日比谷・有楽町
丸の内の出光美術館では「書の流儀Ⅱ―美の継承と創意」展が開かれています。
会期は12月17日(日)までです。
会期中、一部展示替えがあります。

古来、受け継がれてきた書の伝統や、個性的な書など、約70件が展示されています。
「継色紙」 伝小野道風 平安時代 10世紀 出光美術館 重要文化財

「継色紙」は平安時代の名筆の一つで、「寸松庵色紙」、「升色紙」とともに
、「三色紙」と呼ばれています。
元は万葉集、古今和歌集などの和歌を集めた冊子本で、優美な仮名の散らし書きで
書かれています。
むめのかの ふりおく ゆきにうつり せは
たれかは ゝなを わきて をらまし
「高野切第一種」 伝紀貫之筆 平安時代 11世紀 出光美術館 重要文化財

「高野切」は現存する古今和歌集最古の歌集で、一部が高野山に伝来したので、
この名が付いています。
寛平のおほんときのきさいのみやの
うたあわせのうた
よみひとしらす
うめかかをそてにうつしてととめては
はるはすくともかたみならまし
そせい
ちるとみてあるへきものをむめのはな
うたてにほひのそてにとまれる
たいしらす よみひとしらす
ちりぬともかをたにのこせむめのはな
こひしきときのおもひいてにせむ
ひとのいへにうゑたり
けるさくらのはなさき
はしめたるをよめる
つらゆき
ことしよりはるしりそむるさくらはな
ちるてふことはならはさらなむ
寛平御時后宮歌合は寛平年間(889~893)に宇多天皇の母后班子の催した
歌合せです。
「石山切 伊勢集」 伝藤原公任 平安時代 12世紀 出光美術館 重要美術品

雅な切継の料紙に書かれていて、王朝美を極めています。
「石山切」は白河天皇の六十の賀を祝って制作された、「西本願寺本三十六人家集」の
うち、「貫之集下」と「伊勢集」のことです。
西本願寺の所蔵でしたが、昭和4年(1929)に2つの集が分割され、断簡になった時に
付けられた名です。
昔は本願寺が石山(後の大阪城)にあったことにちなんでいます。
「石山切 貫之集下」 藤原定信 平安時代 12世紀 出光美術館

同じ石山切でも、伊勢集はきっちりしていますが、貫之集はのびやかで、
書風に違いがあります。
「中務集」 伝西行 平安時代 12世紀 出光美術館 重要文化財

中務(なかつかさ、912頃-991頃)は女流歌人伊勢の子の女流歌人で、
宇多天皇の孫に当たります。
中務の家集の平安後期の写本で、加賀前田の旧蔵でした。
強弱を付けない、均一な書き振りです。
「広沢切」 伏見天皇筆 鎌倉時代 13世紀 出光美術館 重要文化財

広沢切は伏見天皇(1265~1317)が自らの歌を集めた歌集で、20巻ほどあり、
出光美術館所蔵は秋の歌56首の書かれた巻物です。
あまり凝らない、くつろいだ書風です。
並べて展示されている、同じ伏見天皇筆の「筑後切」の流麗な書風と全く違っていて、
当時の能書家は異なる書風を使い分けていたということです。
今年は後陽成天皇の没後400年ということで、後陽成天皇の書など、
桃山時代の作品も展示されています。
「和歌色紙」 後陽成天皇 桃山時代 出光美術館 重要美術品

金泥で雲と水流、燕子花、水草を描いた色紙に平安時代の歌人、源師時
(1017-1136)の歌を書いています。
絵柄を考えて、歌を選んでいます。
むらさきの いろにそみゆる かきつはた いけのぬなはの はひかゝりつつ
源師時(1077-1136)は平安時代後期の歌人で、堀河百首に納められた歌です。
堀河百首は堀川天皇に献じられた百首歌で、16名の歌人の歌を集めています。
「伊勢物語 若草図色紙」 桃山時代 [賛]近衞流 [画]俵屋宗達 出光美術館

伊勢物語の四十九段、「若草」の場面です。
むかし男いもうとのいとをかしげなるをみおりて
「在原業平図」 岩佐又兵衛 江戸時代 17世紀 出光美術館 重要美術品

部分

書は烏丸光広(1579-1638)と推定されます。
伊勢物語の八十八段にある歌です。
大方は月をもめてしこれそこの
つもれは人の老いとなるもの
烏丸光広は多芸な宮廷文化人で、細川幽斎から古今伝授を受け、能書家としても知られ、
本阿弥光悦や俵屋宗達とも交流しています。
「録詩書屏風」(部分) 浦上玉堂 江戸時代 18世紀 出光美術館

六曲一隻の屏風で、元の鮮宇枢と明の高啓(1336-1374)の詩を書いてあります。
浦上玉堂(1745-1820)は元は岡山藩の支藩の侍ですが、2人の息子を連れて脱藩し、
諸国を放浪した後、京都に落ち着いて、文人画を描いています。
「双鶴画賛」 仙厓 江戸時代 19世紀 出光美術館

鶴ハ千年
亀ハ万年
我れハ天年
博多に住み、洒脱な人柄と巧みな書画によって町の人から仙厓さんとして親しまれた、
臨済宗の僧、仙厓義梵(せんがいぎぼん、1750ー1837)の書です。
出光美術館は仙厓の書画を数多く所蔵しています。
展示されている書には読みも付されていて、分かりやすく、楽しめる展覧会です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は、「色絵 Japan CUTE !」展です。
会期は2018年1月12日(金)〜3月25日(日)です。

