上野
東京国立博物館平成館で開かれている特別展「ポンペイ」の記事その2です。
会期は4月3日(日)までです。
3章 人々の暮らしー食と仕事
「ワイン用のアンフォラ」 1世紀後半 土器

ワインを貯蔵する大きな壺で、これを船に載せて遠方まで運びました。
「南ガリア製の陶器(テッラ・シジッラータの杯)」 1世紀 土器

現在のドイツのトリーアで生産された陶器はテッラ・シジッラータと呼ばれていました。
トリーアは古くからローマの植民都市でした。
色合いも良く、今でも使えそうな器です。
「職人仕事をするクピドたち」 50~79年 フレスコ

ポンペイと同じく噴火で埋没したエルコラーノの出土で、クピド(キューピッド)たちが
いろいろな仕事をしています。
家具職人

土地測量

レオナール・フジタも子どもたちが職人などの仕事をする絵を描いています。
「鍬、三日月鎌、熊手」 1世紀 鉄

奴隷たちもこれを使って働いていたのでしょう。
「ユピテル=アンモン形の錘付き竿秤」 1世紀 ブロンズ

錘はローマのユピテル(ジュピター)とエジプトのアンモン(アメン)の習合した神の顔の
形をしています。
おおらかな多神教の国だったローマが一神教のキリスト教に統一されたのは不思議です。
「パン屋の店先」 50~79年 フレスコ

ポンペイにはパン屋は約30軒あったようです。
庶民の家では台所は小さいか無かったりで、多くは外食していたらしいとのことです。
有力な公職者が宣伝のためパンを配っている情景との説もあるそうで、そうなると
まさに「パンとサーカス」です。
「パンとサーカス」は詩人、ユウェナリス(60~130)がローマの世相を批判した
詩の中の言葉で、民衆は食料(パン)と娯楽(サーカス)が無償で得られることだけを
願っているとしています。
「炭化したパン」 79年

8等分した切込みのあるパンで、現在でもこの形のパンが焼かれています。
4章 ポンペイ繁栄の歴史
「猛犬注意」 1世紀 モザイク

玄関の床モザイクで、番犬が居ることを示しています。
簡潔な造形で、白と黒のコントラストが効いています。
「ナイル川風景」 前2世紀末 モザイク



「アレクサンドロス大王のモザイク」のある「ファウヌスの家」の敷居にあるモザイクです。
アレクサンドリア発祥の意匠で、ワニ、カバ、コブラとマングース、トキ、カモなど、
さまざまな動植物が描かれています。
「アレクサンドロス大王のモザイク」も高精細映像で巨大なディスプレイで映されています。
(参考)
「アレクサンドロス大王のモザイク」

「葉綱と悲劇の仮面」 前2世紀末 モザイク


「ファウヌスの家」の敷居にあるモザイクで、花綱にギリシャ悲劇の仮面をあしらっています。
「ネコとカモ」 前1世紀 モザイク

ヤマネコの面影を残した精悍なネコです。
ネコと静物という題材はシャルダンやフジタに受け継がれています。
「踊るファウヌス」 前2世紀 ブロンズ

「ファウヌスの家」のアトリウムに飾られていました。
ファウヌスは古代イタリアの神ですが、この像はデュオニュソスの従者、
サテュロスがアウロスを吹きながら踊っている姿と思われるということです。
「スフィンクスのテーブル脚」
アウグストゥス時代・前27~後14年 ペンテリコン大理石

「ファウヌスの家」にあった作品で、ペンテリコンはギリシャの大理石の産地です。
これとよく似たスフィンクスが大英博物館に所蔵されています。
(参考)
「スフィンクス像(おそらくテーブル脚部)」 大理石
紀元後120-140年頃 大英博物館蔵

