六本木・乃木坂
六本木のサントリー美術館では、リニューアル・オープン記念展 I
「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」展が開かれています。
会期は9月13日(日)まで、休館日は火曜日です。
会期中、一部展示替えがあるので、展覧会のHPで確認してください。

作品は一部を除き、撮影可能です。
「生活の中の美(Art in Life)」を基本理念にしてきたサントリー美術館のリニューアルを
記念しての所蔵作品の展示です。
現代アートの深見陶治、山口晃、若宮隆志、山本太郎、野口哲哉各氏の作品も
併せて展示され、所蔵作品との対比を見せています。
受付カウンターも、水を意識したデザインとのことで、透明なデスクや椅子になりました。
第一章 装い
「遙カノ景〈空ヘ〉」 深見陶治 平成8年(1996)

大きな剣の形をしていて、会場の最初に置かれています。
陶土を水で溶いて、圧力をかけて型に流し込む、泥漿圧力鋳込みという技法に
よっています。
「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」 鎌倉時代 13世紀 国宝


一面に螺鈿の模様を施した手箱で、北条政子の所持とも伝えられています。
浮線綾文様は公家の用いた、花を象った文様で、1個の文様を作るために
13個もの貝のピースが使われています。
「舞踏図」 江戸時代 17世紀 重要美術品

豪華な小袖姿の女性たちが扇を持って、少しずつ違うポーズで踊っています。
元は屏風絵だったようで、全部で6面の内、3面が展示されています。
「立美人図」 懐月堂度辰 江戸時代 18世紀

美人とありますが、紫帽子を付けているので女形の役者です。
蔦模様の表着を両袖脱ぎにして笹竜胆模様の間着を見せた華やかな姿です。
「江戸桜」 鏑木清方 昭和7年(1932)


九代目市川団十郎の30年追悼公演を機に制作されたもので、下町娘の持つ羽子板は
明治29年(1896)に団十郎が歌舞伎座で演じた、「助六所縁江戸桜」での最後の助六の
姿ということです。
娘は黄八丈の着物で、髪は島田、蛇の目傘のかんざしを差しています。
「誰が袖図屏風」 六曲一双 江戸時代 17世紀

衣桁にかけた華やかな衣装を屏風に描いたものです。、
「熊本ものがたりの屛風 女性のハレの日金屛風」 山本太郎 三曲一隻 平成29年(2017)
結婚式のウェディングドレスや留袖などを衣桁に掛けた、現代の誰が袖図屏風です。
2014年に日本橋髙島屋で開かれた「古画降臨 山本太郎展」の記事です。
朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足 桃山時代 16~17世紀

兜、胴、佩楯を朱漆、草摺を黒漆で塗った鎧です。
素懸威(すがけおどし)は上下の小札をつなぐ糸の間隔を広くしたものです。
豊臣秀次所用と伝えられていますが、北政所の養子となった豊臣利次所用だったのが
誤って伝えられたのではないかということです。
さらに実際に着用した跡があることなどから利次の父、木下利房の具足ではないかと
推定されるそうです。
利房の異母兄に木下勝俊(長嘯子)、同母弟に小早川秀秋がいます。
「WHO ARE YOU~ 木下利房と仮定~」 令和2年(2020) 野口哲哉

木下利房が具足を着ている姿を仮定した、フィギュアのよな小さな像で、
不思議な現実感のある鎧武者です。
2018年に銀座のポーラ ミュージアム アネックスで開かれた『野口哲哉
「中世より愛を込めて」』展の記事です。
第二章 祝祭・宴
「賀茂競馬図屏風」 六曲一双 江戸時代 17世紀
右隻

左隻



野口さんの鎧武者たちも観戦しています。
賀茂競馬(かもくらべうま)は平安時代の寛治7年(1073)に始まる、
上賀茂神社で行なわれている競馬です。
毎年5月5日に行なわれ、2頭の馬が直線の馬場を並走する行事で、徒然草にも
書かれています。
「日吉山王祇園祭礼図屛風」 六曲一双 土佐派 室町時代 16世紀
祇園祭礼図

祇園祭の場面では山鉾や山車が巡行し、喧嘩も始まっています。


「四季耕作図屛風」) 六曲一隻 狩野晴川院養信 江戸時代 文政8年(1825)
右隻

左隻

桜の咲く春、田楽踊りに合わせて田植えをしています。

紅葉の秋、4人掛かりで石臼で籾摺りをしたり、唐箕(とうみ)を使って
籾殻を選り分けています。

11代将軍徳川家斉の娘、盛姫の肥前佐賀藩10代藩主鍋島直正(閑叟)との
婚礼調度として制作されたものです。
鍋島直正(1815-1871)は幕末の佐賀藩の近代化に成功し、藩は維新勢力の
一角となっています。
狩野養信(かのうおさのぶ、1796-1846)は江戸木挽町狩野派9代目の絵師で、
最晩年の僅かな間、橋本雅邦、狩野芳崖を弟子にしています。
「邸内遊楽図屛風」) 六曲一隻 寛永年間(1624~44)

