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東京国立博物館 未来をひらく福澤諭吉展
上野
chariot

上野の東京国立博物館表慶館で開かれている「未来をひらく福澤諭吉展」
に行ってきました。

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慶應義塾創立創立150周年を記念しています。
1858は慶應義塾の創立された年、150は創立150周年を表します。

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福澤諭吉の人物と業績についての多くの資料が展示されています。
会期は3月8日(日)までで、その後、福岡、大阪でも展示されます。

第1部 あゆみだす身体

『居合刀および拵』
開明主義者の福澤諭吉は刀にはまったく執着が無かったとのことですが、
心身の鍛錬のため居合抜きは晩年まで続けていたそうです。
それも1日1000回というのですから、大変な数です。
展示されている刀の刀身は長く、福澤は身長170cmで、当時としては長身だった
ということなので、これを使えたのでしょう。

第2部 かたりあう人間(じんかん)

『潮田伝五郎・光結婚披露宴招待状案文』
福澤は4男5女に恵まれていますが、これは五女の光の結婚披露宴招待状です。
親の名前でなく、本人たちの名前で書かれています。
これも福澤の開明的な思想をよく表しています。

第3部 ふかめゆく智徳

『「学問のすゝめ」初編(初版)および続編』
冒頭の、「天は人の上に人を造らず」の一節は有名です。

『「ヅーフ・ハルマ」写本』
この展覧会で私が一番見たかった物です。
全10冊の分厚い電話帳の大きさのオランダ語辞典で、アルファベット毎に
分冊されています。
中はすべて手書きで、びっしりとオランダ語が筆記体で書かれ、その横に
短い和訳が添えられています。
横書きのオランダ語に対して和訳は縦書きなので、読む時は不便だったでしょう。
福澤諭吉の自伝、「福翁自伝」によれば、緒方洪庵の適塾ではこれと同じ写本の
置いてある部屋はヅーフ部屋と呼ばれ、福澤をはじめ塾生は、これを頼りに必死に
なって学んだそうです。

勝海舟も若い時に、自分でペンやインクを考案して、ヅーフ・ハルマを写しています。

福澤諭吉、大村益次郎、橋本左内、佐野常民、手塚良庵たちが羽ばたいて行った
元はこの「ヅーフ・ハルマ」かと思うと、感慨深いものがあります。

『福澤諭吉ウエーランド経済書講述図 安田鞍彦筆』
慶應4年5月15日の上野彰義隊の戦いの砲声が聞こえる中で、福澤諭吉が
塾生にウエーランドの経済書を講義している図です。
慶應義塾は一日も休むことは無い、という福澤の信念を表しています。
福澤の塾はこの年の4月に芝新銭座に移り、慶應義塾と命名されています。
この上野戦争での新政府軍の指揮官が、緒方洪庵の適塾での同窓の
大村益次郎でした。

第4部 きりひらく実業

『「帳合之法」初編、二編』
福澤諭吉による簿記会計学の翻訳です。
「福翁自伝」で福澤自身は簿記会計には疎いと述べていますが、会計用語の
借方・貸方は福澤の訳によるものだそうです。

第5部 わかちあう公

『「痩我慢之説」写本(栗本鋤雲書入)』
旧幕臣の勝海舟と榎本武揚が明治維新後に新政府で栄達していることを
非難しています。
幕府が無くなった以上、以前の立場や思想がどうであっても、能力を生かせる場で
活躍することにそれほど問題があるのだろうかとも思います。
しかし、同じ旧幕臣で新政府に誘われても仕えなかった栗本鋤雲が感激して
朱筆で書入れしているということは、勝海舟たちが批判的に見られていた面も
あったのでしょう。
勝海舟が艦長だった咸臨丸に福澤も乗船しているので、その時以来の
個人的感情があるのかもしれません。

第6部 ひろげゆく世界

『「福翁自伝」原稿(人間の慾に際限なし)』
福澤諭吉の生涯や考え方、幕末明治維新の状況を語る資料として、
「福翁自伝」ほど面白いものはありません。
是非、読むことをお奨めします。

第7部 たしかめる共感 - 福澤門下生による美術コレクション

福澤諭吉自身は、美術にはあまり興味が無い、と「福翁自伝」で述べていますが、
実業界で活躍した門下生の集めた美術品を展示しています。

『佐竹本三十六歌仙絵巻断簡 「源順」(2月17日~3月8日)  
                   「住吉明神」(1月27日~2月10日)』
大名の佐竹家に伝わった鎌倉時代の三十六歌仙絵巻で、重要文化財に
指定されています。
元は2巻の絵巻だったのを、巻頭部分の「住吉明神」を含め37枚に切断したのは、
三井物産の設立者で茶人としても有名な益田孝(鈍翁)です。
第3部に展示されている慶應義塾入社帳(姓名録)の益田英作のページの
保証人欄に、兄の益田孝の名が見えます。
慶應義塾では今でも、塾生を含め、塾の関係者全体を社中と呼んでいて、
入社とは社中に入ることです。


展覧会の中で一番記憶に残ったのは、「ヅーフ・ハルマ」写本の他では、第3部に
展示されている、「独立自尊迎新世紀」と書かれた掛軸です。
1901年(明治34年)1月1日にこれを書いた福澤は、翌月に亡くなっています。
「福翁自伝」では、ろくに書道を学ばなかったと述べていますが、堂々とした
書き振りです。
若い時から「異端」であることを恐れず、時には暗殺される危険もあった福澤諭吉
としては、20世紀を迎えることができたことには無上の感慨があったでしょう。
明治の「明」を体現した、幸福な人だったと思います。

他にも興味深い資料が数多く展示されていて、幕末明治以降の歴史に興味の
ある人には特にお奨めできる展覧会です。

展覧会のHPです。

表慶館の裏には紅白梅が咲いていました。
展覧会の帰りに見てこられると良いでしょう。

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不忍池はまだ少し寒そうです。

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【2009/02/11 21:00】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(2) |
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  • Takさん、TB有難うございます。
    表慶館の裏に梅が咲いているとは知らなかったので、見頃の時に行けて得した気分です。

    【2009/02/15 13:52】 url[猫アリーナ chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こんにちは。

    東博の梅、今週が見ごろでしょうか。
    綺麗ですね~

    深澤諭吉展はさておき
    「妙心寺展」に今一度行ってきたいと思っています。
    お花見兼ねて。

    【2009/02/15 11:54】 url[Tak #JalddpaA] [ 編集]
    please comment















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    東京国立博物館表慶館で開催中の 慶應義塾創立150年記念 特別展「未来をひらく福澤諭吉展」に行って来ました。 「未来をひらく福沢諭吉展」公式サイト 慶應大学付属の小学校や幼稚園の子供たちがご両親と一緒に観に来ているのか、いつになく展覧会会場内の「子供...
    【2009/02/15 11:52】

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