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東京国立博物館 「皇室の名宝展 1期」
上野
chariot

上野の東京国立博物館平成館では、宮内庁所蔵の名品を展示する、
御即位20年記念特別展「皇室の名宝―日本美の華」展が開かれています。

1期は10月6日~11月3日、2期は11月12日~11月29日で、1期と2期で
展示品が全部入れ替わります。

国立西洋美術館の前を通って行きました。

皇0003


来館者はかなり多く、賑わっていました。

皇0013


1期は「永徳、若冲から大観、松園まで」と題して、近世から近代の絵画、
近代の工芸品を展示しています。

4番 「唐獅子図屏風」 狩野永徳・狩野常信 6曲1双 
   右隻:16世紀、左隻:17世紀


皇10-8-2009_002

右隻は狩野永徳作で、安土桃山時代の代表作です。
教科書などでお馴染みですが、元は毛利家の所蔵で、豊臣秀吉から
贈られた品との説もあります。
かなり大きな屏風で 、見上げるばかりです。
二頭の獅子は、雌雄でしょう、力強く地面を踏みしめ、顔も恐ろしげで、
威圧感に満ちています。
この屏風を背にして、家来に向えば、主の威厳も数等上がりそうです。

左隻は、画像はありませんが、曽孫の狩野常信作で、江戸時代の作品です。
右隻に合わせて描かれたとのことですが、時はすでに泰平の世、雰囲気も
かなり変わってきます。
一頭の獅子が踊るように後ろ足を跳ね上げています。
右隻の獅子の子供ということでしょうか、軽やかで、顔もユーモラスな表情です。


5番 「萬国絵図屏風」 8曲1双 17世紀初頭

これも教科書などによく出てくる絵です。
右隻は画面の上に、トルコや西欧風の騎馬王侯が2人ずつ8人、剣を振るって
戦っています。
下にはポルトガルの地図と各国の28都市の絵図です。
どの街だろうと観ていると、S字型の川を真中にした街がありました。
ヴェネツィアに違いありません。
これは面白いと思い、ロンドンやパリもあるというので捜してみます。
ロンドンも見つかりました。
川が大きく蛇行し、橋が幾つもかかった大都市です。
パリはシテ島を目印にしました。
中州に橋のかかった街がありました。

左隻は世界地図と、世界の人物風俗図です。
世界地図は結構、正確に出来ています。
日本は、能登半島はあるのに、北海道はありません。
日本人だって蝦夷地のことはよく知らない時代だったことが分かります。
人物風俗図は日本人の男女も描かれています。
男は羽織袴姿で刀を差し、女は小袖を着ています。


7番 「動植綵絵」 伊藤若冲 30幅 1757年頃

大きな展示室一杯に若冲の掛軸30幅の並んだ光景は圧巻です。
唐獅子図屏風と並んで、文句なしに1期の目玉でしょう。
若冲が京都の相国寺に釈迦三尊像と共に寄進したもので、明治時代に
皇室に献上されたとのことです。

どの絵も細密さを極めた描き方で、ひとつひとつ観ていくのにかなりの
エネルギーが必要です。

(向日葵雄鶏図)
咲き誇る向日葵と、若冲の得意とする、逆三角形をした雄鶏の雄姿です。
若冲は裏彩色という、紙の裏側にも色を塗って表から観た色彩に変化を付ける
という技も使っているそうで、向日葵の花芯などにも見られるとのことです。
その凝りようには驚くばかりです。

皇10-10-2009_001


(老松白鳳図)
輝く白の羽毛と伸び広がった尾、その先のハート型の模様と、想像の
おもむくままに描いています。
前から言われている通り、手塚治虫の「火の鳥」は、この絵を参考にした
のでしょうか。

皇10-8-2009_004


(紅葉小禽図)
枝が斜めに画面を分割する、面白い構図です。
自然では見かけない、丸い輪になった枝が画面に変化を付けています。

皇10-10-2009_002


(秋塘群雀図)
「塘」は、堤、土手という意味です。
秋の土手に実った粟の実を啄ばもうと、雀の大群が飛んで来たところです。
編隊飛行のような群れの中に一羽だけ白い雀が混じって、画面の
アクセントになっています。

(諸魚図)
さまざまの魚の中に蛸がいて、その足に子蛸が一匹絡みついています。
若冲にはこういう遊び心があるのが、楽しいところです。
解説によると、ルリハタという魚の青色には、プルシアンブルーが使われて
いるそうです。
プルシアンブルーは、当時はまだ珍しい、舶来の人工顔料ですから、
若冲が新しい事物にも興味を持っていたことが分かります。

