六本木・乃木坂
サントリー美術館では御大典記念 特別展、「よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる
天平の技―」が開かれています。
会期は3月27日(日)まで、休館日は火曜日です。

正倉院宝物は明治時代に宮内省正倉院御物整理掛が修理と模造を始め、
昭和47年(1972)からは宮内庁正倉院事務所によって模造製作が行なわれ、
数百件以上の作品が製作されています。
展覧会ではそのうち100件以上が展示されています。
「螺鈿紫檀五絃琵琶」 [木地]坂本曲齋(三代)[象嵌]新田紀雲
[加飾]北村昭斎、松浦直子[絃]丸三ハシモト株式会社
平成23~30年(2011~18) 宮内庁正倉院事務所蔵


頭部が真っ直ぐに伸びている、インド起源の五絃琵琶で、唐から伝来し、古代の品で
現存するのは正倉院所蔵の1品のみとのことです。
フタコブラクダの背に敷物を掛けて乗った人物が琵琶を奏でています。
よく見るとこちらは頭部が直角に折れた、イラン起源の四弦琵琶です。
紫檀の木地に夜光貝の螺鈿や玳瑁(たいまい)で見事な装飾が施されています。
弦には上皇后陛下の飼育されている日本在来種の蚕、小石丸の糸が使われています。
木地の紫檀の歪みの補正などのため、制作には8年も要しているとのことです。
「磁鼓」 加藤卓男 昭和62年(1987) 宮内庁正倉院事務所蔵

緑・黄・白の釉薬を施した陶製の鼓の胴で、唐三彩に似た趣きがあります。
くびれた胴の鼓は唐楽で用いる細腰鼓の一種で、インド発祥とのことです。
加藤卓男(1917-2005)は人間国宝の陶芸家で、ラスター彩や正倉院三彩などの
再現を手掛けています。
磁鼓は大阪府の交野、岐阜県の五斗蒔、信楽の土を混ぜて製作しています。
「酔胡王面」 財団法人美術院 国宝修理所
平成14~15年(2002~03) 宮内庁正倉院事務所蔵

伎楽面で、酔っぱらった胡人(ペルシャ人)の王様を表しています。
同じく酔っぱらった酔胡従たちと一緒に舞うという、のどかな演目です。
伎楽は推古天皇の時に中国から伝えられたとする演劇です。
冠の色彩も華やかで、ほとんど脱落していた顎髭は黒毛馬の尾毛を
植え付けて再現しています。
「黄銅合子」 [鋳造]般若勘溪 [彫金]浦島紫星
平成16年(2004) 宮内庁正倉院事務所蔵

高さ約15㎝の香を入れる容器で、五重相輪の形をした部分はガラス玉など、
約50点の部品で出来ています。
高岡銅器の技術で製作されました。
「紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)」 吉田文之
昭和53年(1978) 宮内庁正倉院事務所蔵


長さ約30㎝、儀礼用の物差しと思われます。
象牙を紅や緑で染め、それを彫って模様を出す撥鏤という技法で鳳凰、おしどり、
宝相華文などがこの上なく繊細に彫られています。
吉田文之(1915-2004)は撥鏤のぎじゅつにより人間国宝に認定されています。
「子日目利箒(ねのひのめとぎのほうき) 附 粉地彩絵倚几」
森川杜園 明治時代(19世紀) 奈良国立博物館蔵

養蚕の儀式で用いられる箒で、メドハギを束ねてあります。
森川杜園(1820-1894)は彫刻家で、現在の奈良一刀彫の創始者でもあります。
「赤地唐花文錦」 ㈱川島織物 平成14年(2002) 宮内庁正倉院事務所蔵


唐花文(宝相華文)が織られた錦で、原品は仏堂を飾る幡(ばん)に使われていました。
模造に当たっては、糸は上皇后陛下が育てられた小石丸の糸を使い、皇居内に
自生する日本茜で染めています。
6色の緯糸を使い、当時の錦の織り幅より倍の幅のため、2人並んで織ったそうです。
「螺鈿箱」 [素地]川北良造 [髹漆・加飾]北村大通 [嚫]高田義男
昭和51~52・54年(1976~77・79) 宮内庁正倉院事務所蔵

