日比谷・有楽町
日比谷の出光美術館では日本の美・発見IXとして、「日本絵画の魅力展」が
開かれています。
会期は前期が5月6日(火・祝)まで、後期は5月9日(金)から
6月8日(日)までです。

出光美術館の日本絵画コレクションの代表的な作品を展示するもので、
前期と後期ですべて展示替え、あるいは場面替えがあります。
前期の入場券には後期を500円で鑑賞できる割引券が付いています。
「四季花鳥図屏風」 能阿弥 応仁3年(1469) 四曲一双 重要文化財


前期の展示です。
牧谿に傾倒していた能阿弥が牧谿風に描いた水墨花鳥図です。
白鷺の飛ぶ靄のかかったような空間や蓮の表現に潤いがあります。
浄土真宗佛光寺の経豪が寺務を引き継いだ時のお祝いに描かれたものです。
この絵の2年前に応仁の乱が始まっていて、佛光寺も兵火に焼かれる
ことになります。
「松に鴉・柳に白鷺図屏風」 長谷川等伯 桃山時代 六曲一双
左隻

右隻


前期の展示です。
右隻に松に巣を作る鴉、左隻に柳と白鷺で、黒と白の対比です。
花鳥画で黒い鳥を描くときは叭々鳥を使うのが普通で、鴉は珍しい
とのことです。
鴉は親鳥と雛の家族のように描かれていて、とても優しい
顔をしています。
巣の下にタンポポがあり、生命の生まれる春の情景です。
花鳥画では季節の草花を何種類も描くことが多いのに対して、
等伯はタンポポ一つだけで
かえって春を強く意識させているそうです。
屏風を調べてみると、作者の等伯の字が消され、雪舟等楊と書かれた
跡があるとのことで、今では人気の長谷川等伯も一時は忘れられた
存在であったことを示しているそうです。
江戸名所図 屏風(部分) 八曲一双 江戸時代

前期の展示です。
現存する江戸図では最古で、寛永の頃の江戸の賑わいを、屏風の右を北、
左を南にして描いています。
右隻には、寛永寺、浅草寺、湯島天神、神田明神、神田川、日本橋
などが見えます。
左隻は江戸城天守閣、銀座、旧吉原、愛宕社、増上寺、芝浦海岸、
東海道などです。
三社祭、櫓を上げた歌舞伎小屋、軽業の舞台、湯女風呂、子供たちの輪踊り、
柄杓を持った勧進僧、刀を抜いての喧嘩、盲人の琵琶法師に吠えかかる犬
なども描かれています。
これは神田明神での演能の場面です。
楼門、舞台、拝殿、本殿が見えます。
現在もこの絵と同じ場所に、松下幸之助の寄贈した舞台が建っています。
「更衣美人図」 喜多川歌麿 江戸時代 重要文化財

前期の展示です。
すらりと立つ美人は薄い夏衣に着替えているところです。
粋な黒が襦袢の赤と釣合っています。
足元に広がる解けた帯が目を惹き、水から立ち上がった花が
咲いているようです。
「梅花書屋図」(部分) 田能村竹田 天保3年(1832年) 重要文化財


前期の展示です。
大きな画面の文人画で、ゆるやかに流れる川の岸には白梅が咲き誇り、
道を行く三人の人物が手前に見えます。
中景に書斎があり、二人の人物が語り合っていて、遠景の書斎では
一人が書を読んでいます。
春らしい明るい色彩で、文人たちの理想郷を描いた清雅な作品ですが、
これは友である頼山陽が亡くなったのを悼んで描いた作品とのことです。
「月に秋草図屏風」 右隻(部分) 伝 俵屋宗達 江戸時代

前期の展示です。
六曲一双の金屏風に薄、萩、桔梗など秋の草を散らし、銀泥で半月を描いています。
疎らに置かれた草花は空間の広がりを思わせ、しみじみとした秋の情緒に
満ちています。
俵屋宗達の工房の作ですが、質の高さから宗達自身が描いたのではないかと
言われているとのことです。
「風神雷神図屏風」 酒井抱一 二曲一双 江戸時代

前期の展示です。
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を尾形光琳が模写し、さらにそれを酒井抱一が
模写したものです。
琳派の継承の流れを伝える作品ですが、宗達に比べ抱一の風神雷神は顔が
かなり優しくなっています。

