三越前
日本橋の三井記念美術館では『楽茶碗と新春の「雪松図」展』が開かれています。
会期は2015年1月25日(土)までです。

楽茶碗とは楽焼の祖、長次郎(?-1589)が千利休の侘び茶の好みに応じて
作り始めた、手捏ねの茶碗です。
京都の町屋の小規模な窯によって低温で焼かれています。
土も特別な物は使われておらず、聚楽第の造成で出た土を使ったとも
云われています。
長次郎に始まる楽家は現在、15代目で、「楽」は豊臣秀吉より賜った、
聚楽第にちなんだ「楽」の字の印章から採ったものとされています。
「黒楽茶碗 銘 俊寛」 長次郎作 桃山時代 16世紀 重要文化財

楽茶碗としては薄手に作られ、見込みには枯れた味わいがあります。
千利休が薩摩の門人の求めで送った三つの茶碗のうち、これだけが
送り返されなかったので、この名が付けられました。
平家によって俊寛ら三人が薩摩の鬼界ヶ島に流され時、他の者は赦免が
かなって都に帰ったのに俊寛だけ島に残された故事によるものです。
黒楽茶碗は素焼きの上に鉄釉を何度もかけてから焼成しています。
「赤楽茶碗 銘 鵺」 道入作 江戸時代 17世紀

見込みはむらむらと赤く、胴に雲のような黒い塊が見えます。
平家物語に出てくる、夜な夜な御所の上に現れて近衛天皇を悩ませ、
源頼政に退治された鵺(ぬえ)になぞらえた名です。
赤楽茶碗は赤土で作って素焼きし、透明釉をかけたものです。
道入(1599-1656)は楽家3代目で、ノンコウとも呼ばれています。
落語の「金明竹」にも「のんこの茶碗」という言葉が出てきます。
「黒楽茶碗 銘 四ツ目」 一入作 江戸時代 17世紀

楽茶碗の自由さを生かして、四角く作られています。
一入(1640-1696)は楽家4代目で、黒釉に赤い斑文の入る朱釉を
完成させています。
「赤楽檜垣の絵茶碗」 左入二百之内 左入作 享保18年(1733)

背が高く口縁が少し開いて、チューリップのような形をしています。
赤色は柔らかく、胴に白釉で軽く絵が描かれています。
左入(1685-1739)は楽家6代目で、享保18年(1733)に赤黒200種の楽茶碗、
左入二百を作っています。
紀州徳川家で焼かれた御庭焼も展示されています。
御庭焼とは大名が邸内で陶工に茶器などを焼かせたものです。
11代藩主、徳川治宝(とくがわはるとみ:1771-1853)は茶人大名で、
京都から楽家3代旦入、京焼の永楽保全、紀州徳川家の茶頭を務める
表千家の9代了々斎、10代吸江斎などを招いています。
「赤楽亀絵茶碗」 徳川治宝画 三井高祐(則兵衛)作 文政2年(1819)

西浜御殿の御庭焼で、この時招かれた三井北家6代、三井高祐が作り、
治宝が亀の絵を描いたものです。
斜めから見た形を上手く出しています。
御庭焼では側室や重臣、藩の茶道方も手作りしています。
三井家は紀州藩領地の伊勢松坂出身であることから、紀州徳川家と
つながりがあり、三井高祐は御庭焼の資材を調達したりして、
協力しています。
徳川治宝は長命で、隠居後も長く藩政に関与したため、やがて反対派が
形成され、治宝の没後に藩内抗争が起きて、西浜御殿は取り壊されています。
茶室の如庵には御所丸茶碗が展示されています。
御所丸茶碗 朝鮮時代・17世紀

御所丸とは桃山時代の朝鮮との御用貿易船のことで、日本の茶人の注文により
朝鮮で焼かれ、朝鮮貿易船で運ばれた品と思われます。
「聚楽第図屏風」 六曲一隻 桃山時代 16世紀


聚楽第は豊臣秀吉が京都に建てた御殿で、甥の豊臣秀次に譲られましたが、
秀次の切腹後に取り壊され、詳しいことは分かっていません。
この屏風では四層以上の高さの天守閣がそびえています。
安土桃山時代の城壁は安土城も大坂城も黒漆を塗った黒壁ですが、
この屏風では白壁です。
天守閣の最上階には高欄をめぐらせ、花頭窓を開けて、城というより
御殿のようです。
天守閣の左下には現在数少ない聚楽第の遺構として残る梅雨の井と思われる
井戸も描かれています。
新春恒例の円山応挙、「雪松図屏風」の展示は1月4日からです。
「雪松図屏風」 円山応挙 江戸時代・18世紀 国宝

左隻

右隻

展覧会のHPです。
次回の展覧会は、春を告げる「三井家のおひなさま」展です。
会期は2014年2月7日(金)から4月6日(日)です。
blogを始めて6年経ちました。
今年もまた多くの方にブログを見ていただき、コメント、拍手、
トラッックバックなども沢山いただき有難うございました。
非公開コメントの方には直接お礼申し上げられませんでしたが、
うれしく読ませていただきました。
2014年も多くの展覧会に出かけ、カフェにも立ち寄って記事を
書きたいと思っていますので、よろしくお願い申し上げます。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。
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日本橋の三井記念美術館では『楽茶碗と新春の「雪松図」展』が開かれています。
会期は2015年1月25日(土)までです。

