三越前
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
日本橋の三井記念美術館では「国宝 雪松図と吉祥づくし」展が開かれています。
会期は2013年1月28日(土)までです。

「雪松図屏風」 円山応挙 江戸時代 18世紀 国宝

右隻

左隻

毎年、お正月前後に展示される屏風です。
雪の晴れ間の澄み切った空気の中に立つ松です。
穏やかな金地は光を感じさせ、雪の鮮やかな白が映えています。
白は絵具を塗らず、地の紙の色をそのまま生かしています。
立体感のある作品で、特に右隻の松の枝はこちらに向って、張り出している
ように見えます。
「蓮燕図」 伝 牧谿筆 元時代 13世紀

秋の頃でしょうか、燕が枯れた蓮に止まっています。
吹く風に寂しさを感じます。
「燕」の音は「宴」に通じることから祝い事と結び付けられる画題です。
松平不昧公の旧蔵で、初代嘉一郎が昭和2年(1927)に購入し、昭和7年に
売却しています。
その後、新町三井家が購入し、現在は三井記念美術館所蔵となっています。
「枇杷寿帯図(花鳥動物図の内)」 (部分) 沈南蘋 清時代 乾隆15年(1750)

枇杷の枝に止まるゴクラクチョウが描かれています。
草花の描き方は緻密で、まるで植物画のようです。
沈南蘋(しんなんぴん、1682~?)は浙江省徳清県生まれで、清の宮廷画家となり、
徳川吉宗の希望で徳川幕府に招かれ、長崎に来航し、1731年から1733年まで
滞在しています。
沈南蘋の伝えた写実的で細密な画風は南蘋派となって、円山応挙や伊藤若冲など
日本の画壇に大きな影響を与えたということです。
「松樹双鶴図」 沈南蘋 清時代 18世紀


鶴は中国で最高位の文官の着る衣服の文様で、波は潮、朝、朝廷とつながり、
出世を表す吉祥文となります。
「藤花独猫図」 沈南蘋 清時代 18世紀


「猫」の音は長寿を意味する「耄」に通じています。
藤はその生命力から長寿の象徴でもあります。
老猫なのかあまり可愛くありません。
「蓬莱山・竹鶏図」 円山応挙 江戸時代 寛政2年 (1790)

3幅対のうちの左右の2幅で、竹に鶏が描かれています。
真中の蓬莱山の絵には松と白梅が描かれているので、竹と合わせて松竹梅が揃います。
蓬莱山と鶏の組み合わせは珍しく、江戸時代にあった鶏ブームの反映かも
しれないとのことです。
「獅子牡丹蒔絵硯箱」 江戸時代 18世紀

梨地に高蒔絵で獅子と牡丹を描いた豪華な硯箱です。
獅子は魔除けの聖獣、牡丹は富貴の象徴で、よく一緒に描かれ、能の「石橋」でも
獅子が牡丹に戯れて舞っています。
この二つを結び付けた由来は不明とのことですが、牡丹の夜露は獅子の体を
食い荒らす獅子身中の虫を防ぐとも言われています。
「玳皮盞 鸞天目」 南宋時代 13世紀 重要文化財

玳皮盞(たいひさん)とは天目茶碗の一種で、外側にタイマイの甲羅(べっ甲)のような
模様の出ている物を言います。
この茶碗は見込に二羽の尾長鳥と蝶、底に梅花が描かれ、鸞天目(らんてんもく)
とも呼ばれています。
鸞は鳳凰と同じく、徳のある治世が行われた時に姿を現します。
見込の細かい地模様の華やかな茶碗です。
君台観左右帳記にも玳皮盞についての記載があります。
小堀遠州の所持していた品で、堀田相模守、朽木家、赤星家、益田栄作、室町三井家
と続いています。
「赤地金襴手花唐草文鉢」 永樂和全 明治4年(1871)

直径15cmほどの鉢で、金彩が春の季節にふさわしく、暖かで華やかです。
見込は和風の雲龍文と染付の荒磯文で、外側の洋風の唐草文と対照的です。
永樂和全(1823~1896)は京焼の善五郎家の12代目で、金襴手を得意としています。
日本で初めて金箔による金襴手を手掛けたそうですが、これは手描きです。
荒磯文は潮、朝、朝廷の連想で、出世の象徴でもあります。
「赤地金襴手鳳凰文天目(梅木地銀縁天目台)」 永樂和全 明治時代 19世紀

