みなとみらい
横浜美術館では、開館25周年記念、「魅惑のニッポン木版画展」が
開かれています。
会期は5月25日(日)までで、木曜日は休館です。

江戸時代、浮世絵の隆盛によって日本に定着した木版画の数々を紹介する
展覧会で、幕末から現代にかけての約200点が展示されています。
歌川国芳 「ほふづきづくし 夕立」 1842年(天保13)頃 横浜美術館

歌川国芳(1798-1861)は幕末を代表する浮世絵師で、大判3枚続きの
大画面を使った迫力のある作品が特に有名です。
ほおづきの形をした人や犬が夕立に遭って逃げ惑っています。
「ほふづきづくし」には、「韓信の股くぐり」をしているのもあり、
江戸の洒落を見せています。
月岡芳年 「風俗三十二相 けむさう 享和年間内室之風俗」
1888年(明治21) 横浜美術館

月岡芳年(1839-92)は幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師で、
歌川国芳に学び、多くの歴史画や風俗画などを手掛けています。
蚊遣りを焚いて団扇を使っている女性で、いかにも煙そうな顔をしています。
明治時代の作品ですが、江戸の歌麿風で、煙の線に動きがあります。
小林清親 「両国花火之図」 1880年(明治13) 横浜美術館

小林清親(1847-1915)は鳥羽伏見の戦いにも参加した幕臣で、
明治になってから西洋画を取入れ、光と影を強調した光線画と
呼ばれる浮世絵を描いて、人気を得ています。
両国の花火の情景で、川遊びの船と人がシルエットとなって浮かび、
花火は大きな円光となった、一種宇宙的な光景です。
花火に喜ぶ人々の姿には何か郷愁を誘うものがあります。
川瀬巴水 「東京十二題 こま形河岸」 1919年(大正8) 横浜美術館

川瀬巴水(1883~1957)は大正から昭和にかけて活躍した風景版画家です。
新版画という、江戸の浮世絵の技法を受け継ぎながら新しい芸術を目指した
版画を制作し、日本各地の風景を叙情的に描いています。
大川端の竹屋の景色で、立て並べた竹の隙間から隅田川や夏の雲が
のぞいています。
馬は動かず、荷車の男も眠っていて、時が止まっているようです。
長谷川潔 「風(イェーツの詩に寄す)」 1915年(大正4) 横浜美術館

長谷川潔(1891-1980)は深い黒色を基調にした銅版画の技法で有名ですが、
初期には木版画を制作しています。
恩地孝四郎 「ダイビング」 1936年(昭和11) 横浜美術館

恩地孝四郎(1891-1955)は日本の版画を芸術の領域に高めた一人で、
戦後は抽象版画に取組んでいます。
雲よりも上を女性のダイバーが跳ぶ大胆な構図で、単純化された画面は
モダンです。
恩地孝四郎 『東京駅 「東京回顧図絵」より』
1945年(昭和20) 横浜美術館

終戦の年の12月に恩地孝四郎、川上澄生、平塚運一、前川千帆、
関野準一郎、斎藤清らの作品を集めて刊行された版画集です。
東京駅の駅舎が空襲で破壊されたのはこの年の5月25日のことです。
平和な時代の光景で、アーケードに差す夏の日は高く、洋装と和装の
女性が交じり、男性はパナマ帽を被っています。
棟方志功 「華狩頌」 1954年(昭和29) 日本民藝館

隙間なく花で埋められた大きな画面いっぱいに人馬や動物が駆け違い、
空には鳥が飛んでいます。
高句麗壁画に着想を得た、縦横を強調した活き活きとした作品で、
作者によれば心の矢で花を狩っているそうです。
ポール・ジャクレー 「黒い蓮華、中国」 1959年(昭和34) 横浜美術館

ポール・ジャクレー(1896-1960)はパリ生まれで、お雇い外国人の子として
4歳の時に来日し、生涯を日本で過ごしています。
日本文化に深く傾倒し、鏑木清方の兄弟弟子の池田輝方、蕉園夫妻に
日本画を習っています。
日本、中国、南洋諸島の女性を題材にした木版画を数多く制作し、
水彩画も描いています。
ジャクレーの木版画はのびやかで明快なのが特徴です。
チャールズ・バートレット、ヘレン・ハイド、バーサ・ラム、
エミール・オルリックなど、日本の版画を学んだ外国人の作家の
作品も展示されています。
桐月沙樹 「ナミマノダンサー」 2011年(平成23) 個人蔵

木目を活かした木版画らしい作品で、ダンサーが軽やかに舞っています。
色調は淡く上品で、洗練された雰囲気があります。
風間サチ子 「噫!怒涛の閉塞艦」 2012年(平成24) 東京都現代美術館

大きな作品で、東京電力本社ビルの乗った軍艦は押し寄せる波に傾き、
発電所が爆発しています。
戦艦陸奥や原子力船むつが浮かび、遠くにはキノコ雲が上がっています。
東日本大震災の原発事故を基にしていて、風間さんは批評精神にあふれた
作品を制作しています。
他に橋口五葉、竹久夢二、北岡文雄らの作品もあって、多くの作家の作品を
通じて、浮世絵に始まり芸術としてさまざまな広がりを見せてきた日本の
木版画の歩みをたどることの出来る、とても面白い展覧会です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は、「ヨコハマトリエンナーレ2014」です。
会期は8月1日(金)から11月3日(月)までです。

