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「観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-」 東京藝術大学大学美術館
上野
chariot

上野の東京藝術大学大学美術館では展示室1で「藝大コレクション展
-春の名品選-」が開かれています。
展示室2では「観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-」が
開かれています。
ともに会期は4月13日(日)までです。

コレ001


「観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-」について書きます。

滋賀県北部の長浜を中心とした湖北地方には多くの観音菩薩像が伝わっています。
平安時代に栄えた寺院群がやがて衰え、廃絶した後も湖北地方では中世以降の
自治組織である惣村がこれらの彫刻を守り伝え、今日に至っています。

展覧会ではこれらの平安時代を中心にした観音菩薩像、18体が出展されています。

「十一面観音立像」 奈良-平安時代・8世紀末-9世紀初頭
 菅山寺・余呉町坂口 長浜市指定文化財

観001
木芯乾漆像で、滋賀県には4体しかない珍しい作例です。
菅山寺は菅原道真の中興による寺院で、平安鎌倉期には栄えましたが、
現在は無住です。

「千手観音立像」 平安時代・9世紀 
 日吉神社(赤後寺)・高月町唐川 重要文化財

観006

ヒノキの一木造で、量感のある体躯をしていて、一部に漆や金箔が残っています。
衣文は平安前期の特徴の翻波式です。
羽柴秀吉と柴田勝家が戦った賤ヶ岳の戦い(1583年)の兵火を免れるため
川に沈めて守ったこともあり、そのためか手先がすべて欠けています。
境内には沈める時に重石として使ったという枕石も置かれています。

「如来形立像(いも観音)」 平安時代・10世紀 
 安念寺・木之本町西黒田

観002

ヒノキとみられる一木造で、一部に漆が残っています。
元亀2年(1571)の織田信長による兵火を免れるため、田の土の中に
埋められていたので、腐食が進んでこのような姿になったということです。
疱瘡や皮膚病に効験のある「身代わり観音」として信仰され、昭和の初めまでは
夏に子どもたちがこの仏様を余呉川に浮かべて水遊びをしていたそうです。
痛々しいお姿ですが、仏の幻が現れてくるように見えます。

「十一面観音立像」 平安時代・10世紀-11世紀前半 
 善隆寺(和蔵堂)・西浅井町山門 重要文化財

観003

サクラと思われる広葉樹の一木造です。
4軒による観音講によって1年毎の持ち回りで維持管理されていて、
毎年8月9日に千日参りの法要が営まれています。
4軒は宗派が違うので、法要の場の荘厳(しょうごん)も変わるそうです。

「千手観音立像」 平安時代・12世紀 総持寺・宮司町
観005

12世紀の定朝様式による像で、丸顔に丸い肩、彫りは浅く、優美な印象の姿です。
同じ平安時代でも時期によって像の形、雰囲気が変わってくることが分かります。
総持寺は真言宗の寺院で、元亀元年(1570)の織田・徳川軍と浅井・朝倉軍の
戦った姉川の合戦の兵火で消失していますが、豊臣秀吉の寄進によって再興しています。

「聖観音坐像」 平安時代・12世紀 
 阿弥陀寺・西浅井町菅浦 重要文化財

観004
菅浦は中世の惣村の資料として有名な菅浦文書の書かれた所です。
元は同じ集落にあった氏寺の長福寺に伝来した仏像で、現在は時宗の
阿弥陀寺にあります。
丸顔の丸い肩という、12世紀の仏像の特徴を持っています。

「十一面観音立像(腹帯観音)」 平安時代・12世紀 
 大浦十一面腹帯観音堂・西浅井町大浦

観007

元は大浦八幡宮奥の院の観音寺にあり、織田信長による兵火を免れるため
土の中に埋められていたことがあるそうです。
明治時代の神仏分離令により移され、現在は住民組織によって守られています。
カヤの一木造で、ほっそりとしなやかな印象の像で、少しお腹の張った姿の故か、
子授け、安産祈願の信仰を集め、腹帯を巻いた姿で祀られています。
今も申し出があると実際にお腹に巻かれたサラシの腹帯が授与されます。

大浦十一面腹帯観音堂のHPです。

湖北地方に観音像が多く残されているのは、かつて己高山(こだかみやま)で
盛んだった山岳信仰の影響と思われるとのことです。
近江は比叡山の天台宗の影響の強かった地ですが、室町時代に蓮如によって
浄土真宗が広まっています。
伝えられてきた観音像は宗派を超えてそれらの住民によって大切に守られて
きたものです。

実際に現地を訪れる機会の得にくい諸仏を拝観できる、とても貴重な展覧会です。

展覧会のHPです。

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【2014/03/24 20:22】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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