東京
丸の内の三菱一号館美術館で11月9日に開かれた、青い日記帳×「パリ♥グラフィック
― ロートレックとアートになった版画・ポスター展」ブロガー特別内覧会に行ってきました。
展覧会の会期は2018年1月8日(月)までです。

「弐代目・青い日記帳」主催のTakさん(右)がモデレーターで、
野口玲一学芸員(左)の解説を伺いました。

会場の写真は特別の許可を得て撮影しています。
また、一部の展示室は撮影可能です。
アムステルダムのファン・ゴッホ美術館との共催で、19世紀末の印刷技術の発達に伴い
盛んになったパリのポスターや版画芸術を紹介する展覧会で、両館の保有する約170点が
展示されています。
リトグラフ(石版画)の発明により、描いた筆の勢いまで再現し、多色刷り、大量生産まで
可能になったことで、版画は大きく発展します。
特にロートレックはポスターの制作で版画の芸術的価値を大きく高めたことで知られており、
展覧会でも三菱一号館美術館の所蔵するロートレックのポスターや版画が多数、
展示されています。
右:テオフィル・アレクサンドル・スタンラン 「シャ・ノワール巡業公演のためのポスター」
1896年 多色刷りリトグラフ ファン・ゴッホ美術館
左:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ」
1891年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館

テオフィル・アレクサンドル・スタンラン(1859-1923)は画家、版画家で、特に猫を
題材にした作品で有名です。
キャバレー「シャ・ノワール(黒猫)」のポスターで、この猫はスフィンクスのように
堂々としています。
左はキャバレー「ムーラン・ルージュ」のポスターで、売れっ子ダンサーのラ・グーリュが
大胆なポーズで踊っています。
ロートレックの描いた最初のポスターで、この絵でロートレックは一躍有名になっています。
縦193.8cmの大きな作品で、版を3つ並べてつなぎ合わせてあります。
ポスターとして使われる時は、下の方にその時のイベントが印刷されますが、この絵は
それ以前の段階で、大変貴重な物とのことです。
右:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「アリスティド・ブリュアン、彼のキャバレー にて」
1893年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館
中:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「エルドラド、アリスティド・ブリュアン」
1892年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館
左:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「コーデュー」
1893年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館

アリスティド・ブリュアンは歌手で、コーデューは喜劇役者です。
アリスティド・ブリュアンは赤いマフラーがトレードマークで、毒舌が売り物だったとのことで、
毒舌が受けるというところに都市文化の成熟を感じます。
この展示室にはアリスティド・ブリュアンやイヴェット・ギルベールの歌声が流れていて、
室内はベル・エポックのパリ気分でした。
二人の歌はYouTubeでも聴くことが出来ます。
版画の大衆化の一方で、版画の芸術性が追求され、豪華な版画集や一点ものの作品が
制作され、富裕な知識階層のコレクターに愛好されるようになったそうです。
大衆化とは逆行する動きが現れるというのも興味深いところです。
右:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 『「レスタンプ・オリジナル」第1年次の表紙』
1893年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館
左:カミーユ・マルタン 『「レスタンプ・オリジナル」第2年次の表紙』
1894年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館

第1年次の表紙は、摺り師のコテル爺さんと、仕上がりを調べているダンサーの
ジャヌ・アブリルです。
浮世絵版画と同様、リトグラフも摺り師の腕は重要です。
第2年次の表紙は、feuille(葉)が紙の枚数の単位でもあるので、枯葉が印刷機に
舞い落ちて、印刷された紙となる様を表しています。
「レスタンプ・オリジナル」はアンドレ・マルティが企画し、1893年から95年に
掛けて出版された創作版画集で、毎号10点、100部限定の季刊です。
シャヴァンヌ、ピサロ、ゴーガン、ファンタン=ラトゥール、ルドンなどの作品が
収められています。
右:テオフィル・アレクサンドル・スタンラン 「ボディニエール画廊にて」
1894年 多色刷りリトグラフ ファン・ゴッホ美術館
左:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「ラルティザン・モデルヌ」
1896年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館

右は展覧会の告知文が加えられる前の刷りで、猫の絵の巧みさからこのまま
室内装飾品になっています。
左は室内装飾の店、「ラルティザン・モデルヌ(現代の職人)」のためのポスターで、
女性の患者の許を医者が訪れるという、いわくありげなテーマを、ハンマーと
道具箱を持ってやって来る職人に替えています。
歯医者の診察台に座っていて、ハンマーとドリルを持った大工に来られたら、
さぞ驚くことでしょう。
右:エドゥアール・ヴュイヤール 『街路「風景と室内」より』
1899年 多色刷りリトグラフ ファン・ゴッホ美術館
左:エドゥアール・ヴュイヤール 『吊りランプのある室内「風景と室内」より』
1899年 多色刷りリトグラフ ファン・ゴッホ美術館