東京国立博物館で5月18日まで開かれている、「栄西と建仁寺展」では
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」が展示されています。
東京国立博物館の本館では5月18日まで尾形光琳の「風神雷神図屏風」も
展示されているので、3つの「風神雷神図」が揃うことになります。
「栄西と建仁寺展」の記事です。
英一蝶「四季日待図巻」 元禄11年~宝永6年(1698~1709) 重要文化財
前期と後期で場面替えがあります。
「日待」は、日の出を拝むため、集まって夜を明かす行事とのことです。
前期の場面では、酒を飲んだり、碁を打ったり、瓢箪を的に弓を射たりと、
人々が賑やかに楽しんでいます。
修験者がお勤めをしている後ろで、団扇であおいでいる小僧さんは居眠りを
しています。
お座敷で琴や三味線に合わせ、笠を掲げて踊る女性の姿はいかにも軽やかで、
その場の盛上がりが伝わります。
「老人六歌仙画賛」 仙厓 江戸時代

前期の展示です。
老人で仕立てた六歌仙図です。
画賛は、「しわかよるほ黒か出ける腰曲る(皺が寄るホクロが出来る腰曲がる)」
に始まり、「達者自まんに人はいやかる(達者自慢に人は嫌がる)」で終ります。
古くからある歌のようですが、読んで思わず笑ってしまいます。
クリックすると拡大されて、解説書きも読めます。
陶芸は、柿右衛門、古伊万里、古九谷などが展示されています。
この展覧会は、絵巻、仏画、水墨画、やまと絵、風俗画、浮世絵、文人画、
琳派、等伯、仙厓といった、出光美術館の各ジャンルのコレクションを
まとめて観ることのできる、とても良い機会です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は「没後90年 鉄斎 TESSAI」です。
会期は6月14日(土)から8月3日(日)までです。

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日比谷の出光美術館では日本の美・発見IXとして、「日本絵画の魅力展」が
開かれています。
会期は前期が5月6日(火・祝)まで、後期は5月9日(金)から
6月8日(日)までです。

出光美術館の日本絵画コレクションの代表的な作品を展示するもので、
前期と後期ですべて展示替え、あるいは場面替えがあります。
前期の入場券には後期を500円で鑑賞できる割引券が付いています。
「四季花鳥図屏風」 能阿弥 応仁3年(1469) 四曲一双 重要文化財


前期の展示です。
牧谿に傾倒していた能阿弥が牧谿風に描いた水墨花鳥図です。
白鷺の飛ぶ靄のかかったような空間や蓮の表現に潤いがあります。
浄土真宗佛光寺の経豪が寺務を引き継いだ時のお祝いに描かれたものです。
この絵の2年前に応仁の乱が始まっていて、佛光寺も兵火に焼かれる
ことになります。
「松に鴉・柳に白鷺図屏風」 長谷川等伯 桃山時代 六曲一双
左隻

右隻


前期の展示です。
右隻に松に巣を作る鴉、左隻に柳と白鷺で、黒と白の対比です。
花鳥画で黒い鳥を描くときは叭々鳥を使うのが普通で、鴉は珍しい
とのことです。
鴉は親鳥と雛の家族のように描かれていて、とても優しい
顔をしています。
巣の下にタンポポがあり、生命の生まれる春の情景です。
花鳥画では季節の草花を何種類も描くことが多いのに対して、
等伯はタンポポ一つだけで
かえって春を強く意識させているそうです。
屏風を調べてみると、作者の等伯の字が消され、雪舟等楊と書かれた
跡があるとのことで、今では人気の長谷川等伯も一時は忘れられた
存在であったことを示しているそうです。
江戸名所図 屏風(部分) 八曲一双 江戸時代

前期の展示です。
現存する江戸図では最古で、寛永の頃の江戸の賑わいを、屏風の右を北、
左を南にして描いています。
右隻には、寛永寺、浅草寺、湯島天神、神田明神、神田川、日本橋
などが見えます。
左隻は江戸城天守閣、銀座、旧吉原、愛宕社、増上寺、芝浦海岸、
東海道などです。
三社祭、櫓を上げた歌舞伎小屋、軽業の舞台、湯女風呂、子供たちの輪踊り、
柄杓を持った勧進僧、刀を抜いての喧嘩、盲人の琵琶法師に吠えかかる犬
なども描かれています。
これは神田明神での演能の場面です。
楼門、舞台、拝殿、本殿が見えます。
現在もこの絵と同じ場所に、松下幸之助の寄贈した舞台が建っています。
「更衣美人図」 喜多川歌麿 江戸時代 重要文化財