紺玉帯(こんぎょくのおび)という革ベルトを納める箱でした。
桧の黒漆塗りで、螺鈿や水晶で装飾されています。
「紺玉帯」 牧田三郎 昭和55年(1980) 宮内庁正倉院事務所蔵
四角や丸のラピスラズリの板を貼って飾ったベルトで、バックルの部分は現代と同じです。
「紅牙撥鏤碁子・紺牙撥鏤碁子」 村松親月 平成8年(1996) 奈良国立博物館蔵
白と黒でなく、紅と紺の碁石で、可愛い鳥が彫ってあります。
「正倉院古文書正集 第七巻 道鏡牒・良弁牒ほか」
国立歴史民俗博物館 昭和58年(1984) 宮内庁正倉院事務所蔵
東大寺の開山、良弁(689-774)や孝謙天皇に寵愛された道鏡(700?-772)の
自筆書状を納めた巻の模造です。
道鏡の書状には天平宝字七年三月十日の日付があります。
正倉院にはかつて多数の武具類も保管されていたのが、道鏡と対立していた
藤原仲麻呂が天平宝字8年(764)に起こした藤原仲麻呂の乱の時に持ち出され、
そのまま、還ってこなかったそうです。
「続修正倉院古文書 第二十巻(写経生請暇解)」
国立歴史民俗博物館 昭和62年(1987) 宮内庁正倉院事務所蔵
お経を書写する写経生の休暇願を集めています。
作業衣の洗濯や母親の看病など、いろいろの理由で休んでいたようです。
こんな日常業務についての書類がよく残っていたものです。
どれも国風文化が生まれる平安時代より前の時代の物品なので、大陸文化の
華を感じます。
今では絶えてしまった技法もあり、材料の入手も大変だったことでしょうが、
よくこれだけ見事に再現できたものだと感心します。
是非、これからもこの技を継承していってほしいものです。
展覧会のHPです。
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サントリー美術館では御大典記念 特別展、「よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる
天平の技―」が開かれています。
会期は3月27日(日)まで、休館日は火曜日です。

正倉院宝物は明治時代に宮内省正倉院御物整理掛が修理と模造を始め、
昭和47年(1972)からは宮内庁正倉院事務所によって模造製作が行なわれ、
数百件以上の作品が製作されています。
展覧会ではそのうち100件以上が展示されています。
「螺鈿紫檀五絃琵琶」 [木地]坂本曲齋(三代)[象嵌]新田紀雲
[加飾]北村昭斎、松浦直子[絃]丸三ハシモト株式会社
平成23~30年(2011~18) 宮内庁正倉院事務所蔵


頭部が真っ直ぐに伸びている、インド起源の五絃琵琶で、唐から伝来し、古代の品で
現存するのは正倉院所蔵の1品のみとのことです。
フタコブラクダの背に敷物を掛けて乗った人物が琵琶を奏でています。
よく見るとこちらは頭部が直角に折れた、イラン起源の四弦琵琶です。
紫檀の木地に夜光貝の螺鈿や玳瑁(たいまい)で見事な装飾が施されています。
弦には上皇后陛下の飼育されている日本在来種の蚕、小石丸の糸が使われています。
木地の紫檀の歪みの補正などのため、制作には8年も要しているとのことです。
「磁鼓」 加藤卓男 昭和62年(1987) 宮内庁正倉院事務所蔵

緑・黄・白の釉薬を施した陶製の鼓の胴で、唐三彩に似た趣きがあります。
くびれた胴の鼓は唐楽で用いる細腰鼓の一種で、インド発祥とのことです。
加藤卓男(1917-2005)は人間国宝の陶芸家で、ラスター彩や正倉院三彩などの
再現を手掛けています。
磁鼓は大阪府の交野、岐阜県の五斗蒔、信楽の土を混ぜて製作しています。
「酔胡王面」 財団法人美術院 国宝修理所
平成14~15年(2002~03) 宮内庁正倉院事務所蔵

