FC2ブログ
「ゴッホ展」 上野の森美術館
上野
chariot

上野の森美術館では、「ゴッホ展」が開かれています。
会期は2020年1月13日(月・祝)までです。

ゴッホimg064 (1)


ポスト印象派の画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の展覧会で、
オランダ時代に影響を受けた「ハーグ派」とパリ時代に影響を受けた「印象派」についても
焦点を当てています。
それぞれの画家について、ゴッホが言及した言葉も掲示されています。

ハーグ派は19世紀後半にオランダのハーグで活動したグループです。
フランスのバルビゾン派の影響を受け、屋外の自然や働く人たち、室内の情景などを
描き、暗い色調による写実的な画風が特徴です。
オランダの南部生まれのゴッホは16歳から20歳までハーグの画商の下で働き、
27歳の1881年に再びハーグを訪れて、従姉妹と結婚したハーグ派の画家、
アントン・マウフェ(モーヴ)に絵を習っています。
ゴッホの初期の作品もハーグ派風の暗い色調で描かれています。
しかし、やがてマウフェ(モーヴ)とは疎遠になってしまいます。

ヨゼフ・イスラエルス 「縫い物をする若い女」 1880年頃 ハーグ美術館
ハーグ006

窓からの光で縫い物をしている女性で、窓の外にはわずかに青空が見えます。
フェルメールのような情景ですが、光と影の雰囲気はレンブラント風です。
ヨーゼフ・イスラエルス(1824-1911)は落着いた色調と精神性の高さから
第2のレンブラントと呼ばれていたそうで、ゴッホも高く評価しています。

ベルナルデュス・ヨハネス・ブロンメルス 「室内」 1872年 ハーグ美術館
ハーグ013

窓辺のテーブルを囲んでくつろぐ家族の一コマです。
オランダ絵画は宗教改革の後は世俗画中心になりますが、この絵には聖ヨセフと
聖母子のモチーフの面影を感じます。
ベルナルデュス・ヨハネス・ブロンメルス(1845-1914)はイスラエルスの影響を受けながら、
海辺の風景や漁師の生活を描いています。

アントン・マウフェ 「雪の中の羊飼いと羊の群れ 1887-88年 ハーグ美術館
ゴッホimg070 (2)

農民の厳しい生活を描いていますが、色調は落着き、画面に動きがあります。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「疲れ果てて」 1881年9-10月 P. & N. デ・ブール財団
ゴッホimg070 (1)

紙に鉛筆、ペン、インク、水彩絵の具などで描かれています。
ゴッホも画家として最初から農民の生活に関心を寄せています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「農婦の頭部」 
 1885年4月 スコットランド・ナショナル・ギャラリー

ゴッホimg069 (2)

ゴッホは1883年に父の移り住んでいたニューネンを訪れ、1885年まで過ごしています。
ミレーの「土で描く」という言葉を称賛していたということで、村の農民の姿を
よく描いていました。
この絵のモデルはホルディーナという女性で、初期の有名な「ジャガイモを食べる人々」
(1885)にも描かれています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「陶器と洋梨のある静物」 
 1885年9月 ユトレヒト中央美術館

ゴッホimg064 (4)

ホルディーナが妊娠したことから、ゴッホは関係を疑われ、村の教会は村人に
ゴッホのモデルにならないようにとの命令を出しています。
そこで、ゴッホは仕方なく家の中での静物画に取組むことになります。
やはり色調は暗く、洋梨の群像といった感じです。

ニューネンに居辛くなったゴッホは1885年にベルギーのアントワープに移り、
翌年にパリに出て、画商をしている弟テオの部屋に転がり込みます。
このパリで、印象派の作品に接してからゴッホの作風は大きく変わり始め、
明るい色彩になって行きます。
また、アドルフ・モンティセリの大胆な厚塗りの技法に感銘を受けています。
ゴッホがパリに出てきた1886年は最後の印象派展で、スーラやシニャックの登場した
第8回展が開かれた年でもあります。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「ブリュット=ファンの風車」 
1886年春 P. & N. デ・ブール財団

ゴッホimg070 (4)

パリに出てきたゴッホはモンマルトルの丘の風景をよく描いています。
紙にクレヨンと水彩で描かれていて、色彩はまだ暗さが残っています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「タンギー爺さんの肖像」 
1886-87年冬 ニュ・カールすベア美術館

ゴッホimg070 (3)

ジュリアン・フランソワ・タンギー(1825-1894)はパリの画材屋兼画商で、
ゴッホたち貧しい画家を援助しています。
まだ写実的な描き方です。

会場にはモンティセリや印象派のピサロ、シスレー、セザンヌ、モネ、ルノワール、
それにゴーギャンやシニャックの作品も展示されています。

クロード・モネ 「花咲く林檎の樹」 1873年以前? モナコ王宮コレクション
ゴッホimg070 (5)

