日本橋
日本橋高島屋美術画廊で、10月6日まで福井江太郎画集刊行記念展「花」が
開かれていました。
10月3日には、ライブペインティングと、トークショーがあったので、その日に
行って来ました。
福井江太郎(1969~)といえば、長い首を伸ばしたダチョウの絵で有名な
日本画家ですが、花の絵も多く描いています。
「路-尾形光琳へのオマージュ」
金箔地の屏風に、群青で花を連ねています。
題名からすると、カキツバタのようですが、茎と葉はごく細く描かれ、
花は宙に浮いているようです。
群青の飛沫が花の周りに散って、画面を動きのあるものにしています。
照明は暗く、点滅する小さいランプで、金箔地も点滅するように光ります。
「碧」
墨による牡丹の花で、花芯は金色です。
塗られた墨は輪郭線をはみ出し、墨の飛沫が散って、花の力が外に
広がるように見えます。
ダチョウの絵も何点かありました。
顔を真正面から描いた絵は、とてもユーモラスです。
私が初めて福井江太郎のダチョウの絵を観た時は、その勢いの良さ、
リズム感と装飾性に驚きました。
従来の日本画には無い魅力があります。
当日は、高島屋の正面入口を会場にしてのライブペインティングでした。
縦2m、横4mの白い紙を広げた会場の周りは観客で一杯で、
2階バルコニーにも観客が並んでいます。
定刻になると、白いシャツ、黒い細身のズボン姿の福井さんが現われ、
先ず、にこやかな挨拶がありました。
ライブだと、書は筆が次にどこに行くか、見ていて予想出来るが、
絵だと予想がつかないので面白い、と言われたことがあるそうです。
確かに、どこから何を描き始めるのか楽しみです。
筆は使わず、手で直接描きます。
裸足になって、墨汁をたっぷり入れたボウルを持って紙の上に立ち、
しばらく紙を見つめます。
やがて、指先に墨を付けて、数滴垂らし、今度は手を墨汁に浸してから、
かがんで、紙の真中辺りに、手の甲を使って大きな卵型のかたまりを
描いていきます。
ここで、ダチョウを描いているのだと分かります。
掌を紙に立て、一瞬呼吸を詰めた後、かたまりから上に向って、
一気に曲線を一本伸ばして行きます。
曲線の先端をぐっと曲げると、首の部分が描き上がります。
かたまりのあちこちから首を伸ばしていくと、数羽のダチョウの姿に
なっていきます。
足は、指先を何本も使って、直線で素早く描きます。
画面真中に五羽、前に二羽、後ろに二羽のダチョウが並びました。
画面下に横線を少し引いて、地面とします。
また、紙の余白に数滴の墨汁を散らします。
最後に落款の場所を考え、画面右下に押して完成しました。
製作中は顔が紅潮し、終わると汗びっしょりになっていました。
結びに、「このパーフォーマンスから、表現する喜びを感じて欲しいです」
との挨拶がありました。
この後、6階の美術画廊で、占星術研究家で友人の鏡リュウジさんが
加わって、トークショーがありました。
以下は福井さんのトークです。
「日本画の世界では、席画といって、宴会などの席での座興に、
その場で絵を描くという芸があった。
ライブペインティングによって、そのエンターテインメントの伝統を今に伝え、
美術への敷居を低くしたい。
2002年からライブを始め、京都、宮崎、上海、ニューヨークで行なった。
2005年からニューヨークで発表しており、今の拠点はニューヨークにある。
ニューヨークは面白いところで、多くの国の人が集まっていて、
顔を見ただけでは、言葉や価値観が分からない。
以前は、金や金箔に抵抗感があった。
京都の養源院で、狩野山楽の牡丹の襖絵を観て、考えが変わった。
そこは暗く、黄土色になって光らない金地に、赤と白の牡丹がぼーっと
浮かんでいた。
この絵を夕暮れの光、蝋燭の光で観ていたとは、ぜいたくだったと思う。
朝、昼、晩と時間によって絵の趣きも変わる。
自然と共に絵画が存在していた時代を再現してみたくて、襖絵の照明も
工夫してみた。
アメリカ人は金箔地の絵を素直に美しいと言うが、日本人は思っても
ストレートには言わない。
自分は画家としては4代目だが、それを意識したことは無い。
父のやっていた絵画教室にあった材料を自由に使って、何でも作って
いたのが今につながっているのかも知れない。
1992年の卒業制作で描いて以来、ダチョウを描き続けて15年になる。
何故、ダチョウを描き続けるのかよく訊かれるが、特別の理由は無い。
その頃は、絵を描いていても面白くなかったが、ダチョウは面白かった。
ダチョウを描いてみようと動物園に行って、実物を見て、これはいける、
と思った。
確かにダチョウのフォルムには惹かれるものがあるが、感傷的な
思いで描いていては10年以上も続けられない。
岸田劉生は冬瓜の絵ばかり描いていたが、何故描いていたのか聞いて
みたい気もする。
言葉では解決出来ないものを解決するのが絵画。
まだこれからもダチョウの旅は続くと思う」
ライブペインティングも面白く、なぜダチョウを描くのかについての話も
聴けて、とても興味深いトークでした。
とても意欲的で、今後の活躍に注目したい画家です。
福井江太郎さんは公式サイトも持っています。

北の丸公園にて。
サルビア・レウカンサという名前のようです。
chariot
日本橋高島屋美術画廊で、10月6日まで福井江太郎画集刊行記念展「花」が
開かれていました。
10月3日には、ライブペインティングと、トークショーがあったので、その日に
行って来ました。
