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古今集 紀貫之 霞たち
春の雪
chariot

霞たちこのめもはるの雪ふれば花なきさとも花ぞちりける

霞が立ち、木の芽もふくらむ春になって雪が降ったので、まだ花の無い里にも
花のような雪が散っているではないか。

古今集の春歌上9番の歌で、作者は紀貫之です。

紀貫之は「袖ひぢて」の歌のような大技を使う歌人ですが、この歌でも巧みな技を
見せています。

「霞たち」の詠い出しで、聴く人はまず春の初めの情景を想像します。

「このめもはるの」で、いよいよ春と思い定めます。
「はる」は木の芽の「張る」と、「春」を掛けています。

そこへ、「雪ふれば」と来たので、あわてて冬を想像します。

次の、「花なきさとも」で意識は冬に定着します。

ところが、「花ぞちりける」で、また春に引き戻されます。
しかも、「ちりける」ですから、春も過ぎたころです。

聴く人は歌に乗せられて、初春、冬、晩春と、季節を行ったり来たりする、
という趣向です。

さらに、この歌には時間の仕掛けの他に、空間の仕掛けもあります。

「霞たち」で視線は上を向き、「雪ふれば」で、その視線は下ります。
今度は「花なきさとも」で、周りを見渡し、最後に「花ぞちりける」で、
地面に行き着きます。

上から下へと、なめらかに視線を動かすように仕組まれているのです。
また、「霞たち」のア音で始まり、「ちりける」のウ音で終わる音の流れも、
視線の動きと照応しています。

紀貫之らしい、技の効いた歌です。


去年の冬の湯島天神です。
梅の木にも雪の花が咲きました。


湯島天神 雪1


今年の湯島天神の枝垂れ梅です。
雪のような花を着けています。

紀

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【2009/02/24 06:18】 文学 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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