エドゥアール・ヴュイヤール(1868-1940)は室内の情景を好んで描き、
自らアンティミスト(親密派)と名乗っていて、作品にも品の良さが
表れています。
右:モーリス・ドニ 『アムール(愛)』表紙』
1898年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館
左:モーリス・ドニ 『「アムール(愛)」表紙のための下絵』
1898年頃 鉛筆、透明水彩 ファン・ゴッホ美術館

「アムール(愛)」はモーリス・ドニが妻のマルトとの婚約中に書いた詩的な日記からの
想を得た連作です。
アンリ・リヴィエール 『「星への歩み」のポストカード』
1899年 多色刷りリトグラフ、アイリスプリント(ジークレー) ファン・ゴッホ美術館

「シャ・ノワール」で上演された、影絵劇「星への歩み」の各場面を刷ったポストカードです。
アンリ・リヴィエール(1864―1951)は葛飾北斎の「冨嶽三十六景」に倣ったリトグラフ集、
「エッフェル塔三十六景」も制作しています。
今年、パルコミュージアムでは「世界が絶賛した浮世絵師北斎展~冨嶽三十六景・
エッフェル塔三十六景の共演~」が開かれていました。
「世界が絶賛した浮世絵師北斎展」の記事です。
フェリックス・ヴァロットン 「アンティミテ」連作 1898年 木版 三菱一号館美術館
フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)のシニカルな黒白の木版画も多数あります。
2014年に同じ三菱一号館美術館で開かれた、「ヴァロットン展」の記事です。
ファン・ゴッホ美術館の所蔵する、ゴッホが収集した浮世絵も展示されています。
浮世絵版画はロートレックたちにも大きな影響を与えています。

ジャヌ・アヴリルやコーデューとのツーショットを撮れる場所もあります。


展覧会のHPです。
次回の展覧会は「ルドン−秘密の花園」展です。
会期は2018年2月8日(木)から5月20日(日)までです。

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丸の内の三菱一号館美術館で11月9日に開かれた、青い日記帳×「パリ♥グラフィック
― ロートレックとアートになった版画・ポスター展」ブロガー特別内覧会に行ってきました。
展覧会の会期は2018年1月8日(月)までです。

「弐代目・青い日記帳」主催のTakさん(右)がモデレーターで、
野口玲一学芸員(左)の解説を伺いました。

会場の写真は特別の許可を得て撮影しています。
また、一部の展示室は撮影可能です。
アムステルダムのファン・ゴッホ美術館との共催で、19世紀末の印刷技術の発達に伴い
盛んになったパリのポスターや版画芸術を紹介する展覧会で、両館の保有する約170点が
展示されています。
リトグラフ(石版画)の発明により、描いた筆の勢いまで再現し、多色刷り、大量生産まで
可能になったことで、版画は大きく発展します。
特にロートレックはポスターの制作で版画の芸術的価値を大きく高めたことで知られており、
展覧会でも三菱一号館美術館の所蔵するロートレックのポスターや版画が多数、
展示されています。
右:テオフィル・アレクサンドル・スタンラン 「シャ・ノワール巡業公演のためのポスター」
1896年 多色刷りリトグラフ ファン・ゴッホ美術館
左:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ」
1891年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館

テオフィル・アレクサンドル・スタンラン(1859-1923)は画家、版画家で、特に猫を
題材にした作品で有名です。
キャバレー「シャ・ノワール(黒猫)」のポスターで、この猫はスフィンクスのように
堂々としています。
左はキャバレー「ムーラン・ルージュ」のポスターで、売れっ子ダンサーのラ・グーリュが
大胆なポーズで踊っています。
ロートレックの描いた最初のポスターで、この絵でロートレックは一躍有名になっています。
縦193.8cmの大きな作品で、版を3つ並べてつなぎ合わせてあります。
ポスターとして使われる時は、下の方にその時のイベントが印刷されますが、この絵は
それ以前の段階で、大変貴重な物とのことです。
右:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「アリスティド・ブリュアン、彼のキャバレー にて」
1893年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館
中:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「エルドラド、アリスティド・ブリュアン」
1892年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館
左:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「コーデュー」
1893年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館

