上野など
2022年に観た主な展覧会、10件を選びました。
記事の掲載順に並んでいます。
1.東京国立博物館 「ポンペイ展」

紀元後79年にヴェスヴィオ火山の噴火で埋没したポンペイの遺跡などから
出土した遺物、約150点の展示です。
素晴らしい彫刻や壁画が数多く揃った展覧会で、ローマの文化がいかに
洗練されていたかを実感しました。
「辻音楽師」 前1世紀 モザイク


仮面を着け、タンバリン、シンバル、アウロス(2本管の笛)を奏でています。
前300年頃のアッティカ新喜劇の一場面とされ、左上に制作者であるギリシャ人、
ディオスクリデスの署名があります。
動きと立体感のある見事な出来栄えのモザイクです。
「ポンペイ展」の記事です。
2.東京都美術館 「ドレスデン国立古典絵画館所蔵
フェルメールと17世紀オランダ絵画展」

フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」を始め、ドレスデン国立古典絵画館所蔵の
17世紀オランダ絵画、約70点を展示する展覧会です。
ヨハネス・フェルメール 「窓辺で手紙を読む女」 1657-59年頃

左側の窓から差し込む光に照らされた女性という、フェルメールのスタイルになっています。
1979年のX線調査の結果、当初は壁にキューピッドの絵が描かれていて、後に上塗りで
隠されていたことが分かりました。
修復途中の画像で、キューピッドの姿が現れだしています。
「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」の記事です。
3.国立新美術館 「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」

ニューヨークのメトロポリタン美術館のヨーロッパ絵画部門の所蔵する約2500点から
ルネサンスのフラ・アンジェリコからポスト印象派のゴーギャンまで、65点を選んでの
展示です。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 「女占い師」 おそらく1630年代

若い裕福な男が女占い師の話に気を取られている隙に、娘たちが財布や装身具を
掠め取ろうとしています。
カラヴァッジョの影響を受けた画家で、幼子イエスがロウソクを掲げる「大工ヨセフ」で
有名ですが、このような明るい色彩でありながら、しれっと冷ややかな作品も描いています。
「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」の記事です。
4.東京国立近代美術館 「没後50年 鏑木清方展」

美人画の大家で代表作、「築地明石町」を始め、庶民の生活を深い愛情を持って描いた
鏑木清方(1878-1972)の作品、約110点の展示です。
「築地明石町」 昭和2年(1927) 東京国立近代美術館蔵


花火模様の小紋の着物に、抱き柏の黒の羽織の女性が振返っています。
涼やかな目元をして、富士額の髪の生え際も細やかに描かれています。
明治に流行した、イギリス巻とも夜会巻とも言われる髪型や袖から覗く
金の指輪は時代の変化も表しています。
季節は秋の初め、女性は素足で、朝顔の葉は枯れかけています。
モデルは清方の弟子だった、江木ませ子とのことです。
築地明石町は明治に外国人居留地となり、西洋の香りのする場所に
なっていて、作品にも横に西洋式の柵、後ろに洋式帆船が見えます。
「没後50年 鏑木清方展」の記事です。
5.東京藝術大学大学美術館 「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」展

宮内庁三の丸尚蔵館の所蔵する皇室の名宝と東京藝術大学のコレクションを併せて
展示する展覧会です。
「蒙古襲来絵詞」「唐獅子図屏風」「動植綵絵」などが展示されました。
「蒙古襲来絵詞」 鎌倉時代 13世紀 三の丸尚蔵館 国宝

肥後の御家人、竹崎季長が文永弘安の役での自分の活躍を記録に
残すために描かせたと云われています。
前巻は文永の役で、矢が当たり血を流して暴れる馬を、季長は鎧の袖を翻して
必死に御しています。
「肥後国竹崎五郎兵衛季長 生年二十九」と誇らしげに記されています。
「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」展の記事です。
6.東京都美術館 「ボストン美術館展 芸術×力」

古今東西の権力者たちがその力を示すために制作したり、収集した芸術品を
中心にした展覧会です。
「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」を観ることが出来ました。
「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」 鎌倉時代 13世紀後半