宴会で盛り上がり、

庭で輪になって踊り、

蒸し風呂にも入っています。

「今様遊楽圖」 山口晃 平成12年(2000)

南蛮屏風や洛中洛外図屏風と現代が混じり合っています。

温泉や宴会で賑わっています。

2013年に横浜のそごう美術館で開かれた「山口晃展 老若男女ご覧あれ」の記事です。
「朱漆塗湯桶」 室町時代 15世紀

湯や茶を配る大きな朱塗りの桶で、お寺で使いそうなデザインです。
「色絵葡萄鳥文瓢形酒注」 肥前・有田 江戸時代 17世紀

上下の胴に回した紐をつなぐ紐が把手になるという趣向で、蓋は葉の形をしています。
右 「染付吹墨文大徳利」 肥前・有田 江戸時代 17世紀前半
左 「薩摩切子 藍色被栓付瓶」 江戸時代 19世紀中頃

右は初期伊万里の作品で、霧吹きで吹付けたような文様は明時代末期の景徳鎮の古染付に
倣ったものとされています。
左は薩摩藩で作られたカットグラスで、西洋風のデカンタです。
薩摩切子は徳川家への献上品や各大名への贈答品にも使われていました。
第三章 異国趣味
「泰西王侯騎馬図屏風」 四曲一双 桃山~江戸時代初期 17世紀初期 重要文化財



会津若松城にあった屏風で、日本人による初期洋風画の代表作とされ、旧会津藩主の
松平家の旧蔵品です。
右から、ペルシャ王、アビシニア王(エチオピア王)、フランス王アンリ4世、イギリス王
あるいはギーズ大公フランソワ・ド・ローランあるいはカール5世とされています。
異教徒のペルシャ王が中世の騎士の持つような槍を持つのに対し、キリスト教国の
3人の王は王笏を持ち、ペルシャ王の方を向いています。
アンリ4世(1553-1610)はブルボン朝最初の王で、ナントの勅令を発してカトリックと
プロテスタントの融和を図っています。
「IHS蒔絵螺鈿書見台」 桃山時代 16世紀後半~17世紀初期

聖書などを置く書見台で、蒔絵で桜や橘、桐をあしらった、精巧で日本趣味の濃い
デザインです。
輸出用に作られた品で、「IHS」はキリスト教を日本にひろめたイエズス会の頭文字です。
「IHS」の文字から発する、光を表す螺鈿細工は輝いています。
サントリー美術館の豊富なコレクションを観ることが出来て、現代アートとのコラボも
楽しめる、とても面白い展覧会です。
展覧会のHPです。
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六本木のサントリー美術館では、リニューアル・オープン記念展 I
「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」展が開かれています。
会期は9月13日(日)まで、休館日は火曜日です。
会期中、一部展示替えがあるので、展覧会のHPで確認してください。

作品は一部を除き、撮影可能です。
「生活の中の美(Art in Life)」を基本理念にしてきたサントリー美術館のリニューアルを
記念しての所蔵作品の展示です。
現代アートの深見陶治、山口晃、若宮隆志、山本太郎、野口哲哉各氏の作品も
併せて展示され、所蔵作品との対比を見せています。
受付カウンターも、水を意識したデザインとのことで、透明なデスクや椅子になりました。
第一章 装い
「遙カノ景〈空ヘ〉」 深見陶治 平成8年(1996)

大きな剣の形をしていて、会場の最初に置かれています。
陶土を水で溶いて、圧力をかけて型に流し込む、泥漿圧力鋳込みという技法に
よっています。
「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」 鎌倉時代 13世紀 国宝


一面に螺鈿の模様を施した手箱で、北条政子の所持とも伝えられています。
浮線綾文様は公家の用いた、花を象った文様で、1個の文様を作るために
13個もの貝のピースが使われています。
「舞踏図」 江戸時代 17世紀 重要美術品

豪華な小袖姿の女性たちが扇を持って、少しずつ違うポーズで踊っています。
元は屏風絵だったようで、全部で6面の内、3面が展示されています。
「立美人図」 懐月堂度辰 江戸時代 18世紀

美人とありますが、紫帽子を付けているので女形の役者です。
蔦模様の表着を両袖脱ぎにして笹竜胆模様の間着を見せた華やかな姿です。
「江戸桜」 鏑木清方 昭和7年(1932)


九代目市川団十郎の30年追悼公演を機に制作されたもので、下町娘の持つ羽子板は
明治29年(1896)に団十郎が歌舞伎座で演じた、「助六所縁江戸桜」での最後の助六の
姿ということです。
娘は黄八丈の着物で、髪は島田、蛇の目傘のかんざしを差しています。
「誰が袖図屏風」 六曲一双 江戸時代 17世紀

衣桁にかけた華やかな衣装を屏風に描いたものです。、
「熊本ものがたりの屛風 女性のハレの日金屛風」 山本太郎 三曲一隻 平成29年(2017)
結婚式のウェディングドレスや留袖などを衣桁に掛けた、現代の誰が袖図屏風です。
2014年に日本橋髙島屋で開かれた「古画降臨 山本太郎展」の記事です。
朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足 桃山時代 16~17世紀

