神谷町
虎ノ門の菊池寛実記念智美術館では「菊池寛実賞 工芸の現在」展が開かれています。
会期は3月22日(日)までです。

1月24日にブロガー向け特別鑑賞会が開かれたので、参加してきました。
智美術館は現代陶芸の紹介を行なってきましたが、今回は対象を広げ、現代工芸を対象にした
展覧会を開いています。
専門家で構成される選定委員が近年優れた活動を行なう作家12名を選出したものです。
そのうち、特に優れた制作を行なっている1名を審査会が選考し、菊池寛実賞を授与しています。
工芸は陶芸を別にすれば発表の場が少なく、日本工芸会などに所属していない無所属の場合は
さらに発表が難しくなるので、それらの作家のための機会を提供したいという意図があるそうです。
出展作家は以下の通りです。
築城 則子(染織)
相原 健作(金工)
石田 知史(ガラス)
江波 冨士子(ガラス)
神農 巌(陶磁)
須田 賢司(木工芸)
田口 義明(漆工)
中村 信喬(人形)
新里 明士(陶磁)
春木 均夫(人形)
武関 翠篁(竹工)
山本 晃(金工)
学芸員の方のギャラリートークを伺いながら、作品を鑑賞し、たまたま来館されていた、
金工の相原健作さんと、東京藝術大学学長宮田亮平さんの興味深いお話もお伺いしました。
写真は特別の許可を得て撮影したものです。
一番手前のガラス器は石田知史さんの、鋳込み硝子線刻文鉢「華・ひらく時」(2004年)です。

パート・ド・ヴェールという、粉末のガラスを鋳型に入れて窯の中で溶かす技法を使っています。
色ガラスを使うと多彩な色の作品を作り出すことが出来ます。
石田知史さんの作品は、2012年に銀座和光和光ホールで開かれていた、「石田亘・征希・知史
パート・ド・ヴェール作品展」にも展示されていました。
「石田亘・征希・知史パート・ド・ヴェール作品展」の記事です。
手前は田口義明さんの「華蒔絵卓」(2009年)です。

華やかでありながら繊細な蒔絵が施されています。
神農巌さんの白磁で、右は「堆磁線門鉢」(2012年)、左は「堆磁線門皿」(2011年)です。

筆を使って磁土を何層も塗り重ねて文様を作る方で、堆磁というのは神農さんの造語です。
新里明士さんの「Perforated Forms」(2014年)です。

7個全体で1組の作品になるとのことです。
極く薄く成形した白磁にドリルで穴を開け、光を透過させています。
釉薬が掛かっているので、水は通さないそうです。
白との対照でつくった青の磁器は釉薬を掛けてありません。
手前は春木均夫さんの「月読」(1994年)です。

桐の木の粉を固め、和紙を貼る、桐塑人形の作品です。
山本晃さんの接合せ鉢「朝凪」(2011年)です。

異なる素材の金属を接着させる接合せ(はぎあわせ)の技法に拠っています。
ライトが反射して敷物にダイアモンドを映しています。
山本晃さんは2014年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定されました。
真中と壁のガラス器は江波冨士子さんの「祈り」(2014年)です。

ムッラーノという、ヴェネツィアグラスの技法によって、小さな模様をつなぎ合わせています。
今までは小振りの食器などを制作していましたが、今回の展覧会をきっかけに、
インスタレーション的なものに取組んだそうで、白い器は35.5㎝あり、これまでの中で、
一番大きいそうです。
手前は武関 翠篁さんの花籠「鏡花水月」(2013年)です。

黑の中に赤を織り込んだ竹工芸です。
鏡花水月は手に取ることの出来ないもののたとえで、泉鏡花の筆名の
元にもなっています。
手前は須田賢司さんの栃拭漆小箪笥「水光接天」(2011年)です。

栃、黒柿、シカモアメープル、梨を組合わせ、水面が天に接するような
雄大な景色を想像させています。
シカモアメープルはバイオリンの板にも使われる素材です。
須田賢司さんは2014年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定されました。
中村信喬さんの博多人形で、天正遣欧使節を題材にしています。

中村信喬さんの作品は2014年に丸善本店で開かれた、「人形師 中村信喬の世界」展でも
展示されていました。
「人形師 中村信喬の世界」展の記事です。
手前は相原健作さんの「旅の途中」(2014年)です。

鐵を叩いてつくった鍛金彫刻のカミキリムシで、幅が2m近くあります。
相原さんは、展示が決まると予め展示室を訪れ、作品の置かれる場所を想定してから
制作にかかったそうです。
金工の場合、先ず置く場所が決まっていて、それに合わせて制作することが
多いとのことです。
相原さんと同じ金工出身の宮田学長は、この作品は写実と虫の不気味さの
両方を上手く出せていると褒めておられました。
菊池寛実賞を受賞した築城則子さんの小倉織です。

小倉織は縦縞を特徴とする木綿の織物で、昭和初期に途絶えたのを築城さんが
復元しています。
奥は練貫着物「夜の帷」(2012年)です。
展示室はとても洗練されていて、それぞれの作品にスポットライトが当てられ、
作品を引き立たせています。
現代工芸の各分野で活躍し、注目されている作家の作品を、落着いた雰囲気で
一点一点ゆっくり鑑賞できる展覧会です。
展覧会のHPです。
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虎ノ門の菊池寛実記念智美術館では「菊池寛実賞 工芸の現在」展が開かれています。
会期は3月22日(日)までです。