「平治物語絵巻」は平治の乱(1159年)の模様を描いた絵巻で、合戦絵巻の最高峰と
され、元は15巻ほどだったらしく、現在は3巻と断簡数枚、摸本2巻が残っています。
ボストン美術館の所蔵する「三条殿夜討巻」は藤原信頼、源義朝らの軍勢が
後白河上皇の三条殿を襲撃する場面です。
右から左へ、急を知って駆け付ける公卿たち、後白河上皇を牛車に乗せる
武者たち、炎上する三条殿と武者の乱暴狼藉、一団となって引揚げる軍勢が
次々と描かれています。
絵巻を描いた頃より100年ほど前の、平氏の全盛をもたらした事件を、今見て来た
ばかりのような臨場感あふれる場面に描き出しています。
「ボストン美術館展 芸術×力」の記事です。
7.東京国立博物館 「故宮の世界」展

かつては明・清の宮殿だった壮大な紫禁城をバーチャル・リアリティで再現し、
東京国立博物館の所蔵する清の美術工芸品も併せて展示する展覧会です。
「慶豊図巻」 金昆、陳枚、孫祜、丁観鵬、程志道、呉桂筆
清時代・乾隆5年(1740) 東京国立博物館

北宋時代の「清明上河図巻」に倣った図巻で、旧暦1月15日の元宵節でにぎわう
北京の街並みを6人の画家が細緻に描いています。
「故宮の世界」展の記事です。
8.静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館) 「響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき」展

世田谷区岡本にあった静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリーが東京丸の内の
明治生命館1階に移転して、静嘉堂@丸の内と命名して第1回の展覧会です。
「曜変天目」(稲葉天目) 建窯 宋時代 12~13世紀 国宝

徳川家光から春日局に下され、子孫の稲葉家に伝えられたのでその名があります。
曜変天目は日本に数点あるだけの大変珍しい品で、特にこの稲葉天目は有名です。
小さな天目茶碗ですが、見込みの斑文は星のように輝き、観る角度によって
その色も微妙に変わり、小さな宇宙を観るような景色です。
「響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき」展の記事です。
9.アーティゾン美術館 「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂」展

パリ・オペラ座は1669年にルイ14世によって設立されています。
現在は1875年に完成したガルニエ宮と呼ばれる劇場を指します。
展覧会では特に19世紀から20世紀初めに盛んに上演された、ロマンティック・バレエ、
グランド・オペラ、バレエ・リュスや、多くのアーティストが参加した舞台芸術を通して、
パリ・オペラ座の歴史が紹介されています。
「バレエの授業」 1873-76年 オルセー美術館

稽古場の情景です。
踊り子の白を中心に、赤、緑、水色、黒のリボンをあしらって華やかです。
誰かの連れてきた犬も紛れ込んでいます。
ドアの向こうの窓から少し外の風景も見えます。
活き活きとした画面で臨場感があり、観ていて飽きません。
「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂き」展の記事です。
10.サントリー美術館 「京都・智積院の名宝」展

真言宗智山派の総本山である智積院の寺宝を展示する展覧会です。
長谷川等伯・久蔵父子の絵が一番の見所です。
「楓図」 六面のうち四面 長谷川等伯 桃山時代 16世紀 国宝

長谷川等伯(1539-1610)が京都で狩野派と画壇の頂点を争っていた頃の作品です。
元は豊臣秀吉が長男の鶴松の菩提を弔うため建立した祥雲禅寺の襖絵
だったのを貼り直したので、絵の継ぎ目にずれがあります。
豊臣氏の滅亡後、祥雲禅寺は隣接地の智積院に与えられています。
秋の初めなのでしょう、楓の葉はまだ緑の葉と紅葉とが混じり、
萩や鶏頭も描かれています。
左上から右側まで続いている青い流水が画面に変化と奥行きを与えています。
桃山風の豪放な図ですが、草花の描写には優美さもを感じられ、
長谷川等伯の特徴が表れています。
「京都・智積院の名宝」展の記事です。
ブログを始めて16年経ちました。
コロナ禍のため、多くの展覧会が予約制になり、不便な状態が続いています。
展覧会に行く回数も以前よりは減ってしましましたが、そんな中、私のブログを
読んでいただき、本当に有難うございました。
お礼申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎え下さい。
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2022年に観た主な展覧会、10件を選びました。
記事の掲載順に並んでいます。
1.東京国立博物館 「ポンペイ展」

