東京・京橋・日本橋
前回書いた、ブリヂストン美術館の「名画と出会う」 1の続きです。

II. 20世紀美術の台頭
モーリス・ド・ヴラマンク
「運河船」1905~06年
初期の野獣派時代の作品で、色紙を貼り付けるように、赤、白、青の原色を
思うままに塗りつけています。
点描ならぬ面描とでも言うのでしょうか、力強い画面なのですが、いささか
乱暴な感じもします。
ヴラマンクについては、ニューオータニ美術館の「新春展」で観た1937年作の
「雪景色」のような、後期の陰鬱で内面的な作品の方に惹かれます。
ラウル・デュフィ
「オーケストラ」1942年
軽やかな線描で、指揮者の許で演奏するオーケストラを描いています。
交響曲のクライマックスでしょうか、すべての楽器が音を出していて、シンバルまで
鳴っているところです。
観ていて、華やかな音楽が聞こえてきそうです。
「ポワレの服を着たモデルたち、1923年の競馬場」1943年
ポワレは20世紀初頭を代表するファッションデザイナーで、コルセットを着けない
直線的なドレスを考案したとのことです。
明るい緑色を背景に、6人のモデルたちが思い思いのポーズをとっています。
その内二人は、後姿を見せるため、完全にこちらに背を向けて立っているのも
ユーモラスです。
競馬場ということで、騎手を乗せた馬が背景の中を駆け回っています。
デュフィは、透明で明るい色彩、西洋画には珍しい伸び伸びとした線描、
都会的な洒落たセンスが特徴です。
絵の楽しさを存分に見せてくれる、私の好きな画家です。
キース・ヴァン・ドンゲン
「シャンゼリゼ大通り」1924~25年
初夏の頃でしょうか、緑の並木の大通りに、すらりとした女性が二人、
大きな茶色の犬を連れ、流行りのファッション姿で、こちらを向いて立っています。
目鼻立ちは描かず、口紅の赤だけで顔を表していますが、その赤色が効いています。
その頃増えてきた自動車や、向こうには、凱旋門も見えます。
ニューオータニ美術館の「新春展」で観た「腰かける婦人」と違って、
退廃的な雰囲気は薄く、さらりとして屈託の無い、明るい作品になっています。
アンドレ・ドラン
「自画像」製作年不明
初期のドランは野獣派の一人ということですが、この若い自画像は写実的で、
くすんだ暗い色彩です。
何か不安げで、「自分は何だろう」という顔をしています。
後には、「新春展」で観た、1937~38年作の「座る少女」のような、古典的で
穏やかな作品を描く画家になったのですから、面白いものです。
III. 抽象絵画の発生と展開
ザオ・ウーキー
「07.06.85」1985年
製作年月日らしい日付を題にしています。
横長の大きな画面いっぱいに、波のような深い青色の壁が立上がり、
画面下には、砕けた波のような白が散っています。
青色に吸い込まれれそうになる、力のあふれた作品です。
抽象画は私にはよく分からない分野ですが、この絵には惹き付けられます。
IV. 日本近代洋画のあゆみ
国吉康雄
「夢」1922年
抑えた色調の画面に、何かを追いかけている女の子、家、牛、植物が点々と
描かれています。
画面中央に生えている木の根元には、蛇が巻き付いています。
題が「夢」というだけあって、精神分析の対象になりそうな絵です。
シャガールに似ていますが、何となく愁いを含んでいます。
「横たわる女」1929年
裸婦像ですが、国吉康雄の特徴の、孤独で深い愁いを含んだ顔をしています。
この孤独と憂愁は現代そのものを表しているように思えます。
国吉康雄はアメリカで描き続け、アメリカを代表する画家になったということですが、
現代というものはアメリカに最も現れているということでしょうか。
藤田嗣治
「猫のいる静物」1939~40年
黒い背景の前の白木の棚に、野菜、果物、魚、海老、蟹類が並んでいます。
向こうから猫が顔を覗かせ、驚いた小鳥が飛び立っています。
猫は藤田嗣治のトレードマークですが、同じく猫が描き込まれている、
シャルダンの「赤エイのある静物」を意識しているのかもしれません。
得意の線描の上手さを披露に及んでいるといった描き方です。
背景の暗さが静物や猫を際立たせ、小鳥を描いたことで、画面に動きや
東洋的な雰囲気、遊び心が加わっています。
国吉康雄と藤田嗣治は「日本近代洋画のあゆみ」として展示されていますが、
国吉はアメリカ絵画、藤田はフランス絵画と言っていいかもしれません。
この展覧会では私の書いた他にも、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソなど、
多くの画家の作品が展示されていて、近代洋画の歴史を一度にたどることが出来ます。
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前回書いた、ブリヂストン美術館の「名画と出会う」 1の続きです。