伎楽面で、酔っぱらった胡人(ペルシャ人)の王様を表しています。
同じく酔っぱらった酔胡従たちと一緒に舞うという、のどかな演目です。
伎楽は推古天皇の時に中国から伝えられたとする演劇です。
冠の色彩も華やかで、ほとんど脱落していた顎髭は黒毛馬の尾毛を
植え付けて再現しています。
「黄銅合子」 [鋳造]般若勘溪 [彫金]浦島紫星
平成16年(2004) 宮内庁正倉院事務所蔵

高さ約15㎝の香を入れる容器で、五重相輪の形をした部分はガラス玉など、
約50点の部品で出来ています。
高岡銅器の技術で製作されました。
「紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)」 吉田文之
昭和53年(1978) 宮内庁正倉院事務所蔵



長さ約30㎝、儀礼用の物差しと思われます。
象牙を紅や緑で染め、それを彫って模様を出す撥鏤という技法で鳳凰、おしどり、
宝相華文などがこの上なく繊細に彫られています。
吉田文之(1915-2004)は撥鏤のぎじゅつにより人間国宝に認定されています。
「子日目利箒(ねのひのめとぎのほうき) 附 粉地彩絵倚几」
森川杜園 明治時代(19世紀) 奈良国立博物館蔵

養蚕の儀式で用いられる箒で、メドハギを束ねてあります。
森川杜園(1820-1894)は彫刻家で、現在の奈良一刀彫の創始者でもあります。
「赤地唐花文錦」 ㈱川島織物 平成14年(2002) 宮内庁正倉院事務所蔵


唐花文(宝相華文)が織られた錦で、原品は仏堂を飾る幡(ばん)に使われていました。
模造に当たっては、糸は上皇后陛下が育てられた小石丸の糸を使い、皇居内に
自生する日本茜で染めています。
6色の緯糸を使い、当時の錦の織り幅より倍の幅のため、2人並んで織ったそうです。
「螺鈿箱」 [素地]川北良造 [髹漆・加飾]北村大通 [嚫]高田義男
昭和51~52・54年(1976~77・79) 宮内庁正倉院事務所蔵

紺玉帯(こんぎょくのおび)という革ベルトを納める箱でした。
桧の黒漆塗りで、螺鈿や水晶で装飾されています。
「紺玉帯」 牧田三郎 昭和55年(1980) 宮内庁正倉院事務所蔵
四角や丸のラピスラズリの板を貼って飾ったベルトで、バックルの部分は現代と同じです。
「紅牙撥鏤碁子・紺牙撥鏤碁子」 村松親月 平成8年(1996) 奈良国立博物館蔵
白と黒でなく、紅と紺の碁石で、可愛い鳥が彫ってあります。
「正倉院古文書正集 第七巻 道鏡牒・良弁牒ほか」
国立歴史民俗博物館 昭和58年(1984) 宮内庁正倉院事務所蔵
東大寺の開山、良弁(689-774)や孝謙天皇に寵愛された道鏡(700?-772)の
自筆書状を納めた巻の模造です。
道鏡の書状には天平宝字七年三月十日の日付があります。
正倉院にはかつて多数の武具類も保管されていたのが、道鏡と対立していた
藤原仲麻呂が天平宝字8年(764)に起こした藤原仲麻呂の乱の時に持ち出され、
そのまま、還ってこなかったそうです。
「続修正倉院古文書 第二十巻(写経生請暇解)」
国立歴史民俗博物館 昭和62年(1987) 宮内庁正倉院事務所蔵
お経を書写する写経生の休暇願を集めています。
作業衣の洗濯や母親の看病など、いろいろの理由で休んでいたようです。
こんな日常業務についての書類がよく残っていたものです。
どれも国風文化が生まれる平安時代より前の時代の物品なので、大陸文化の
華を感じます。
今では絶えてしまった技法もあり、材料の入手も大変だったことでしょうが、
よくこれだけ見事に再現できたものだと感心します。
是非、これからもこの技を継承していってほしいものです。
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