恵比寿
広尾の山種美術館では特別展、「皇室ゆかりの美術―宮殿を彩った日本画―」展が
開かれています。
会期は2019年1月20日(日)までです。
12月16日までの前期と18日からの後期で一部の展示替えがあります。

1968(昭和43)年に完成した皇居宮殿を飾った作品群に感銘を受けた山種美術館の
初代館長、山﨑種二は同種の作品を各作家に直接依頼しています。
展覧会ではこれらの作品を展示し、併せて皇室ゆかりの美術品を展示しています。
皇居宮殿関係の展示です。
東山魁夷 「満ち来る潮」(部分) 1970(昭和45)年 山種美術館


縦2m、横10m近い大作です。
温かい春の海の色を緑青で、砕ける波を金とプラチナの切箔や砂子で表しています。
寄せて来る波と岩に当ってなだれ落ちる波を同じ瞬間のものとして描いています。
静謐な作品の多い東山魁夷の中では、装飾性の高い、華やかな作品です。
題名も、依頼した山崎種二の要望で、験の良いものになっています。
宮殿の作品ではゆっくりした波を描いたのに対し、こちらは寄せる波が岩に当たって
しぶきを上げる情景にしたそうです。
橋本明治 「朝陽桜」 1970(昭和45)年 山種美術館

福島県三春の滝桜のスケッチを元にした作品です。
花弁の一枚一枚をくっきりした輪郭線で装飾性豊かに描き出しています。
山口蓬春 「新宮殿杉戸楓4分の1下絵」 1967(昭和42)年 山種美術館

福島県の国立公園内の楓を題材にしています。
橋本明治の桜と対になって宮殿の杉戸に描かれた作品の下絵です。
山口蓬春は病のため、山崎種二に依頼された作品を完成出来ませんでした。
上村松篁 「日本の花・日本の鳥」 1970(昭和45)年 山種美術館
右隻

左隻

扇面屏風の形で、右隻に紅白梅、白牡丹、桔梗などの花、左隻に鶉、山鳩、鴛鴦などの
鳥を端正な画風で描いています。
青山御所の寝殿杉戸の下絵の一部の展示です。
竹内栖鳳 「皇居造営下絵 土筆に小犬」
19-20世紀(明治-大正時代) 東京国立博物館

1月6日までの展示です。
竹内栖鳳は円山四条派の画家で、円山応挙に倣った子犬の絵です。
青山御所は空襲で焼失しましたが、下絵は残りました。
宮家旧蔵の美術品も展示されています。
伝 海北友雪 「太平記絵巻 巻第12」 17世紀(江戸時代) 国立歴史民俗博物館

全12巻のうち、3巻が現存し、高松宮に伝来していました。
12月18日に場面替えされ、現在はこの場面ではなく、後光厳天皇の下で開かれ、
第2代将軍足利義詮も参上している中殿御会(ちゅうでんぎょかい)の場面が
展示されています。
中殿御会は中殿(清涼殿)で開かれる和歌管弦の宴です。
下村観山 「老松白藤」 大正10年(1921) 山種美術館

六曲一双屏風で、金地に大きく枝を伸ばした松とそれに絡みつく藤を
装飾的に描かれています。
松と藤はよく描かれる題材で、夫婦和合を表しています。
熊蜂も一匹描かれています。
伏見宮家の旧蔵です。
西村五雲 「松鶴」 昭和8年(1933) 山種美術館

松に鶴という、長寿を表す目出度い絵柄で、鶴の羽毛まで細かく描き込まれています。
西村五雲は師の竹内栖鳳に倣って、動物画を得意としています。
久邇宮家の旧蔵です。
ボンボニエールも数点、展示されています。
「釣灯籠形ボンボニエール」 昭和3年(1928)11月17日