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丸の内の出光美術館では「書の流儀Ⅱ―美の継承と創意」展が開かれています。
会期は12月17日(日)までです。
会期中、一部展示替えがあります。

古来、受け継がれてきた書の伝統や、個性的な書など、約70件が展示されています。
「継色紙」 伝小野道風 平安時代 10世紀 出光美術館 重要文化財

「継色紙」は平安時代の名筆の一つで、「寸松庵色紙」、「升色紙」とともに
、「三色紙」と呼ばれています。
元は万葉集、古今和歌集などの和歌を集めた冊子本で、優美な仮名の散らし書きで
書かれています。
むめのかの ふりおく ゆきにうつり せは
たれかは ゝなを わきて をらまし
「高野切第一種」 伝紀貫之筆 平安時代 11世紀 出光美術館 重要文化財

「高野切」は現存する古今和歌集最古の歌集で、一部が高野山に伝来したので、
この名が付いています。
寛平のおほんときのきさいのみやの
うたあわせのうた
よみひとしらす
うめかかをそてにうつしてととめては
はるはすくともかたみならまし
そせい
ちるとみてあるへきものをむめのはな
うたてにほひのそてにとまれる
たいしらす よみひとしらす
ちりぬともかをたにのこせむめのはな
こひしきときのおもひいてにせむ
ひとのいへにうゑたり
けるさくらのはなさき
はしめたるをよめる
つらゆき
ことしよりはるしりそむるさくらはな
ちるてふことはならはさらなむ
寛平御時后宮歌合は寛平年間(889~893)に宇多天皇の母后班子の催した
歌合せです。
「石山切 伊勢集」 伝藤原公任 平安時代 12世紀 出光美術館 重要美術品

雅な切継の料紙に書かれていて、王朝美を極めています。
「石山切」は白河天皇の六十の賀を祝って制作された、「西本願寺本三十六人家集」の
うち、「貫之集下」と「伊勢集」のことです。
西本願寺の所蔵でしたが、昭和4年(1929)に2つの集が分割され、断簡になった時に
付けられた名です。
昔は本願寺が石山(後の大阪城)にあったことにちなんでいます。
「石山切 貫之集下」 藤原定信 平安時代 12世紀 出光美術館

同じ石山切でも、伊勢集はきっちりしていますが、貫之集はのびやかで、
書風に違いがあります。
「中務集」 伝西行 平安時代 12世紀 出光美術館 重要文化財

中務(なかつかさ、912頃-991頃)は女流歌人伊勢の子の女流歌人で、
宇多天皇の孫に当たります。
中務の家集の平安後期の写本で、加賀前田の旧蔵でした。
強弱を付けない、均一な書き振りです。
「広沢切」 伏見天皇筆 鎌倉時代 13世紀 出光美術館 重要文化財

広沢切は伏見天皇(1265~1317)が自らの歌を集めた歌集で、20巻ほどあり、
出光美術館所蔵は秋の歌56首の書かれた巻物です。
あまり凝らない、くつろいだ書風です。
並べて展示されている、同じ伏見天皇筆の「筑後切」の流麗な書風と全く違っていて、
当時の能書家は異なる書風を使い分けていたということです。
今年は後陽成天皇の没後400年ということで、後陽成天皇の書など、
桃山時代の作品も展示されています。
「和歌色紙」 後陽成天皇 桃山時代 出光美術館 重要美術品

金泥で雲と水流、燕子花、水草を描いた色紙に平安時代の歌人、源師時
(1017-1136)の歌を書いています。
絵柄を考えて、歌を選んでいます。
むらさきの いろにそみゆる かきつはた いけのぬなはの はひかゝりつつ
源師時(1077-1136)は平安時代後期の歌人で、堀河百首に納められた歌です。
堀河百首は堀川天皇に献じられた百首歌で、16名の歌人の歌を集めています。
「伊勢物語 若草図色紙」 桃山時代 [賛]近衞流 [画]俵屋宗達 出光美術館

伊勢物語の四十九段、「若草」の場面です。
むかし男いもうとのいとをかしげなるをみおりて
「在原業平図」 岩佐又兵衛 江戸時代 17世紀 出光美術館 重要美術品

部分

書は烏丸光広(1579-1638)と推定されます。
伊勢物語の八十八段にある歌です。
大方は月をもめてしこれそこの
つもれは人の老いとなるもの
烏丸光広は多芸な宮廷文化人で、細川幽斎から古今伝授を受け、能書家としても知られ、
本阿弥光悦や俵屋宗達とも交流しています。
「録詩書屏風」(部分) 浦上玉堂 江戸時代 18世紀 出光美術館

六曲一隻の屏風で、元の鮮宇枢と明の高啓(1336-1374)の詩を書いてあります。
浦上玉堂(1745-1820)は元は岡山藩の支藩の侍ですが、2人の息子を連れて脱藩し、
諸国を放浪した後、京都に落ち着いて、文人画を描いています。
「双鶴画賛」 仙厓 江戸時代 19世紀 出光美術館

鶴ハ千年
亀ハ万年
我れハ天年
博多に住み、洒脱な人柄と巧みな書画によって町の人から仙厓さんとして親しまれた、
臨済宗の僧、仙厓義梵(せんがいぎぼん、1750ー1837)の書です。
出光美術館は仙厓の書画を数多く所蔵しています。
展示されている書には読みも付されていて、分かりやすく、楽しめる展覧会です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は、「色絵 Japan CUTE !」展です。
会期は2018年1月12日(金)〜3月25日(日)です。

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