兜、胴、佩楯を朱漆、草摺を黒漆で塗った鎧です。
素懸威(すがけおどし)は上下の小札をつなぐ糸の間隔を広くしたものです。
豊臣秀次所用と伝えられていますが、北政所の養子となった豊臣利次所用だったのが
誤って伝えられたのではないかということです。
さらに実際に着用した跡があることなどから利次の父、木下利房の具足ではないかと
推定されるそうです。
利房の異母兄に木下勝俊(長嘯子)、同母弟に小早川秀秋がいます。
「WHO ARE YOU~ 木下利房と仮定~」 令和2年(2020) 野口哲哉

木下利房が具足を着ている姿を仮定した、フィギュアのよな小さな像で、
不思議な現実感のある鎧武者です。
2018年に銀座のポーラ ミュージアム アネックスで開かれた『野口哲哉
「中世より愛を込めて」』展の記事です。
第二章 祝祭・宴
「賀茂競馬図屏風」 六曲一双 江戸時代 17世紀
右隻

左隻



野口さんの鎧武者たちも観戦しています。
賀茂競馬(かもくらべうま)は平安時代の寛治7年(1073)に始まる、
上賀茂神社で行なわれている競馬です。
毎年5月5日に行なわれ、2頭の馬が直線の馬場を並走する行事で、徒然草にも
書かれています。
「日吉山王祇園祭礼図屛風」 六曲一双 土佐派 室町時代 16世紀
祇園祭礼図

祇園祭の場面では山鉾や山車が巡行し、喧嘩も始まっています。


「四季耕作図屛風」) 六曲一隻 狩野晴川院養信 江戸時代 文政8年(1825)
右隻

左隻

桜の咲く春、田楽踊りに合わせて田植えをしています。

紅葉の秋、4人掛かりで石臼で籾摺りをしたり、唐箕(とうみ)を使って
籾殻を選り分けています。

11代将軍徳川家斉の娘、盛姫の肥前佐賀藩10代藩主鍋島直正(閑叟)との
婚礼調度として制作されたものです。
鍋島直正(1815-1871)は幕末の佐賀藩の近代化に成功し、藩は維新勢力の
一角となっています。
狩野養信(かのうおさのぶ、1796-1846)は江戸木挽町狩野派9代目の絵師で、
最晩年の僅かな間、橋本雅邦、狩野芳崖を弟子にしています。
「邸内遊楽図屛風」) 六曲一隻 寛永年間(1624~44)

宴会で盛り上がり、

庭で輪になって踊り、

蒸し風呂にも入っています。

「今様遊楽圖」 山口晃 平成12年(2000)

南蛮屏風や洛中洛外図屏風と現代が混じり合っています。

温泉や宴会で賑わっています。

2013年に横浜のそごう美術館で開かれた「山口晃展 老若男女ご覧あれ」の記事です。
「朱漆塗湯桶」 室町時代 15世紀

湯や茶を配る大きな朱塗りの桶で、お寺で使いそうなデザインです。
「色絵葡萄鳥文瓢形酒注」 肥前・有田 江戸時代 17世紀

上下の胴に回した紐をつなぐ紐が把手になるという趣向で、蓋は葉の形をしています。
右 「染付吹墨文大徳利」 肥前・有田 江戸時代 17世紀前半
左 「薩摩切子 藍色被栓付瓶」 江戸時代 19世紀中頃

右は初期伊万里の作品で、霧吹きで吹付けたような文様は明時代末期の景徳鎮の古染付に
倣ったものとされています。
左は薩摩藩で作られたカットグラスで、西洋風のデカンタです。
薩摩切子は徳川家への献上品や各大名への贈答品にも使われていました。
第三章 異国趣味
「泰西王侯騎馬図屏風」 四曲一双 桃山~江戸時代初期 17世紀初期 重要文化財



会津若松城にあった屏風で、日本人による初期洋風画の代表作とされ、旧会津藩主の
松平家の旧蔵品です。
右から、ペルシャ王、アビシニア王(エチオピア王)、フランス王アンリ4世、イギリス王
あるいはギーズ大公フランソワ・ド・ローランあるいはカール5世とされています。
異教徒のペルシャ王が中世の騎士の持つような槍を持つのに対し、キリスト教国の
3人の王は王笏を持ち、ペルシャ王の方を向いています。
アンリ4世(1553-1610)はブルボン朝最初の王で、ナントの勅令を発してカトリックと
プロテスタントの融和を図っています。
「IHS蒔絵螺鈿書見台」 桃山時代 16世紀後半~17世紀初期

聖書などを置く書見台で、蒔絵で桜や橘、桐をあしらった、精巧で日本趣味の濃い
デザインです。
輸出用に作られた品で、「IHS」はキリスト教を日本にひろめたイエズス会の頭文字です。
「IHS」の文字から発する、光を表す螺鈿細工は輝いています。
サントリー美術館の豊富なコレクションを観ることが出来て、現代アートとのコラボも
楽しめる、とても面白い展覧会です。
展覧会のHPです。
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