モネたちが第1回印象派展を開く前年と思われる年の作品です。
当時住んでいたアルジャントゥイユの、のびやかな春の景色を描いています。

ゴッホは1888年に南仏のアルルに移り住み、画家として実り多い時期を迎えます。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「麦畑」 1888年6月 P. & N. デ・ブール財団
ゴッホimg064 (3)

麦の刈入れの頃で、麦畑は黄金色に輝き、水色の空と響き合っています。
遠くの山並はアルピーユ山脈とのことです。
さまざまな色を使った細かい筆遣いを見ていると、ゴッホがいかに色彩を扱うことを
楽しんでいたかが伝わります。
ゴッホは収穫期の麦畑の絵を少なくても10点描いていたとのことで、農民の生活への
共感を持ち続けていたことが分かります。
ファン・ゴッホ美術館所蔵の「収穫」(1888年)も観たことがありますが、ていねいに
描かれた、気持ちのこもった絵でした。 

フィンセント・ファン・ゴッホ 「サント=マリー=ド=ラ=メールの風景」 
1888年1-3月 クレラー・ミュラー美術館

ゴッホimg070 (7)

アルルの南、地中海沿いにあるサント=マリー=ド=ラ=メールに出掛け、
風景を描いたりしています。
空や畑の青や緑と、建物の赤を対比させています。

ゴッホの呼びかけに応じて、10月にゴーギャンも到着し、共同生活を始めます。
ところが二人の関係はすぐに悪くなり、ゴッホは12月に耳切り事件を起こしてしまい、
共同生活は終わります。
ゴッホはアルル市立病院に収容され、入退院を繰り返した後、1889年にサン=レミの
療養院に入ります。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「サン=レミの療養院の庭」 
 1889年5月 クレラー・ミュラー美術館

G004.jpg

療養院に入ったゴッホが庭を描いたものです。
きっちりとしたデッサンの上に、きらめくように鮮やかな色彩を画面いっぱいに
あふれるほど塗り重ねています。
なぜ療養院に入らねばならないのか不思議に思うほど、作品からは充実した
気力を感じます。
弟テオへの手紙にも、庭で描いた絵を受取ったら、自分がさほどふさぎ込んでいる
訳ではないことが分かるだろうと書いています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「糸杉」 1889年6月 メトロポリタン美術館
ゴッホimg069 (1)

ゴッホは糸杉も強い関心を持ち、よく描いています。
燃え上がるような糸杉のうねりと共に、野も山も雲もうねり、その中に三日月が
浮かんでいます。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「夕暮れの松の木」 
1889年12月 クレラー・ミュラー美術館

ゴッホimg070 (6)

手前に大きく樹木を描く構図はゴッホの愛好した浮世絵の影響を受けているようです。
赤い夕陽が絵に生命力を添えています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「薔薇」 1890年5月 ワシントン・ナショナル・ギャラリー
ワ019

ゴッホの亡くなる年の作品です。
花瓶からこぼれるばかりに咲くバラの花です。
活力にあふれた描きぶりで、褪色が進んでいるとのことですが、それを感じさせない
魅力があります。

ゴッホの作品を観ていると、それぞれの対象への強い思い入れがあり、
それが色彩や筆遣いに現れているのが分かります。
それは初期のハーグ派に近い作品から、後の印象派の影響を強く受けた作品にも
共通しています。
ゴッホ自身は思い込みの強さからか、家族や友人、近隣との揉め事の絶えなかった人
だったようですが、その思いの強さが濃密な作品となって結実し、没後になって
高く評価されることになったというのも興味深いことです。

私は初日に行ってきましたが、グッズ売り場には長い行列が出来ていました。

展覧会のHPです。

関連記事

【2019/10/12 21:56】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
comment
 
コメントを書く
コメントは承認後に公開されます。ご了承ください。
  • こんばんは。
  • モネの絵はさわやかで、並んでいる印象派の絵の中でも際立っていました。
    モナコの王様は良い物を持っているものだと思いました。

    【2019/10/15 21:19】 url[chariot #/wYFY6w6] [ 編集]
  • クロード・モネ 「花咲く林檎の樹」すごく良い!!あえて水連じゃないのが良い。流石はモナコ公室。目の付け所が違いますなぁ

    【2019/10/15 07:48】 url[miss.key #eRuZ.D2c] [ 編集]
    please comment















    管理者にだけ表示を許可する

    trackback
    trackback url ↓
    https://nekoarena.blog.fc2.com/tb.php/3972-70f84356

    プロフィール

    chariot

    Author:chariot
    美術館・博物館めぐりとカフェの記事を書いています。

    最近の記事

    最近のコメント

    最近のトラックバック

    カテゴリー

    ブログ内検索

    月別アーカイブ

    リンク

    このブログをリンクに追加する

    RSSフィード


    | ホーム |