楽茶碗とは楽焼の祖、長次郎(?-1589)が千利休の侘び茶の好みに応じて
作り始めた、手捏ねの茶碗です。
京都の町屋の小規模な窯によって低温で焼かれています。
土も特別な物は使われておらず、聚楽第の造成で出た土を使ったとも
云われています。
長次郎に始まる楽家は現在、15代目で、「楽」は豊臣秀吉より賜った、
聚楽第にちなんだ「楽」の字の印章から採ったものとされています。
「黒楽茶碗 銘 俊寛」 長次郎作 桃山時代 16世紀 重要文化財

楽茶碗としては薄手に作られ、見込みには枯れた味わいがあります。
千利休が薩摩の門人の求めで送った三つの茶碗のうち、これだけが
送り返されなかったので、この名が付けられました。
平家によって俊寛ら三人が薩摩の鬼界ヶ島に流され時、他の者は赦免が
かなって都に帰ったのに俊寛だけ島に残された故事によるものです。
黒楽茶碗は素焼きの上に鉄釉を何度もかけてから焼成しています。
「赤楽茶碗 銘 鵺」 道入作 江戸時代 17世紀

見込みはむらむらと赤く、胴に雲のような黒い塊が見えます。
平家物語に出てくる、夜な夜な御所の上に現れて近衛天皇を悩ませ、
源頼政に退治された鵺(ぬえ)になぞらえた名です。
赤楽茶碗は赤土で作って素焼きし、透明釉をかけたものです。
道入(1599-1656)は楽家3代目で、ノンコウとも呼ばれています。
落語の「金明竹」にも「のんこの茶碗」という言葉が出てきます。
「黒楽茶碗 銘 四ツ目」 一入作 江戸時代 17世紀

楽茶碗の自由さを生かして、四角く作られています。
一入(1640-1696)は楽家4代目で、黒釉に赤い斑文の入る朱釉を
完成させています。
「赤楽檜垣の絵茶碗」 左入二百之内 左入作 享保18年(1733)

背が高く口縁が少し開いて、チューリップのような形をしています。
赤色は柔らかく、胴に白釉で軽く絵が描かれています。
左入(1685-1739)は楽家6代目で、享保18年(1733)に赤黒200種の楽茶碗、
左入二百を作っています。
紀州徳川家で焼かれた御庭焼も展示されています。
御庭焼とは大名が邸内で陶工に茶器などを焼かせたものです。
11代藩主、徳川治宝(とくがわはるとみ:1771-1853)は茶人大名で、
京都から楽家3代旦入、京焼の永楽保全、紀州徳川家の茶頭を務める
表千家の9代了々斎、10代吸江斎などを招いています。
「赤楽亀絵茶碗」 徳川治宝画 三井高祐(則兵衛)作 文政2年(1819)

西浜御殿の御庭焼で、この時招かれた三井北家6代、三井高祐が作り、
治宝が亀の絵を描いたものです。
斜めから見た形を上手く出しています。
御庭焼では側室や重臣、藩の茶道方も手作りしています。
三井家は紀州藩領地の伊勢松坂出身であることから、紀州徳川家と
つながりがあり、三井高祐は御庭焼の資材を調達したりして、
協力しています。
徳川治宝は長命で、隠居後も長く藩政に関与したため、やがて反対派が
形成され、治宝の没後に藩内抗争が起きて、西浜御殿は取り壊されています。
茶室の如庵には御所丸茶碗が展示されています。
御所丸茶碗 朝鮮時代・17世紀

御所丸とは桃山時代の朝鮮との御用貿易船のことで、日本の茶人の注文により
朝鮮で焼かれ、朝鮮貿易船で運ばれた品と思われます。
「聚楽第図屏風」 六曲一隻 桃山時代 16世紀


聚楽第は豊臣秀吉が京都に建てた御殿で、甥の豊臣秀次に譲られましたが、
秀次の切腹後に取り壊され、詳しいことは分かっていません。
この屏風では四層以上の高さの天守閣がそびえています。
安土桃山時代の城壁は安土城も大坂城も黒漆を塗った黒壁ですが、
この屏風では白壁です。
天守閣の最上階には高欄をめぐらせ、花頭窓を開けて、城というより
御殿のようです。
天守閣の左下には現在数少ない聚楽第の遺構として残る梅雨の井と思われる
井戸も描かれています。
新春恒例の円山応挙、「雪松図屏風」の展示は1月4日からです。
「雪松図屏風」 円山応挙 江戸時代・18世紀 国宝

左隻

右隻

展覧会のHPです。
次回の展覧会は、春を告げる「三井家のおひなさま」展です。
会期は2014年2月7日(金)から4月6日(日)です。
blogを始めて6年経ちました。
今年もまた多くの方にブログを見ていただき、コメント、拍手、
トラッックバックなども沢山いただき有難うございました。
非公開コメントの方には直接お礼申し上げられませんでしたが、
うれしく読ませていただきました。
2014年も多くの展覧会に出かけ、カフェにも立ち寄って記事を
書きたいと思っていますので、よろしくお願い申し上げます。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。
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今年もよろしくお願いいたします。