2011年に国立西洋美術館で開かれた「大英博物館 古代ギリシャ展」に
展示されていました。
「竪琴を弾くアポロ」 前1世紀 ブロンズ

左手に竪琴、右手にピックを持つアポロを表しています。
この像が出土した家は「竪琴奏者の家」と名付けられました。
「竪琴奏者の家」の復元

中庭に噴水があり、動物のブロンズが置かれ、吊り飾りが下がっていました。
「イヌとイノシシ」 1世紀 ブロンズ

「シカ」 1世紀 ブロンズ

「ライオン」 1世紀 ブロンズ

「ブリテイスの引き渡し」 50~79年 フレスコ


「悲劇詩人の家」の壁画で、トロイア戦争を題材にした、ホメロスの「イーリアス」の
一場面です。
「ヘレネの略奪(あるいはクリュセイスの帰還)」 50~79年 フレスコ


5章 発掘のいま、むかし
「ペプロスを着た女性 通称、踊り子」 アウグストゥス時代・前27~後14年 ブロンズ


ペプロスは古代ギリシャの女性の衣服です。
衣装に銀と胴の象嵌が施され、目には石が嵌められています。
エルコラーノの「パピルス荘」の中庭に置かれていた5体の一つで、アッピア上水道を
守護する5柱の女神、アッピアデスと考えられています。
アッピア上水道はローマ最古の上水道です。
「豹を抱くバックス(ディオニュソス)」
前27~後14年 パロス大理石 ノーラ歴史考古学博物館蔵


ヴェスヴィオ山の北麓にあるソンマ・ヴェスヴィアーナの「アウグストゥス荘」で、
2001年から始まった東京大学の学術調査隊による発掘調査により発見されました。
パロス島は大理石の産地で、ミロのヴィーナスもパロス島の大理石で造られています。
調査の結果、「アウグストゥス荘」は79年の噴火ではなく、472年の噴火で埋没したことが
判明したそうです。
ヴェスヴィオ山周辺はいつも噴火や地震の危険に晒されていたようです。
ミュージアムグッズも面白い物が揃っています。

素晴らしい彫刻や壁画が数多く揃った展覧会で、ローマの文化がいかに
洗練されていたかを示しています。
これだけ高い文化を誇ったローマが滅んで、中世社会になったと思うと、
感慨深いものがあります。
展覧会のHPです。
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東京国立博物館平成館で開かれている特別展「ポンペイ」の記事その2です。
会期は4月3日(日)までです。
3章 人々の暮らしー食と仕事
「ワイン用のアンフォラ」 1世紀後半 土器

ワインを貯蔵する大きな壺で、これを船に載せて遠方まで運びました。
「南ガリア製の陶器(テッラ・シジッラータの杯)」 1世紀 土器

現在のドイツのトリーアで生産された陶器はテッラ・シジッラータと呼ばれていました。
トリーアは古くからローマの植民都市でした。
色合いも良く、今でも使えそうな器です。
「職人仕事をするクピドたち」 50~79年 フレスコ

ポンペイと同じく噴火で埋没したエルコラーノの出土で、クピド(キューピッド)たちが
いろいろな仕事をしています。
家具職人

土地測量

レオナール・フジタも子どもたちが職人などの仕事をする絵を描いています。
「鍬、三日月鎌、熊手」 1世紀 鉄

奴隷たちもこれを使って働いていたのでしょう。
「ユピテル=アンモン形の錘付き竿秤」 1世紀 ブロンズ

錘はローマのユピテル(ジュピター)とエジプトのアンモン(アメン)の習合した神の顔の
形をしています。
おおらかな多神教の国だったローマが一神教のキリスト教に統一されたのは不思議です。
「パン屋の店先」 50~79年 フレスコ

ポンペイにはパン屋は約30軒あったようです。
庶民の家では台所は小さいか無かったりで、多くは外食していたらしいとのことです。
有力な公職者が宣伝のためパンを配っている情景との説もあるそうで、そうなると
まさに「パンとサーカス」です。
「パンとサーカス」は詩人、ユウェナリス(60~130)がローマの世相を批判した
詩の中の言葉で、民衆は食料(パン)と娯楽(サーカス)が無償で得られることだけを
願っているとしています。
「炭化したパン」 79年