紀元後79年にヴェスヴィオ火山の噴火で埋没したポンペイの遺跡などから
出土した遺物、約150点の展示です。
素晴らしい彫刻や壁画が数多く揃った展覧会で、ローマの文化がいかに
洗練されていたかを実感しました。
「辻音楽師」 前1世紀 モザイク


仮面を着け、タンバリン、シンバル、アウロス(2本管の笛)を奏でています。
前300年頃のアッティカ新喜劇の一場面とされ、左上に制作者であるギリシャ人、
ディオスクリデスの署名があります。
動きと立体感のある見事な出来栄えのモザイクです。
「ポンペイ展」の記事です。
2.東京都美術館 「ドレスデン国立古典絵画館所蔵
フェルメールと17世紀オランダ絵画展」

フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」を始め、ドレスデン国立古典絵画館所蔵の
17世紀オランダ絵画、約70点を展示する展覧会です。
ヨハネス・フェルメール 「窓辺で手紙を読む女」 1657-59年頃

左側の窓から差し込む光に照らされた女性という、フェルメールのスタイルになっています。
1979年のX線調査の結果、当初は壁にキューピッドの絵が描かれていて、後に上塗りで
隠されていたことが分かりました。
修復途中の画像で、キューピッドの姿が現れだしています。
「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」の記事です。
3.国立新美術館 「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」

ニューヨークのメトロポリタン美術館のヨーロッパ絵画部門の所蔵する約2500点から
ルネサンスのフラ・アンジェリコからポスト印象派のゴーギャンまで、65点を選んでの
展示です。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 「女占い師」 おそらく1630年代

若い裕福な男が女占い師の話に気を取られている隙に、娘たちが財布や装身具を
掠め取ろうとしています。
カラヴァッジョの影響を受けた画家で、幼子イエスがロウソクを掲げる「大工ヨセフ」で
有名ですが、このような明るい色彩でありながら、しれっと冷ややかな作品も描いています。
「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」の記事です。
4.東京国立近代美術館 「没後50年 鏑木清方展」

美人画の大家で代表作、「築地明石町」を始め、庶民の生活を深い愛情を持って描いた
鏑木清方(1878-1972)の作品、約110点の展示です。
「築地明石町」 昭和2年(1927) 東京国立近代美術館蔵


花火模様の小紋の着物に、抱き柏の黒の羽織の女性が振返っています。
涼やかな目元をして、富士額の髪の生え際も細やかに描かれています。
明治に流行した、イギリス巻とも夜会巻とも言われる髪型や袖から覗く
金の指輪は時代の変化も表しています。
季節は秋の初め、女性は素足で、朝顔の葉は枯れかけています。
モデルは清方の弟子だった、江木ませ子とのことです。
築地明石町は明治に外国人居留地となり、西洋の香りのする場所に
なっていて、作品にも横に西洋式の柵、後ろに洋式帆船が見えます。
「没後50年 鏑木清方展」の記事です。
5.東京藝術大学大学美術館 「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」展

宮内庁三の丸尚蔵館の所蔵する皇室の名宝と東京藝術大学のコレクションを併せて
展示する展覧会です。
「蒙古襲来絵詞」「唐獅子図屏風」「動植綵絵」などが展示されました。
「蒙古襲来絵詞」 鎌倉時代 13世紀 三の丸尚蔵館 国宝

肥後の御家人、竹崎季長が文永弘安の役での自分の活躍を記録に
残すために描かせたと云われています。
前巻は文永の役で、矢が当たり血を流して暴れる馬を、季長は鎧の袖を翻して
必死に御しています。
「肥後国竹崎五郎兵衛季長 生年二十九」と誇らしげに記されています。
「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」展の記事です。
6.東京都美術館 「ボストン美術館展 芸術×力」

古今東西の権力者たちがその力を示すために制作したり、収集した芸術品を
中心にした展覧会です。
「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」を観ることが出来ました。
「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」 鎌倉時代 13世紀後半


「平治物語絵巻」は平治の乱(1159年)の模様を描いた絵巻で、合戦絵巻の最高峰と
され、元は15巻ほどだったらしく、現在は3巻と断簡数枚、摸本2巻が残っています。
ボストン美術館の所蔵する「三条殿夜討巻」は藤原信頼、源義朝らの軍勢が
後白河上皇の三条殿を襲撃する場面です。
右から左へ、急を知って駆け付ける公卿たち、後白河上皇を牛車に乗せる
武者たち、炎上する三条殿と武者の乱暴狼藉、一団となって引揚げる軍勢が
次々と描かれています。
絵巻を描いた頃より100年ほど前の、平氏の全盛をもたらした事件を、今見て来た
ばかりのような臨場感あふれる場面に描き出しています。
「ボストン美術館展 芸術×力」の記事です。
7.東京国立博物館 「故宮の世界」展

