三越前
日本橋の三井記念美術館では特別展、創建1250年記念、「奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝」が
開かれています。
会期は6月11日(日)までです。
5月14日までの前期と16日からの後期で、一部展示替えがあります。

7月29日から9月24日には、あべのハルカス美術館、10月20日から12月10日は山口県立美術館に
巡回し、展示品にも異同があります。
西大寺は孝謙上皇(重祚して称徳天皇)の発願による天平神護元年(765年)の創建と
される官寺で、南都七大寺の一つに数えられています。
平安時代に衰微しますが、鎌倉時代に叡尊によって復興されています。
展覧会では西大寺とその一門の寺院に伝わる仏像や絵画、工芸品が展示されています。
「興正菩薩坐像」 善春作 鎌倉時代・弘安3年(1280) 西大寺 国宝

2016年に国宝に指定されています。
叡尊(1201-1290)は真言密教を学び、戒律を重んじて、真言律宗の祖となり、民衆の救済にも
力を尽くしています。
その功績から、没後には興正菩薩の尊号を贈られています。
像は80歳の寿像で、写実的に造られ、こめかみの血管も表現され、長く伸びた眉が目を惹きます。
「金銅密教法具(五鈷鈴・独鈷杵・三鈷杵・五鈷杵・金剛盤)」
鎌倉時代 西大寺 重要文化財

精巧な細工の法具で、蓮の花弁の跳ね上がっているところまで表現されています。
手前の五鈷杵に手擦れの跡があり、祈祷の際には特に五鈷杵が使用されているようです。
「金銅透彫舎利容器」 鎌倉時代 西大寺 国宝

高さ37㎝で、透かし彫りを施した円筒の中に蓮台の形をした舎利容器が納められています。
どの部分も極めて精巧に作られ、見事な出来栄えです。
叡尊は戒律を通じて釈迦への回帰を強めたことから、真言律宗の寺院では仏舎利
(釈迦の遺骨)を重んじています。
「塔本四仏坐像のうち、釈迦如来坐像・阿弥陀如来坐像」
奈良時代 西大寺 重要文化財
釈迦如来坐像

阿弥陀如来坐像

木芯乾漆で、8世紀末の作と思われ、西大寺創建時に東西いずれかの塔に安置されていた
ようですが、当初の尊名は不明ということです。
東京展では釈迦如来坐像と阿弥陀如来坐像が展示されています。
「愛染明王坐像」 善円 鎌倉時代・宝治元年(1247) 西大寺 重要文化財

5月14日までの展示です。
像高30㎝ほどの小さな像ですが、赤い彩色が残り、憤怒の形相を見せています。
叡尊の発願による制作で、善円は奈良を中心に活躍した仏師の一派、善派の一人です。
「文殊菩薩騎獅及び四侍者像のうち 文殊菩薩坐像」
鎌倉時代・正安4年(1302) 西大寺 重要文化財

文殊菩薩が獅子に乗り、4人の侍者を連れて海を渡るという、渡海文殊の形は鎌倉時代に
多く制作されています。
叡尊の没後、弟子たちの発願で造像されており、叡尊が文殊菩薩を信仰していたことを
表しています。
東京展では善財童子立像・最勝老人立像とともに展示されています。
叡尊は文殊菩薩、聖徳太子、観音菩薩、弥勒菩薩、さらに伊勢神宮や三輪明神への信仰を
持っていたようで、西大寺や系列の寺院にはさまざまな像があります。
「釈迦如来立像」 院保他 鎌倉時代・徳治3年(1308)
横浜・称名寺(金沢文庫保管) 重要文化財

横浜の称名寺は真言律宗の寺院で、金沢北条氏の菩提寺です。
北条氏など東国への布教は、叡尊の弟子で社会的弱者の救済に務めた忍性(1217-1303)が
行なっています。
院保は仏師の院派の一人で、院派は真言律宗と関係を持っています。
院派の仏像は中国風を取り入れているとのことで、特異な顔立ちです。
「吉祥天立像」 鎌倉時代 浄瑠璃寺 重要文化財

6月5日から11日まで、7日間のみの短い展示です。
浄瑠璃寺は明治時代に真言律宗の寺院になっています。
像高90㎝ほどで、厨子に納められ秘仏とされていたので、彩色がそのまま残り
魅力にあふれた姿を拝むことが出来ます。
茶室の如庵には、西大寺の大茶盛式で使われる巨大な茶碗と茶筅が置かれています。
大茶盛式は延応元年(1239)から続く行事で、叡尊が八幡神社に献茶したお下がりを
人びとに振る舞ったことに始まったということです。
飲酒を禁じた叡尊は酒盛りの代わりに茶盛を奨め、当時は高価だった茶による医療も
実施しています。
私も以前、春の大茶盛式に参加したことがあります。
茶碗は重く、隣の人に助けてもらわないと飲めないので、まさしく叡尊の説いた一味和合の
精神が生かされています。
5月3日(水・祝)と5月19日(金)には大茶盛式を体験することが出来ます。
場所は向かいのコレド室町3の3階「橋楽亭」です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は特別展、「地獄絵ワンダーランド」です。
会期は7月15日(土)から9月3日(日)までです。
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日本橋の三井記念美術館では特別展、創建1250年記念、「奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝」が
開かれています。
会期は6月11日(日)までです。
5月14日までの前期と16日からの後期で、一部展示替えがあります。