前期の展示です。
すらりと立つ美人は薄い夏衣に着替えているところです。
粋な黒が襦袢の赤と釣合っています。
足元に広がる解けた帯が目を惹き、水から立ち上がった花が
咲いているようです。
「梅花書屋図」(部分) 田能村竹田 天保3年(1832年) 重要文化財


前期の展示です。
大きな画面の文人画で、ゆるやかに流れる川の岸には白梅が咲き誇り、
道を行く三人の人物が手前に見えます。
中景に書斎があり、二人の人物が語り合っていて、遠景の書斎では
一人が書を読んでいます。
春らしい明るい色彩で、文人たちの理想郷を描いた清雅な作品ですが、
これは友である頼山陽が亡くなったのを悼んで描いた作品とのことです。
「月に秋草図屏風」 右隻(部分) 伝 俵屋宗達 江戸時代

前期の展示です。
六曲一双の金屏風に薄、萩、桔梗など秋の草を散らし、銀泥で半月を描いています。
疎らに置かれた草花は空間の広がりを思わせ、しみじみとした秋の情緒に
満ちています。
俵屋宗達の工房の作ですが、質の高さから宗達自身が描いたのではないかと
言われているとのことです。
「風神雷神図屏風」 酒井抱一 二曲一双 江戸時代

前期の展示です。
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を尾形光琳が模写し、さらにそれを酒井抱一が
模写したものです。
琳派の継承の流れを伝える作品ですが、宗達に比べ抱一の風神雷神は顔が
かなり優しくなっています。

東京国立博物館で5月18日まで開かれている、「栄西と建仁寺展」では
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」が展示されています。
東京国立博物館の本館では5月18日まで尾形光琳の「風神雷神図屏風」も
展示されているので、3つの「風神雷神図」が揃うことになります。
「栄西と建仁寺展」の記事です。
英一蝶「四季日待図巻」 元禄11年~宝永6年(1698~1709) 重要文化財
前期と後期で場面替えがあります。
「日待」は、日の出を拝むため、集まって夜を明かす行事とのことです。
前期の場面では、酒を飲んだり、碁を打ったり、瓢箪を的に弓を射たりと、
人々が賑やかに楽しんでいます。
修験者がお勤めをしている後ろで、団扇であおいでいる小僧さんは居眠りを
しています。
お座敷で琴や三味線に合わせ、笠を掲げて踊る女性の姿はいかにも軽やかで、
その場の盛上がりが伝わります。
「老人六歌仙画賛」 仙厓 江戸時代

前期の展示です。
老人で仕立てた六歌仙図です。
画賛は、「しわかよるほ黒か出ける腰曲る(皺が寄るホクロが出来る腰曲がる)」
に始まり、「達者自まんに人はいやかる(達者自慢に人は嫌がる)」で終ります。
古くからある歌のようですが、読んで思わず笑ってしまいます。
クリックすると拡大されて、解説書きも読めます。
陶芸は、柿右衛門、古伊万里、古九谷などが展示されています。
この展覧会は、絵巻、仏画、水墨画、やまと絵、風俗画、浮世絵、文人画、
琳派、等伯、仙厓といった、出光美術館の各ジャンルのコレクションを
まとめて観ることのできる、とても良い機会です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は「没後90年 鉄斎 TESSAI」です。
会期は6月14日(土)から8月3日(日)までです。

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blog_name=【Star Prince JUGEM】 ♥ 日本の美・発見? 日本絵画の魅惑
4月5日から出光美術館で開催されている日本の美・発見? 日本絵画の魅惑に行ってきました。
展覧会の構成は
1絵巻ーアニメ映画の源流 2仏画ー畏れと救いのかたち 3室町時代水墨画ー禅の精神の表現が芸術へ
4室町時代やまと絵屏風ー華麗なる屏風の世界 5近世初期風俗画ー日常に潜む人生の機微を描く
6寛文美人図と初期浮世絵ー洗練されゆく人間美 7黄金期の浮世絵ー妖艶な人間美
8文人画ー自娯...
【2014/04/20 06:42】
【2014/04/20 06:42】