II. 20世紀美術の台頭
モーリス・ド・ヴラマンク
「運河船」1905~06年
初期の野獣派時代の作品で、色紙を貼り付けるように、赤、白、青の原色を
思うままに塗りつけています。
点描ならぬ面描とでも言うのでしょうか、力強い画面なのですが、いささか
乱暴な感じもします。
ヴラマンクについては、ニューオータニ美術館の「新春展」で観た1937年作の
「雪景色」のような、後期の陰鬱で内面的な作品の方に惹かれます。
ラウル・デュフィ
「オーケストラ」1942年
軽やかな線描で、指揮者の許で演奏するオーケストラを描いています。
交響曲のクライマックスでしょうか、すべての楽器が音を出していて、シンバルまで
鳴っているところです。
観ていて、華やかな音楽が聞こえてきそうです。
「ポワレの服を着たモデルたち、1923年の競馬場」1943年
ポワレは20世紀初頭を代表するファッションデザイナーで、コルセットを着けない
直線的なドレスを考案したとのことです。
明るい緑色を背景に、6人のモデルたちが思い思いのポーズをとっています。
その内二人は、後姿を見せるため、完全にこちらに背を向けて立っているのも
ユーモラスです。
競馬場ということで、騎手を乗せた馬が背景の中を駆け回っています。
デュフィは、透明で明るい色彩、西洋画には珍しい伸び伸びとした線描、
都会的な洒落たセンスが特徴です。
絵の楽しさを存分に見せてくれる、私の好きな画家です。
キース・ヴァン・ドンゲン
「シャンゼリゼ大通り」1924~25年
初夏の頃でしょうか、緑の並木の大通りに、すらりとした女性が二人、
大きな茶色の犬を連れ、流行りのファッション姿で、こちらを向いて立っています。
目鼻立ちは描かず、口紅の赤だけで顔を表していますが、その赤色が効いています。
その頃増えてきた自動車や、向こうには、凱旋門も見えます。
ニューオータニ美術館の「新春展」で観た「腰かける婦人」と違って、
退廃的な雰囲気は薄く、さらりとして屈託の無い、明るい作品になっています。
アンドレ・ドラン
「自画像」製作年不明
初期のドランは野獣派の一人ということですが、この若い自画像は写実的で、
くすんだ暗い色彩です。
何か不安げで、「自分は何だろう」という顔をしています。
後には、「新春展」で観た、1937~38年作の「座る少女」のような、古典的で
穏やかな作品を描く画家になったのですから、面白いものです。
III. 抽象絵画の発生と展開
ザオ・ウーキー
「07.06.85」1985年
製作年月日らしい日付を題にしています。
横長の大きな画面いっぱいに、波のような深い青色の壁が立上がり、
画面下には、砕けた波のような白が散っています。
青色に吸い込まれれそうになる、力のあふれた作品です。
抽象画は私にはよく分からない分野ですが、この絵には惹き付けられます。
IV. 日本近代洋画のあゆみ
国吉康雄
「夢」1922年
抑えた色調の画面に、何かを追いかけている女の子、家、牛、植物が点々と
描かれています。
画面中央に生えている木の根元には、蛇が巻き付いています。
題が「夢」というだけあって、精神分析の対象になりそうな絵です。
シャガールに似ていますが、何となく愁いを含んでいます。
「横たわる女」1929年
裸婦像ですが、国吉康雄の特徴の、孤独で深い愁いを含んだ顔をしています。
この孤独と憂愁は現代そのものを表しているように思えます。
国吉康雄はアメリカで描き続け、アメリカを代表する画家になったということですが、
現代というものはアメリカに最も現れているということでしょうか。
藤田嗣治
「猫のいる静物」1939~40年
黒い背景の前の白木の棚に、野菜、果物、魚、海老、蟹類が並んでいます。
向こうから猫が顔を覗かせ、驚いた小鳥が飛び立っています。
猫は藤田嗣治のトレードマークですが、同じく猫が描き込まれている、
シャルダンの「赤エイのある静物」を意識しているのかもしれません。
得意の線描の上手さを披露に及んでいるといった描き方です。
背景の暗さが静物や猫を際立たせ、小鳥を描いたことで、画面に動きや
東洋的な雰囲気、遊び心が加わっています。
国吉康雄と藤田嗣治は「日本近代洋画のあゆみ」として展示されていますが、
国吉はアメリカ絵画、藤田はフランス絵画と言っていいかもしれません。
この展覧会では私の書いた他にも、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソなど、
多くの画家の作品が展示されていて、近代洋画の歴史を一度にたどることが出来ます。
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