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横浜美術館では、開館25周年記念、「魅惑のニッポン木版画展」が
開かれています。
会期は5月25日(日)までで、木曜日は休館です。

江戸時代、浮世絵の隆盛によって日本に定着した木版画の数々を紹介する
展覧会で、幕末から現代にかけての約200点が展示されています。
歌川国芳 「ほふづきづくし 夕立」 1842年(天保13)頃 横浜美術館

歌川国芳(1798-1861)は幕末を代表する浮世絵師で、大判3枚続きの
大画面を使った迫力のある作品が特に有名です。
ほおづきの形をした人や犬が夕立に遭って逃げ惑っています。
「ほふづきづくし」には、「韓信の股くぐり」をしているのもあり、
江戸の洒落を見せています。
月岡芳年 「風俗三十二相 けむさう 享和年間内室之風俗」
1888年(明治21) 横浜美術館

月岡芳年(1839-92)は幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師で、
歌川国芳に学び、多くの歴史画や風俗画などを手掛けています。
蚊遣りを焚いて団扇を使っている女性で、いかにも煙そうな顔をしています。
明治時代の作品ですが、江戸の歌麿風で、煙の線に動きがあります。
小林清親 「両国花火之図」 1880年(明治13) 横浜美術館

小林清親(1847-1915)は鳥羽伏見の戦いにも参加した幕臣で、
明治になってから西洋画を取入れ、光と影を強調した光線画と
呼ばれる浮世絵を描いて、人気を得ています。
両国の花火の情景で、川遊びの船と人がシルエットとなって浮かび、
花火は大きな円光となった、一種宇宙的な光景です。
花火に喜ぶ人々の姿には何か郷愁を誘うものがあります。
川瀬巴水 「東京十二題 こま形河岸」 1919年(大正8) 横浜美術館

川瀬巴水(1883~1957)は大正から昭和にかけて活躍した風景版画家です。
新版画という、江戸の浮世絵の技法を受け継ぎながら新しい芸術を目指した
版画を制作し、日本各地の風景を叙情的に描いています。
大川端の竹屋の景色で、立て並べた竹の隙間から隅田川や夏の雲が
のぞいています。
馬は動かず、荷車の男も眠っていて、時が止まっているようです。
長谷川潔 「風(イェーツの詩に寄す)」 1915年(大正4) 横浜美術館

長谷川潔(1891-1980)は深い黒色を基調にした銅版画の技法で有名ですが、
初期には木版画を制作しています。
恩地孝四郎 「ダイビング」 1936年(昭和11) 横浜美術館

恩地孝四郎(1891-1955)は日本の版画を芸術の領域に高めた一人で、
戦後は抽象版画に取組んでいます。
雲よりも上を女性のダイバーが跳ぶ大胆な構図で、単純化された画面は
モダンです。
恩地孝四郎 『東京駅 「東京回顧図絵」より』
1945年(昭和20) 横浜美術館

終戦の年の12月に恩地孝四郎、川上澄生、平塚運一、前川千帆、
関野準一郎、斎藤清らの作品を集めて刊行された版画集です。
東京駅の駅舎が空襲で破壊されたのはこの年の5月25日のことです。
平和な時代の光景で、アーケードに差す夏の日は高く、洋装と和装の
女性が交じり、男性はパナマ帽を被っています。
棟方志功 「華狩頌」 1954年(昭和29) 日本民藝館

隙間なく花で埋められた大きな画面いっぱいに人馬や動物が駆け違い、
空には鳥が飛んでいます。
高句麗壁画に着想を得た、縦横を強調した活き活きとした作品で、
作者によれば心の矢で花を狩っているそうです。
ポール・ジャクレー 「黒い蓮華、中国」 1959年(昭和34) 横浜美術館

ポール・ジャクレー(1896-1960)はパリ生まれで、お雇い外国人の子として
4歳の時に来日し、生涯を日本で過ごしています。
日本文化に深く傾倒し、鏑木清方の兄弟弟子の池田輝方、蕉園夫妻に
日本画を習っています。
日本、中国、南洋諸島の女性を題材にした木版画を数多く制作し、
水彩画も描いています。
ジャクレーの木版画はのびやかで明快なのが特徴です。
チャールズ・バートレット、ヘレン・ハイド、バーサ・ラム、
エミール・オルリックなど、日本の版画を学んだ外国人の作家の
作品も展示されています。
桐月沙樹 「ナミマノダンサー」 2011年(平成23) 個人蔵

木目を活かした木版画らしい作品で、ダンサーが軽やかに舞っています。
色調は淡く上品で、洗練された雰囲気があります。
風間サチ子 「噫!怒涛の閉塞艦」 2012年(平成24) 東京都現代美術館

大きな作品で、東京電力本社ビルの乗った軍艦は押し寄せる波に傾き、
発電所が爆発しています。
戦艦陸奥や原子力船むつが浮かび、遠くにはキノコ雲が上がっています。
東日本大震災の原発事故を基にしていて、風間さんは批評精神にあふれた
作品を制作しています。
他に橋口五葉、竹久夢二、北岡文雄らの作品もあって、多くの作家の作品を
通じて、浮世絵に始まり芸術としてさまざまな広がりを見せてきた日本の
木版画の歩みをたどることの出来る、とても面白い展覧会です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は、「ヨコハマトリエンナーレ2014」です。
会期は8月1日(金)から11月3日(月)までです。

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