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国立新美術館 加山又造展 1
乃木坂
chariot

3月2日(月)まで開かれている「加山又造展」を観に、六本木の国立新美術館に
行ってきました。

加山又造の幅の広い製作活動の全体を見渡すことの出来る、とても見応えのある
展覧会でした。

加1


加山又造の画風は、動物、装飾、裸婦、水墨のおよそ4つに分けられます。
出展されている作品の年代では、以下のようになります。

動物 1950~60年代
装飾 1960~90年代
裸婦 1970~80年代
水墨 1970~90年代

展覧会もこの分類を基本に、工芸品の世界を加え、エントランスと第1章から
6章で構成され、約100点が展示されています。

エントランス

大画面の「雪」「月」「花」1978年の3点が迎えます。

「花」は夜桜で、桜の花びらはかがり火の炎を照り返しています。
暗い背景と高く燃え上がる炎の表現は速水御舟を思わせます。

第1章 動物たち、あるいは生きる悲しみ―様式化の試み

加山又造に一貫しているのは、様式性、装飾性ですが、動物を題材にした
初期の作品にも様式性が現れています。
キュビズムを取り入れているということですが、写実を元にして、一旦抽象化して
型を作り、様式化しています。
この頃は作者自身が模索を続けていた時代とのことですが、十分見応えのある
作品群になっています。

「月と犀」1953年
青と緑の画面の中で、月に照らされた一頭の犀が池の水を飲んでいます。
体の描き方はキュビズムの影響でしょうか、モダンで知的な感じです。
犀の持つ荒々しさは消え、静けさに満ちていますが、これを「生きる悲しみ」
というのでしょうか。

「月と駱駝」1957年
一頭の茶色い駱駝が夜の砂漠に丸くなって座っています。
その丸い形を小さくしたような、ゴツゴツした茶色い月が空に浮かんでいます。
地上と宇宙が響き合っているようです。

「冬」1957年
有名な作品ですが、2月11日から展示されます。
冬枯れの木々の下を狼がうろつき、谷間の上の空にカラスが輪を描いて
飛んでいます。
枝にはうなだれた首の一羽のカラスが留まっています。
ブリューゲルの「雪の狩人」を元にしていますが、冬の厳しさをよく表しています。
枝に留まったカラスの姿は極めて異様で、羽の抜けたむき出しの首はがっくりと
うなだれ、目を閉じています。
このカラスは単独でも描かれ、第6章でも展示されています。

第2章 時間と空間を超えて―無限の宇宙を求めて

屏風絵を集めています。
琳派に倣った、装飾性にあふれる作風の始まりです。
京都西陣の図案家の家の生まれということもあってか、装飾性の強い画風を
打ち出しています。

「春秋波濤」1966年
展覧会のポスターになっている作品です。
加山又造特有の銀の線描による海の中に、春の桜、秋の紅葉を描いています。
異なる季節を同じ画面に描くのは日本画でよく見られる手法ですが、それに
倣っています。
様式的な形の山は桜の花で埋め尽くされ、花びらを盛り上げた山のようです。
秋の山も同じように真紅の紅葉に埋まっています。

第3章 線描の裸婦たち―永遠のエロティシズム 

今までの画風とはまったく違って見えますが、装飾性、様式性は共通しています。

「黒い薔薇の裸婦」屏風1976年
4人の裸婦像ですが、きわめてリアルに描かれていながら装飾的な美しさがあります。
それは、ポーズを変えて並んだ同じ人物のリズム感、モノクロに近い画面での
マニキュアや口紅、アイシャドーの赤によるアクセント、そして黒い薔薇模様の
レースの精緻な表現によるのでしょう。
それにしても、繊細な線描の技があってこそ出来る作品です。

続きは次の回に書きます。

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【2009/02/08 10:29】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
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