上野
上野の東京国立博物館では特別展、「縄文―1万年の美の鼓動」が
開かれています。
会期は9月2日(日)までです。

旧石器時代が終わった約13000年前(諸説あり)に始まり、約10000年続いたとされる
縄文時代の遺物を通じて、縄文時代の「美」を探る展覧会です。
国宝指定の土偶6件すべてを始め、土器、石器など、その時代の生活や美意識を示す品、
約200件が展示されています。
第1章 暮らしの美
日常に使う、土器、石斧、釣針、装身具などの展示です。
木製編籠 縄文ポシェット 青森県青森市 三内丸山遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 青森県教育委員会(縄文時遊館保管) 重要文化財

中にはクルミの殻が入っています。
これを持って、森で木の実を拾っていたのでしょう。
漆塗注口土器 北海道八雲町 野田生1遺跡
縄文時代(後期)・前2000~前1000年 北海道・八雲町教育委員会

土器に赤い漆が塗られていて、漆が生活の場で使われていたことが分かります。
土製の耳飾りや硬玉製の装身具もあります。
土製耳飾 東京都調布市 下布田遺跡
縄文時代(晩期)・前1000~前400年 東京・江戸東京たてもの園 重要文化財

直径10㎝近い、とても大きなピアスで、これを耳に嵌めていたと思うと、驚いてしまいます。
人の目を惹きたい気持ちは昔も変わらないようです。
この時代には盛んだったイヤリング、ネックレス、ブレスレットなどが後の時代の日本で
廃れたのはなぜでしょうか。
第2章 美のうねり
縄文土器の作り続けられた1万年の間の形や文様の変化をたどります。
火焰型土器・王冠型土器 新潟県十日町市 野首遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 新潟・十日町市博物館
大小の火焰型土器・王冠型土器が12個、一緒に展示されていて、壮観です。
信濃川中流域を中心に、新潟県・長野県・福島県に多く出土する形で、縄文文化には
時代の違いとともに地方の違いがあることが分かります。
第3章 美の競演
日本の縄文時代にあたる時期のアジアやヨーロッパの土器との比較です。
中国・パキスタン・イラク・エジプト・キプロス・スイスなどの紀元前3000~2000年代の土器や
弥生時代の土器が展示されています。
第4章 縄文美の最たるもの
この展覧会の見所で、国宝に指定されている縄文時代の出土品6件すべてが
展示されています。
火焔型土器 新潟県十日町市笹山遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 新潟・十日町市(十日町市博物館保管) 国宝

火焔型土器は信濃川中流域で発生した形式とのことですが、そこには「芸術家」と
言える人がいたのでしょう。
土偶 縄文のビーナス 長野県茅野市棚畑遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 長野・茅野市(茅野市尖石縄文考古館保管) 国宝

7月31日からの展示です。
縄文時代の遺物で最初に国宝に指定されています。
集落の中心の広場に掘った小さな穴に埋められていました。
乳房があり、お腹が張り出し、大きな腰をした姿は、まさに豊穣、多産の
シンボルであることが分かります。
目や口は、他の土偶に多く見られるように付け足すのではなく、埴輪のように
穴を開けて作っています。
雲母が入っていて表面はキラキラしており、体に装飾も無いので、
すっきりした印象を受けます。
土偶 縄文の女神 山形県舟形町西ノ前遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山形県(山形県立博物館保管) 国宝

足を長く四角い形に作り、乳房の表現も工夫するなど、すぐれたデザイン感覚です。
横から見ると、立像を支える下半身と、薄い板のような上半身の組み合わせで
あることが分かります。
顔の造作が無いので、精霊か何かを表しているのではないかということです。
土偶 仮面の女神 長野県茅野市中ッ原遺跡
縄文時代(後期)・前2000~前1000年 長野・茅野市(茅野市尖石縄文考古館保管) 国宝

7月31日からの展示です。
どっしりした足で立つ、堂々とした姿です。
顔に三角形の仮面のような物が付いており、ひもで後ろで結んである状態を
表しています。
表面は磨かれ、丁寧に作られたことが分かります。
集落の墓の中から出土しており、再生か鎮魂を願ったものではないかということです。
土偶 合掌土偶 青森県八戸市風張1遺跡 縄文時代(後期)・前2000~前1000年
青森・八戸市(八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館保管) 国宝

小さな土偶ですが、立てた膝の上で両手を組んだ姿をしています。
お祈りをしているとも、お産の姿とも言われています。
多くの土偶は故意に壊されていることが多いのに、これは天然アスファルトで
補修がなされており、住居跡の奥から発見されていて、大事にされていたことが分かります。
土偶 中空土偶 北海道函館市著保内野遺跡 縄文時代(後期)・前2000~前1000年
北海道・函館市(函館市縄文文化交流センター保管) 国宝

