神谷町
虎ノ門の菊池寛実記念智美術館では「第8回菊池ビエンナーレ展 現代陶芸の〈今〉」が
開かれています。
会期は2020年3月22日(日)までです。

菊池寛実記念智美術館は、菊池智(1923~2016)が1950年代から収集してきた
現代陶芸の作品を展示するため、2003年に開館した美術館です。
2004年からは隔年で、全国から作品を公募し、「菊池ビエンナーレ展」を開いています。

今回の展覧会では276点の応募作品のうち、入賞5点を含む入選作54点が
展示されています。
12月21日にアートブロガーイベントが開かれたので、参加してきました。
写真は許可を得て、撮影しています。
大賞 「白磁鉢」 中村清吾 佐賀県 1975年生

有田焼の大きな鉢で、甲虫をイメージしているとのことです。
息子さんと獲ったカブト虫の柔らかさと土の柔らかさに共通するものを感じたそうです。
中村さんの工房はJR九州のクルーズトレイン、「ななつ星in九州」に食器を納めています。
優秀賞 「切り継ぎー廻―」 森山寛二郎 福岡県 1984年生

小石原焼で、ろくろ成形して切ったパーツを合わせ、表面に錆の成分を塗っています。
回転しながら上へと向かう動きを感じます。
奨励賞 「志野彩文盤」 伊藤公洋 愛知県 1965年生

肌合いを観ると、確かに志野焼です。
大きな器で、外側に違う種類の板を貼り合わせています。
板の成分はそれぞれ違うので、焼成した時の収縮率も違い、制作に苦労したそうです。
奨励賞 「銀彩塞器 皓月」 高橋朋子 千葉県 1974年生

清らかな月光を銀彩が器に留めています。
奨励賞 「Flower Scapes」 中里浩子 神奈川県 1966年生

つぼみと咲いた花を表しているそうで、形も色彩も柔らかです。
「睦五郎文鉢」 朝倉潔 千葉県 1965年生

黒い水溜まりから黒いムツゴロウが逃げ出しています。
「秘めリンゴ(black)」 大石早矢香 大阪府 1980年生

自画像になっているそうで、耳や鼻や手があります。
お皿に載っているところは、サロメが望んだ、洗礼者ヨハネの首のようでもあります。
「ふりむく猫」 大塚茂吉 山梨県 1956年生

大塚さんは東京藝術大学日本画科卒業後、イタリアでテラコッタを学んでいます。
しなやかで、神秘さのある猫です。
「壺中ノ天」 かのうたかお 京都府 1974年生

土が固まる成分を混ぜた耐火煉瓦の材料と混ぜていない材料を型に入れて焼成し、
固まっていない部分を掻き出しています。
遺跡から掘り出した土器のような味わいです。
壺中の天とは後漢書に書かれた、壺の中にある仙人の住む別天地のことです。
「刻」 川瀬理央 大阪府 1990年生

初出品の作家です。
直径54㎝あり、樹木やサンゴが延び拡がるようで、影が台に映っています。
「白磁水氷文鉢」 北川智浩 北海道 1967年生

つららを表しているそうで、玲瓏とした白磁は少し青みがかっています。
「笹文台皿」 柴田有希佳 石川県 1984年生

笹舟をイメージして、舟の形の器に笹を描いています。
「Angel’s Ladder」 惣田司 兵庫県 1978年生

型で作ったパーツを組み合わせてありますが、出来上がりの形は予め考えて
いないそうです。
「実」 高橋奈己 東京都 1973年生

白磁のくっきりとした造形が特徴で、影が映えるように展示の照明に気を付けたそうです。
京橋のLIXILギャラリーでは、1月21日まで「白磁のかたち 高橋奈己展」が開かれている
ところです。

「彩釉鉢」 田島正仁 石川県 1948年生

九谷焼の人間国宝、三代徳田八十吉に師事していて、グラデーションの技法を
受け継いでいます。
朝顔の花を表していて、徳田八十吉の多色グラデーションに対し、単色なのが
特徴とのことです。
「舞華」 田中陽子 石川県 1992年生

直径56㎝の大きな作品で、ドライフラワーかと思うような薄く繊細な花弁です。
「Seinan」 田中良和 愛知県 1983年生

福岡の西南学院大学の工事で出た土を素材にするという豪快なつくり方で、
ゴツゴツとして重量感満点です。
展示のため、移動させるのも大変だったそうです。
「Thalassia」 釣光穂 石川県 1991年生

三つ編みにした粘土の紐を積み上げてから、ゆがませています。
紐は工業製品のロープをイメージしているそうです。
繊細で、編み物のようでもあります。
「白金彩雲雷紋龍塔壺」 戸叶恵介 神奈川県 1986年生

高さ1m以上あり、まるで古代中国の青銅器のよな迫力があります。
「ムシバム刻ノタベノコシ」 村越郁夫 東京都 1979年生

果物が何者かに噛り尽くされています。
このムシが犯人のようです。

「色絵銀彩螺旋文平鉢」 若林和恵 神奈川県 1968年生

繰り返しの文様と青みを帯びた色調にはイスラムの装飾のような趣きがあります。
都県別の出品者数を比べると、有田焼、京焼、瀬戸焼、九谷焼、笠間焼などの
伝統的な陶磁器の産地が多いのが分かります。
伝統工芸に基く作品、モダンなオブジェとさまざまなバリーションがあり、
工夫や努力が感じられ、観ていて飽きません。
やはり陶芸はいろいろ可能性があって、面白いものです。
2018年に智美術館で開かれた「第8回菊池ビエンナーレ展」の記事です。
展覧会のHPです。
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虎ノ門の菊池寛実記念智美術館では「第8回菊池ビエンナーレ展 現代陶芸の〈今〉」が
開かれています。
会期は2020年3月22日(日)までです。