かつては明・清の宮殿だった壮大な紫禁城をバーチャル・リアリティで再現し、
東京国立博物館の所蔵する清の美術工芸品も併せて展示する展覧会です。
「慶豊図巻」 金昆、陳枚、孫祜、丁観鵬、程志道、呉桂筆
清時代・乾隆5年(1740) 東京国立博物館

北宋時代の「清明上河図巻」に倣った図巻で、旧暦1月15日の元宵節でにぎわう
北京の街並みを6人の画家が細緻に描いています。
「故宮の世界」展の記事です。
8.静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館) 「響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき」展

世田谷区岡本にあった静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリーが東京丸の内の
明治生命館1階に移転して、静嘉堂@丸の内と命名して第1回の展覧会です。
「曜変天目」(稲葉天目) 建窯 宋時代 12~13世紀 国宝

徳川家光から春日局に下され、子孫の稲葉家に伝えられたのでその名があります。
曜変天目は日本に数点あるだけの大変珍しい品で、特にこの稲葉天目は有名です。
小さな天目茶碗ですが、見込みの斑文は星のように輝き、観る角度によって
その色も微妙に変わり、小さな宇宙を観るような景色です。
「響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき」展の記事です。
9.アーティゾン美術館 「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂」展

パリ・オペラ座は1669年にルイ14世によって設立されています。
現在は1875年に完成したガルニエ宮と呼ばれる劇場を指します。
展覧会では特に19世紀から20世紀初めに盛んに上演された、ロマンティック・バレエ、
グランド・オペラ、バレエ・リュスや、多くのアーティストが参加した舞台芸術を通して、
パリ・オペラ座の歴史が紹介されています。
「バレエの授業」 1873-76年 オルセー美術館

稽古場の情景です。
踊り子の白を中心に、赤、緑、水色、黒のリボンをあしらって華やかです。
誰かの連れてきた犬も紛れ込んでいます。
ドアの向こうの窓から少し外の風景も見えます。
活き活きとした画面で臨場感があり、観ていて飽きません。
「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂き」展の記事です。
10.サントリー美術館 「京都・智積院の名宝」展

真言宗智山派の総本山である智積院の寺宝を展示する展覧会です。
長谷川等伯・久蔵父子の絵が一番の見所です。
「楓図」 六面のうち四面 長谷川等伯 桃山時代 16世紀 国宝

長谷川等伯(1539-1610)が京都で狩野派と画壇の頂点を争っていた頃の作品です。
元は豊臣秀吉が長男の鶴松の菩提を弔うため建立した祥雲禅寺の襖絵
だったのを貼り直したので、絵の継ぎ目にずれがあります。
豊臣氏の滅亡後、祥雲禅寺は隣接地の智積院に与えられています。
秋の初めなのでしょう、楓の葉はまだ緑の葉と紅葉とが混じり、
萩や鶏頭も描かれています。
左上から右側まで続いている青い流水が画面に変化と奥行きを与えています。
桃山風の豪放な図ですが、草花の描写には優美さもを感じられ、
長谷川等伯の特徴が表れています。
「京都・智積院の名宝」展の記事です。
ブログを始めて16年経ちました。
コロナ禍のため、多くの展覧会が予約制になり、不便な状態が続いています。
展覧会に行く回数も以前よりは減ってしましましたが、そんな中、私のブログを
読んでいただき、本当に有難うございました。
お礼申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎え下さい。
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今年も様々な美術展情報を有難うございました。
結局私が行けたのは「静嘉堂@丸の内」の「響きあう名宝」展だけでしたが、来年はもう少し積極的に美術展にも足を運びたいと思っております。
明年もどうぞよろしくお願いいたします。
結局私が行けたのは「静嘉堂@丸の内」の「響きあう名宝」展だけでしたが、来年はもう少し積極的に美術展にも足を運びたいと思っております。
明年もどうぞよろしくお願いいたします。
来年はもっと自由になっていますように。
どうぞ良いお年をお迎えください。