小さな天目茶碗で、銅に花唐草文、見込に鳳凰、青海波、宝尽文が描かれています。
明治20年(1887)に16回京都博覧会が京都御所御苑で開かれ、京都に滞在中の
明治天皇両陛下を迎えています。
会場に茶席を設け、14代八郎右衛門の三井高朗と15代の高棟が抹茶席の
亭主となって、この茶碗で献茶が行なわれました。
「色絵鶏香合」 野々村仁清 江戸時代 17世紀

小さく愛らしい香合で、羽根の色の具合が国宝、「色絵雉香炉」に似ています。
仁清は鶴や雉など、よく鳥を題材にしています。
鶏は夜明けを告げる瑞鳥で、仁政を表す諫鼓鳥も連想させます。
「翁(白色尉(はくしきじょう))」 伝日光作
室町時代 14~16世紀 重要文化財

「式三番」と呼ばれる、神事芸能として演じられる三つの演目のうちの「翁」の面です。
天下泰平を寿ぐ長老の顔を表し、あごは顔と切り離して紐でつなぐという古い形を
残しています。
面そのものが神として扱われ、演者は舞台の上で面箱からこの面を取り出して
顔に付けます。
「小尉(こじょう)(小牛尉(こうしじょう))」 伝小牛作
室町時代 14~16世紀 重要文化財

「小尉」は長寿を寿ぐ能の『高砂』などの老人に使われます。
眉間に皺を寄せていて、歯も薄黒くなっているところがリアルです。
「刺繍七賢人模様厚板唐織」 明治時代

びっしりと刺繍で描いた、竹林の七賢人、唐子、鶴亀、獅子、象などで埋め尽くしています。
真ん中にはハリネズミまで居ます。
「交趾釉兎花唐草文饅頭蒸器」 永樂保全 文政10年~天保14年(1827~43)

展示室入口に置かれています。
来年の干支の兎の絵が描かれています。
兎は子孫繁栄や飛躍を象徴する吉祥文です。
展覧会のHPです。
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明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
日本橋の三井記念美術館では「国宝 雪松図と吉祥づくし」展が開かれています。
会期は2013年1月28日(土)までです。

「雪松図屏風」 円山応挙 江戸時代 18世紀 国宝

右隻

左隻

毎年、お正月前後に展示される屏風です。
雪の晴れ間の澄み切った空気の中に立つ松です。
穏やかな金地は光を感じさせ、雪の鮮やかな白が映えています。
白は絵具を塗らず、地の紙の色をそのまま生かしています。
立体感のある作品で、特に右隻の松の枝はこちらに向って、張り出している
ように見えます。
「蓮燕図」 伝 牧谿筆 元時代 13世紀

秋の頃でしょうか、燕が枯れた蓮に止まっています。
吹く風に寂しさを感じます。
「燕」の音は「宴」に通じることから祝い事と結び付けられる画題です。
松平不昧公の旧蔵で、初代嘉一郎が昭和2年(1927)に購入し、昭和7年に
売却しています。
その後、新町三井家が購入し、現在は三井記念美術館所蔵となっています。
「枇杷寿帯図(花鳥動物図の内)」 (部分) 沈南蘋 清時代 乾隆15年(1750)

枇杷の枝に止まるゴクラクチョウが描かれています。
草花の描き方は緻密で、まるで植物画のようです。
沈南蘋(しんなんぴん、1682~?)は浙江省徳清県生まれで、清の宮廷画家となり、
徳川吉宗の希望で徳川幕府に招かれ、長崎に来航し、1731年から1733年まで
滞在しています。
沈南蘋の伝えた写実的で細密な画風は南蘋派となって、円山応挙や伊藤若冲など
日本の画壇に大きな影響を与えたということです。
「松樹双鶴図」 沈南蘋 清時代 18世紀


鶴は中国で最高位の文官の着る衣服の文様で、波は潮、朝、朝廷とつながり、
出世を表す吉祥文となります。
「藤花独猫図」 沈南蘋 清時代 18世紀


「猫」の音は長寿を意味する「耄」に通じています。
藤はその生命力から長寿の象徴でもあります。
老猫なのかあまり可愛くありません。
「蓬莱山・竹鶏図」 円山応挙 江戸時代 寛政2年 (1790)