菊池寛実記念智美術館は、菊池智(1923~2016)が1950年代から収集してきた
現代陶芸の作品を展示するため、2003年に開館した美術館です。
2004年からは隔年で、全国から作品を公募し、「菊池ビエンナーレ展」を開いています。

今回の展覧会では276点の応募作品のうち、入賞5点を含む入選作54点が
展示されています。
12月21日にアートブロガーイベントが開かれたので、参加してきました。
写真は許可を得て、撮影しています。
大賞 「白磁鉢」 中村清吾 佐賀県 1975年生

有田焼の大きな鉢で、甲虫をイメージしているとのことです。
息子さんと獲ったカブト虫の柔らかさと土の柔らかさに共通するものを感じたそうです。
中村さんの工房はJR九州のクルーズトレイン、「ななつ星in九州」に食器を納めています。
優秀賞 「切り継ぎー廻―」 森山寛二郎 福岡県 1984年生

小石原焼で、ろくろ成形して切ったパーツを合わせ、表面に錆の成分を塗っています。
回転しながら上へと向かう動きを感じます。
奨励賞 「志野彩文盤」 伊藤公洋 愛知県 1965年生

肌合いを観ると、確かに志野焼です。
大きな器で、外側に違う種類の板を貼り合わせています。
板の成分はそれぞれ違うので、焼成した時の収縮率も違い、制作に苦労したそうです。
奨励賞 「銀彩塞器 皓月」 高橋朋子 千葉県 1974年生

清らかな月光を銀彩が器に留めています。
奨励賞 「Flower Scapes」 中里浩子 神奈川県 1966年生

つぼみと咲いた花を表しているそうで、形も色彩も柔らかです。
「睦五郎文鉢」 朝倉潔 千葉県 1965年生

黒い水溜まりから黒いムツゴロウが逃げ出しています。
「秘めリンゴ(black)」 大石早矢香 大阪府 1980年生

自画像になっているそうで、耳や鼻や手があります。
お皿に載っているところは、サロメが望んだ、洗礼者ヨハネの首のようでもあります。
「ふりむく猫」 大塚茂吉 山梨県 1956年生

大塚さんは東京藝術大学日本画科卒業後、イタリアでテラコッタを学んでいます。
しなやかで、神秘さのある猫です。
「壺中ノ天」 かのうたかお 京都府 1974年生

土が固まる成分を混ぜた耐火煉瓦の材料と混ぜていない材料を型に入れて焼成し、
固まっていない部分を掻き出しています。
遺跡から掘り出した土器のような味わいです。
壺中の天とは後漢書に書かれた、壺の中にある仙人の住む別天地のことです。
「刻」 川瀬理央 大阪府 1990年生

初出品の作家です。
直径54㎝あり、樹木やサンゴが延び拡がるようで、影が台に映っています。
「白磁水氷文鉢」 北川智浩 北海道 1967年生

つららを表しているそうで、玲瓏とした白磁は少し青みがかっています。
「笹文台皿」 柴田有希佳 石川県 1984年生

笹舟をイメージして、舟の形の器に笹を描いています。
「Angel’s Ladder」 惣田司 兵庫県 1978年生

型で作ったパーツを組み合わせてありますが、出来上がりの形は予め考えて
いないそうです。
「実」 高橋奈己 東京都 1973年生

白磁のくっきりとした造形が特徴で、影が映えるように展示の照明に気を付けたそうです。
京橋のLIXILギャラリーでは、1月21日まで「白磁のかたち 高橋奈己展」が開かれている
ところです。

「彩釉鉢」 田島正仁 石川県 1948年生

九谷焼の人間国宝、三代徳田八十吉に師事していて、グラデーションの技法を
受け継いでいます。
朝顔の花を表していて、徳田八十吉の多色グラデーションに対し、単色なのが
特徴とのことです。
「舞華」 田中陽子 石川県 1992年生

直径56㎝の大きな作品で、ドライフラワーかと思うような薄く繊細な花弁です。
「Seinan」 田中良和 愛知県 1983年生

福岡の西南学院大学の工事で出た土を素材にするという豪快なつくり方で、
ゴツゴツとして重量感満点です。
展示のため、移動させるのも大変だったそうです。
「Thalassia」 釣光穂 石川県 1991年生

三つ編みにした粘土の紐を積み上げてから、ゆがませています。
紐は工業製品のロープをイメージしているそうです。
繊細で、編み物のようでもあります。
「白金彩雲雷紋龍塔壺」 戸叶恵介 神奈川県 1986年生

高さ1m以上あり、まるで古代中国の青銅器のよな迫力があります。
「ムシバム刻ノタベノコシ」 村越郁夫 東京都 1979年生

果物が何者かに噛り尽くされています。
このムシが犯人のようです。

「色絵銀彩螺旋文平鉢」 若林和恵 神奈川県 1968年生

繰り返しの文様と青みを帯びた色調にはイスラムの装飾のような趣きがあります。
都県別の出品者数を比べると、有田焼、京焼、瀬戸焼、九谷焼、笠間焼などの
伝統的な陶磁器の産地が多いのが分かります。
伝統工芸に基く作品、モダンなオブジェとさまざまなバリーションがあり、
工夫や努力が感じられ、観ていて飽きません。
やはり陶芸はいろいろ可能性があって、面白いものです。
2018年に智美術館で開かれた「第8回菊池ビエンナーレ展」の記事です。
展覧会のHPです。
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