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「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展」 渋谷 Bunkamuraザ・ミュージアム
渋谷
chariot

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展」が
開かれています。
会期は7月31日(日)までです。

更紗001


トワル・ド・ジュイとは、18世紀を中心にヴェルサイユ近郊のジュイ=アン=ジョザスの
工場で生産された西洋更紗のことです。

工場の設立者はドイツ出身のクリストフ=フィリップ・オーベルカンプ(1738−1815)で、
植物や田園風景をモティーフにした、数多くの作品を制作しています。


プロローグ:田園モティーフの源泉

トワル・ド・ジュイで好まれた植物や田園風景のモティーフの基になった、
フランドル地方のタペストリーの展示です。

「狩猟風景が描かれたタペストリー」 
 羊毛、絹 1600年頃 MOU美術館 ベルギー

トワル0_1



第1章:インド更紗の熱狂

更紗は木綿に文様を染め出した布地で、インドが起原です。

江戸時代の日本に輸入され、愛好されたインド更紗の品々の展示です。
たばこ入れ、仕覆、着物などに仕立てられ、見本帳も作られています。

「茜地草花文様鬼更紗」  17~18世紀 木版・綿(インド製) 染司よしおか
トワル2


第2章:トワル・ド・ジュイの工場設立

1760年にオーベルカンプによってジュイ=アン=ジョザスに設立された
捺染工場についての資料です。

フランスではインド更紗の輸入により、更紗は爆発的に流行しますが、
在来の織物業者の反発により、1686年には輸入・製造だけでなく、着用まで
長く禁じられていました。
やがて禁止令は解除され、スイスから20歳のオーベルカンプがフランスに来て、
1760年に工場を設立しています。
オーベルカンプの工場は最盛期には1000人以上の職人の働く大生産地に
発展します。

ジャン=バティスト・ユエ 「ジュイ=アン=ジョザスのオーベルカンプの工場」 1807年
トワル1_1

ナポレオンの訪問を記念して描かれた作品で、広場には布が干されていて、
画面右下ではオーベルカンプがナポレオンを迎えています。


第3章:木版プリントに咲いた花園

フランスでは木版プリントの花模様が好まれ、3万以上のデザインが生まれています。

「花と鳥」 1775年頃 木版プリント・綿(ジュイ製) トワル・ド・ジュイ美術館
トワル2_1


「パイナップル図(大)」 1777年頃 木版プリント・綿(ジュイ製)
 トワル・ド・ジュイ美術館

トワル4


「小花散らし文様」 1785年 木版プリント・綿(ジュイ製) トワル・ド・ジュイ美術館
トワル0


「コクシギル」 1795年頃 木版プリント・綿(ジュイ製) トワル・ド・ジュイ美術館
トワル1


「グッドハーブス」 18世紀末~19世紀初頭 
 木版プリント・綿(ジュイ製) トワル・ド・ジュイ美術館

トワル3

最も人気のあったデザインの一つです。

マリー・アントワネットの着用したトワル・ド・ジュイのドレスの断片も展示されています。
宮廷生活から離れて、離宮プチ・トリアノンで過ごす時は、簡素で着心地の良い
トワル・ド・ジュイを着ていたということです。

「マリー・アントワネットのドレスの断片」 1780年頃 手彩色・綿(ジュイ製) 
ボーアラン、サン・ルイ修道院

トワル2_2


第4章:銅版プリントに広がる田園風景

1770年からは銅版による、単色で細密なプリントを始め、神話や歴史、田園風景などを
題材にします。
人気画家のジャン=バティスト・ユエ(1745-1811)を筆頭デザイナーとして起用し、
多くの作品を生み出しています。

ジャン=バティスト・ユエ 「羊飼い姿のヴィーナス」 山寺後藤美術館
永004

ジャン=バティスト・ユエ(1745-1811)は1768年にフランス王立アカデミーに
入会するなど、早くから人気のあった画家で、特に動物画を得意としていますが、
さまざまな題材の作品を描いています。

「お城の庭」 ジャン=バティスト・ユエによるデザイン 1785年 
 銅版プリント・綿(ジュイ製) トワル・ド・ジュイ美術館

トワル1_2

オリエンタルな文様とは違って、フランス風の意匠です。

「田園の楽しみ」 ジャン=バティスト・ユエによるデザイン 1802年 
 銅版プリント・綿(ジュイ製) トワル・ド・ジュイ美術館

トワル0_2

理想化された、優雅な田園風景です。


エピローグ:受け継がれる西洋更紗の魅力

オーベルカンプの死後、事業は徐々に衰退し、1843年に工場は閉鎖されていますが、
トワル・ド・ジュイはイギリスのウィリアム・モリスの興したアーツ・アンド・クラフツや
ラウル・デュフィの作品にも影響を与えています。


(参考)
「チューリップ」 ウィリアム・モリス 
 木版摺り、綿 1875年頃 マイケル&マリコ・ホワイトウェイ蔵

ガーデン005

ウィリアム・モリスのデザインは今でも目にすることが多いですが、
トワル・ド・ジュイによく似ていると思います。


テキスタイルではありませんが、ウェッジウッドの食器には植物や田園を
モティーフにしたデザインがあります。
現在でも好まれるモティーフであるようです。

(参考) ワイルドストロベリー
仏153

(参考) ハンティングシーン
英0006


私たちの生活にも身近な更紗がテーマなので、観て面白く、興味の湧く展覧会です。


展覧会のHPです。


次回の展覧会は、「ピーターラビット展」です。
会期は8月9日(火)から10月11日(火)までです。

ピーター6-25-2016_001


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【2016/06/25 19:28】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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  • こんにちは。
  • 当時の更紗のドレスも展示されていて、なかなか面白い展覧会でした。

    【2016/06/26 08:37】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • なんか眺めてたら、
    こんな柄のロングスカートが欲しくなってきました。

    【2016/06/25 22:52】 url[阿笠 香奈 #-] [ 編集]
    please comment















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