3幅対のうちの左右の2幅で、竹に鶏が描かれています。
真中の蓬莱山の絵には松と白梅が描かれているので、竹と合わせて松竹梅が揃います。
蓬莱山と鶏の組み合わせは珍しく、江戸時代にあった鶏ブームの反映かも
しれないとのことです。
「獅子牡丹蒔絵硯箱」 江戸時代 18世紀

梨地に高蒔絵で獅子と牡丹を描いた豪華な硯箱です。
獅子は魔除けの聖獣、牡丹は富貴の象徴で、よく一緒に描かれ、能の「石橋」でも
獅子が牡丹に戯れて舞っています。
この二つを結び付けた由来は不明とのことですが、牡丹の夜露は獅子の体を
食い荒らす獅子身中の虫を防ぐとも言われています。
「玳皮盞 鸞天目」 南宋時代 13世紀 重要文化財

玳皮盞(たいひさん)とは天目茶碗の一種で、外側にタイマイの甲羅(べっ甲)のような
模様の出ている物を言います。
この茶碗は見込に二羽の尾長鳥と蝶、底に梅花が描かれ、鸞天目(らんてんもく)
とも呼ばれています。
鸞は鳳凰と同じく、徳のある治世が行われた時に姿を現します。
見込の細かい地模様の華やかな茶碗です。
君台観左右帳記にも玳皮盞についての記載があります。
小堀遠州の所持していた品で、堀田相模守、朽木家、赤星家、益田栄作、室町三井家
と続いています。
「赤地金襴手花唐草文鉢」 永樂和全 明治4年(1871)

直径15cmほどの鉢で、金彩が春の季節にふさわしく、暖かで華やかです。
見込は和風の雲龍文と染付の荒磯文で、外側の洋風の唐草文と対照的です。
永樂和全(1823~1896)は京焼の善五郎家の12代目で、金襴手を得意としています。
日本で初めて金箔による金襴手を手掛けたそうですが、これは手描きです。
荒磯文は潮、朝、朝廷の連想で、出世の象徴でもあります。
「赤地金襴手鳳凰文天目(梅木地銀縁天目台)」 永樂和全 明治時代 19世紀

小さな天目茶碗で、銅に花唐草文、見込に鳳凰、青海波、宝尽文が描かれています。
明治20年(1887)に16回京都博覧会が京都御所御苑で開かれ、京都に滞在中の
明治天皇両陛下を迎えています。
会場に茶席を設け、14代八郎右衛門の三井高朗と15代の高棟が抹茶席の
亭主となって、この茶碗で献茶が行なわれました。
「色絵鶏香合」 野々村仁清 江戸時代 17世紀

小さく愛らしい香合で、羽根の色の具合が国宝、「色絵雉香炉」に似ています。
仁清は鶴や雉など、よく鳥を題材にしています。
鶏は夜明けを告げる瑞鳥で、仁政を表す諫鼓鳥も連想させます。
「翁(白色尉(はくしきじょう))」 伝日光作
室町時代 14~16世紀 重要文化財

「式三番」と呼ばれる、神事芸能として演じられる三つの演目のうちの「翁」の面です。
天下泰平を寿ぐ長老の顔を表し、あごは顔と切り離して紐でつなぐという古い形を
残しています。
面そのものが神として扱われ、演者は舞台の上で面箱からこの面を取り出して
顔に付けます。
「小尉(こじょう)(小牛尉(こうしじょう))」 伝小牛作
室町時代 14~16世紀 重要文化財

「小尉」は長寿を寿ぐ能の『高砂』などの老人に使われます。
眉間に皺を寄せていて、歯も薄黒くなっているところがリアルです。
「刺繍七賢人模様厚板唐織」 明治時代

びっしりと刺繍で描いた、竹林の七賢人、唐子、鶴亀、獅子、象などで埋め尽くしています。
真ん中にはハリネズミまで居ます。
「交趾釉兎花唐草文饅頭蒸器」 永樂保全 文政10年~天保14年(1827~43)

展示室入口に置かれています。
来年の干支の兎の絵が描かれています。
兎は子孫繁栄や飛躍を象徴する吉祥文です。
展覧会のHPです。
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