中空の土偶としては最大級の大きさとのことで、顔も体も現実の人間に
近い形をしています。
胸や下半身には細密な文様が施されています。
第5章 祈りの美、祈りの形
縄文人の心を示す品の展示です。
土偶 滋賀県東近江市 相谷熊原遺跡
縄文時代(草創期)・前11000~前7000年 滋賀県教育委員会
高さ約3㎝の、頭も腕も無い上半身だけのトルソで、乳房が写実的に表現されています。
国内で最も古い土偶の一つで、土偶とはこのような小さくて簡単な形から始まったことを
示しています。
遮光器土偶 青森県つがる市木造亀ヶ岡
縄文時代(晩期)・前1000~前400年 東京国立博物館 重要文化財

土偶といえば、先ずこれを思い出します。
顔がすべて、目を閉じた瞼になっていて、ゴーグル(遮光器)のように
見えることから、この名が付いています。
ネックレスらしい物を着け、髪も装飾的、着ている物の文様も描かれ、
華やかな姿です。
土面 縄文時代晩期(前1000~前400年)
秋田県能代市麻生遺跡 東京大学総合研究博物館 重要文化財

円形で、仮面にしては小さいので、額に付けたか、墓票に付けたのでは
ないかと言われています。
目の作り方は、遮光器土偶に似ていて、時期は違いますが、地域が近いことが
関係しているのでしょうか。
人形装飾付有孔鍔付土器 山梨県南アルプス市鋳物師屋遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山梨・南アルプス市教育委員会 重要文化財

土器の表面に人の姿が貼り付けてあります。
踊る女性を表しているとのことで、口を開け、右手を上げています。
指は3本で表していて、3本指の土偶は他にも展示されています。
猪形土製品 青森県弘前市 十腰内2遺跡
縄文時代(後期)・前2000~前1000年 青森・弘前市立博物館

写実的な猪で、鼻はとがり、背中の毛は逆立ち、しっぽも立っていて、
蹄も表現されています。
猿型・熊型・キノコ型・貝型などの土製品もあります。
第6章 新たにつむがれる美
縄文文化の近代の作家たちに与えた影響の紹介です。
柳宗悦や濱田庄司など民芸運動の芸術家や岡本太郎は大きな影響を受けています。
日本人の美意識は、農耕生活の始まった弥生時代に由来するものが中心であるように
思えますが、長野県諏訪の御柱祭のように現在も縄文文化を受け継いでいるとされる
ものもあります。
縄文時代は1万年も続いており、現在の日本文化の底には縄文文化も流れているのでしょう。
大変人気の展覧会で、私の行った休日の開館時には入館待ちの行列が出来ていました。
展覧会のHPです。
chariot
上野の東京国立博物館では特別展、「縄文―1万年の美の鼓動」が
開かれています。
会期は9月2日(日)までです。

旧石器時代が終わった約13000年前(諸説あり)に始まり、約10000年続いたとされる
縄文時代の遺物を通じて、縄文時代の「美」を探る展覧会です。
国宝指定の土偶6件すべてを始め、土器、石器など、その時代の生活や美意識を示す品、
約200件が展示されています。
第1章 暮らしの美
日常に使う、土器、石斧、釣針、装身具などの展示です。
木製編籠 縄文ポシェット 青森県青森市 三内丸山遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 青森県教育委員会(縄文時遊館保管) 重要文化財

中にはクルミの殻が入っています。
これを持って、森で木の実を拾っていたのでしょう。
漆塗注口土器 北海道八雲町 野田生1遺跡
縄文時代(後期)・前2000~前1000年 北海道・八雲町教育委員会

土器に赤い漆が塗られていて、漆が生活の場で使われていたことが分かります。
土製の耳飾りや硬玉製の装身具もあります。
土製耳飾 東京都調布市 下布田遺跡
縄文時代(晩期)・前1000~前400年 東京・江戸東京たてもの園 重要文化財

直径10㎝近い、とても大きなピアスで、これを耳に嵌めていたと思うと、驚いてしまいます。
人の目を惹きたい気持ちは昔も変わらないようです。
この時代には盛んだったイヤリング、ネックレス、ブレスレットなどが後の時代の日本で
廃れたのはなぜでしょうか。
第2章 美のうねり
縄文土器の作り続けられた1万年の間の形や文様の変化をたどります。
火焰型土器・王冠型土器 新潟県十日町市 野首遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 新潟・十日町市博物館
大小の火焰型土器・王冠型土器が12個、一緒に展示されていて、壮観です。
信濃川中流域を中心に、新潟県・長野県・福島県に多く出土する形で、縄文文化には
時代の違いとともに地方の違いがあることが分かります。
第3章 美の競演
日本の縄文時代にあたる時期のアジアやヨーロッパの土器との比較です。
中国・パキスタン・イラク・エジプト・キプロス・スイスなどの紀元前3000~2000年代の土器や
弥生時代の土器が展示されています。
第4章 縄文美の最たるもの
この展覧会の見所で、国宝に指定されている縄文時代の出土品6件すべてが
展示されています。
火焔型土器 新潟県十日町市笹山遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 新潟・十日町市(十日町市博物館保管) 国宝