福井江太郎(1969~)といえば、長い首を伸ばしたダチョウの絵で有名な
日本画家ですが、花の絵も多く描いています。
「路-尾形光琳へのオマージュ」
金箔地の屏風に、群青で花を連ねています。
題名からすると、カキツバタのようですが、茎と葉はごく細く描かれ、
花は宙に浮いているようです。
群青の飛沫が花の周りに散って、画面を動きのあるものにしています。
照明は暗く、点滅する小さいランプで、金箔地も点滅するように光ります。
「碧」
墨による牡丹の花で、花芯は金色です。
塗られた墨は輪郭線をはみ出し、墨の飛沫が散って、花の力が外に
広がるように見えます。
ダチョウの絵も何点かありました。
顔を真正面から描いた絵は、とてもユーモラスです。
私が初めて福井江太郎のダチョウの絵を観た時は、その勢いの良さ、
リズム感と装飾性に驚きました。
従来の日本画には無い魅力があります。
当日は、高島屋の正面入口を会場にしてのライブペインティングでした。
縦2m、横4mの白い紙を広げた会場の周りは観客で一杯で、
2階バルコニーにも観客が並んでいます。
定刻になると、白いシャツ、黒い細身のズボン姿の福井さんが現われ、
先ず、にこやかな挨拶がありました。
ライブだと、書は筆が次にどこに行くか、見ていて予想出来るが、
絵だと予想がつかないので面白い、と言われたことがあるそうです。
確かに、どこから何を描き始めるのか楽しみです。
筆は使わず、手で直接描きます。
裸足になって、墨汁をたっぷり入れたボウルを持って紙の上に立ち、
しばらく紙を見つめます。
やがて、指先に墨を付けて、数滴垂らし、今度は手を墨汁に浸してから、
かがんで、紙の真中辺りに、手の甲を使って大きな卵型のかたまりを
描いていきます。
ここで、ダチョウを描いているのだと分かります。
掌を紙に立て、一瞬呼吸を詰めた後、かたまりから上に向って、
一気に曲線を一本伸ばして行きます。
曲線の先端をぐっと曲げると、首の部分が描き上がります。
かたまりのあちこちから首を伸ばしていくと、数羽のダチョウの姿に
なっていきます。
足は、指先を何本も使って、直線で素早く描きます。
画面真中に五羽、前に二羽、後ろに二羽のダチョウが並びました。
画面下に横線を少し引いて、地面とします。
また、紙の余白に数滴の墨汁を散らします。
最後に落款の場所を考え、画面右下に押して完成しました。
製作中は顔が紅潮し、終わると汗びっしょりになっていました。
結びに、「このパーフォーマンスから、表現する喜びを感じて欲しいです」
との挨拶がありました。
この後、6階の美術画廊で、占星術研究家で友人の鏡リュウジさんが
加わって、トークショーがありました。
以下は福井さんのトークです。
「日本画の世界では、席画といって、宴会などの席での座興に、
その場で絵を描くという芸があった。
ライブペインティングによって、そのエンターテインメントの伝統を今に伝え、
美術への敷居を低くしたい。
2002年からライブを始め、京都、宮崎、上海、ニューヨークで行なった。
2005年からニューヨークで発表しており、今の拠点はニューヨークにある。
ニューヨークは面白いところで、多くの国の人が集まっていて、
顔を見ただけでは、言葉や価値観が分からない。
以前は、金や金箔に抵抗感があった。
京都の養源院で、狩野山楽の牡丹の襖絵を観て、考えが変わった。
そこは暗く、黄土色になって光らない金地に、赤と白の牡丹がぼーっと
浮かんでいた。
この絵を夕暮れの光、蝋燭の光で観ていたとは、ぜいたくだったと思う。
朝、昼、晩と時間によって絵の趣きも変わる。
自然と共に絵画が存在していた時代を再現してみたくて、襖絵の照明も
工夫してみた。
アメリカ人は金箔地の絵を素直に美しいと言うが、日本人は思っても
ストレートには言わない。
自分は画家としては4代目だが、それを意識したことは無い。
父のやっていた絵画教室にあった材料を自由に使って、何でも作って
いたのが今につながっているのかも知れない。
1992年の卒業制作で描いて以来、ダチョウを描き続けて15年になる。
何故、ダチョウを描き続けるのかよく訊かれるが、特別の理由は無い。
その頃は、絵を描いていても面白くなかったが、ダチョウは面白かった。
ダチョウを描いてみようと動物園に行って、実物を見て、これはいける、
と思った。
確かにダチョウのフォルムには惹かれるものがあるが、感傷的な
思いで描いていては10年以上も続けられない。
岸田劉生は冬瓜の絵ばかり描いていたが、何故描いていたのか聞いて
みたい気もする。
言葉では解決出来ないものを解決するのが絵画。
まだこれからもダチョウの旅は続くと思う」
ライブペインティングも面白く、なぜダチョウを描くのかについての話も
聴けて、とても興味深いトークでした。
とても意欲的で、今後の活躍に注目したい画家です。
福井江太郎さんは公式サイトも持っています。

北の丸公園にて。
サルビア・レウカンサという名前のようです。
- 関連記事
-
- 上野松坂屋 「現代版画巨匠展-長谷川潔・藤田嗣治特集-」 (2009/10/25)
- 上野松坂屋 「佐藤忠彦 油絵展」 (2009/10/25)
- 日本橋高島屋 福井江太郎画集刊行記念展「花」 (2009/10/23)
- 日本橋三越 古吉弘 洋画展 (2009/10/20)
- 国立新美術館 「THE ハプスブルク-華麗なる王家と美の巨匠たち-」展 (2009/10/17)