1月24日にブロガー向け特別鑑賞会が開かれたので、参加してきました。
智美術館は現代陶芸の紹介を行なってきましたが、今回は対象を広げ、現代工芸を対象にした
展覧会を開いています。
専門家で構成される選定委員が近年優れた活動を行なう作家12名を選出したものです。
そのうち、特に優れた制作を行なっている1名を審査会が選考し、菊池寛実賞を授与しています。
工芸は陶芸を別にすれば発表の場が少なく、日本工芸会などに所属していない無所属の場合は
さらに発表が難しくなるので、それらの作家のための機会を提供したいという意図があるそうです。
出展作家は以下の通りです。
築城 則子(染織)
相原 健作(金工)
石田 知史(ガラス)
江波 冨士子(ガラス)
神農 巌(陶磁)
須田 賢司(木工芸)
田口 義明(漆工)
中村 信喬(人形)
新里 明士(陶磁)
春木 均夫(人形)
武関 翠篁(竹工)
山本 晃(金工)
学芸員の方のギャラリートークを伺いながら、作品を鑑賞し、たまたま来館されていた、
金工の相原健作さんと、東京藝術大学学長宮田亮平さんの興味深いお話もお伺いしました。
写真は特別の許可を得て撮影したものです。
一番手前のガラス器は石田知史さんの、鋳込み硝子線刻文鉢「華・ひらく時」(2004年)です。

パート・ド・ヴェールという、粉末のガラスを鋳型に入れて窯の中で溶かす技法を使っています。
色ガラスを使うと多彩な色の作品を作り出すことが出来ます。
石田知史さんの作品は、2012年に銀座和光和光ホールで開かれていた、「石田亘・征希・知史
パート・ド・ヴェール作品展」にも展示されていました。
「石田亘・征希・知史パート・ド・ヴェール作品展」の記事です。
手前は田口義明さんの「華蒔絵卓」(2009年)です。

華やかでありながら繊細な蒔絵が施されています。
神農巌さんの白磁で、右は「堆磁線門鉢」(2012年)、左は「堆磁線門皿」(2011年)です。

筆を使って磁土を何層も塗り重ねて文様を作る方で、堆磁というのは神農さんの造語です。
新里明士さんの「Perforated Forms」(2014年)です。

7個全体で1組の作品になるとのことです。
極く薄く成形した白磁にドリルで穴を開け、光を透過させています。
釉薬が掛かっているので、水は通さないそうです。
白との対照でつくった青の磁器は釉薬を掛けてありません。
手前は春木均夫さんの「月読」(1994年)です。

桐の木の粉を固め、和紙を貼る、桐塑人形の作品です。
山本晃さんの接合せ鉢「朝凪」(2011年)です。

異なる素材の金属を接着させる接合せ(はぎあわせ)の技法に拠っています。
ライトが反射して敷物にダイアモンドを映しています。
山本晃さんは2014年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定されました。
真中と壁のガラス器は江波冨士子さんの「祈り」(2014年)です。

ムッラーノという、ヴェネツィアグラスの技法によって、小さな模様をつなぎ合わせています。
今までは小振りの食器などを制作していましたが、今回の展覧会をきっかけに、
インスタレーション的なものに取組んだそうで、白い器は35.5㎝あり、これまでの中で、
一番大きいそうです。
手前は武関 翠篁さんの花籠「鏡花水月」(2013年)です。

黑の中に赤を織り込んだ竹工芸です。
鏡花水月は手に取ることの出来ないもののたとえで、泉鏡花の筆名の
元にもなっています。
手前は須田賢司さんの栃拭漆小箪笥「水光接天」(2011年)です。

栃、黒柿、シカモアメープル、梨を組合わせ、水面が天に接するような
雄大な景色を想像させています。
シカモアメープルはバイオリンの板にも使われる素材です。
須田賢司さんは2014年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定されました。
中村信喬さんの博多人形で、天正遣欧使節を題材にしています。

中村信喬さんの作品は2014年に丸善本店で開かれた、「人形師 中村信喬の世界」展でも
展示されていました。
「人形師 中村信喬の世界」展の記事です。
手前は相原健作さんの「旅の途中」(2014年)です。

鐵を叩いてつくった鍛金彫刻のカミキリムシで、幅が2m近くあります。
相原さんは、展示が決まると予め展示室を訪れ、作品の置かれる場所を想定してから
制作にかかったそうです。
金工の場合、先ず置く場所が決まっていて、それに合わせて制作することが
多いとのことです。
相原さんと同じ金工出身の宮田学長は、この作品は写実と虫の不気味さの
両方を上手く出せていると褒めておられました。
菊池寛実賞を受賞した築城則子さんの小倉織です。

小倉織は縦縞を特徴とする木綿の織物で、昭和初期に途絶えたのを築城さんが
復元しています。
奥は練貫着物「夜の帷」(2012年)です。
展示室はとても洗練されていて、それぞれの作品にスポットライトが当てられ、
作品を引き立たせています。
現代工芸の各分野で活躍し、注目されている作家の作品を、落着いた雰囲気で
一点一点ゆっくり鑑賞できる展覧会です。
展覧会のHPです。
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