絵は何度観ても素晴らしく、また全作品を展示して欲しいものです。
三の丸尚蔵館は貴重な作品を多数所蔵しているので、見逃せません。