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「物語絵 ―〈ことば〉と〈かたち〉―」展 出光美術館
日比谷・有楽町
chariot

日比谷の出光美術館では、「物語絵 ―〈ことば〉と〈かたち〉―」展が開かれています。
会期は2月15日(日)までです。

物語001


物語絵は仏教説話や古典文学の一場面を絵に表したものですが、読む者、聞く者は
絵を元に物語のイメージを作り上げることもあります。
源氏物語を読むとき、「若紫」や「紅葉賀」など、逆に源氏絵から場面を想像したりもします。
展覧会ではその「ことば」と「かたち」が密接に絡み合う、物語絵の世界を見せてくれます。

「平家物語 小督図屏風(和漢故事人物図屏風のうち)」(部分) 狩野尚信 
六曲一双のうち 江戸時代・17世紀

物語001

平家物語の一節で、高倉天皇の寵を受けた小督(こごう)は、
娘の建礼門院徳子にとって邪魔な存在であるとして平清盛に
追放され、嵯峨野に隠棲しますが、帝の命で行方を捜していた
源仲国は琴の音をたよりに小督の居所を捜しあてます。
墨絵の静けさの広がる中、人物のところに淡く彩色を施してあり、
琴の音も聞こえてきそうな風情です。

 峰の嵐か松風か 尋ぬる人の琴の音か 
 おぼつかなくは思へども 駒を速めて行くほどに

「源氏物語図」(部分) 六曲一双 岩佐勝友 江戸時代・17世紀
屏風6-18-2010_005

源氏物語五十四帖の各場面を右隻、左隻に二十七帖づつ並べた屏風です。
場面を分ける金箔の雲にも卍型の模様が浮き出ていて、とても豪華です。
これは宇治十帖のうち、浮舟の段で、匂宮が浮舟を連れ出して小舟で宇治川を
渡っているところです。
雪の日の宇治川に浮かぶ小舟の情景は、ロマンチックで絵画的です。

岩佐勝友は経歴不明ですが、人物の顔の特徴や大きな動作などの表現から
岩佐又兵衛の縁者とらしいということです。
「花宴」では、源氏が朧月夜の君を抱き寄せ、「須磨の」では、他の源氏絵には
見られない雷神や嵐に逃げ惑う人びとが描かれるなど、生々しい表現が特徴です。

「平家物語 一の谷・屋島・壇ノ浦合戦図屏風」(部分) 八曲一双 江戸時代・17世紀
物語003

屋島の合戦で那須与一が扇の的を射落とす場面です。
一の谷に始まり壇ノ浦に終わる源平合戦を右隻から左隻にかけて描いた屏風で、
大勢の軍兵をびっしりと描き込み、色彩も濃厚で、迫力に満ちています。
一の谷での義経の鵯越え、熊谷直実と平敦盛、壇ノ浦での義経の八艘飛びなどの
場面も見えます。
左隻は二位尼と安徳天皇の入水で終わっています。

「西行物語絵巻 第四巻」(部分) 絵:俵屋宗達 詞:烏丸光広 
 寛永7年(1630) 重要文化財

物語002

鎌倉時代の絵巻を俵屋宗達が模写したものです。
会期中、場面替えがあります。
西行の一行が天竜川で渡し船に乗ったところ、乗り合わせた武士に人数が多すぎるから
下りろと言われ、血の流れるまで打たれますが、抵抗することなく船を下ります。
弟子の僧が嘆くと西行は、仏門に入った者は仇に仇をもって返してはならないと諭し、
その覚悟の無い者は都に帰れと言って、弟子を追い返してしまいます。
武士出身の西行の持つ一途さを表す物語です。
西行が船から下ろされたというのは実際にあった出来事のようです。
馬を押さえる従者たち、ざわめく客たちなどの様子が活き活きと描かれています。

見知らぬ人の乗り合わせる渡し船は演芸にもよく取り上げられていて、狂言の「舟渡婿」や
「薩摩守」、落語の「岸柳島」も渡し船を舞台にしています。

「天神縁起尊意参内図屏風」(部分) 六曲一隻 室町時代・16世紀 重要美術品
出光5-16-2010_014

太宰府に流され、怨霊となった菅原道真の猛威に怯える醍醐天皇のお召しで、
比叡山の高僧、尊意が参内のため鴨川を渡るところです。
嵐で増水した川の水を法力で押し分けて進んでいて、紅海を渡るモーセのような
お話です。
突き進む牛の姿には迫力があり、牛飼い童は手綱にすがり、従者たちが慌てて
追いかけています。
車輻は濃い線と薄い線で交互に描き、高速で回転している様を表しています。

他に、伊勢物語・宇治拾遺物語・木曽物語・曽我物語などを題材にした作品も
展示されています。
物語の世界がさまざまな絵画になって展開される様を楽しめる展覧会です。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は「小杉放菴―〈東洋への愛〉」です。
会期は2月21日(土)から3月29日(日)までです。

小杉001

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【2015/01/15 19:27】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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