(薔薇小禽図)
画面一杯に溢れるように、赤と白の薔薇が描かれています。
薔薇の豪奢さがよく表され、香りにむせそうです。
小鳥が一羽、片足を上げ、上を向いた面白い形で、枝に止まっています。

(池辺群虫図)
蛙が整列して歌い、蛇、トカゲ、尺取虫、トンボ、蝶、カブトムシ、蝉、カマキリ、
蜘蛛、キリギリス、蟻などがいて、池の中はオタマジャクシがうじゃうじゃ泳
いでいます。
30幅の絵は釈迦三尊像を荘厳(しょうごん)するために描かれた訳ですから、
若冲の絵は万物に仏性が宿ることを表しているのでしょうか。


17番 「花鳥十二ヶ月図」 酒井抱一 1823年

月ごとの花鳥をあしらった、12幅の掛軸です。
余白を大きく取った、すっきりと無駄の無い、粋な構図です。
濃厚な若冲を観続けた後だけに、かなり気分が変わります。

皇10-8-2009_007


72番 「雨後」 川合玉堂 1924年

河合玉堂得意の水辺の光景です。
雨後ということで、大気は湿り気を帯び、小舟の人物は蓑を着け、
空には虹もかかっています。
日本画ですが、描写は細かく、木々も立体的に描かれ、西洋画の
影響が感じられます。

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75番 「讃春」 鏑木清方 6曲1双 1933年

昭和天皇ご即位記念の献上品とのことです。
右隻は、皇居前広場で、紺のセーラー服姿の女学生が二人、タンポポを
摘んだり、松の根元で休んだりしています。
向こうには当時の黒塗りの箱型自動車や、富士見櫓が見えます。
万葉集の巻頭歌、菜を摘む乙女に呼びかけたとされる、雄略天皇の歌を
思い出します。

左隻は隅田川に小舟を浮かべた水上生活者の情景です。
赤い着物のおかっぱ頭の小さな女の子が船底を覗き、中から母親が
優しく見上げています。
金具も捲れた古い和船ですが、バケツには桜の枝が活けてあります。
遠くには清洲橋でしょうか、吊橋型の橋がぼんやり浮かんでいます。
近代的な鋼鉄橋を、鏑木清方らしく浮世絵風にあしらっています。
舟には七輪が載っていて、火がおきています。
仁徳天皇の「民のかまどはにぎはひにけり」の故事に依っているのでしょう。

城櫓に自動車、鋼鉄橋に和船と、江戸と近代を上手く取り合わせています。
上流家庭の子も、庶民も、共に春を慶ぶ情景を描いたものですが、隅田川の
水上生活者を選んだのは、さすが下町育ちの鏑木清方だと思います。
1933年(昭和8年)は満州事変の起きた年で、この後10年余りで東京も
戦災に見舞われてしまいます。


76番 「雪月花」 上村松園 3幅 1937年

皇10-8-2009_003

「雪」は、枕草子の、香爐峯の雪の逸話で、清少納言が簾を持ち上げて
いるところです。
「月」は、源氏物語に因んでいるとのことですが、紫式部が石山寺の月を
眺めて、源氏物語の着想を得たという場面でしょうか。
「花」は、伊勢物語の「筒井筒井筒にかけしまろがたけ」に因んで、
幼馴染の遊ぶ、あどけない情景です。

すっきりと上品な線と色彩で、王朝絵巻を見事に再現しています。
構図も、持ち上げる簾、見上げる月、散る桜花と、縦長の画面を
上手く使っています。


帝室技芸員制度により保護育成された、金工、木彫、漆芸、陶芸、
七宝、ガラスなどの工芸品も数多く展示されています。
どれも技術の粋を尽くした、全力投球の作品ばかりで、日本の工芸の
水準の高さを思わせ、とても見応えがあります。

本館の横のキンモクセイが咲いていて、ハナミズキは赤い実を付けていました。

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【2009/10/11 11:37】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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  • ベンゼンさん、こんばんは。
  • お久しぶりです。
    やはり、狩野永徳と伊藤若冲は圧倒的でした。
    私は早い時期に行きましたが、かなりお客さんが多く、人気のある展覧会だなと思いました。
    もうすぐ2期が始まるので、楽しみにしています。

    【2009/11/06 22:20】 url[「猫アリーナ」 chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • ごぶさたしてます。
    日本画系のものとしては、今までで1番でした。
    初めて、2回行っちゃいましたよ。
    しかし、混んでた~。

    では、また。

    【2009/11/06 13:24】 url[ベンゼン #-] [ 編集]
    please comment















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