昭和天皇の即位大礼の大饗夜宴で配られました。
ボンボニエールとはボンボン(砂糖菓子)を入れる菓子器のことで、皇室では祝宴の際の
引出物として、銀などで作った、さまざまな意匠の小さな器が用いられています。
帝室技芸員に任命された作家の作品も展示されています。
帝室技芸員は戦前の宮内省により運営された美術家・工芸家の顕彰制度で、
1890(明治23)年に設置され、終戦後の1947(昭和22)年に廃止されるまでに、
79名が任命されています。
川合玉堂 「鵜飼」 1895(明治28)年 山種美術館


22歳のときの力作で、京都で開かれた第4回内国勧業博覧会に出品されています。
大きな画面の作品で、そそり立つ岸壁の下、篝火の煙をなびかせて漁をする
鵜飼舟を描いています。
鏑木清方 「伽羅」 1936(昭和11)年 山種美術館

髪に香りを薫きしめるための香枕は伽羅(きゃら)などを焚くので伽羅枕ともいいます。
伽羅枕でうたた寝をした女性が目を覚ましたところです。
市松模様の帯が粋で、朝顔模様の着物や花菖蒲模様の打掛の色彩に
初夏の雰囲気が表れています。
上村松園 「牡丹雪」 1944(昭和19)年 山種美術館

雪の積もった傘を傾けて、二人の町娘が歩いています。
一人は、麻の葉模様の帯を締め、袂で傘の柄をくるむ様にして持ち、前かがみになって
褄を取り、雪道に難渋している風情で、もう一人は御高祖頭巾を被っています。
柴田是真 「墨林筆哥」 1877-88(明治10-11)年 山種美術館

漆を使って描く漆絵による、琵琶を弾く蛙で、鳥獣戯画のような面白い絵です。
柴田是真は漆絵の技法で有名です。
会期中に場面替えがあります。
山種美術館の所蔵品では珍しい、黒田清輝、梅原龍三郎、安井曽太郎などの
洋画家の作品も展示されています。
山種美術館のHPです。
次回の展覧会はご広尾開館10周年記念特別展、「生誕130年記念 奥村土牛」展です。
会期は2月2日(土)から3月31日(日)までです。

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広尾の山種美術館では特別展、「皇室ゆかりの美術―宮殿を彩った日本画―」展が
開かれています。
会期は2019年1月20日(日)までです。
12月16日までの前期と18日からの後期で一部の展示替えがあります。

1968(昭和43)年に完成した皇居宮殿を飾った作品群に感銘を受けた山種美術館の
初代館長、山﨑種二は同種の作品を各作家に直接依頼しています。
展覧会ではこれらの作品を展示し、併せて皇室ゆかりの美術品を展示しています。
皇居宮殿関係の展示です。
東山魁夷 「満ち来る潮」(部分) 1970(昭和45)年 山種美術館


縦2m、横10m近い大作です。
温かい春の海の色を緑青で、砕ける波を金とプラチナの切箔や砂子で表しています。
寄せて来る波と岩に当ってなだれ落ちる波を同じ瞬間のものとして描いています。
静謐な作品の多い東山魁夷の中では、装飾性の高い、華やかな作品です。
題名も、依頼した山崎種二の要望で、験の良いものになっています。
宮殿の作品ではゆっくりした波を描いたのに対し、こちらは寄せる波が岩に当たって
しぶきを上げる情景にしたそうです。
橋本明治 「朝陽桜」 1970(昭和45)年 山種美術館

福島県三春の滝桜のスケッチを元にした作品です。
花弁の一枚一枚をくっきりした輪郭線で装飾性豊かに描き出しています。
山口蓬春 「新宮殿杉戸楓4分の1下絵」 1967(昭和42)年 山種美術館

福島県の国立公園内の楓を題材にしています。
橋本明治の桜と対になって宮殿の杉戸に描かれた作品の下絵です。
山口蓬春は病のため、山崎種二に依頼された作品を完成出来ませんでした。
上村松篁 「日本の花・日本の鳥」 1970(昭和45)年 山種美術館
右隻

左隻

扇面屏風の形で、右隻に紅白梅、白牡丹、桔梗などの花、左隻に鶉、山鳩、鴛鴦などの
鳥を端正な画風で描いています。
青山御所の寝殿杉戸の下絵の一部の展示です。
竹内栖鳳 「皇居造営下絵 土筆に小犬」
19-20世紀(明治-大正時代) 東京国立博物館