火焔型土器は信濃川中流域で発生した形式とのことですが、そこには「芸術家」と
言える人がいたのでしょう。
土偶 縄文のビーナス 長野県茅野市棚畑遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 長野・茅野市(茅野市尖石縄文考古館保管) 国宝

7月31日からの展示です。
縄文時代の遺物で最初に国宝に指定されています。
集落の中心の広場に掘った小さな穴に埋められていました。
乳房があり、お腹が張り出し、大きな腰をした姿は、まさに豊穣、多産の
シンボルであることが分かります。
目や口は、他の土偶に多く見られるように付け足すのではなく、埴輪のように
穴を開けて作っています。
雲母が入っていて表面はキラキラしており、体に装飾も無いので、
すっきりした印象を受けます。
土偶 縄文の女神 山形県舟形町西ノ前遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山形県(山形県立博物館保管) 国宝

足を長く四角い形に作り、乳房の表現も工夫するなど、すぐれたデザイン感覚です。
横から見ると、立像を支える下半身と、薄い板のような上半身の組み合わせで
あることが分かります。
顔の造作が無いので、精霊か何かを表しているのではないかということです。
土偶 仮面の女神 長野県茅野市中ッ原遺跡
縄文時代(後期)・前2000~前1000年 長野・茅野市(茅野市尖石縄文考古館保管) 国宝

7月31日からの展示です。
どっしりした足で立つ、堂々とした姿です。
顔に三角形の仮面のような物が付いており、ひもで後ろで結んである状態を
表しています。
表面は磨かれ、丁寧に作られたことが分かります。
集落の墓の中から出土しており、再生か鎮魂を願ったものではないかということです。
土偶 合掌土偶 青森県八戸市風張1遺跡 縄文時代(後期)・前2000~前1000年
青森・八戸市(八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館保管) 国宝

小さな土偶ですが、立てた膝の上で両手を組んだ姿をしています。
お祈りをしているとも、お産の姿とも言われています。
多くの土偶は故意に壊されていることが多いのに、これは天然アスファルトで
補修がなされており、住居跡の奥から発見されていて、大事にされていたことが分かります。
土偶 中空土偶 北海道函館市著保内野遺跡 縄文時代(後期)・前2000~前1000年
北海道・函館市(函館市縄文文化交流センター保管) 国宝

中空の土偶としては最大級の大きさとのことで、顔も体も現実の人間に
近い形をしています。
胸や下半身には細密な文様が施されています。
第5章 祈りの美、祈りの形
縄文人の心を示す品の展示です。
土偶 滋賀県東近江市 相谷熊原遺跡
縄文時代(草創期)・前11000~前7000年 滋賀県教育委員会
高さ約3㎝の、頭も腕も無い上半身だけのトルソで、乳房が写実的に表現されています。
国内で最も古い土偶の一つで、土偶とはこのような小さくて簡単な形から始まったことを
示しています。
遮光器土偶 青森県つがる市木造亀ヶ岡
縄文時代(晩期)・前1000~前400年 東京国立博物館 重要文化財

土偶といえば、先ずこれを思い出します。
顔がすべて、目を閉じた瞼になっていて、ゴーグル(遮光器)のように
見えることから、この名が付いています。
ネックレスらしい物を着け、髪も装飾的、着ている物の文様も描かれ、
華やかな姿です。
土面 縄文時代晩期(前1000~前400年)
秋田県能代市麻生遺跡 東京大学総合研究博物館 重要文化財

円形で、仮面にしては小さいので、額に付けたか、墓票に付けたのでは
ないかと言われています。
目の作り方は、遮光器土偶に似ていて、時期は違いますが、地域が近いことが
関係しているのでしょうか。
人形装飾付有孔鍔付土器 山梨県南アルプス市鋳物師屋遺跡
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山梨・南アルプス市教育委員会 重要文化財

土器の表面に人の姿が貼り付けてあります。
踊る女性を表しているとのことで、口を開け、右手を上げています。
指は3本で表していて、3本指の土偶は他にも展示されています。
猪形土製品 青森県弘前市 十腰内2遺跡
縄文時代(後期)・前2000~前1000年 青森・弘前市立博物館

写実的な猪で、鼻はとがり、背中の毛は逆立ち、しっぽも立っていて、
蹄も表現されています。
猿型・熊型・キノコ型・貝型などの土製品もあります。
第6章 新たにつむがれる美
縄文文化の近代の作家たちに与えた影響の紹介です。
柳宗悦や濱田庄司など民芸運動の芸術家や岡本太郎は大きな影響を受けています。
日本人の美意識は、農耕生活の始まった弥生時代に由来するものが中心であるように
思えますが、長野県諏訪の御柱祭のように現在も縄文文化を受け継いでいるとされる
ものもあります。
縄文時代は1万年も続いており、現在の日本文化の底には縄文文化も流れているのでしょう。
大変人気の展覧会で、私の行った休日の開館時には入館待ちの行列が出来ていました。
展覧会のHPです。
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【2018/08/22 15:46】
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