アリスティド・ブリュアンは歌手で、コーデューは喜劇役者です。
アリスティド・ブリュアンは赤いマフラーがトレードマークで、毒舌が売り物だったとのことで、
毒舌が受けるというところに都市文化の成熟を感じます。
この展示室にはアリスティド・ブリュアンやイヴェット・ギルベールの歌声が流れていて、
室内はベル・エポックのパリ気分でした。
二人の歌はYouTubeでも聴くことが出来ます。
版画の大衆化の一方で、版画の芸術性が追求され、豪華な版画集や一点ものの作品が
制作され、富裕な知識階層のコレクターに愛好されるようになったそうです。
大衆化とは逆行する動きが現れるというのも興味深いところです。
右:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 『「レスタンプ・オリジナル」第1年次の表紙』
1893年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館
左:カミーユ・マルタン 『「レスタンプ・オリジナル」第2年次の表紙』
1894年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館

第1年次の表紙は、摺り師のコテル爺さんと、仕上がりを調べているダンサーの
ジャヌ・アブリルです。
浮世絵版画と同様、リトグラフも摺り師の腕は重要です。
第2年次の表紙は、feuille(葉)が紙の枚数の単位でもあるので、枯葉が印刷機に
舞い落ちて、印刷された紙となる様を表しています。
「レスタンプ・オリジナル」はアンドレ・マルティが企画し、1893年から95年に
掛けて出版された創作版画集で、毎号10点、100部限定の季刊です。
シャヴァンヌ、ピサロ、ゴーガン、ファンタン=ラトゥール、ルドンなどの作品が
収められています。
右:テオフィル・アレクサンドル・スタンラン 「ボディニエール画廊にて」
1894年 多色刷りリトグラフ ファン・ゴッホ美術館
左:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「ラルティザン・モデルヌ」
1896年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館

右は展覧会の告知文が加えられる前の刷りで、猫の絵の巧みさからこのまま
室内装飾品になっています。
左は室内装飾の店、「ラルティザン・モデルヌ(現代の職人)」のためのポスターで、
女性の患者の許を医者が訪れるという、いわくありげなテーマを、ハンマーと
道具箱を持ってやって来る職人に替えています。
歯医者の診察台に座っていて、ハンマーとドリルを持った大工に来られたら、
さぞ驚くことでしょう。
右:エドゥアール・ヴュイヤール 『街路「風景と室内」より』
1899年 多色刷りリトグラフ ファン・ゴッホ美術館
左:エドゥアール・ヴュイヤール 『吊りランプのある室内「風景と室内」より』
1899年 多色刷りリトグラフ ファン・ゴッホ美術館

エドゥアール・ヴュイヤール(1868-1940)は室内の情景を好んで描き、
自らアンティミスト(親密派)と名乗っていて、作品にも品の良さが
表れています。
右:モーリス・ドニ 『アムール(愛)』表紙』
1898年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館
左:モーリス・ドニ 『「アムール(愛)」表紙のための下絵』
1898年頃 鉛筆、透明水彩 ファン・ゴッホ美術館

「アムール(愛)」はモーリス・ドニが妻のマルトとの婚約中に書いた詩的な日記からの
想を得た連作です。
アンリ・リヴィエール 『「星への歩み」のポストカード』
1899年 多色刷りリトグラフ、アイリスプリント(ジークレー) ファン・ゴッホ美術館

「シャ・ノワール」で上演された、影絵劇「星への歩み」の各場面を刷ったポストカードです。
アンリ・リヴィエール(1864―1951)は葛飾北斎の「冨嶽三十六景」に倣ったリトグラフ集、
「エッフェル塔三十六景」も制作しています。
今年、パルコミュージアムでは「世界が絶賛した浮世絵師北斎展~冨嶽三十六景・
エッフェル塔三十六景の共演~」が開かれていました。
「世界が絶賛した浮世絵師北斎展」の記事です。
フェリックス・ヴァロットン 「アンティミテ」連作 1898年 木版 三菱一号館美術館
フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)のシニカルな黒白の木版画も多数あります。
2014年に同じ三菱一号館美術館で開かれた、「ヴァロットン展」の記事です。
ファン・ゴッホ美術館の所蔵する、ゴッホが収集した浮世絵も展示されています。
浮世絵版画はロートレックたちにも大きな影響を与えています。

ジャヌ・アヴリルやコーデューとのツーショットを撮れる場所もあります。


展覧会のHPです。
次回の展覧会は「ルドン−秘密の花園」展です。
会期は2018年2月8日(木)から5月20日(日)までです。

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