8等分した切込みのあるパンで、現在でもこの形のパンが焼かれています。
4章 ポンペイ繁栄の歴史
「猛犬注意」 1世紀 モザイク

玄関の床モザイクで、番犬が居ることを示しています。
簡潔な造形で、白と黒のコントラストが効いています。
「ナイル川風景」 前2世紀末 モザイク



「アレクサンドロス大王のモザイク」のある「ファウヌスの家」の敷居にあるモザイクです。
アレクサンドリア発祥の意匠で、ワニ、カバ、コブラとマングース、トキ、カモなど、
さまざまな動植物が描かれています。
「アレクサンドロス大王のモザイク」も高精細映像で巨大なディスプレイで映されています。
(参考)
「アレクサンドロス大王のモザイク」

「葉綱と悲劇の仮面」 前2世紀末 モザイク


「ファウヌスの家」の敷居にあるモザイクで、花綱にギリシャ悲劇の仮面をあしらっています。
「ネコとカモ」 前1世紀 モザイク

ヤマネコの面影を残した精悍なネコです。
ネコと静物という題材はシャルダンやフジタに受け継がれています。
「踊るファウヌス」 前2世紀 ブロンズ

「ファウヌスの家」のアトリウムに飾られていました。
ファウヌスは古代イタリアの神ですが、この像はデュオニュソスの従者、
サテュロスがアウロスを吹きながら踊っている姿と思われるということです。
「スフィンクスのテーブル脚」
アウグストゥス時代・前27~後14年 ペンテリコン大理石

「ファウヌスの家」にあった作品で、ペンテリコンはギリシャの大理石の産地です。
これとよく似たスフィンクスが大英博物館に所蔵されています。
(参考)
「スフィンクス像(おそらくテーブル脚部)」 大理石
紀元後120-140年頃 大英博物館蔵

2011年に国立西洋美術館で開かれた「大英博物館 古代ギリシャ展」に
展示されていました。
「竪琴を弾くアポロ」 前1世紀 ブロンズ

左手に竪琴、右手にピックを持つアポロを表しています。
この像が出土した家は「竪琴奏者の家」と名付けられました。
「竪琴奏者の家」の復元

中庭に噴水があり、動物のブロンズが置かれ、吊り飾りが下がっていました。
「イヌとイノシシ」 1世紀 ブロンズ

「シカ」 1世紀 ブロンズ

「ライオン」 1世紀 ブロンズ

「ブリテイスの引き渡し」 50~79年 フレスコ


「悲劇詩人の家」の壁画で、トロイア戦争を題材にした、ホメロスの「イーリアス」の
一場面です。
「ヘレネの略奪(あるいはクリュセイスの帰還)」 50~79年 フレスコ


5章 発掘のいま、むかし
「ペプロスを着た女性 通称、踊り子」 アウグストゥス時代・前27~後14年 ブロンズ


ペプロスは古代ギリシャの女性の衣服です。
衣装に銀と胴の象嵌が施され、目には石が嵌められています。
エルコラーノの「パピルス荘」の中庭に置かれていた5体の一つで、アッピア上水道を
守護する5柱の女神、アッピアデスと考えられています。
アッピア上水道はローマ最古の上水道です。
「豹を抱くバックス(ディオニュソス)」
前27~後14年 パロス大理石 ノーラ歴史考古学博物館蔵


ヴェスヴィオ山の北麓にあるソンマ・ヴェスヴィアーナの「アウグストゥス荘」で、
2001年から始まった東京大学の学術調査隊による発掘調査により発見されました。
パロス島は大理石の産地で、ミロのヴィーナスもパロス島の大理石で造られています。
調査の結果、「アウグストゥス荘」は79年の噴火ではなく、472年の噴火で埋没したことが
判明したそうです。
ヴェスヴィオ山周辺はいつも噴火や地震の危険に晒されていたようです。
ミュージアムグッズも面白い物が揃っています。

素晴らしい彫刻や壁画が数多く揃った展覧会で、ローマの文化がいかに
洗練されていたかを示しています。
これだけ高い文化を誇ったローマが滅んで、中世社会になったと思うと、
感慨深いものがあります。
展覧会のHPです。
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