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ニューオータニ美術館 アンドレ・ボーシャン展 
赤坂見附・永田町
chariot

赤坂のニューオータニガーデンコート6階にあるニューオータニ美術館で
4月12日(日)まで、「アンドレ・ボーシャン いのちの輝き展」が開かれています。

途中の溜池のボート乗り場です。

ア1


2月21日のギャラリートークのある日に行ってきました。
世田谷美術館や諏訪にあるハーモ美術館にある作品と合わせて、
23点が展示されています。

ア2


ア3


アンドレ・ボーシャン(1873~1958)はフランスの素朴派の画家と言われる人です。
素朴派とは、正式な絵画教育を受けず、自己流で絵を描いた人たちを総称した
呼び名ということで、フランスのアンリ・ルソーやアメリカのグランマ・モーゼス
(モーゼスお婆さん)が有名です。
ピカソやカンディンスキーもルソーやボーシャンの素朴派に注目したそうです。

学芸員の解説によればフランス素朴派といわれる、以下の一群の人たちが
いるとのことです。

アンリ・ルソー
ルイ・ヴィヴァン
セラフィーヌ・ルイ
アンドレ・ボーシャン
カミーユ・ボンボワ

職業を別に持っていることが多く、アンリ・ルソーは税関吏、ルイ・ヴィヴィアンは
郵便局員、セラフィーヌ・ルイは掃除婦、カミーユ・ボンボワはサーカス団員や
土木作業員だったそうです。
ボーシャンは苗木栽培業で、「庭師ボーシャン」と呼ばれたそうです。
第一次大戦でフランス軍の測量隊に属して測量図を描いたことから絵画に目覚め、
46歳になって本格的に描き始めたということです。
人生の遅い時期になって絵を描き始めるのも素朴派の特徴です。

面白いことに、ボーシャンを発見した一人は建築家のル・コルビュジエで、
ボーシャンの絵を最初に買ったのもル・コルビュジエだったそうです。

作品は風景、花、神話・聖書、人物の4つのグループに分かれています。

『風景』

ボーシャンの風景画にはゴツゴツした岩肌がよく見られるということで、
確かに遠景の山肌もゴツゴツと描かれています。
これはフランスに多い石灰岩の地層を描いているのだと思います。

「フルーツのある風景」
淡い色彩の風景の前面に、桃、西洋梨、いちじくなどが山盛りに大きく
描かれています。
子供の絵もそうですが、自分の好きな物、興味のある物を大きく描くというのは
素朴派の特徴の一つです。
ボーシャンの絵は淡く、ふわっとした色調のものが多いですが、これは鉛白という
白い絵具をよく使っているためだそうです。

『花』

苗木業らしく、花の絵は生き生きとして、華やかな魅力があります。
花の束がかたまりになって、画面いっぱいに咲いている絵を多く描いています。
風景画の真中に、花を大きく描くのは、「フルーツのある風景」と同じく独特で、
最もボーシャンらしい構図です。

花はどれも正面を向き、同じ平面に並ぶように描かれています。
同じ花の絵でも、キスリングの描く花束は奥行きがあり、光による陰影も持たせて、
立体感が出るように工夫していますが、
ボーシャンにはそのような技は無く、描きたい物をそのまま全部並べた、
という描き方です。

ただ、専門家が見ても、正確には何の花を描いているのかよく分からないそうです。
植物を商売にしていたことを考えると面白い話です。
ボーシャンの想像の世界で咲いた花ということでしょうか。

「楽園」
熱帯のジャングルに咲くさまざまの花と、鳥を描いています。
アンリ・ルソーを思い出しますが、素朴派の人たちは自己流で描いていて、
お互いの関係はあまり無いそうです。

『神話・聖書』

ボーシャンが他の素朴派の画家と異なるのは、ギリシャ神話や歴史、聖書を
題材にした作品を描いていることだそうです。

「聖アントワーヌの誘惑」
砂漠で修行する聖アントワーヌに怪物たちが挑みかかる、という有名な題材です。
ボーシャンの描く怪物たちは何となくユーモラスで、聖アントワーヌも
「参ったなこれは」という表情をしている、微笑ましい作品です。

『人物』

人物画も描いていますが、どれもあまり上手とは言えません。
それがかえって、のんびりした雰囲気を出しています。

「漁夫と娘」
大きな作品で、両脇に木、間に湖と丘と淡い色の空、左下に二人の人物が
描かれています。
漁夫と思われる人物は、立って上の方をぼんやりと眺めています。
湖を描く視点は上からなのに、人物を描く視点は横からなので、画面が
微妙にゆがんで見えます。
しかも、画面が大きいため、取り留めの無さの際立つ、不思議な絵になっています。

ルソーやボーシャンを素朴派と名付けたドイツの美術評論家、ウィルヘルム・ウーデや
ル・コルビュジエは、ボーシャンの描く淡い色調の空をバルビゾン派のコローに
関連付けて紹介しているそうです。

素朴派の絵はちょっと見ると誰でも描けそうな気もしますが、有名になるのは
ごく一部の人です。
観る人たちを惹き付ける鍵は何なのでしょうか。

ともかく、技巧の混じらない、のんびりとしたアンドレ・ボーシャンの絵は、
観ていて穏やかな気分になれます。

ギャラリートークは3月14日(土)午後2時からも行なわれます。

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【2009/03/01 19:13】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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