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「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」 東京都美術館
上野
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上野の東京都美術館では、「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと
17世紀オランダ絵画展」が開かれています。
会期は4月3日(日)までです。

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大規模修復事業の終わったヨハネス・フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」を始め、
ドレスデン国立古典絵画館所蔵の17世紀オランダ絵画、約70点を展示する展覧会です。
ドレスデン国立古典絵画館はドレスデン国立美術館の一部で、ザクセン選帝侯の
コレクションを基礎としています。

17世紀オランダは貿易で栄えた都市市民の嗜好を反映して、神話や歴史を離れた
人物画、風俗画、静物画、風景画などが数多く描かれており、今見ても親しみやすさが
あります。

ヨハネス・フェルメール 「窓辺で手紙を読む女」 1657-59年頃
縦83㎝、横64.5cmの大きさです。
左側の窓から差し込む光に照らされた女性という、フェルメールのスタイルになっています。

1979年のX線調査の結果、当初は壁にキューピッドの絵が描かれていて、後に上塗りで
隠されていたことが分かりました。
「ヴァージナルの前に立つ女」の画中画にもなっている絵です。
当初はフェルメール自身が上塗りしたと考えられていましたが、その後の細密な調査で
上塗りはフェルメールの死後にされたことが判明しました。
この絵は長くレンブラントの作と思われていて、1742年にザクセン選帝侯のコレクションに
入った時、レンブラントの作品らしく見せるため、壁の部分を上塗りしたのではないかとの
説があるそうです。
レンブラントは生前から有名だったのに比べ、当時はフェルメールはそれほど知られて
いなかったとのことです。
確かにキューピッドを隠すと、風俗画より人物の内面性を感じさせる絵になります。
今回、修復が終わって当初の姿になった作品が展示されています。
隣には修復前の絵の複製も展示されていて、印象の違いが分かります。

これは修復途中の画像で、キューピッドの姿が現れだしています。

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キューピッドの絵は仮面を踏みつけていて、真の愛は嘘に勝つという寓意を表しており、
手紙を読む女性という題材に意味付けをしているように見えます。
女性の衣服や手前の毛織物、染付の大皿から転がった果物も細密に描かれ、質感も
表されています。
影の表現も上手く、手紙を持つ手の影も実に巧みに描かれています。
窓ガラスには女性自身も写っていますが、窓の外の景色はまったく描かれていません。
観る人の意識を窓の外に向けさせない工夫でしょうか、フェルメールは窓を描いても
外の景色を描きません。


レンブラント・ファン・レイン 「若きサスキアの肖像」 1633年
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初期の作品で、妻となるサスキアを描いています。
顔の下半分と首にスポットライトのように光を当て、暗い背景から浮かび上がらせています。
レンブラントはこの年にサスキアと婚約していて、サスキアは多くの作品のモデルとなります。


ハブリエル・メツー 「レースを編む女」 1661-64年頃
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ハブリエル・メツー(1629 -1667)はライデンやアムステルダムで活動した風俗画家です。
落着いた色調で、衣服の毛皮や絹の質感まで表されています。
足元のアンカには猫が乗っています。
猫は西洋画では不純な官能の象徴とされていますが、この絵では猫は寒がりという
習性を捉えているように見えます。


ヘラルト・テル・ボルフ 「手を洗う女」 1655-56年頃
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召使の差し出す水差しの水で手を洗う女性を描いていて、絹のドレスの表現も巧みです。
手を洗うという行為にも何かの寓意があるようです。
ヘラルト・テル・ボルフ(1617 - 1681)は肖像画家、風俗画家で、各国を旅行し、
1648に結ばれた三十年戦争の講和条約のウエストファリア条約の一部である
ミュンスター条約の締結調印の場面も描いています。


ヤン・ステーン 「ハガルの追放」 1655-57年頃
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縦136cmの大きな絵で、旧約聖書創世記の一場面です。
アブラハムが奴隷のサライと自分とハガルの間の子、イシュマエルを戸口から追い出し、
それを頼んだ妻のサライは息子のイサクのシラミを取ってあげています。
イシュマエルはアラブ人の祖とされる人物です。
家庭内のいざこざといった描き振りで、聖書の話なのにシラミを取るといった
当時の庶民の日常を描き込んでいます。
泣いているハガルが水瓶を提げているのは後の荒野での渇きと神の救済を
表しているのでしょうか。
ヤン・ステーン(1626-1679)はライデンやハールレムで活動した画家で、
猥雑な情景の風俗画で有名です。


ヤン・デ・ヘーム 「花瓶と果物」 1670-72年頃
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精密な筆遣いによって暗い背景から浮かび上がるようにみずみずしい花や果物を
描いています。
ヤン・デ・ヘーム(1606-1684以前)は細密な静物画を得意とした画家です。


ヤーコプ・ファン・ライスダール 「城山の前の滝」 1665-70年頃
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急流や倒木、深い森林、沸き上がる雲など劇的な構成で、遠くの丘には城砦も見えます。
ヤーコプ・ファン・ライスダール(1628 – 1682)は17世紀オランダの代表的な風景画家です。

フェルメールの作品が展示されているということで評判の高い展覧会で、かなりの観覧者が
訪れていました。

展覧会のHPです。

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【2022/02/22 18:58】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
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先週、宮城県美術館で開催されている 「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」 に行ってきました。  目玉は、4年の歳月をかけた専門家チームによる調査・修復プロジェクトによって、本来の姿に蘇ったフェルメール初期の傑作 『窓辺で手紙を読む女』 です。  いやー、ほんとに凄かったです。 息を吞む美しさ、素晴らしさとはこの絵のことでしょう。  ただ、ドレスデン国立古典美術館の意向もあってか...
【2022/12/05 21:34】

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