1月6日までの展示です。
竹内栖鳳は円山四条派の画家で、円山応挙に倣った子犬の絵です。
青山御所は空襲で焼失しましたが、下絵は残りました。
宮家旧蔵の美術品も展示されています。
伝 海北友雪 「太平記絵巻 巻第12」 17世紀(江戸時代) 国立歴史民俗博物館

全12巻のうち、3巻が現存し、高松宮に伝来していました。
12月18日に場面替えされ、現在はこの場面ではなく、後光厳天皇の下で開かれ、
第2代将軍足利義詮も参上している中殿御会(ちゅうでんぎょかい)の場面が
展示されています。
中殿御会は中殿(清涼殿)で開かれる和歌管弦の宴です。
下村観山 「老松白藤」 大正10年(1921) 山種美術館

六曲一双屏風で、金地に大きく枝を伸ばした松とそれに絡みつく藤を
装飾的に描かれています。
松と藤はよく描かれる題材で、夫婦和合を表しています。
熊蜂も一匹描かれています。
伏見宮家の旧蔵です。
西村五雲 「松鶴」 昭和8年(1933) 山種美術館

松に鶴という、長寿を表す目出度い絵柄で、鶴の羽毛まで細かく描き込まれています。
西村五雲は師の竹内栖鳳に倣って、動物画を得意としています。
久邇宮家の旧蔵です。
ボンボニエールも数点、展示されています。
「釣灯籠形ボンボニエール」 昭和3年(1928)11月17日

昭和天皇の即位大礼の大饗夜宴で配られました。
ボンボニエールとはボンボン(砂糖菓子)を入れる菓子器のことで、皇室では祝宴の際の
引出物として、銀などで作った、さまざまな意匠の小さな器が用いられています。
帝室技芸員に任命された作家の作品も展示されています。
帝室技芸員は戦前の宮内省により運営された美術家・工芸家の顕彰制度で、
1890(明治23)年に設置され、終戦後の1947(昭和22)年に廃止されるまでに、
79名が任命されています。
川合玉堂 「鵜飼」 1895(明治28)年 山種美術館


22歳のときの力作で、京都で開かれた第4回内国勧業博覧会に出品されています。
大きな画面の作品で、そそり立つ岸壁の下、篝火の煙をなびかせて漁をする
鵜飼舟を描いています。
鏑木清方 「伽羅」 1936(昭和11)年 山種美術館

髪に香りを薫きしめるための香枕は伽羅(きゃら)などを焚くので伽羅枕ともいいます。
伽羅枕でうたた寝をした女性が目を覚ましたところです。
市松模様の帯が粋で、朝顔模様の着物や花菖蒲模様の打掛の色彩に
初夏の雰囲気が表れています。
上村松園 「牡丹雪」 1944(昭和19)年 山種美術館

雪の積もった傘を傾けて、二人の町娘が歩いています。
一人は、麻の葉模様の帯を締め、袂で傘の柄をくるむ様にして持ち、前かがみになって
褄を取り、雪道に難渋している風情で、もう一人は御高祖頭巾を被っています。
柴田是真 「墨林筆哥」 1877-88(明治10-11)年 山種美術館

漆を使って描く漆絵による、琵琶を弾く蛙で、鳥獣戯画のような面白い絵です。
柴田是真は漆絵の技法で有名です。
会期中に場面替えがあります。
山種美術館の所蔵品では珍しい、黒田清輝、梅原龍三郎、安井曽太郎などの
洋画家の作品も展示されています。
山種美術館のHPです。
次回の展覧会はご広尾開館10周年記念特別展、「生誕130年記念 奥村土牛」展です。
会期は2月2日(土)から3月31日(日)までです。

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よくこんなの出てきましたね。皇室所蔵となると国宝にも指定出来ないほどの珍品。門外不出の代物ではないのでしょうか
皇室所蔵の美術品は数多くありますが、大手町の三の丸尚蔵館でよく展示されています。