7月29日から9月24日には、あべのハルカス美術館、10月20日から12月10日は山口県立美術館に
巡回し、展示品にも異同があります。
西大寺は孝謙上皇(重祚して称徳天皇)の発願による天平神護元年(765年)の創建と
される官寺で、南都七大寺の一つに数えられています。
平安時代に衰微しますが、鎌倉時代に叡尊によって復興されています。
展覧会では西大寺とその一門の寺院に伝わる仏像や絵画、工芸品が展示されています。
「興正菩薩坐像」 善春作 鎌倉時代・弘安3年(1280) 西大寺 国宝

2016年に国宝に指定されています。
叡尊(1201-1290)は真言密教を学び、戒律を重んじて、真言律宗の祖となり、民衆の救済にも
力を尽くしています。
その功績から、没後には興正菩薩の尊号を贈られています。
像は80歳の寿像で、写実的に造られ、こめかみの血管も表現され、長く伸びた眉が目を惹きます。
「金銅密教法具(五鈷鈴・独鈷杵・三鈷杵・五鈷杵・金剛盤)」
鎌倉時代 西大寺 重要文化財

精巧な細工の法具で、蓮の花弁の跳ね上がっているところまで表現されています。
手前の五鈷杵に手擦れの跡があり、祈祷の際には特に五鈷杵が使用されているようです。
「金銅透彫舎利容器」 鎌倉時代 西大寺 国宝

高さ37㎝で、透かし彫りを施した円筒の中に蓮台の形をした舎利容器が納められています。
どの部分も極めて精巧に作られ、見事な出来栄えです。
叡尊は戒律を通じて釈迦への回帰を強めたことから、真言律宗の寺院では仏舎利
(釈迦の遺骨)を重んじています。
「塔本四仏坐像のうち、釈迦如来坐像・阿弥陀如来坐像」
奈良時代 西大寺 重要文化財
釈迦如来坐像

阿弥陀如来坐像

木芯乾漆で、8世紀末の作と思われ、西大寺創建時に東西いずれかの塔に安置されていた
ようですが、当初の尊名は不明ということです。
東京展では釈迦如来坐像と阿弥陀如来坐像が展示されています。
「愛染明王坐像」 善円 鎌倉時代・宝治元年(1247) 西大寺 重要文化財

5月14日までの展示です。
像高30㎝ほどの小さな像ですが、赤い彩色が残り、憤怒の形相を見せています。
叡尊の発願による制作で、善円は奈良を中心に活躍した仏師の一派、善派の一人です。
「文殊菩薩騎獅及び四侍者像のうち 文殊菩薩坐像」
鎌倉時代・正安4年(1302) 西大寺 重要文化財

文殊菩薩が獅子に乗り、4人の侍者を連れて海を渡るという、渡海文殊の形は鎌倉時代に
多く制作されています。
叡尊の没後、弟子たちの発願で造像されており、叡尊が文殊菩薩を信仰していたことを
表しています。
東京展では善財童子立像・最勝老人立像とともに展示されています。
叡尊は文殊菩薩、聖徳太子、観音菩薩、弥勒菩薩、さらに伊勢神宮や三輪明神への信仰を
持っていたようで、西大寺や系列の寺院にはさまざまな像があります。
「釈迦如来立像」 院保他 鎌倉時代・徳治3年(1308)
横浜・称名寺(金沢文庫保管) 重要文化財

横浜の称名寺は真言律宗の寺院で、金沢北条氏の菩提寺です。
北条氏など東国への布教は、叡尊の弟子で社会的弱者の救済に務めた忍性(1217-1303)が
行なっています。
院保は仏師の院派の一人で、院派は真言律宗と関係を持っています。
院派の仏像は中国風を取り入れているとのことで、特異な顔立ちです。
「吉祥天立像」 鎌倉時代 浄瑠璃寺 重要文化財

6月5日から11日まで、7日間のみの短い展示です。
浄瑠璃寺は明治時代に真言律宗の寺院になっています。
像高90㎝ほどで、厨子に納められ秘仏とされていたので、彩色がそのまま残り
魅力にあふれた姿を拝むことが出来ます。
茶室の如庵には、西大寺の大茶盛式で使われる巨大な茶碗と茶筅が置かれています。
大茶盛式は延応元年(1239)から続く行事で、叡尊が八幡神社に献茶したお下がりを
人びとに振る舞ったことに始まったということです。
飲酒を禁じた叡尊は酒盛りの代わりに茶盛を奨め、当時は高価だった茶による医療も
実施しています。
私も以前、春の大茶盛式に参加したことがあります。
茶碗は重く、隣の人に助けてもらわないと飲めないので、まさしく叡尊の説いた一味和合の
精神が生かされています。
5月3日(水・祝)と5月19日(金)には大茶盛式を体験することが出来ます。
場所は向かいのコレド室町3の3階「橋楽亭」です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は特別展、「地獄絵ワンダーランド」です。
会期は7月15日(土)から9月3日(日)までです。
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