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特別展「ポンペイ」 東京国立博物館 その1
上野
chariot

東京国立博物館平成館では特別展「ポンペイ」が開かれています。
会期は4月3日(日)までです。

ポンペイimg490 (1)


ナポリ国立考古学博物館の所蔵品を中心に、紀元後79年にヴェスヴィオ火山の噴火で
埋没したポンペイの遺跡などから出土した遺物、約150点が展示されています。

記事は2回に分け、今日はその1です。

会場は撮影可能です。


序章 ヴェスヴィオ火山噴火とポンペイ埋没

「バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山」 62~79年 フレスコ
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「百年祭の家」の壁画です。
バックス(バッカス)はローマ神話のワインの神で、ギリシャ神話のディオニュソスに
当たり、ブドウの実を身に着けています。
大蛇はブドウ畑の神、アガトダイモーンです。
噴火で山体が変わる前のヴェスヴィオ山の山麓にはブドウ畑が見えます。

「女性犠牲者の石膏像」 79/1875年
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火山灰に埋もれた犠牲者の遺体で出来た空洞に石膏を流して取り出しています。
紀元79年のある日、ヴェスヴィオ山は大噴火を起こし、火砕流が山麓を駆け下り、
ポンペイなどを呑み込んでいます。


1章 ポンペイの街―公共建築と宗教

ポリュクレイトス 「槍を持つ人」 前1~後1世紀 カッラーラ大理石
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古代ギリシャの彫刻家、ポリュクレイトスの作品の忠実な模刻と思われます。
カッラーラは大理石の産地として有名で、ミケランジェロのダビング像も
カッラーラの大理石を彫っています。

「擬アルカイック様式のアポロ」 前1世紀後半 大理石
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古代ギリシャのアルカイック様式の髪型や表情をした太陽神アポロです。
車を牽くグリフィンを従えています。
「槍を持つ人」と比べると表情が古拙(アルカイック)なのが分かります。

「ビキニのウェヌス」 前1~後1世紀 大理石
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ウェヌス(ヴィーナス)はローマ神話の美と愛の女神です。
サンダルを脱ごうとしているウェヌスで、金彩の装飾が残っています。

「俳優、悲劇の若者役と女性役(おそらく遊女)」 1世紀後半 土製
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口を大きく開けて何か叫んでいる姿で、庭に置かれていました。
ポンペイ遺跡にも大きな円形劇場が残っています。

「フォルムの日常風景」 62~79年 フレスコ
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公共空間であるフォルムでの商人の活動を描いています。
布地を売っている人もいます。

「辻音楽師」 前1世紀 モザイク
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仮面を着け、タンバリン、シンバル、アウロス(2本管の笛)を奏でています。
前300年頃のアッティカ新喜劇の一場面とされ、左上に制作者であるギリシャ人、
ディオスクリデスの署名があります。
動きと立体感のある見事な出来栄えのモザイクです。


2章 ポンペイの社会と人々の活躍

「ブドウ摘みを表した小アンフォラ(通称、青の壺)」 1世紀前半 カメオ・ガラス
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青色のガラスに白色のガラスを被せ、ワイン作りをするクピドたちを精巧に
削り出しています。
ウェッジウッドのジャスパーウエアを思い出します。

「書字板と尖筆を持つ女性 通称、サッフォー」 50~79年 フレスコ
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書字板は木の板の表面を蝋で固め、先の尖った筆で字を書き付けるメモ帳です。
何か想を練っている風で、古代ギリシャの女性詩人、サッフォー(前7~6世紀)に
ちなんで名付けられています。

「三美神」 前15~後50年 フレスコ
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この形の三美人は人気のあった図柄のようで、同じ姿が彫られたカメオも
展示されています。
後世にもいろいろな画家に描かれた題材です。

(参考)
エドワード・バーン=ジョーンズ 「三美神」 1885-96年頃
 パステル、紙 タリー・ハウス美術館蔵

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2019年に三菱一号館美術館で開かれた「ラファエル前派の軌跡展」に展示されて
いた時の写真です。

「ライオン形3本脚付きモザイク天板テーブル」 前1~後1世紀 大理石、モザイク
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ポンペイと同じく噴火で埋没したエルコラーノの出土です。

「マケドニアの王子と哲学者」 前60~前40年頃 フレスコ 
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ポンペイと同じく埋没したボスコレアーレの出土です。
槍と盾を持ち、マケドニアの衣装を着た王子と、肘を突いてそれを見上げる女性、
ギリシャ風のマント着て杖を突く老人です。
アレキサンダー大王に始まる支配者としてのマケドニアと、敗者としてのアジアや
ペルシャを表しているとも言われています。

「エウマキア像」 1世紀初頭 大理石
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ポンペイの毛織物業組合が業界の守護者で財産家のエウマキアを顕彰するため
制作された像です。
折り重なった衣装の表現も巧みです。

「賃貸広告文」 62~79年 ストゥッコ
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ユリア・フェリクスという女性の屋敷の外壁に書かれた広告文です。
62年の地震の後、自分の屋敷の一部を賃貸に出していたようです。
佐伯祐三が喜びそうな壁面です。

「ワニとカモ」 62~79年 フレスコ
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エジプト的な意匠で、ユリア・フェリクスの屋敷の壁に描かれています。

「エメラルドの目の蛇形ブレスレット」 前1~後1世紀 金、エメラルド
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蛇は脱皮するので、古代から若さや永遠のシンボルとなっています。
ブルガリの装飾品を思い出します。

「エメラルドと真珠母貝のネックレス」 前1~後1世紀 金、真珠母貝、エメラルド
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「テーブル天板 通称、メメント・モリ」 前1世紀 モザイク
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右側に下がっているボロ布は貧困を、左側は笏と紫のマントで、権力と富を
表しているそうです。
「メメント・モリ」は「死を忘れるな」という古代からの警句です。
ローマ時代は、「だから今ある生を楽しめ」という意味で使われていて、
この頭蓋骨も笑っています。
中世のキリスト教の時代になると、この世の虚しさを表す言葉に変わったようです。

「円形闘技場での乱闘」 59~79年 フレスコ
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59年に円形闘技場で起きた、ポンペイと近隣のヌケリアの住民の乱闘を描いています。
乱闘の結果、ポンペイ市は以後10年間、闘技会の開催を禁止されています。
競技が原因で観客が乱闘騒ぎを起こすのは現在のサッカー試合も同じです。
大きな階段を使って上から出入りする構造になっていて、日除けも見えます。

「パレード用の兜、ユピテルとネプトゥヌスを表した脛当て、ヘラクレスを表した肩当て」
 1世紀 ブロンズ

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闘技会に先立って剣闘士たちは豪華な甲冑を着けてパレードします。
剣闘士は捕虜や奴隷が中心で、自由民も一部混じっていました。
剣闘士だったスパルタクスは前73年に叛乱を起こして、ヴェスヴィオ山に
立て籠もり、その勢力は数万人に膨れ上がってイタリア中を荒らし回り、
ローマ軍を苦しめていますが、やがて追い詰められ、全滅しています。

「奴隷の拘束具」 1世紀 鉄
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輪と輪の間に足を入れ、棒を輪の間に通して使いました。
古代ローマは奴隷に支えられた社会でした。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ(1720-1778)が1770年にポンペイを訪れた時に
この拘束具を見て描いたスケッチです。
ポDSC05708


続きは、その2に書きます。

展覧会のHPです。

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【2022/01/22 19:13】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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